二週間ほど前「クロイツェル・ソナタ」について書いた。「クロイツェル・ソナタ」は、ほんとうに素晴らしい曲で、数々の芸術家に影響を与えてきた曲でもある。レフ・トルストイの同名の小説はベートーヴェンの曲に触発されて書かれたとされているし、ヤナーチェクはトルストイとベートーヴェンの両者に刺激され、弦楽四重奏を残したと云われている。 圧倒的な何かを持つのが、第九番となる「クロイツェル」である。 しかし、わたしが一番好きなヴァイオリン・ソナタは「クロイツェル」ではなく、第五番となる「スプリング」で一八O一年に発表されたものだ。 この年、ベートーヴェンはジュリエッタ・グッチャルディと恋に落ちた。第十四番となる月光ソナタ(ピアノ)が、この翌年に発表されている。 ベートーヴェンはジュリエッタに求婚して振られたとされているが、最新の研究ではその逆に近い状態で、ジュリエッタは終生ベートーヴェンを想い、頼っていた