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名車「Golf」で栄えた街が一転… 「多くの人々が驚きました」と、フォルクスワーゲンの工場に25年以上も勤務するマイケル・フックスは振り返る。誰もが「いったい何が起こるんだ?」と思っていたと、フックスは語る。 フォルクスワーゲンは、人気モデルの「Golf」の製造を停止し、6種類のEVモデルを製造すべく、工場をリフォームした。工場の出口は高速道路「アウトバーン」に直結している。新工場では1分間に1台の車を製造でき、それを列車で出荷する。 当時、大工場がガソリン自動車からEVに完全移行するのは珍しかったため、ツウィッカウは自動車業界にとって重要な参考事例となった。 ガソリン自動車に比べ、EVのパーツはきわめて少ない。ラジエーターもいらなければ、排気用パイプもいらない。ファンベルトもいらないし、複雑なギアボックスもいらない。その結果、工場の労働者を削減することになり、世界的に失業率が激増するので
Text by Pathom Sangwongwanich, Zheng Li, Nguyen Dieu Tu Uyen, Quynh Nguyen, Lisa Du, David Scanlan, Tao Zhang 風水の専門家によると、バンコクのプラチャラットバンペン通りの中央部はドラゴンの腹に似ている。それは縁起の良い土地であることを意味する。ここに住んだり、事業を営んだりすれば、繁栄する可能性が高いという。 そのため、コロナ禍のさなか、中国人起業家が大挙して押し寄せ、不動産が熱い注目を浴びた。地元の人々にとっては、一階に商業スペースのある自宅を売ったり貸したりする一世一代のチャンスだった。 長年ここに住むチャナフォン・リッタヤマイ(52)は、隣人の家が1500万バーツ(約6200万円)で落札されるのを目にした。チャナフォンは自分の店を買い取りたいという複数の申し入れを断った。「こ
日本には、電気自動車(EV)が普及するための条件が完璧にそろっているという。だがテスラ社のイーロン・マスクも日本市場には苦戦していると認める通り、普及は遅々として進んでいない。その原因はどこにあるのか。同じく普及が停滞する米韓の状況と合わせ、米経済メディア「ブルームバーグ」が分析した。 日本はEV普及の「ラガード」 日本は電気自動車(EV)の先駆者となるための、あらゆる条件を備えている。世界平均を上回る所得、堅調な自動車産業、高い新車購入率、技術を称揚する文化などだ。 しかしながら、2023年の日本におけるEVの新車販売比率(新車販売台数に占める特定の自動車の割合)はわずか1.8%だった。 2024年3月、ブルームバーグの気候変動ニュースメディア「ブルームバーグ・グリーン」は、完全電気自動車(BEV)の普及拡大が見込まれる31の国を調査した結果を発表した。するとそのなかで、普及率が思いのほ
クーリエ・ジャポンのプレミアム会員になると、「ウォール・ストリート・ジャーナル」のサイトの記事(日・英・中 3言語)もご覧いただけます。詳しくはこちら。 中国では大規模な不動産不況を受け、鉄鋼メーカーが大量の売れ残り在庫を抱え込んでいる。各社は現在、それを大幅な割引価格で輸出している──そして、それに反発しているのは米国だけではない。 ジョー・バイデン米大統領は4月17日、米通商当局に対し、中国製鉄鋼の輸入関税引き上げを要請した。米政府は中国の安価な輸出品が米国および世界市場を席巻しているとして、それを締め出す政策を幅広く展開している。 中国の鉄鋼輸出はこの1年で33%増加した。国内の建設活動が枯渇する中、巨大鉄鋼メーカーは輸出を通じて在庫を解消しようとしている。中国の税関データによると、今年2月までの12ヵ月間の鉄鋼輸出量は9500万トンだった。これは米国の2022年通年の鉄鋼総消費量の
かつて腕時計は軍人、資産家、一流ビジネスパーソンたちの腕に巻かれていた。だが、その光景を変えた日本発の腕時計がある。全世界出荷台数1億4000万、年間700億円以上を売り上げるカシオ計算機(以下カシオ)のG-SHOCKだ。 「壊れない腕時計」としてニッチ層をターゲットに誕生したG-SHOCKが、世界の若者のファッションアイコンとなり得たのはなぜか。紆余曲折を経ながら進化を遂げていったグローバルブランドの軌跡と、これからに迫る。 「体験型」イベントで業界関係者の心を動かす 2023年12月、インド最大の都市ムンバイで、カシオが主催するG-SHOCKのPRイベント「SHOCK THE WORLD MUMBAI’23」がおこなわれた。 赤色のライトに照らされた壇上に、EDMを響かせながらG-SHOCK開発者の伊部菊雄が登場し、観客に語り掛けた。 「NEVER, NEVER, NEVER GIVE
ジョー・バイデン米大統領が「日本は外国人嫌いで移民を望んでいない」などと発言したニュースは海外メディアも一斉に報道した。なかには、記事のコメント欄に異例の数の書き込みがあった欧米メディアもあり、この報道に対する読者の関心の高さをうかがわせた。 「中国やロシアと一緒くた」に違和感 米紙「ワシントン・ポスト」は、「バイデン、選挙イベントで同盟国日本を中露のような『外国人嫌い』と呼ぶ」と見出しをとった5月2日付の記事で、問題となっている発言に触れ、「米国の同盟国を中国やロシアといった権威主義的なライバル国と同じグループに入れ、移民不足が『経済がひどく行き詰まっている』理由ではないかと示唆した」と記した。
義足のアーティストとして知られる片山真理がスペインでの作品展示をきっかけに、現地紙の取材に応じている。 記者は、片山に障害があるという点に着目し、いわゆる“感動の物語”をまとめようとしていたようだが、こうした「思い込み」を持って取材に向かうことの危険性を痛感したと正直に記している。片山はいったいどんなコメントをしたのだろう? 現代の巨匠を彷彿とさせる作品 アーティスト、歌手、そして注目の新星でもある片山真理の子供時代については特筆すべきことが二つある。一つは、家庭のなかに裁縫が根付いていたこと。「母も祖母も曾祖母も裁縫をしていました。私はその技術を受け継ぎました。鉛筆を持つよりも先に、針と糸を使っていました」と、片山は説明する。 スペイン・マドリードで展示されている片山の写真は、ふんだんに装飾が施され、パンクのテイストを帯びたブラックジョークが効いている。自身を題材にしたこれらの作品群は米
【今回のお悩み】 「どうしたら自信を取り戻すことができますか?」 自信を失うと怖気付いてしまい、一歩を踏み出すのが難しいことがあります。一度失ってしまった自信を回復するにはどうしたらいいのでしょう。アドラー心理学に詳しい、岸見一郎先生に聞いてみました。 自信があるかと問われて、「ある」と断言できる人は少ないでしょう。もちろん、あらゆることについて自信がないわけではありません。確実にやり遂げられると予想できることであれば、自信があるといえるでしょうが、これまで一度でもうまくいかなかった経験、たとえば、仕事で失敗したとか、好きな人に振られたというような経験をした人であれば、次はうまくいくと自信を持って答えることはできないでしょう。 実際、次はうまくいくと限りません。仕事についていえば、努力すれば必ずよい結果を出せるというものではありません。猛勉強しても、入学試験や入社試験に合格できないことはあ
「わび・さび」はいまや海外でも“Wabi-Sabi”として知られているが、この日本独特の概念を定義するのは日本人でも難しいだろう。ワシントン大学で日本語や日本文学を教えるポール・アトキンス教授が、「わび・さび」が日本国外に広まった経緯と、その美学に外国人が惹かれる理由を解説する。 日本に逆輸入された 先日ニューヨークを訪れた際、マンハッタンにある日本の書店に立ち寄った。日本に関する英語の本が並ぶなか、「わび・さび」専用の棚があり、『わび・さびの恋愛術』『わび・さび道』『芸術家、デザイナー、詩人、哲学者のためのわび・さび講座』などのタイトルが陳列されていた。 いったい「わび・さび」とは何なのか、そしてなぜ「寿司」や「空手」といったジャンルと並び、独自のコーナーが設けられるほどの扱いを受けているのか? 「わび・さび」は、一般的には伝統的な日本の美意識と説明されている。「傷がある」または「未完成
この記事は、世界的なベストセラーとなった『21世紀の資本』の著者で、フランスの経済学者であるトマ・ピケティによる連載「新しい“眼”で世界を見よう」の最新回です。 ウクライナがEU(欧州連合)に加盟する可能性があるが、それを認めるべきだろうか。この問いの答えはイエスだ。ただし、それを機に欧州統合の構想を再考するのが条件である。すなわち、EUを法の支配と民主的多元主義のための政治共同体として、再定義する機会とすべきなのだ。 この数十年間、EUを築いていくにあたって支配的だったのは、自由貿易と競争がありとあらゆる問題の解決策となると説く「経済教」という宗教だった。その経済教という宗教から抜け出すときがきている。 ロシアからウクライナを守ることに死活的重要性があるとするなら、それは民主主義の擁護という政治的理由があるからだ。ウクライナは、その隣国のロシアとは異なり、選挙を通じた民主制、政権交代、権
激化する新たな「南北対立」 ──新著『ホロコースツ(Holocaustes)』(未邦訳)とは、ホロコーストの複数形です。ホロコーストという言葉には宗教的な意味合いがあるため、フランスでは抵抗を感じる人もいるかもしれません。 フランスでは、映画監督のクロード・ランズマンの影響もあり、ナチスによるユダヤ人の組織的虐殺を、ヘブライ語の「ショア」と呼ぶようになりました。一方、英語圏では、依然としてホロコーストという用語が一般的に使われています。この言葉を、本書で私は「宗教的な性質を持った殺戮」という本来の意味で用いました。複数形にしたのは、多数の人たちに関わることだったからです。 というのも、10月7日にハマスによって行われた対ユダヤへの襲撃も、イスラエルによるガザでの大惨事も、政治的でも宗教的でもあります。両者は交じり合っており、明確には分けられません。こうした状況を理解せずには事の重大さを正し
激化する米中貿易摩擦 2001年、中国は世界貿易機関(WTO)に加盟した。歓喜に沸いた当時でさえ、米中政府は異なる夢を見ていた。 当時の米国大統領ビル・クリントンは、中国はWTO加盟によって政治改革が推進されると称賛した。一方、当時の中国の指導者・江沢民は、米国の本当の動機は「社会主義諸国を西洋化し、分裂させること」にあると警戒していた。 それから20年以上経ったいま、両国の軋轢は激しく拡大した。2年に一度のWTO閣僚会議では、米中が激しく対立する。
島根県雲南市吉田町はかつて、日本古来の製鉄法「たたら製鉄」によって栄えた地だ。映画『もののけ姫』の舞台のモデルになったといわれ、日本で唯一現存する「菅谷たたら」のあるこの町を、作家・写真家のクレイグ・モドが訪問。伝統的なたたらの技法を体験した。 まるで錬金術 2023年の秋、私は島根県雲南市吉田町にある「たたら炉」の前に立っていた。上部が開いたこの巨大な製鉄炉の中は木炭でいっぱいで、火が勢いよく燃えている。さながらルシファーの寝床といったところだ。 オレンジ色に燃える炉の底には、大きな鉄の塊が横たわっている。これは「鉧(けら)」と呼ばれ、その中には最上質の「玉鋼」と呼ばれる鋼鉄が含まれている。 玉鋼は歴史上、長きにわたって日本刀の材料とされてきた。実際に使用できる玉鋼がここにあるというのは、あえりえない話のように思われる。もし現実なら、それはまさに錬金術の世界だ。というのも、私たちがこの2
フランスでも非常に人気が高い日本のマンガ。その評価は初めから高かったわけではなく、長年かけて徐々に定着していったという。日本のマンガはフランス社会でどう受け止められてきたのかを、仏高級紙「ル・モンド」上での40年以上の報道から読み解いていく。 フランス中が悲しんだ鳥山明の死 とうとう孫悟空が孤児になってしまった……。史上もっとも有名なマンガのひとつで、世界で2億6000万部を売り上げた『ドラゴンボール』の作者、鳥山明が68歳で亡くなった。3月1日のことだったが、遺族がそれを公表したのは1週間後だった。 こうして日本から世界にマンガを広げた主要人物の一人がいなくなってしまった。仏紙「ル・モンド」にウィリアム・オーデュロー記者はこう記した。 「2013年にアングレーム国際漫画祭で特別賞を受賞。2019年にはフランスの芸術文化勲章『シュバリエ』を受章した。地方に暮らすことを好んだマンガ家の鳥山明
必死に働けば、良い生活が待っている。賃金も男性と同等の額をもらえるようになる。そう叩き込まれ、これまで必死に走り続けてきたミレニアル世代の女性たち。だが、現実は良い生活どころか生活費の高騰で日々暮らしていくのもやっと。男女格差はいまだに埋まることがない。 それなら、自分を幸せにしてくれることに時間を費やすべきではないか──こうした考え方が、ミレニアル世代に浸透しつつあるようだ。 ローズ・ガードナー(42)の人生は完璧だった。学生時代の成績はオールAで、名門大学をトップで卒業後に修士号を取得し、出版社に就職。その後は業界で名高い会社を渡り歩いて順調にポストを駆け上がり、ある報道機関に転じる。そしてロンドンの高級マンションを買うまでに至った。しかし彼女自身は、人生の新しいステージに到達するたびに、心からの喜びを感じられなくなっていった。 「こんなことを言うとなんてワガママな、と怒られそうですが
数十年ぶりの株価高騰に円安と、日本経済が激動の時代を迎えるなか、日米関係はどう変わるのか。英経済誌「エコノミスト」は「失われた数十年」から脱却しつつある日本に対し、米国は新たな役割を期待していると指摘する。 「失われた数十年」は解消に向かっている 1982年、戦後の日米関係において最も肝を冷やす事件のひとつがデトロイトで起こった。 自動車工場に勤務していた2人の白人男性が、中国系米国人を日本人だと思い込んで撲殺したのだ。 加害者2人は有罪になったが、3年間の保護観察処分と約3000ドルの罰金の支払いを命じられただけだった。この度を越して寛大な判決は、米国政府の上層部にまで蔓延する時代の雰囲気を反映している。 80年代に日米貿易摩擦が激化すると、経済大国の地位を日本に奪われることを危惧した米国は強硬な対応をとった。貿易規制を敷いて日本の国内市場をこじ開け、円高ドル安を推進した。90年代に日本
一見したところ手が込んでいて、難しそうに見えるのに、実は簡単、失敗なし、おまけに美味しくて片付けもラク。もはや作らない理由はない、ニューヨーク・タイムズ・クッキングの一押しワンパン(ワンポット)レシピをご紹介します。
理論生物学から始め、歴史を自然科学のように研究してきた進化人類学者のピーター・ターチン。その独得で大胆な主張は、世界から注目を集めてきた。ターチンから話を聞いた、英紙「フィナンシャル・タイムズ」のヘンリー・マンス記者が、その主張を鋭く分析する。 危機を予測した進化人類学者 2010年、英誌「ネイチャー」は、各分野の専門家らに自分の分野が10年後にどうなっているか、予測するよう求めた。グーグルのリサーチ・ディレクターは、インターネット検索がタイプ入力ではなく、ほとんど音声入力でなされるようになるだろうと述べた。 そこにはピーター・ターチンのものもあった。もともと生態学者であった彼の予想は、なかでもおそらく最も大胆だった。「次の10年は米国と西欧が不安定化する時期になる」というのだ。特に「2020年ごろに一気に不安定化する」と示していた。 この予想がなされたのは2010年2月のことだ。同年末に
「稼げる」というイメージから、海外へワーキングホリデーに行く日本の若者が急増している。米メディア「ブルームバーグ」が、彼らを海外へ向かわせる日本の現状と最新ワーホリ事情を取材した。 給料は日本にいたときの3倍 オーストラリアの田舎の食肉加工施設に勤めるヨシハラ・トモキ(25)は、朝5時からシフトに入り、週に約50時間働く。彼はここで、日本で自衛隊員だったときの3倍の給料を稼いでいる。 2023年度、オーストラリアが日本人向けに発給したワーキングホリデー(ワーホリ)ビザの数は、過去最多となった。ヨシハラもそうした日本人の一人だ。彼らがオーストラリアに惹かれる理由のひとつは賃金の高さだが、これは円安傾向によっていっそう魅力的なものとなっている。 「給料の面からいえば、こちらのほうがはるかに良いです」とヨシハラは言う。彼は月に手取りで約3300ドル(約52万円)もらっており、シドニーの南にあるゴ
つい最近まで、マッキンゼーをはじめとするコンサル業界は絶好調であるかのように思われた。しかし、ここにきて風向きが変わった。英「エコノミスト」誌は、コンサル業界が今回の成長の落ち込みから復活するのは難しいと予想する。 2024年3月、ある匿名のメモがインターネット上に一時拡散した。メモの著者は複数人で、いずれも「マッキンゼーの元パートナー」と称していた。彼らは輝かしい業績を誇る戦略コンサル会社が近年、「成長ありきの無責任体制」に陥り、とくに経営陣に対しては「戦略的目標が欠如」していると手厳しく非難した。そしてマッキンゼー出身者らしい控え目な書き方ながら、「真に偉大な組織」が存亡の危機に瀕していると警告した。 このメモはすぐに削除されたが、それはマッキンゼー社員の直近の不満にほかならなかった。1月、同社マネージングパートナー(一般企業のCEOに当たる)のボブ・スターンフェルズは、最初の社内投票
警察が見た目や人種を理由に職務質問や捜査の対象を選ぶ「レイシャル・プロファイリング」の問題が、日本でも徐々に認知されはじめている。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、日本でこうした理由から頻繁に職質され続ける人々の置かれた現状を取材した。 「別にドレッドヘアが悪いわけではないですけど」 通勤中の人々が東京駅を足早に通り過ぎていくなか、警官が若い黒人男性に丁寧に説明する。「私の経験上ですよ、ドレッドヘア、おしゃれな方って、けっこう薬物を持っている方がいままで多かった」 2021年にアロンゾ・表側(28)が受けたこの職務質問の動画は、日本におけるレイシャル・プロファイリング(人種や肌の色を理由に捜査対象を選別すること)についての議論を引き起こし、警察の内部調査につながった。だが表側にとっては、13歳で初めて職質を受けて以来、ずっと抱え続けている問題の一部にすぎなかった。 「警察はただ自分の仕事を
日本でも話題のドラマ『SHOGUN 将軍』で主役のひとりである戸田鞠子を演じた、ニュージーランド出身の日系人俳優アンナ・サワイ(澤井杏奈)が、米紙「ロサンゼルス・タイムズ」の独占インタビューで作品への思いを語った。 アンナ・サワイは、ドラマ『SHOGUN 将軍』の制作総指揮者ジャスティン・マークスと初めて面談したとき、まず聞きたいことがいくつかあった。そのひとつが、「なぜこれをリメイクするのか」だった。 原作のジェームズ・クラベルのベストセラー小説『将軍』を基に、マークスとレイチェル・コンドウが「ディズニー」の制作スタジオ「FX」と組んで共同制作したこのドラマは、長年温められてきた企画だった。 だがその時点でのサワイは、このドラマに対する評価をオーディションの資料からわかる限りで下すしかなかった。その資料に含まれていたのは、人物描写とあらすじ、そして、全貌などまったく見えない入浴シーンの台
社会に受け入れられない移民 「移民を受け入れたのが悪かったとは、私は思いません。むしろ統合がうまくいかなかったと言うべきです」 犯罪作家のイェンス・ラピドゥスはそう述べる。彼はかつて刑事弁護士だったが、作家に転身し、ネットフリックスのドラマ『スナバ・キャッシュ』の脚本を執筆した。彼は、かつて弁護した被告や、ギャングのメンバーのほとんどは、スウェーデンで生まれた人たちだと指摘する。 「ここで生まれても、彼らはまだ外国にいると感じているのです。扉が閉ざされていて、中に入れてもらえていないと。本当の問題は、このような人々の社会への統合に、私たちが失敗したことです」 犯罪作家のイェンス・ラピドゥスが執筆したネットフリックスのドラマ『スナバ・キャッシュ』。スウェーデンに住む移民2世で、シングルマザーの主人公が、起業して成功するために、犯罪集団に加わる親戚から金を借りたことで、さまざまな困難に巻き込ま
増え続ける暴力事件 かつて家だった場所とその周辺に木材、断熱材、被覆材の破片が飛び散り、ぐちゃぐちゃに散乱している。吹き飛んだ窓ガラスの跡には、ギザギザになった破片だけが残っている。カーテンや衣服が散乱し、爆発の威力に押し流されている。 「ニュースで見るような、外国の戦争の現場のようです」と地元住民は言う。 しかし、ここは紛争地帯ではない。スウェーデン第4の都市ウプサラの、かつては平和だった地区だ。昨年9月28日に爆発が起こり、新人教員のソハ・サード(24)が巻き込まれて死亡した。この攻撃は、犯罪組織のメンバーの親戚と思われる隣人を狙ったものだった。 9月末にスウェーデンのウプサラで起きた爆発事件の現場 スウェーデンでは昨年後半、ウプサラとやその南に位置する首都ストックホルムで凶悪な暴力事件が相次いだ。9月から10月にかけての最悪の時期には、毎日のように銃撃や爆破、手榴弾による攻撃が起きて
2024年のヴェネチア・ビエンナーレでは、各国のパビリオンと併せて、アジアで最も成功した現代アーティスト、ゾン・ファンジ(曾梵志)と世界的建築家、安藤忠雄のコラボレーションが注目されている。2人の出会いや展覧会にかける思いについて、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が聞いた。 歴史あるイタリアの水の都で開催される現代アートの祭典、ヴェネチア・ビエンナーレ。まるで遠く離れた星座のような巨匠たちが、ここで相まみえる。ビエンナーレといえば各国のパビリオンが有名だが、同時期に開催される独立した展覧会も急増している。 なかでも今年最も注目されている展覧会は、ゾン・ファンジと安藤忠雄という、2人の巨匠のコラボレーションだ。ゾン・ファンジは60歳、北京を拠点とする画家である。途方もないスケールのキャンバスに、抽象と具象、東洋と西洋を流れるように横断する作風でよく知られる。 彼とタッグを組む安藤忠雄は82歳で
多くの人々の思想に影響を与えた注目の学者たちを紹介する「世界の賢人ぺディア」。今回は日本でも話題になった『ワーク・シフト』の著者として知られるリンダ・グラットンを紹介する。 人生100年時代というコンセプトを創り出したグラットンは、私たちにどう生きるべきと説いているのだろうか?
クーリエ・ジャポンのプレミアム会員になると、「ウォール・ストリート・ジャーナル」のサイトの記事(日・英・中 3言語)もご覧いただけます。詳しくはこちら。 誰もが会議を嫌っている。数が多すぎる、長引く、メールで済ませられる、といった理由からだ。しかし、会議は協力してアイデアを前進させる重要な手段だ。では、どうすれば企業は会議をより効果的なものにできるのか。有望なテクノロジーや新たなアイデアが、数年のうちに企業の会議の形を変えそうだ。 ここでは将来的に考えられる新たな5つの会議形態を紹介する。 ハイテク会議
刑務所に出向いて服役中の囚人たちに料理を教えているかと思えば、無職の人々を対象にした無料の料理学校を設立──ティエリー・マルクスは「2つ星シェフ」としての料理の腕前だけでなく、その「社会派」な活躍でも知られる。そんなマルクスの「インクルーシブ」な経営哲学を、エグゼクティブ向け仏隔月誌「クーリエ・カードル」が掲載した。 パリの高級レストラン「シュール・ムジュール」を率いる2つ星シェフ、ティエリー・マルクスは、およそ10年前に「キュイジーヌ・モード・ダンプロワ(料理への手引)」という学校を共同設立した。その学校は、生徒たちに短期間で調理や食にかかわる技術を教えることで、飲食業界への参入と、業界内での転職を容易にしている。 マルクスがパリに作った新しいレストラン「オノール」でも、誰も排除しない「インクルージョン」の考えに則ってスタッフの10%を採用しており、そのなかにはマルクスの学校を出た者もい
「はっぴいえんど」は、日本のロック界に大きな影響を及ぼしたバンドのひとつだ。英語で歌うべきものとされていたジャンルで、母国語である日本語の歌詞を作った彼らに、世界的なロックバンド「ビートルズ」を生んだ英国の「ガーディアン」紙が取材した。 「歌詞を翻訳すれば、意味が変わってしまう」 1969年、松本隆と細野晴臣がロックバンドをはじめようとしたとき、二人はある選択を迫られた──当時のロックの共通語である英語で歌うか、日本語で歌うか。議論の末に二人は母語を選択し、そうすることで、日本の音楽の流れを完全に変えたのだった。 松本、細野、そして鈴木茂と大瀧詠一によって結成されたバンド「はっぴいえんど」は、西洋風のフォークロックと日本語のボーカルを融合させた。この決断は、近年ネット上で人気がある80年代のシティ・ポップ・ファンクから、現代のJポップに至るまで、日本のあらゆる音楽に影響を与えている。 「僕
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