ご長寿麻雀漫画のタイトルとして知られる「むこうぶち」という言葉だが、もとは裏社会の隠語だということもあって、その意味はあまり知られていない。 漫画では「一匹狼の真のギャンブラー」とされているらしいが、隠語大辞典は「鉄火場の客のこと」としている。 「むこうぶち」という言葉がどのように使われていたのか、過去の用例から探ってみたい。 1962年『無職渡世 志村九内の生涯』井出英雅 向こうぶち 時刻が早くて客が少ないとき、出方がお客の相手をする。そのもの。そのこと。 「出方」というのはヤクザの幹部のことで、貸元=店長、代貸=副店長、出方=チーフ、三下=バイト、くらいの感じらしい。 おそらく「客の向かいで博打を打つ」という意味で「向こう打ち」だろうか。 1974年『ヤクザ映画はどこまで実録に迫っているか』梅原正紀 ところで「向こう打ち」とは賭場にくる客のためのサービス要員である。まだ本格的に賭場を開