飛行機が離陸する前、陸にいる整備士にこっそり手を振るためにいつも窓際の席を取る。 「福岡空港行き、ご搭乗案内、間もなく終了致します」という声を聞きながら慌てて機内に乗り込んだ。祖母が死んだのだ。 祖母の訃報を知ったのは病院の待合室だった。 その日は朝起きた時から調子が悪く熱があった。喉も痛い。身近にインフルエンザに罹患した人が何人かいたので、念のため病院へ行くことにした。 ベッドの中で病院の診察時間を調べるも、近所の内科や耳鼻咽喉科はどれも木曜定休だった。こんな仕打ちがあるとは、と思いながら、唯一診療していた少し遠い病院へバスで向かった。 熱と血圧を測って診察して、インフルエンザの検査をするので待合室でお待ちください、と言われて何気にiPhoneを眺めていたら、父からのLINEが入っていた。朦朧としていた意識が急に引き戻される。 「ばあちゃんが亡くなりました。」 あまりにも静かで急だった。