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参議院選挙2025
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ヘッジファンド各社がAIボットを証券取引所に送り込んだとする。するとそれらのボットは競合せずに、談合する。利益のために闘う代わりに、価格を固定し、利益をため込み、人間のトレーダーを脇に追いやる──。規制当局にしてみれば、こんなことは悪夢でしかない。 ところが、このシナリオはSF的な話でもないと研究者たちは述べている。 実際の市場を模したシミュレーションのなかで、人工知能により駆動する取引エージェントたちは、明確な指示がないのに価格操作カルテルを結んだのだ。 わりと単純なプログラミングであっても、ボットたちは自己裁量だと談合することを選んだため、市場の監視機関は警戒感を新たにしている。 別の言い方をすれば、AIボットは邪悪でなくても、あるいはとくに賢くなくても、市場を操作できてしまうのだ。放っておければ、ボットは自分たちでそれを学習することになる。 研究者のひとりで、米ペンシルベニア大学ウォ
近年の米国政治に特徴的な「ある傾向」は、現代人のゼロサム思考、つまり「誰かの利益は誰かの損失」という考え方に由来する──ハーバード大学の経済学教授ステファニー・スタンチェヴァはそう指摘する。 世界は「限られたパイの奪い合い」なのか? 近頃のニュースやソーシャルメディアを見ていると、ある種のパターンに気づくかもしれない。そこで語られる話の多くは、誰かの利益が他の誰かの損失となるような、限りあるリソースを奪い合う集団間の対立に関するものなのだ。 中国が米国との貿易において利益を上げれば、結果として米国は損をするに違いない。米国の大学に外国人留学生が増えれば、米国人学生の枠はきっと減るはずだ。移民たちが仕事を得れば、それは米国市民から仕事を奪うことになる。DEIの推進が女性やマイノリティの支援につながるなら、他の誰かが無視されているはずだ──このような話がそれに当たる。 こういった議論は、世界を
人間に「愛想を尽かした」世界の森林 扇風機だけではとてもじゃないが凌げないような暑さが今年も続いている。異常気象による洪水や山火事も世界各国で起きており、経済や環境への影響は計り知れない。 状況を改善するには、私たち人間がより自然に配慮した生き方を模索するほかない。地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量を減らし、それを吸収してくれる森を育てて守るのは一つの手だろう。 ところが新たなデータによると、恐ろしいことに、温室効果ガスを抑制してくれる「森林の力」が弱まっていることが判明している。世界資源研究所(WRI)の研究を引用し、米メディア「アクシオス」は次のように報じる。
流行りの言葉「マンキーピング」 ニューヨークの公認臨床ソーシャルワーカーで、男性向けセラピーが専門のジャスティン・リオイは、新しいクライアントにまずこう尋ねる。「自分の人生でいま起こっていることについて、誰に相談できますか?」 彼のクライアントのうち、異性愛者の男性の多くは、自分の彼女や妻以外には滅多に心を開かないと話すそうだ。パートナーの女性たちが彼らの非公式なセラピストとなり、「感情的な面倒をすべて引き受けている」とリオイは言う。 現在、その役割は「マンキーピング」と呼ばれている。スタンフォード大学の研究者、アンジェリカ・プツィオ・フェラーラが作ったこの言葉は、ネット上で急速に広まった。 マンキーピングとは、女性たちが男性パートナーの社会的・感情的なニーズを満たすためにおこなう仕事を指す。そこには、パートナーが日々の困難や内面の葛藤を乗り越えるのを支えたり、友人と会うように促したりする
第二次世界大戦後、数十年にわたって姿を消していたストラディヴァリウスの「メンデルスゾーン」の“所在地”が特定された。なんとその貴重なヴァイオリンは、とある日本人が所有しているというのだ。米「ニューヨーク・タイムズ」紙が、その真相に迫る。 ドイツが第二次世界大戦終結の大混乱に陥っていた時期、ある稀少なヴァイオリンがベルリンの銀行から略奪された。イタリアの名高い弦楽器製作者アントニオ・ストラディヴァリの工房で作られた名器である。 ヴァイオリン製作の黄金期にあたる1709年に製作されたこの弦楽器は、略奪される何年も前にメンデルスゾーン=ボーンケ家が銀行に預けたものだった。ナチの迫害により、ユダヤ人が所有する資産が危険にさらされていたからだ。 戦後数十年にわたり、一族はこの「メンデルスゾーン」という名のヴァイオリンを見つけるべく、雑誌に広告を出したりドイツ政府に請求書を提出したりしたが、手がかりが
労働よりも「生まれ」や「結婚」が富をもたらす──。分配されることなく、高齢者から高齢者へと世襲される現代社会の富に、仏誌「ル・ヌーヴェル・オプス」が疑問を呈す。 LVMHを擁するベルナール・アルノーとその一族、シャネルのオーナーであるアランとジェラール・ヴェルテメール兄弟、ロレアルのフランソワーズ・ベタンクール・メイエールに、海運王ロドルフ・サーデ……。フランスの長者番付トップ10は世襲に占められ、彼らは堂々と覇を唱えている。 仏経済分析評議会(CAE)によると、「いまや遺産相続こそが、社会の生活水準分布の上層に属するための決定的要因となっている」。 これは億万長者たちだけに当てはまる話ではない。1970年代初頭のフランスでは、相続される富は全体の35%だったが、いまは60%を占めている。フランスは相続人による「相続社会」に回帰したということだ。再分配政策などなかった戦前と同じ水準に戻って
ドナルド・トランプ米大統領は7月22日、共和党議員向けのレセプションで、実現不可能でありながらも具体的な約束をした。薬価を最大「1500%」引き下げるというものだ。だが、価格が100%を超えて下落することはありえない。 トランプはさらに、明らかに虚偽の数値を織り交ぜていくつかの自説を展開した。ガソリン価格は5州で1ガロンあたり1.99ドル(約295円)まで下落したというのだ。しかし、全米自動車協会(AAA)によると、価格はすべての州で3ドル(約445円)以上だ。 過去4ヵ月で企業は米国に16兆ドル(約2374兆円)もの投資をしたとトランプは誇るが、2024年の米国経済全体の価値は30兆ドル(約4452兆円)にも満たないため、これはありえない。 またトランプは、ダグラス・A・コリンズ退役軍人長官の支持率が92%に達したことを祝った。分断が進む米国で、これほど高い支持率を誇る政治家はまず存在し
300人以上が亡くなった可能性 ナジレブの女性たちは絶望していた。第一次世界大戦当時、この小さなハンガリーの農村では、多くの女性たちが夫の虐待を受けていた。夫の多くは、戦争からの帰還兵で、重い怪我とトラウマを抱えていた。アルコール依存症に苦しむ者も多かった。 ナジレブの住人のほとんどは貧しい農家で、女性たちは農場を切り盛りするだけではなく、子供や高齢の親族の世話、家の管理まで背負わされていた。村では暴力が容認された。男性が女性を支配するための手段だったのだ。村には「殴られるのが良い妻」という諺さえあった。 しかし、彼女たちの忍耐と寛容は限界に達していた。そして、ついに夫たちへの報復を始めたのだった。やがてそれは組織的な犯罪へと変化していく。1930年に差しかかるころ、28人の被告(女性26人、男性2人)が、1911年から1929年までの約20年間に、ナジレブとその周辺地域で101人を殺害し
登山には「苦労しながら山頂に辿りつき、達成感を味わうもの」というイメージがつきまとう。だが、ただ気持ち良く自然のなかを歩く「山頂を目指さない登山」があってもいい──そう説くのが、作家・ジャーナリストの佐々木俊尚が今年4月に上梓した『フラット登山』だ。 同書がもたらすヒントは登山に限らない。他人と比較して優位に立とうとする「マウンティング」や、目標のために身を粉にして頑張ることだけを美徳とする「達成中毒」が蔓延る日本社会へのアンチテーゼとも捉えられる。 フラット登山という発想から、“いまこの瞬間”を心地良く過ごす豊かな生き方について、佐々木に聞く──。 「フラット登山」が生まれるまで ──フラット登山を提唱された佐々木さんですが、もともと学生時代にはハードなクライミングや登山に明け暮れる毎日を送っていたと書かれていますね。 はい、大学時代は本格的なクライミングにのめり込んでいて、年間100日
パタゴニアは2022年、「地球を唯一の株主にする」と宣言し、株式の98%を環境保全に取り組む非営利団体に譲渡した。 それから3年が経とうとするいま、グローバル企業を中心にサステナビリティ経営をとりまく環境は大きく変化している。米国では環境やDEI(多様性、公平性、包摂性)に関する政策が大幅に縮小し、欧州ではサステナビリティ情報の開示規制が緩和された。 変化の波が押しよせるなか、責任あるビジネスを継続し、差し迫った社会課題を事業を通じて解決する、信頼されるブランドであるには何が必要か。 クーリエ・ジャポンは今年3月、これからのサステナビリティ経営のヒントを探して、パタゴニア本社を訪ねた。同社の製品戦略をになうグローバル・プロダクト・フットプリント部門の責任者マット・ドワイヤーに話を聞いた。
はるか先の未来を見据える「長期主義」 2022年に「これまで書かれたなかで、恐らく最も重要」というコメント付きで、イーロン・マスクはある論文をツイッター(現X)で紹介した。 それは、英オックスフォード大学(当時)の哲学者ニック・ボストロムが2003年に発表した「天文学的浪費 技術開発の遅延に伴う機会損失」という論文だった。 ボストロムは、宇宙で人類が暮らすために必要な技術開発が遅れると、どれだけの人命が危険にさらされるかを試算した。そのうえで、「超銀河団への移住を1秒遅らせるごとに、10兆人超の人間の生存可能性が失われる」と指摘した。
「反外国人」はもうタブーじゃない 7月20日の参議院選挙で、神谷宗幣率いる参政党が、その影響力を見せつけた。同党の躍進は日本国内でも大きな話題を呼び、さまざまな議論が起きたが、こうした日本の情勢には世界も注目している。 オンラインメディア「カンバセーション」は、日本の若年層が「長らく高齢世代に有利とされてきた政治に対する不満」を抱えていると指摘し、次のように続ける。 「多くの有権者が賃金の低下、終わらないインフレ、そしておかしなほど高齢者に恩恵を与える年金・福祉制度を支えるための税負担の増加に、憤慨していた」 そうしたなか、SNSを効果的に使って支持を集めたのが、玉木雄一郎率いる国民民主党と、神谷宗幣率いる参政党だ。今回の選挙で特に注目を浴びた参政党について、カンバセーションは次のように説明する。 「参政党は2020年3月、新型コロナのパンデミックの始まりに登場した。同党は『日本人ファース
超大型ピックアップトラックやSUV車が人気の米国で、あえて日本の小さな軽自動車や軽トラックを乗りたがる人が後を絶たない。しかし、実際に米国でこれらの車を走らせるのは至難の業だ。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が取材した。 「これは買わないと」 ある日の午後、アーロン・コーン(50)は愛車の1991年製スバル・サンバーをデコレーションしていた。この白のピックアップトラック(車体後部に天井のない荷台がある車)は、まるで洗車で縮んだかのように小さい。 妻のローラ(39)がサンバーに飲み物と軽食を詰め込むかたわら、コーンは車体の側面に「藤原とうふ店」と書かれた日本語のステッカーを貼り付けていた。漫画『頭文字D』に登場する架空の店名である。 この漫画の主人公は、ハッチバック(独立したトランクルームのない車)を運転している。だがコーンは、バージニア州リーズバーグの自宅周辺をサンバー、つまり「軽トラック(
寿司のように高価で目新しいものをパキスタンに持ち込むリスクを理解するには、アヴァリ家の男たちを知る必要がある。彼らは起業家というよりは、今日(こんにち)のパキスタンではめったに見られない“やり手”だ。 アヴァリ・ホテルチェーンとフジヤマの従業員から「ババ」と呼ばれたバイラム・アヴァリは、父親のディンショー・アヴァリと同じシンプルな信条に従って生きた。ボンベイ出身のゾロアスター教徒であるディンショーは1929年、保険代理人としてカラチに移住した。彼の口癖はこうだった。 「ルールは、愚か者と、ロバと、ラバと、学校に通う子供たちのためにある。ルールを作るのは誰か? お前と私だ。ルールを変えられるのは誰か? お前と私だ」
1985年4月、パキスタン南部の都市カラチに17階建ての「アヴァリ・タワーズ」がオープンしたとき、それは市内で最も背が高いホテルだった。 「まるで別世界にいるようでした」と当時10代だったころ、そこで働いていたシェフは言う。 「プールと水着をはじめて見たのも、そこでのことでした」 1986年12月には、この高級ビルにさらにもう一つ、目新しいものが加わった。最上階に「フジヤマ」という日本料理店ができたのだ。宣伝はいっさいされず、オープンから6週間は、招待状を持っている人だけが入店できた。 その招待状は、銀行家、ビジネスマン、医師をはじめとするカラチのエリート層の自宅やオフィスに届けられた。新年には、ウェイティングリストができるほど人気となり、人口600万人のカラチの市民は、寿司を食べたことが「ある人」と「ない人」に分けられるようになった。 1980年代後半、フジヤマのような日本料理店の経営は
人口増加が環境問題の原因だとすれば、人口減少は自然環境の回復につながるのだろうか。話はそう単純ではないようだ。世界のなかでも人口減少の“先頭集団”を走る日本の各地で集められた生物多様性データと地域の人口や土地の利用などを比較して見えてきたこととは? 英シェフィールド大学の日本研究者ピーター・マタンルと日本の学者たちが貴重な共同研究の成果を簡潔に解説する。 1970年以降、世界の野生生物の73%が失われている一方で、世界人口は倍増して、80億人を突破した。 これは偶然ではない。人口増加が生物多様性を壊滅的に減少させていることは研究で示されている。 その一方で、人類史は転換点を迎えてもいる。国連は、2050年までに85ヵ国で人口減少が続くと予測している。その大半は、欧州とアジアの国々だ。2100年には、人口は世界的に減少する。この傾向は環境にとってはよいことだという意見もある。 2010年、日
フランスの学生たちの夏休みは8週間ある。マクロン仏大統領はそれを「長すぎる」と批判する。だが、ヨーロッパの国々を眺めてみれば、ハンガリー、スペイン、ポルトガルでは10週間以上、イタリアは13週間も夏休みがあるという。「8週間」は長いのだろうか? フランス国民による討論が始まった。 7月も下旬に入り、多くの子供たちが待ちに待った「夏休み」に突入していることだろう。夏休みの長さは地域や学校によって異なるが、「学研」の調べによると、2025年の日本の小中学校の夏休みは、26〜44日間、5〜6週間のところが多いようだ。 一般的に8週間の夏休みがあるフランスでは、いま、学生たちの休暇の長さや生活リズム全般を議論する、「子供の時間」についての市民会議が開催されている。 「市民会議」とは、国民のなかから抽選で無作為に選ばれた130人が、半年間、特定のテーマについて検討し、政策への提言をまとめるものだ。こ
極右台頭のなかで 欧米の先進国では、極右政党、ないしは新興の右派ポピュリズム政党が支持を伸ばし、伝統的な大衆政党は力を失っている。 特に衰退が著しいのが、中道左派政党だ。100年以上の歴史を持つものもある各国の伝統的な中道左派政党は、軒並み有権者の支持を失っている。悲惨なのは、本来のターゲット層であるはずの労働者階級の支持が極右やポピュリズム政党に流れていることだ。 そんななかで、メッテ・フレデリクセン首相率いるデンマーク社会民主党の人気は安定している。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、2019年の政権奪還以来、デンマーク社民党は世界中の中道左派の理想となるようなリベラルな政策を実行し続けてきた。ブルーカラー労働者に有利な年金改革、家賃高騰の規制、気候変動対策のための炭素税の導入、中絶の権利の拡大、ウクライナ支援の徹底などだ。そして、大学までの無償教育、手厚い失業保険、無償の医療な
日本人にとっては、特に珍しくもないデザートだ。コンビニにも売られているし、専門店に行けば皿に盛られて出てきて、お茶やコーヒーと一緒に楽しめる。 「フルーツサンド」とは、イチゴやキウイ、パイナップルなどのフルーツを大きめにカットしてホイップクリームとともにパンに挟んだものである。 1920年代、三角形をした西洋のクラブハウスサンドイッチにヒントを得た日本人が考案したといわれている。そんなカラフルで美しいデザートがいま、日本と英国のメディアで大きく取り上げられている。
7月9日、新宿で演説する参政党の神谷宗幣 Photo by Damon Coulter/SOPA Images/LightRocket via Getty Images
トランプ氏、エプスタイン元被告の誕生日祝っていた 下品な手紙で 性的人身取引などに関与したとして起訴され、拘置所で死亡した米実業家ジェフリー・エプスタイン元被告が50歳の誕生日を迎えた際、共犯のギレーヌ・マクスウェル被告は特別な贈り物を準備していた。 マクスウェル被告が協力を求めたエプスタイン元被告の家族や友人の中には、ドナルド・トランプ大統領も含まれていた。 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した資料によれば、マクスウェル被告は2003年の誕生日に向け、トランプ氏など数十人から手紙を集めていた。
ワークライフバランスが不要な人、採用します 音楽配信大手スポティファイは「容赦ないペースについていける」プロダクトマネジャーを求めている。 患者支援サービスを提供するソラスは求職者に「ワークライフバランスを求めているなら、ここは違う」と告げている。 ソフトウエア企業リラはシニアエンジニアを募集する求人広告で、週70時間オフィスで働く意欲がない限り同社に「来ないでほしい」と訴えている。 あなたが自由時間はそれほど大事ではないと思っているのであれば、米国の現在の労働市場はうってつけだ。今夏の求人では企業は長時間労働やビジネス環境の厳しさ、そしてがむしゃらに働くことの重要性を強調している。 「この仕事はきついですよ」と言わんばかりの文句で求職者を募るのは現実的ではないように思えるかもしれない。だが、2022年から状況は様変わりした。
アップルの伝説的なデザイナーで、2019年の電撃退社後に自身のデザイン会社「LoveFrom」を立ち上げたジョナサン・アイブが、2025年5月にOpenAIと新型デバイスを共同開発すると発表。その動向が注目されるなか英紙「フィナンシャル・タイムズ」がアイブ本人と、彼のデザイン会社を支援するローレン・パウエル・ジョブズに、OpenAIとの協業や新しいデバイスの展望などについて取材した。 ジョナサン・アイブ(58)は、1997年にローレン・パウエル・ジョブズ(61)と初めて会った日のことをいまでも覚えている。 彼女の夫である故スティーブ・ジョブズの自宅の前でのことだった。「私は初代iMacを抱えて立っていました」とアイブは言う。 当時スティーブ・ジョブズは、古巣のアップル社に10年ぶりに復帰したばかりだった。その後の同社の飛躍は、ジョブズとアイブの2人を抜きには語れない。 「あの頃はよく、ステ
カナダの小さな有人島に泳ぎ着き、国民の注目を集めていた若い雄のグリズリーベア「テックス」の旅は、悲惨な末路をたどった。複数の先住民部族によって別の場所に移される計画があったにもかかわらず、許可なく射殺されたのだ。 カナダ西岸にあるテクサーダ島にこの4歳のクマが上陸したのは5月25日のことだった。以来、野生の捕食動物の扱い方をめぐる解釈の相違から、物議が醸されてきた。 テックスが7月15日に射殺されると、市民団体はブリティッシュ・コロンビア州政府に対して、ファーストネーション(北米先住民族の総称)と協力して環境管理する際にはもっと速やかに動いてほしいと要請した。 州当局は、テックスは住民にとって危険だとずっと主張してきた。当局によれば、殺害命令こそ出ていないものの、このクマはテクサーダに泳ぎ着く前からすでに本土で2人を「付け回し」、これまでに移送されたことが1度あるという。 クマが公共の安全
2024年は、英国のイングランドおよびウェールズ、それから米国の出生率がともに過去最低を記録した年だった。だが、開発途上国のトルコの出生率は英国よりさらに低く、米国の南に位置するメキシコの出生率は、米国よりも低いという。なぜ世界各地で出生率がこれほどまでに急落しているのだろうか。 キングス・カレッジ・ロンドンの社会科学者アリス・エヴァンスは、このテーマについて語るのにうってつけだ。アトラス山脈からザンビアの湿地帯まで、世界の国々を旅しながら市井の人たちの話を聞き、「恋愛や結婚の相手をどう選ぶのか」、「子供を作るか否か」といったことを聞いて回っているからだ。人生において重要なこうした事柄を決めるにあたって、どのような思考や打算が裏にあるのか。 英紙「フィナンシャル・タイムズ」が、アリス・エヴァンスから話を聞いた。 ──まずは大局的な話から始めます。世界全体を見たとき、出生率はいまどうなってい
パートナー探しで最も困っているのは… ──若者の非婚化やカップル形成の減少に関して、もう一つ質問したいことがあります。このことが話題になると、私の周りだけかもしれませんが、『エミリー、パリへ行く』や『セックス・アンド・ザ・シティ』のような現象だと言う人が多いです。 要するに、高学歴の若い女性たちには選択肢がいろいろとあり、自分の人生や仕事に満足しているから、適当なパートナーがいなければ無理に結婚しないのだというステレオタイプに還元されがちなのです。でも、そういうデータは実際にあるのでしょうか。カップルを形成しないのは、本当にそういった女性たちなのでしょうか。 いい質問ですね。まず押さえておきたいのは、女性の教育水準が男性を大きく上回るようになってきていることです。大学教育を受けた女性たちが、自分と同等の学歴や経済力を持つ男性を見つけづらくなっている可能性はあります。 ただ、結婚や出生のデー
「子育てコストの増大」だけでは説明できない ──ここまでのご説明で、政治的立場に関係なく、少子高齢化について議論することがいかに重要なのかがよくわかりました。それにしても、なぜ世界で出生率がこれほど下がっているのでしょうか。その原因が何なのか、代表的な説を教えてください。 まずは経済的な話からしましょう。一つの考え方として、社会が豊かになるにつれて、親たちが子供の数よりも、一人ひとりの子供の質に投資をするようになるという説があります。 言い換えるなら、経済が重い岩を持ち上げる力仕事から、スキルや知能が求められる仕事へと変化していくにつれて、親は「子供にいいチャンスを与えるために教育へしっかり投資しよう」と考えるわけです。これが子供の数よりも質を重視する、いわゆる質と量のトレードオフという考え方です。 ただ、この説では説明がつかない現実があります。なぜなら、いま起きている出生率の急落は、所得
自社開発のAI「Apple Intelligence」に期待が寄せられていたアップルだが、今年に入り株価が低迷している。 AI開発競争で他社の後塵を拝しているアップルには、かつてのノキアなどの大企業のようにイノベーションが停滞し、失速するリスクがあると英誌「エコノミスト」は指摘する。 アップルがいま抱えているリスク、そしてティム・クックが決断すべきこととは──? 期待されていた自社AIは失速 2024年、アップルは「Apple Intelligence」を発表し、大きな話題となった。その翌日、同社の時価総額は2000億ドル(約30兆円)以上急騰した。企業の単日での株価上昇としては、歴史上もっとも大きな高騰の一つになった。 株価高騰の背景には、Apple IntelligenceがiPhoneを有能なデジタル秘書のような存在に進化させるという期待があった。低迷するスマートフォン業界をアップル
中東4ヵ国、そして日本を含む世界中に分かれて暮らすクルド人。その歴史は、数世代にわたる苦難と抗争の繰り返しだ。帝国主義時代には英仏に独立国家建設を約束されながらも反故にされ、その後は各勢力に利用された。各国に散らばった現在では文字も政治的立場も違うが、彼らをまとめ上げる強力な理念は生きているという。仏誌「ル・ポワン」が、クルド人の歴史が専門の歴史学者に話を聞いた。 クルド人が歴史の表舞台に復帰したのは1980年代、イラン・イラク戦争のときだった。その戦争が、クルド人が居住する国同士の戦いだったため、関心を集めたのだ。 とはいえ、クルド人の命運を気にかける人が増えたのは、イラン・イラク戦争が終結して数年後のことだった。イラクのサダム・フセイン大統領が、湾岸戦争で敗れてクウェートを失ったとき、それに呼応するかのように蜂起したクルド人に苛烈な報復を加えたのだ。クルド人の蜂起は、米軍主導の多国籍軍
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