長澤規矩也は漢籍を専門とする図書学(書誌学)者で、古書目録作りの第一人者であった。長澤は、図書学とは「図書を対象として、科学的に研究する学問」であるとする。学術的用語、図書館用語が曖昧であってはプロの仕事はできないと、常に用語に向ける厳しい目は光っていた。 『図書学辞典』(汲古書院)は、長澤規矩也の喜寿を記念して刊行された。書形は少し厚めの新書判で、書誌学用語が1700収容されている。序説、装訂、大小、写本などのジャンル別の編成、長澤がここぞと思う用語には説明、注意、参考、正誤といった補説が付される。これがふるっている。辞書は「引かれるもの」なのだが、同時に「読ませるもの」であってほしいもの。その点、この辞典は読んで楽しめることうけ合いである。そして背筋がのびるのだ。少し引いてみたい。 <そうてい 装訂>図書のとじ方。製本のしかた。「訂」はきちんとまとめる意。正誤: 装釘と書くのは、明治