太平洋戦争中の1944~45年、呉服の行商をしていた神戸市在住の華僑13人がスパイの疑いで相次いで拘束された。大阪府内の警察署などで拷問、弾圧を受け、うち6人は獄中または釈放直後に死亡した。事件についてあまり語られないまま80年が経過。遺族や支援者が8月24日、初めて神戸市内で事件に関する集会を開いた。遺族の一人が思いを語った一方で、多くはバッシングを恐れて口を閉ざし、複雑な感情をにじませた。 「父親があんな形で亡くなっていたことは全く知らなかった。拷問なんて映画かテレビの世界だと思っていた」。兵庫県姫路市の在日中国人2世、林珠栄(りん・しゅえい)さん(83)は集会でこう語り出した。 神戸で生まれ育った林さんは子どものころ、父親がいない理由を尋ねたが、母親はいつも黙っていた。「聞いてはいけない」と感じ、大人になっても触れなかった。 50代で知った父の死の真相 93年8月にNHK番組が、神戸