余録：データ流出の不安 - 毎日ｊｐ(毎日新聞)

芥川龍之介の晩年の小説「歯車」には第二の僕－－つまり自分の分身が人に目撃される気持ち悪い出来事が書かれている。ある映画俳優の夫人は帝劇の廊下で見かけたというし、ある翻訳家は銀座の煙草（たばこ）屋で見たという。いわゆるドッペルゲンガー現象だ▲この「二重に歩く者」を意味する分身譚（たん）、人にいいしれぬ不安を呼び起こす。しかし人がコンピューター上のデータとして処理される今日のデジタル社会では分身は簡単に生み出せる。一度記録されたデータは当人の知らないところを歩く▲なかには盗まれたり、人から人に売買される分身もあるから油断がならない。三菱ＵＦＪ証券の顧客情報約１４８万件の流出事件で警察は同社元部長代理を不正アクセスと窃盗の疑いで逮捕した。うち５万件の情報が名簿業者に売却され、不動産セールスなどに利用された事件だ▲いわば人の分身ともいえるデータを不正に入手して売ったという話である。「窃盗」は当然と

[fujiyoshisyouta]

CD-ROMというフィジカルを盗む泥棒が規制できるわけがないように、情報そのものについても泥棒が規制できるわけがない。捜査の法的根拠を整備することと、被害の回復と補償の枠組み作りが重要だろう。…内部統制かぁ…