中尾 央 書評:Robert Lurz, Mindreading Animals: The Debate over What Animals Know about Other Minds 実際の科学にとって科学哲学が役に立つのかどうか.あるいは役に立った事例があるのかどうか.CUNY(The City University of New York)Brooklyn College哲学科に所属するRobert Lurzによるこの本は,心の哲学と心の科学に関して,この問いに対する一定の回答を示唆してくれている. 我々ヒトは,おそらく相手の考えていることを理解している(すなわち,心の理論-theory of mind-を持っていると考えられている).しかし,幼児やヒト以外の動物(特にチンパンジーなどの霊長類)はどうだろうか.これを確かめるべく,ここ数十年の間に様々な実験・議論が積み重ねられてきた