サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
大谷翔平
www.nabunken.go.jp
2019年11月 今から十年前の2009年1月に、平城宮東方官衙地区の一画で推定十万点とされる木簡が検出された大きなごみ穴が発掘されました。このごみ穴をすべて掘り上げた穴の底から、多量のウリの種を含む小さな穴が、数か所見つかりました。ウリの種の塊とともに、トイレットペーパーとして使われた籌木(ちゅうぎ)と呼ばれる細い木の棒も一緒にたくさん見つかったので、これはうんちを捨てた穴もしくはトイレ穴だろうとすぐに察しがつきました。うんちといっても黒色で粘質な泥の堆積物でもちろん形はありません。うんち本来の匂いはなく、プラスティックが燃えたような無機的な香りが特徴です。 ひとつの穴で黒色の泥をすべて丁寧に取り除いて、穴の底を詳しく調べてみましたら、なんと直径3㎝くらいで長さ15㎝くらいのU字形の'もの'が横わたっているのが見えました。U字型の内側は、やや色の薄いチョコレート色の軟質なもので充填されて
1. 全国文化財目録の概要 (1)システムの概要と背景 日本には、遺跡、建造物や有形文化財など膨大な文化財があります。それらの文化財に対し、同じ文化財であっても国・都道府県・区市町村・大学や博物館などそれぞれの機関から文化財に関するデータが作成されます。また、同じ文化財(主に遺跡)であっても、複数回の調査が実施されることがあります。 結果、同一の文化財に複数の情報や記録が生成されましたが、バラバラにあるため、一元的に確認することは難しい状況でした。 そこで、文化財単位に各情報を名寄せし、集約しました。 全国文化財目録(2023年12月7日公開) URL: https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/search-cultural-heritage 2. データと機能 (1)データ 下記のデータをもとに、名寄せ処理しました。 遺跡抄録データ 約14万件 htt
産総研が開発した3DDBViewerで、文化財データを簡単に閲覧できるようになりました。 開始日時:2022年10月18日 URL: https://gsrt.digiarc.aist.go.jp/nabunken_aist/index.html ※無料で利用できます 文化財位置情報と3D地形表示(富士山・愛鷹山周辺) 閲覧はこちら 国分寺市役所新庁舎建設地点の地下遺構(東京都国分寺市) 閲覧こちら
2022年1月6日、文化財論文情報の1718件を文化財論文ナビに一括登録しました。 登録データは、以下の通りです。なお本機能においては、論文・報告・総括・資料紹介・事業報告等をすべて総称して論文と呼称しています。 ・考古関連雑誌論文情報補完データベースのうち、論文掲載書誌が全国遺跡報告総覧に既に登録されているもの 1718件 今後、登録されたデータは、IRDBを通じてデータ連携し、CiNii Articlesで検索できるようになります(※CiNii連携対象のみ)。 文化財報告書類への掲載論文は、これまでCiNii Articlesで検索できなかったので、論文を発見しやすくなりアクセス性が高まります。 今回の一括登録では、時代などの属性情報は対象外です。属性情報は今後対応予定です。 文化財論文ナビ https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/search-ar
2021年3月17日、全国遺跡報告総覧内に文化財論文ナビを公開しました。 ■概要 全国遺跡報告総覧内に文化財論文情報を登録できるようにいたしました。登録されたデータは、文化財論文ナビとして、時代や種別、テーマごとに論文を検索できます。登録されたデータは、全国遺跡報告総覧からIRDBを通じてデータ連携し、CiNii Articlesで検索できるようになります。 文化財論文ナビでは、論文・報告・総括・資料紹介・事業報告等をすべて総称して論文と呼称しています。 公開日:2021年3月17日 名称:文化財論文ナビ URL: https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/search-article ■背景 国立国会図書館においては、効率的に情報を入手できるよう『雑誌記事索引』が作成されています。そのデータは国立情報学研究所が運営するCiNii Articlesに連携さ
2020年11月 日本古代宮廷の「男同士の絆」を研究しています。ホモソーシャリティと呼ばれもする、男同士の親密な関係性が、日本古代の史料にどんな風に出てくるのかが研究の最初でした。研究テーマとしては、結構無謀なのですが、実際に史料を読んでいくと、意外なほど記述が見つかります。 このホモソーシャリティは、友情や師弟関係も含むので、かなり広い意味合いがある言葉なのですが、日本史ではなかなか研究されてきませんでした。しかし、『万葉集』や『日本書紀』、『続日本紀』をはじめとした史料を読んでいると、思わず想像してワクワクするような親密な関係性が驚くほどたくさんあります。 例えば、『万葉集』4巻の572首には、満誓(まんせい)という沙弥(しゃみ、僧)が大宰帥(だざいのそち)であった大伴旅人(たびと)の帰京後に贈った歌として、 「まそ鏡 見飽かぬ君に 後れてや 朝夕(あしたゆうべ)に さびつつ居らむ」
2020年10月20日、全国の発掘調査報告書の書誌情報13583件を全国遺跡報告総覧に一括登録しました。 対象は、以下の通りです。 〇国立国会図書館が収集した報告書書誌 2002年9月から発掘調査報告書には固有の分類を付与されており、NDC(日本十進分類法)=210.0254に該当するもの。「発掘調査報告書」の基準は「発掘(又は試掘)調査報告書」とあるもの、抄録があるもの、とされています。ただし「抄録集」「調査説明資料」は除きます。 〇奈良文化財研究所が収集した報告書書誌 奈良文化財研究所所蔵報告書のうち、東京都・鳥取県・奈良県・富山県・福岡県分の書誌情報。 既に大阪府・兵庫県・島根県・高知県分は登録済みです。 発掘調査報告書の状況把握や、抄録やPDF付加の際の基礎データとなります。 また、書誌情報があることで、データ入力の際の省力化が見込まれます。 発行機関一覧 (都道府県別) http
以下の2つの機能を公開しました。より網羅的なテキスト全文検索を目指します。 キーワード検索時に類義語およびOCR誤認識用語(表記ゆれ)の登録がある用語の場合、検索結果にチェックボックスが表示されます。 〇類義語を含めた検索 専門用語の使い方は、専門家の認識や研究史に基づきます。ただし研究成果を社会に普及する観点からは検索性を確保する必要があります。そこで用語の類義関係を整理し、内部にシソーラスを構築することで、類義語も含めて検索できるようにしました。 〇OCR処理の誤認識用語を含めた検索 印刷物からスキャンした報告書データは、OCR処理によってテキストデータ化されています。しかし、似ている漢字については誤認識される場合があります。 例) 石と右、文と丈 その場合、全文検索で検索結果に漏れが生じることになります。 そこで誤認識されやすい漢字をとりまとめ、専門用語と突合することによって、表記ゆ
2019年2月 平城宮跡資料館では、毎年秋に「地下の正倉院展」で木簡の実物を展示しています。けっして見栄えする遺物とはいえない木簡ですが、来場者の方からは、毎年必ずと言っていいほど「木簡の文字がきれいで、読みやすくて、感動した」という感想をいただきます。 奈良時代の出土文字資料の中には、時に目を見張るほど端正なものがありますし、毎年の正倉院展に出陳される奈良時代の写経も、徹頭徹尾統一された美しい書に頭が下がる思いがします。奈良時代に、そのように美しい文字を書くことが求められた代表的な人々といえば、造東大寺司(ぞうとうだいじし)下の写経所に所属した写経生たちがあげられます。写経生たちは、どうしてこのようにきれいな文字を書けたのでしょうか。 今回は写経生の採用試験を例に、奈良時代の美しい文字、その裏側をご紹介します。 (図1)は、試字(しじ)と呼ばれる写経生採用試験の答案の一例です。巧拙を問う
様々な学術情報資源を同一のインターフェースで検索できるディスカバリーサービスの1つであるPrimoと全国遺跡報告総覧でデータ連携を開始しました。 Primoから全国遺跡報告総覧を検索することができます。 Primo導入機関におかれましては、ぜひご活用ください。 Release Notes New Electronic Collections November 2018 https://knowledge.exlibrisgroup.com/Primo/Content_Corner/Release_Notes Primoについての詳細は以下をご覧ください。 http://www.usaco.co.jp/itemview/template44_1_411.html
全国遺跡報告総覧について、下記の機能を公開しました。 ○モバイル端末向けPDFの公開 概要:報告書PDFをモバイル端末向けに自動圧縮して表示します。 例)宮崎市文化財調査報告書『高岡麓遺跡第37地点』 https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/22486 ○背景と効果 全国遺跡報告総覧のアクセスログの分析から、以下の特徴があることが分かりました。 ・平日の9時から19時まではパソコンからのアクセスが多い ・平日19時以降及び休日は、パソコンとモバイル端末の利用比率が半々となる 平日の9時から19時までのパソコン利用は、調査研究等の業務的な利用が多いと考えられます。 一方、平日19時以降や休日のモバイル端末からのアクセスは、学習や私的な利用によるものが多いと想定されますが、モバイル端末での閲覧には、通信速度や通信量などがネックになります。 そこで、モバイル端
新木簡データベース「木簡庫(Wooden Tablet Database)」の公開(http://mokkanko.nabunken.go.jp/)に伴い、1999年以来公開してきました従来の「木簡データベース」、及び2005年公開の文字画像データベース「木簡字典」の公開を、来る6月25日(月)をもって終了することになりました。 永らくのご愛顧に心から感謝申し上げますとともに、「木簡データベース」と「木簡字典」同様、新しい木簡データベース「木簡庫」をますますご活用いただければ幸いです。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。 史料研究室
よくある質問 サイトポリシー リンク Copyright© Nara National Research Institute for Cultural Properties, All Rights Reserved.
2018年3月 キトラ古墳には現存世界最古とされる本格的な天文図が残されています。今回は、この天文図(以下、キトラ天文図)に描かれた星のうち、どれが古代の北極星にあたるのかを考えてみましょう。 キトラ天文図は、図の中央が天の北極にあたり、そこにはその名も「北極」という名の中国星座が描かれています(以下、星座名の「北極」には「」を付します)。この「北極」について、684年に編纂された『晋書』の天文志では、「北方にみえる星の中でもっとも尊い星座」で、帝王・皇太子・庶子の星を含む、とされています。また、『宋史』天文志には、「北極」の5星は、帝・后(きさき)・妃(ひ)・太子・庶子である、とも記されており、天帝とその家族の星座と考えられていたようです。 ここで、中国の星座「北極」について、その特徴をまとめておきましょう。「北極」は、『晋書』天文志以降、清代に至るまで「5つの星からなる」とされています
2017年8月 人は食べられなければ生きていけません。博物館施設での展示においても昔の料理や郷土料理の紹介は来館者に人気の高いテーマの一つであり、平城宮跡資料館でも奈良時代の貴族の食膳を復原したコーナーは人気があります。「こんなものを食べていたのか」という驚きであったり、親近感であったりを感じられるのは、誰にとっても食事が日常の一コマだからでしょう。 さて、調理法の基本のキの一つは"ゆでる"です。魚やドングリをとっていた縄文時代でも、多彩なインスタント袋麺が並ぶ現代でも欠かせない調理法です。漢字では「茹でる」と書き、正倉院文書に残る写経所への食材配給の記録に「薪一荷 大豆茹料」や「薪十束 二束麦茹料」、市での買物記録に「羹茹料」などの表記が見られます。薪は燃料ですし羹は汁物料理なので「茹」も現代と同じ意味に見えますが、実はこれがなかなか曲者なのです。漢字発祥の国である中国ではこの字を"ゆで
2017 年2月、「全国遺跡報告総覧」の約19000件の発掘調査報告書のメタデータがOCLC OAIsterデータベースに搭載されました。Worldcat.org、WorldCat Discovery Services上で検索できるようになりました。
2017 年2月3日(金)より世界最大の書誌データベースであるWorldCatとデータ連携を開始しました。 WorldCatの検索結果画面から奈良文化財研究所の全国遺跡報告総覧に画面遷移し、収録する発掘調査報告書の PDF をダウンロードできるようになります。
改造前に戻すか 新築か 「ふくげん」された平城宮(奈良市)の大極殿。今回は、この「ふくげん」という言葉について考えたいと思います。 この言葉の誕生は近代で、比較的若い言葉です。でも、ひとことに「ふくげん」といっても意味の範囲は広く、漢字も「復元」と「復原」の二つがあります。辞書では、どちらも「もとの姿に戻すこと」(日本国語大辞典)とありますが、どう違うのでしょうか。 文化財の世界では、「復元」は遺跡で発掘される建物の痕跡(遺構)から、上部構造を考えることを意味します。各地の遺跡で竪穴建物や古代建築が建てられ、近世城郭の天守や御殿なども「復元」されています。いわば、新築の建物に「ふくげん」するのです。 これに対して「復原」は、文化財建造物の修理の際に用いる言葉です。多くの場合、建物は長い年月の間に増改築や改造が行われています。「復原」は建物の改造の痕跡をもとに、改造前の姿に戻すことを意味しま
2016年10月 灰色文献と言っても、本が灰色なわけではありません。書店で簡単に購入できたり、多くの図書館に所蔵されたりしていて、誰でも読むことができるのが白色文献、関係者以外まったく入手できないか存在自体が公表されていない文献を黒色文献と呼ぶ時に、その中間にあたるのが灰色文献です。 考古学の分野には灰色文献がたくさんあります。遺跡について詳しい情報を提供している発掘調査報告書は発行部数が少なく、公共図書館にはほとんど所蔵されていません。考古学に関する論文も、大規模な学術誌だけではなく、歴史好きな人たちが同人誌のような小規模な雑誌に投稿しているものもあり、発行部数が少なく流通範囲も狭いために入手が困難となっています。他の文献で引用されたり、参考文献として挙げられていても元の文献を見ることが難しいこれらは、灰色文献と呼んでいいでしょう。 奈文研では考古学分野での灰色文献を減らすために、文献へ
「新発見の木簡-7世紀に遡る最古級の伝世品-東京国立博物館で初公開」 を学術情報リポジトリで公開しました。 本文をPDFで閲覧いただけます。 https://repository.nabunken.go.jp/dspace/handle/11177/5795
2016年6月 昨年は流行語大賞に「刀剣女子」がノミネートされるなど、日本刀ブームが世を賑わせました。博物館の日本刀展示コーナーにも多くの若い女性の姿が見受けられ、「古墳時代の刀剣」を主な専門分野とする筆者は、刀剣への注目度が上がることを密かに喜んでおりました。ところが悲しいかな、筆者が研究対象とする古墳時代の刀は、土の中に埋まっているうちにすっかり錆びてしまっていて、刀身の輝きや刃紋といった刀独特の美しさは見る影もありません。擬人化したところで満身創痍の老侍にしかならない古墳時代の刀は、刀剣女子に一顧だにされない存在なのです。 しかし古墳時代の刀は、刀身が錆びてしまったからといって、決して魅力を失ってしまったわけではありません。ここでは、あまり顧みられることのない古墳時代の刀の楽しみ方について、解説してみたいと思います。 「刀」が日本列島に出現するのは弥生時代。次の古墳時代には次第に主流
更新情報 ・2021年12月24日 ツキノワグマを公開しました。 ・2021年11月17日 イヌの手骨格・足骨格を公開しました。 ・2021年6月25日 特集:かたちの比較を公開しました。 ・2020年3月11日 アシカを更新しました。 ・2020年3月18日 ウシを更新しました。 ・2018年12月10日 イヌ、イノシシを更新しました。 ・2017年11月7日 ヒト、ニホンジカとウマを更新しました。 ・2017年2月10日 ヒトとウマを更新しました。 本データベースについて 環境考古学研究室では、これまで松井章元埋蔵文化財センター長を中心に、遺跡から出土する動物骨を分析するために必要不可欠な現生動物の骨格標本を精力的に収集し、それらを基にして『動物考古学の手引き』(奈良文化財研究所)や『動物考古学』(京都大学学術出版会)において、現生動物骨格図譜を公開してきました。しかし、実際に国内外の
様々な学術情報資源を同一のインターフェースで検索できるディスカバリーサービスの1つであるSummon(サモン)が、全国遺跡報告総覧に対応しました。 Summon導入機関におかれましては、ぜひご活用ください。 Summonについての詳細は以下をご覧ください。 http://www.sunmedia.co.jp/e-port/serialssolutions/summon/ ※他のディスカバリーサービスの提供元に対しても現在対応を依頼中です。
2014年12月 私が所属する史料研究室の主な仕事に、木簡の解読があります。今とほとんど同じ漢字を使っているとはいえ、およそ1300年前の人びとが書いた文字を読み解くのは、なかなか一筋縄ではいきません。私が出会った中で印象に残っている木簡を1点、ご紹介したいと思います。 その木簡は、平城宮第一次大極殿院西辺から出土した、但馬国二方郡(ふたかたぐん:現在の兵庫県美方郡新温泉町付近)の荷札です【写真】。物品名は見えませんが、米の荷札と考えられています。 荷札の裏面には、納めた人の名前が書かれています。はじめは、「委直馬弖」(やまとのあたいうまて)と読んでいました。1文字目を、「倭」の人偏を省略した字形と読んだのです。確かに、全体的な雰囲気は「委」に似ています。しかし、どうもおかしい……。 「委」であれば、二画目が横に長く通るはずです。ところが横画はさほど明瞭ではなく、しかも左右にちょんちょんと
2014年11月 あなたは博物館・美術館で展示を見ることは好きですか? 私は、奈良文化財研究所の展示施設である飛鳥資料館で働いています。資料館の仕事は年数回行われる特別展・企画展の準備のほか、常設展示の管理、収蔵資料の整理、収蔵庫などの維持・整備、来館者の案内、文化財の調査・研究など、実に多岐に及びます。こうしたさまざまな仕事のなかでも、特に関心を持って取り組んでいるのが、やはり文化財の展示に関するものです。 展示とは、文化財のほか、さまざまな「もの」を並べて多くの人々に公開することです。文化財の展示を行う上で、さまざまな分野の知識・経験が必要になります。考古学、歴史学、建築史学、文化財科学などによって培われてきた文化財そのものの歴史的背景や位置づけに関する研究成果のほか、展示室の設備を整えるための設計・造作やより魅力的な展示空間を造るためのデザインなども関わってきます。そのため、研究者以
横着が生んだ かなとカナ 左の木簡の写真、漢字に交じってカタカナの「ア」や「マ」のような字がみえますね(矢印部分)。でもこれはカタカナではありません。「部」という漢字を省略した文字なのです。 古代人の名前は、左の木簡に書かれた物部(もののべ)や漆部(ぬりべ)、日下部(くさかべ)のように、〇〇部という姓が多く、「部」は書く機会の最も多い字でした。このため、「部」の字を毎回きちんと書くのが面倒になり、偏を省略して、旁(つくり)の「阝」だけで「部」と読ませるようになりました。最初は「阝」を「ア」のように書いていましたが、書いているうちにこれも面倒になったのか、さらに二画目を短くして「マ」と書くようになりました。 古代の木簡を見ると、7世紀には主に「ア」が(写真1)、8世紀になると「マ」が使われていて(写真2)、「ア」から「マ」へと変わったことが分かります。 その後、平安時代になると、さらに省略が
ほんとに読めた? 奈良時代のお経。1点1画が丁寧に書き写され、大きさもほぼ均等で、まるで活字のようです。奈良時代の人たちは、みなこのように美しく整った字を書いたのでしょうか。 全国各地から平城宮へ運ばれた荷札の文字をみてみましょう。写真1の木簡は、お経のように整った文字の木簡です。でも、このように上手な文字の木簡はめずらしく、お世辞にも上手とはいえない木簡がたくさんあるのです。 下手な字の代表は写真2の木簡。最初の文字の「上」は何とか読めますが、続く文字はなかなか難解です。答は「坂」「郷」「戸」「主」で、次の2文字はどうしても読むことができません。 もう1点、写真3の木簡は、大きな文字で「幡磨国宍粟」と書かれていますが、「磨」の文字が「麻」と「石」の2文字あるようにみえます。みなさんが使っている漢字練習帳のマス目には、到底おさまらなくて、先生に注意されそうです。 こんな文字を書いても、許し
『奈良文化財研究所紀要2011』(Bulletin of National Research Institute for Cultural Properties, Nara)を電子公開しました。 本文をPDFで閲覧いただけます。 https://www.nabunken.go.jp/publication/kiyo.html 目次 Ⅰ.研究報告 企画調整部 平城宮跡資料館 リニューアルの一年 漢魏洛陽城 -北魏宮城西南隅の発掘調査- カンボディア・アンコール遺跡群西トップ遺跡の調査―第11次・第12次・第13次― カンボディア・アンコール遺跡群西トップ遺跡の建築調査 -2010年度の成果- カンボディア・アンコール遺跡群西トップ遺跡出土炭化木材の樹種と年代 フィジー諸島共和国におけるESDの調査と実践-サステイナブル・ツーリズムと景観保全- 文化遺産部 都市を文化的景観として見 ること ―
調理法示す包丁の跡 写真の骨は、真鯛(まだい)の主上顎骨(しゅじょうがくこつ)という頭の骨です。藤原宮の造営時に掘られた運河に棄(す)てられていました。約2センチ・メートルの小さな骨で、運河跡の土をフルイにかけて見つかりました。 この骨を顕微鏡で観察したところ、包丁で切断した痕跡を確認できました。どうやら真鯛の頭を包丁で細かく割って、汁物などのダシをとったようです。 それでは、真鯛の身はどのように食べたのでしょうか。万葉集には「鯛を醤(ひしお)と酢に蒜(ひる)をつき混ぜて食べたい」という歌が残されています。ただし、この鯛は、刺し身なのか焼き魚なのか不明です。 そこで、遺跡から見つかった寄生虫卵を調べてみると、鯉(こい)や鮎(あゆ)などの魚を生で食べたことがわかりました。このことから、魚を生食する習慣が藤原京や平城京に広く存在していたと考えられます。 木簡にも真鯛の調理方法が記されていますが
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『奈良文化財研究所ホームページ』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く