間もなく、パリ五輪が始まる。前回の東京五輪を巡っては、招致における汚職が次々と明らかになり、「誰のための大会なのか」という問いがいまだ宙に浮いたままだ。そして、そもそもこうした巨大スポーツ大会がどうしても持ち得てしまうナショナリズムの高揚に、違和感を覚えてきた。開催国や参加国が内外で続ける人権侵害を覆い隠してしまう、「スポーツウォッシュ」の問題も指摘されて久しい。 ただ、スポーツそのものが嫌いなわけではない。現にこの1年ほどは、ボクシングの練習を続けている。そこから改めて見えてきたのは、ジェンダー格差の問題だった。 今年5月、井上尚弥選手が東京ドームでの試合で、ルイス・ネリ選手に素晴らしい勝利をおさめた。メディアでは「日本人初の世界5階級制覇へ」という文言が躍った。ちょっと待ってほしい。その「世界5階級制覇」であれば、私がボクシング指導を受けている藤岡奈穂子さんが、2017年の時点で達成し