訳者あとがき――NY州知事の緊急表明を訳して ニューヨーク市は、私が大学を卒業してからもっとも多く訪れたアメリカの街だった。国連本部に用があったため、マンハッタンを出たことはなかったが、人種のるつぼの国際都市NYにいると、本当に「国際人」という人種になった錯覚をおぼえる。 NGO活動のためだったので、一番時間を過ごしたのは国連プラザ前のNGO集合ビルなのだが、NYに本部を置くNGOのオフィスに行くたび思ったのは、やはりその多様性だった。人種的に多様なだけでなく、ジェンダーも多様、男女両方の同性愛者もいる。それを咎める空気はまるでない。 "This is New York"という表現は、映画の中なんかだとネガティブなイメージでつくられることが多い。ここは人びとが無関心なNY、非情なNY、治安の悪いNYといった具合に。だが同時に、「ここはNYだ。他の偏狭な街と一緒にするんじゃない」という自負が