サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
大谷翔平
ameblo.jp/t-kazuo
オバマの“クォーターバック” エマニュエル大使のルーツはウクライナの港湾都市オデーサにある。そこから、祖父が1905年にパレスチナに移民した。薬剤師だった。父親のベンジャミンは、小児科医でイスラエルからアメリカに移民した。アメリカのユダヤ人の一部は、イスラエルからの移民である。そもそも他の国からイスラエルに移民して、それからアメリカに移民する者、イスラエルで生まれてアメリカに移民する者、そしてアメリカからイスラエルに移民してアメリカに戻る者など、その内訳は様々だが。現在アメリカには総数で20万人ほどのイスラエル系ユダヤ人が生活している。 父親のベンジャミンは、国家が成立した1948年までは、イルグンというユダヤ人の地下軍事組織の一員だった。イルグンはパレスチナを統治していたイギリスが使用していたエルサレムのキング・デービッド・ホテルの爆破や当時はエルサレムの郊外だったパレスチナ人のディール
『月刊マスコミ市民』(2023年12月号)2~13ページに、「イスラエルによる構造的テロで爆発したハマスのテロ」として掲載されたインタビューです。同誌の許可を得てアップします。 ----------------------------------------------- イスラエルとハマスの戦いが続いているが、多くの人びとはユダヤとアラブとの歴史をわからないまま戦争の行方を追っているのではないだろうか。世界最古の都市の一つであるエルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地とされているので、パレスチナ問題は宗教紛争だと思いがちであるが、実はそうではないようである。 国際政治学者で中東問題の専門家である高橋和夫さんに、ユダヤとパレスチナの歴史、そして今日の紛争について解説していただいた。聞き手は本誌の石塚さとし編集委員。 ■ハマスのテロは構造的テロへの反発 ――イスラエルとパレスチナ
ガザの事態を憂慮し、即時停戦と人道支援を訴える中東研究者のアピール 中東のパレスチナ・ガザ地区をめぐる情勢が緊迫、深刻化しています。私たちは、中東の政治や社会、歴史、中東をめぐる国際関係等の理解、解明に携わってきた研究者として、また中東の人々やその文化に関心を持ち、中東の平和を願ってさまざまな交流を続けてきた市民の立場から、暴力の激化と人道的危機の深刻化を深く憂慮し、以下のように訴えます。 一、 即時停戦、および人質の解放 二、 深刻な人道上の危機に瀕しているガザを一刻も早く救済すること。ガザに対する攻撃を停止し、封鎖を解除して、電気・水の供給、食糧・医薬品等の搬入を保証するこ と。軍事作戦を前提とした市民への移動強制の撤回. 三、 国際法、国際人道法の遵守。現在進行中の事態の全局面において人道・人権に関わる 国際的規範が遵守されることが重要であると共に、占領地の住民の保護、占領地への入植
イスラエルのガザへの陸上侵攻を前に、とりあえず、インタビュー風に解説してみました。 ■2023年10月7日にハマスがイスラエルに対して、陸、海、空からの複合攻撃をかけかけました。3500発から5000発のロケット弾攻撃、壁を打ち破っての、イスラエル支配地域への侵入と破壊、人質の確保など、量質ともに、かつてない規模の奇襲攻撃を行いました。このハマスの攻撃の理由と目的は? 一番の理由は、ハマスが自分で言っているように、エルサレムの聖地、アルアクサ・モスクがイスラエル人に汚されてきたことへの怒り、それから、ヨルダン川西岸地区におけるパレスチナ人に対する人権を無視したイスラエル側の行動、そして、ガザの封鎖が続いているという状況、こうした状況に対する怒りが爆発したと見ています。 この点が、日本で十分に報道されてこなかったので、唐突感を覚えておられる方が多いようです。ガザは、いつか爆発すると予想してい
ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問の解説を幾つか読んでいて、分析に欠落感を覚えましたので、自分で書いてみました。 なお選挙区の重要性に関しては辛坊治郎さんがサラっと言及していました。流石(さすが)だなと思いました。 中間選挙前に アメリカ連邦下院議長の民主党のナンシー・ペロシ議員が8月2日台湾を訪問した。翌3日ペロシ下院議長は、台湾の蔡英文総統と会談し、その後の共同記者会見で、従来の「1つの中国」政策は堅持するとした上で、「台湾との連帯はかつてないほど重要だ。われわれは現状維持を支持している。武力によって台湾に何かが起きることは望んでいない」と語った。そして、その日のうちに台湾を離れた。 アメリカ議会の要人の台湾訪問に中国政府は強く反発し、台湾周辺での大規模な軍事演習を開始した。この訪問の意味や意義に関しては様々な評価がある。ここでは、評価ではなく、なぜ、今、ペロシ議長が台湾を訪問したか
ロシアのウクライナ侵攻を受けて、多くの人々が第二次世界大戦中のソ連とフィンランドの戦争を思い出しています。孤立無援の中で勇敢に戦ったフィンランド人の勇気を現在のウクライナ人の姿に重ね合わせています。当時のソ連軍と現在のロシア軍の類似性にも驚かされます。拙著『世界の中の日本/グローバル化と北欧からの視点』(放送大学教育振興会、2015年)の第2章「戦うフィンランド」27∼50ページで、フィンランドの戦いについて紹介しました。その微調整版をアップいたします。 --- 「カレリア----。それはフィンランド民族の魂の土地だわ。民族詩カレワラが歌われた伝説の地よ。シベリウスの音楽はカレリアへの愛からうまれた。霧と沼、白樺と岩肌・・・」 アノイの言葉『霧のカレリア』から 霧のカレリア フィンランドの歴史を語って、感情的にならないのは難しい。その歴史を振り返ると、国際政治の冷厳な現実に直面せざるを得な
ウクライナ情勢を見ているとロシアのウラディミール・プーチン大統領の片思いが目につく。同大統領はロシアとウクライナは一体と考えているようである。ところが、ウクライナ人の多数派は、どうも同意していない。ウクライナの独自性を主張し、独立を守るために命を賭けて戦っている。 両者のギャップの理由は多いが、その一つは間違いなく1930年代の経験である。1929年以降の大恐慌で資本主義諸国が大不況にあえぐのを横目に、ソ連が着実な工業化を実現した時代である。ソ連は、その工業化の推進のために欧米からの機械設備の輸入が必要だった。どうやって、その輸入代金をまかなったのだろうか。それは、穀物の輸出によってである。豊かな穀倉地帯のウクライナの小麦が輸出され、ソ連の工業化を支えた。その工業力が1940年代のドイツとの戦争での勝利をもたらした。 しかし、当時の独裁者・ヨセフ・スターリンは、小麦の輸出量を増やすためにウ
最近のウクライナ情勢を踏まえ、拙著『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)第8章「プーチンのロシア」章、110∼125ページの関連部分を改訂した。関連図表は、上記の拙著に対応したテレビ教材からである。 --- ロシアと東欧諸国/安全保障のディレンマ ロシアの脅威認識の源泉 ロシアというのは不思議な国である。周りの国には軍事大国として恐れられているのに、周辺諸国から自国が脅かされていると考えているからである。その不思議さを説明するのは、繰り返し侵略を受けて来た被害者としてのロシアの歴史である。 現代のロシアを大きく規定する経験は第二次世界大戦である。当時はソ連であった。このソ連は1939年9月の第二次大戦の開戦時にはナチス・ドイツと不可侵条約を結んでいた。そしてドイツと共にポーランドを分割した。しかし2年後の1941年6月に、そのドイツがソ連を奇襲した。ナイフでバターを切るように
イスラエルと中国の関係が米国をいら立たせている。 近年、中国の中東進出が目立つ。その中でもイスラエルとの関係が深まっている。たとえば両国間の年間の貿易額はすでに1兆5千億円を超えている。イスラエルの中国への輸出で重要なのはハイテクである。これにワシントンが神経質になっている。ワシントンでの対中警戒感の高まりから、だんだんと米国などからのハイテクの導入がむずかしくなっている中国は、その埋め合わせでもするかのように、イスラエルからハイテクの輸入を増加させている。 イスラエルのハイテク産業は米国との関係が深い。結果としてイスラエルという裏口から米国のハイテクが中国に流れている。少なくとも米国は、そう認識している。そしてこれが、米国・イスラエル関係の摩擦要因となっている。イスラエルが輸出するハイテクによって中国軍が強くなるからである。将来、米国と中国が台湾を巡って衝突する場合、イスラエルが提供した
守強硬派のライシ師が選ばれました。アメリカとの対立は深まるのですか。 この問題の核心にあるのが、まさにイランの核問題です。では、核問題とはなんでしょうか。 イランが密かに行っていた核開発が暴露されたのは2002年でした。イランは平和利用だと主張しましたが、アメリカなど各国は軍事転用を疑いました。そしてイランに対して経済制裁を科しました。しかし、09年にアメリカでオバマ政権が誕生すると、イランとアメリカなどの間で交渉が始まり、15年にイランと諸大国が核合意に署名しました。諸大国とはアメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシアの国連安全保障理の5常任理事国とドイツの6カ国です。合意のポイントは、一方でイランは核開発に大幅な制限を受け入れる、他方で各国は経済制裁を止める、でした。 ところが18年にトランプ大統領が合意から一方的に離脱しました。そして経済制裁を再開・強化しました。これによってイランは
日本で一番多く接種されている新型コロナウイルスワクチンは、アメリカのファイザー製である。しかし、じっさいにワクチンを開発したのはファイザーと提携しているドイツのビオンテック社である。同社のトップはトルコ系移民の2世であるウール・シャヒーンである。 シャヒーンは、1965年にトルコの地中海岸の都市イスケンデルンで生まれている。シリアに近い都市である。イスケンデルンとはアレキサンドリアと言う意味である。古代にアレキサンダー大王が、アケメネス朝ペルシア帝国の大軍を付近のイッソスで撃破した。その勝利を記念するために、この都市が建設された。 アレキサンダーは支配地域にみずからの名を冠した多くの都市を建設した。つまり、多くのアレキサンドリアがあるわけだ。一番有名なのは、エジプト第二の都市で地中海岸の港町アレキサンドリアである。その他にも、アフガニスタンのカンダハルもうそうだ。ターレバンの根拠地として知
アメリカは、なぜイスラエルを支持するのだろうか。 昨年5月のガザに対するイスラエルの攻撃に、国連の安保理が何度も即時停戦を求める決議を採択しようとした。だが、その度にアメリカがそれを阻止した。安保理ではアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の5大国の1カ国でも反対すると決議は成立しない。この5カ国が拒否権を持っている。アメリカは、その拒否権でイスラエルを守り通した。その間ガザでは、イスラエルの攻撃の巻き添えで多くの子どもたちが殺された。なぜこれほどまでにイスラエルを支持するのだろうか。 それは、アメリカ国内にイスラエルを支持する人々がいるからだ。ユダヤ系の人たちのイスラエル支持は、良く知られている。アメリカには750万人のユダヤ系の人々が生活している。アメリカの総人口を3億3千万人とすれば、2・4パーセントに当たる。バイデン大統領は1970年代の議員への初当選以来、その支持を受けて歩ん
世界中に新型コロナウイルスの被害が広がり甚大な被害が出ている。多くの死者も出ている。にもかかわらず、このウイルスに救われた男がいる。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相である。といっても救われたのは政治生命の方である。 この政治家には幾つもの汚職疑惑がある。先月に、ついに起訴される予定であった。ところが、新型コロナウイルス騒ぎを受けて検察当局が、その延期を決定した。しばらく騒ぎは収まりそうもないので、ネタニヤフ首相の政治生命も、その間は生き延びることとなった。 しかも、この貴重な時間を使って同首相は、さまざまなポストを餌に野党の切り崩しのための手を打っている。首相が狙っているのは、取りあえずは起訴で有罪となっても首相の座にある限りは逮捕されない特権を付与する法律の成立である。これが成立すれば、それだけ刑務所が遠くなる。運の強い政治家である。疫病までも味方につけてしまった。 さて、それでは
非常に優れた論考ですので、著者の牧田純平さんの許可を得てブログにアップします。 -------------- 1.石油産業における9.11 「これは石油産業における9.11だ」 ドローンが、世界のエネルギー供給に激震をもたらした。2019年9月14日、サウジアラビアのアブカイクにある石油精製施設及びクライス油田がドローンによる攻撃を受けて炎上、石油生産量が半減するほどの被害が生じ、石油市場だけでなく世界経済に動揺が走った。 日本では主に石油価格の変動に注目が集まっていたが、ドローンという一兵器が世界経済全体を揺るがすほどの被害を生じさせたという点で、ドローンの軍事利用という観点からも非常に注目すべき事件である。また、アメリカ-イラン間の交渉が継続中の最中で発生した攻撃事案であることから、中東情勢に与える影響という観点からも目を外すことが出来ない事案である。 こうした重大な事件であるがゆえに
重要かつ優れた論考ですので、著者の牧田純平氏の許しを得て、ブログにアップさせていただきます。 ドローンとイエメンに興味のある方には必読の文献かと判断しています。 -------------- 1.激化するドローン戦争 「この攻撃は、300カ所の重要施設に対する攻撃の始まりに過ぎない」 フーシ派によるドローン攻撃の激しさが、かつてないレベルに達している。2019年5月11日、サウジアラムコの石油圧送施設に対して、フーシ派はドローンを用いた攻撃を実施、施設の一部で火災が発生し、同施設の操業を4日間停止させた。冒頭の発言は、この攻撃事案の後、フーシ派の軍関係者の発言としてメディアで紹介されたものだが、この発言を裏付けるかのように、サウジアラビア-イエメン国境付近の都市に対し、フーシ派ドローンが連日のように攻撃を仕掛けている。 イエメンでは2015年以来、サウジアラビアらが支援するハーディ大統領派
6月26日と27日にマイアミで開催された討論会に注目が集まった。民主党の2020年の大統領候補者の指名を求める候補者間の討論会だった。 24人の立候補者の内の20人がテレビ討論会に招かれた。10人ずつの2夜にわたる討論会であった。この中でトップを走っていたのが、抜群の知名度を誇るジョー・バイデンであった。バイデンは、オバマ期の副大統領だった。 ところが人種問題に関する過去の行動をカリフォルニア州選出のカマラ・ハリス上院議員に叩かれた。ハリス議員は女性でアフリカ系である。バイデンは十分な反論ができず、つまづいた。これで、バイデンの指名獲得が当然視されていた雰囲気が一変した。民主党の候補者選びは、ますます混沌としてきた。 残りの候補者の中で最も知名度が高いのが、2016年の民主党の大統領候補選びの予備選挙でクリントン国務長官を脅かしたバーニー・サンダースである。 サンダースとはどのような人物な
トランプは孤立主義的であり、対外軍事関与を嫌っている。この人物の2016年の大統領選挙のスローガンは「アメリカ・ファースト」であった。その意味は米国の国益が最優先である。具体的には、死活的な国益がかかっていない場所では米軍の将兵が血を流さないという意味である。 トランプの選挙での勝因の一つは、01年に始まった対テロ戦争への国民の疲れである。想像してほしい。同時多発テロに襲われて以来、米軍はアフガニスタンで、イラクで、シリアで戦い続けている。01年といえばイチローが大リーグで活躍を始めた年である。そのイチローは18シーズンを経て、今年3月に引退を表明した。ところが米軍の戦争は、19年目に入っている。いかに長く米国が戦い続けて来たか分かるだろう。アメリカ・ファーストというスローガンが有効だったはずである。16年の大統領選挙ではイラク戦争を支持したライバルたちを、このスローガンでなぎ倒した。共和
トランプ大統領は、主に、白人労働者の不満の受け皿になって熱狂的な支持者がいる。それに対抗する、別の受け皿も、アメリカの中で育っている。こうした動きに対して、メディアは、どんな反応を見せているだろうか。 一例をあげようイギリスの高級紙『フィナンシアル・タイムズ』紙が、民主党にとって「危険」だと警告している。同紙によれば、2016年の大統領選挙では民主党は勝っていた。事実、総投票数ではクリントン候補がトランプ候補を上回っていた。にもかかわらずアメリカの大統領選挙制度の特異性がトランプに勝利をもたらした。であるならば、民主党は変わる必要はない。これまで通りでも勝てる。求められるのは、より巧みな選挙戦術である。余りに左に寄ると、一番多くの有権者のいる中間層を失うリスクを冒すことになる。といった論調である。金持ちの読む新聞らしい論調である。 さて日本でも格差が広がっているのに、こうしたアメリカのよう
そして、その種が芽を出し始めた。今さらに、少しずつ花開いているわけだ。その例を、もうひとつ紹介しよう。ミシガン州の第13区の民主党の予備選挙でイスラム教徒の女性のラシダ・トリ―プ氏が勝利を収めた。女性のイスラム教徒が下院議員になれば、初めてのことである。これまで2人のアフリカ系つまり黒人のイスラム教徒男性が当選した例はある。だが女性のイスラム教徒の議員はいなかった。 さらに、このトリ―プは、パレスチナ系の人物でもある。トリ―プの両親は、ヨルダン川西岸地区からの移民である。パレスチナ系の下院議員も、史上初である。この選挙区では民主党が圧倒的に強いので、共和党は対立候補を擁立しないと予想されている。従ってトリ―プの当選が確実視されている。 トリ―プがパレスチナ系なので、既にイスラエルに厳しい政策に賛同するのではないかという懸念が、ユダヤ系の人々の間で抱かれているようである。 ただ、地方選挙の最
さて現在のアメリカと中国の関係は、どうだろうか。既存の超大国アメリカに対して新興の大国である中国が、さまざまな面で挑戦している。戦争が懸念される。というのがアリソンの議論である。 もちろん反論も存在する。過去の例は、必ずしも参考にならない。なぜならばアメリカも中国も核兵器保有国だからだ。これが戦争への抑止力になる。その証拠に米ソの対立は戦争に転化しなかった。戦争になるかどうかは別としても、中国とアメリカの関係がむずかしい段階に入っている。アリソンの著作は、そのむずかしさを反映している。 こうした本が読まれている背景には中国への失望がある。中国の将来に関しては20世紀末から二つの見方があった。パンダ派とドラゴン派である。パンダ派は豊かになれば、中国も欧米諸国のように民主化して柔らかくなるだろうと予想した。かたやドラゴン派、つまり龍派は、共産主義一党独裁体制が強くなるだけであると見通した。結果
国際社会の大きな反発を呼んだ突然の認定。トランプ大統領はなぜいま決断したのか。 エルサレムをイスラエルの首都と認めるトランプ大統領の決断が、世を騒がせている。なぜ、このタイミングなのだろうか。この点に絞って論じたい。なぜならこのタイミングこそが、その理由を理解するカギだからだ。 エルサレムには3宗教の聖地がある。ユダヤ教の「嘆きの壁」、キリスト教の「聖墳墓教会」、イスラム教の「岩のドーム」だ。それゆえ3宗教の信徒にとって、エルサレムは心のふるさとのようなものだ。 1948年にイスラエルが成立し、エルサレムを首都と宣言した。しかし国際社会は首都として認めず、主要各国は大使館をテルアビブに置いた。80年、イスラエルは東西に分かれていたエルサレムの統一を宣言したが、国際社会はそれも認めていない。 米国議会は95年、エルサレムをイスラエルの首都として承認し、同国大使館をエルサレムに移転するように求
9月に10日ほどアメリカ各地で取材した。その際に、いわゆるタクシーは一度も利用せず、すべてスマートフォンによる配車サービスに頼った。 スマホからアプリを通じて申し込むと、近くを走っている、あらかじめ登録されている車の運転手に連絡が入る。そして車が指定した場所にやって来る。支払はスマホで運営会社に行う。そして、その会社が運転手に報酬を支払う。アメリカでは面倒なチップも、額を指定してスマホで支払う。先発のウーバー社と後発のリフト社が競っている。仕組みは似通っているようだ。片方だけと契約している運転手もいれば、両社と契約している者もいる。 法的にはこうした会社と登録運転手はつねに雇用関係にあるわけではなく、客から要請があり、それに運転手が応じる間だけの契約となる。業界ではライドシェアと呼ばれている、と経済紙を読んでいて知った。 調べてみると、会社が手数料を取った残りが運転手に支払われる。客の支払
ドナルド・トランプ大統領はロシアに甘いという認識を持たれている。また中東ではイランと対決しサウジアラビアと接近しているとの印象を与えている。だが、この大統領ほどロシアとサウジアラビアに打撃を与えた大統領はいない。というのはトランプがアメリカのエネルギー産業に対する規制の撤廃に動いているからである。パイプライン敷設の許可、シェール・ガスと石油の生産に不可欠なテクニックである水圧破砕への規制の撤廃、アメリカのエネルギーの輸出の推進など、国内の生産者が望んでいた方向に米国のエネルギー政策を動かし始めた。 これによって国内のエネルギー生産に拍車がかかる形になった。米国はオバマ大統領期に石油と天然ガスの生産を上昇させて、サウジアラビアやロシアと並ぶ大生産国となった。国内消費が巨大なので、まだまだ輸出に回る部分は少ない。だが、やがてエネルギーの大輸出国とな人々で満席になると、本当に飛行機の中が窮屈に思
時代が、この本を呼んだのだろうか。クルド民族の動向に世界の注目が集まっている。シリアのクルド人は、いわゆるIS(「イスラム国」)との戦いの先陣を切ってきた。米軍に支援されてISの「首都」のラッカに突入している。またイラク北部のクルド人は、9月下旬に独立を問う住民投票の実施を発表している。 絶妙のタイミングでのクルド民族に関する出版である。だが、情勢に合わせて「作られた」本ではない。長期の取材の成果の結実が、クルド民族の歴史の大きな節目と一致しただけである。内容の濃さと文章に込められた思いの熱さが、その証明である。 本書の横糸は筆者の体を張った地を這うような取材の報告である。読者はイラク北部に存立しているクルド人の自治地域の現状に驚くだろう。そこには、独自の「国旗」を軍隊を言語をもった「ミニ国家」が広がっている。平和で安定し繁栄した世界がある。 そして本書を貫く縦糸はフセイン・アーリフという
過激派組織「イスラム国」(IS)のイラクの拠点モスルが陥落しそうである。そしてシリアにある拠点で「首都」とされているラッカの攻防戦が本格化している。ラッカ攻撃の主力はシリアのクルド人の組織YPG(人民防衛部隊)である。米国がYPGに装備と訓練を与えている。そして、攻撃を米空軍が支援している。クルド人が一番ラッカに近い位置に部隊を持っているという地理的な理由が、この支援の背景にある。 クルド人は、総人口が3千万人を超える民族である。しかしながらイラン、イラク、シリア、トルコなどにまたがって生活しており、いまだ独立という長年の夢を果たしていない。 そのクルド人に対する米国の支援はトルコの強い反発を招いている。トルコの人口の4分の1程度と推測されるクルド人は1970年代以来、分離独立を目指して断続的に武装闘争を行ってきた。その組織はPKK(クルド労働者党)として知られる。シリアのYPGとトルコの
シリア問題はシリアだけを見ていては語れない。そこで起きている現象は、単なる内戦ではない。 イラン、イスラエル、トルコなどの周辺諸国の介入があるからだ。またロシアと欧米という地域外の大国の関与がある。となるとシリア国内情勢に加えて、地域政治、そして国際政治という3つのレベルからの多層的な分析でなければ、錯綜する状況に太刀打ちできない。 こうした状況を一変させかねない変化がアメリカで起きた。いうまでもなくトランプ大統領の誕生である。この大統領の誕生とタイミングを合わせたように出版された書籍に依拠しながら、シリアをめぐる地政学を考えてみたい。 勧善懲悪ではない まずシリアに正面から取り組んだのが、青山弘之東京外国語大学教授の最新作『シリア情勢』(岩波新書・2017年)である。本書によれば、シリア情勢はアサド大統領が悪人で反体制派が善人という単純な勧善懲悪の物語ではない。しかも世界が期待を寄せてき
トルコの憲法改正に関する国民投票が本日行われる。トルコとの時差が6時間なので、日本時間では本日の午後に投票が始まる。投票数の過半数が賛成であれば、この憲法改正が認められ、大統領の権限が大幅に強化される。議院内閣制により象徴的な現在の大統領ポストが、米国のように強い権力を持つ実質的な存在に変わるのだ。 具体的には首相職が廃止される。そして大統領には閣僚や最高裁の裁判官を任命したり、大統領令を発したりする権限が与えられる。大統領の任期は2期10年まで。仮に憲法が改正されると、その憲法下での大統領選挙は2019年に行われることになり、今のエルドアン氏は29年まで在任するだろう。つまり、欧州と中東にまたがる国に、途方もなく強い権力を持った大統領が生まれる。米国型の大統領というよりも、ロシアのプーチン氏に近い存在にエルドアン氏はなるだろう。 ■人気の大統領 改正への賛否に関する世論調査の数値は拮抗し
第二次世界大戦の勝者は言うまでもなくアメリカとソ連であった。ほとんど国土は無傷で戦争中に生産力を急増させたアメリカと、国土のヨーロッパ部分の大半を占領されながらも、反撃してベルリンを占領したソ連であった。戦争が終わるとアメリカは即座に軍隊の動員解除を行った。父親を息子を夫を恋人を待つ故郷の人々の強い声にこたえる必要があったからだ。戦争が終わった以上、一刻たりとも猶予は許されなかった。最盛期には千万人を超えていたアメリカ軍の総兵力は、たちまち三十分の一に減少した。 ところがスターリン独裁下のソ連では、動員は解除されず大兵力が維持されていた。少なくとも西側は、そのように理解していた。つまり通常戦力の面ではソ連側の圧倒的な優位との認識であった。もし仮にソ連軍が西ヨーロッパに対して攻勢を始めれば西側には、これに通常戦力では対抗できない。したがって、西側は核兵器を使ってソ連軍の動きを止めるという戦略
11月の投票に向けてアメリカの大統領選挙が盛り上がってきた。ということは、現在のオバマ大統領の任期の終了が近づいているわけだ。 来年1月をもってオバマは2期8年の任期をまっとうする。この2期8年のオバマ政権の外交上の最大の成果は、おそらくイランとの核問題に関する包括的な合意であろう。これは、昨年の7月のイランとアメリカなどの主要大国6カ国との間の合意である。一方でイランは核開発にかんしてのきびしい制限や査察を受け入れる。他方で主要6カ国はイランに対する経済制裁を緩和する。これが、合意の核心である。これによってイランの核武装を阻止したとオバマ政権は主張している。 イランによる核兵器の開発を阻止するためには戦争も辞さないとオバマ自身が発言していたので、合意の成立の報道は、これで戦争が避けられたとの安堵感で迎えられた。 合意からすでに1年以上がたち、当時のアメリカとイラン関係についての詳細が次第
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『高橋和夫の国際政治ブログ』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く