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「新スタートレック(Star Trek: TNG)」の中でも私のお気に入りのエピソードの1つは、不吉なシーンで幕を開ける。宇宙船エンタープライズ号が別の連合の宇宙船と衝突し、大爆発を起こして全員が死亡してしまうのだ。だが幸運なことに、両船の衝突は異常時空の境界で発生していたため、エンタープライズ号はほぼ1日前に時間を遡ることとなった。こうして、クルーたちが日々の活動を送り続け、同じ選択パターンを繰り返して大惨事に至り、それを何度も何度も繰り返し続けるという「因果ループ」が生じた。 この繰り返しは永遠に続くことになったかもしれない。だが、クルーのメンバーの一部がデジャブを覚え始めた。そして、ループが繰り返されるほどにその感覚は強くなっていった。こうしてクルーたちはついに、自分たちが因果ループの中に閉じ込められていることを突き止めた。残念ながら、それを知ったところで因果ループから抜け出す方法は
先週末、ロジャーズ・コミュンケーションズ〔カナダの大手通信企業〕の前CEO、ナディル・モハメド(Nadir Mohamed)が亡くなったという悲しいニュースが入った。モハメドは、カナダを代表する大物の1人だった。私自身は彼と知り合いだったわけではない。だが一度だけ、病院の待合室でたまたまモハメドと一緒になる機会があった。それは、私が機会がある度に語りたくなるような、大変愉快なエピソードであった。以下の文章は10年前、ワルラス誌(The Walrus)に掲載されたものだが、ワルラスのウェブ版はひどい出来なので、ここで再掲してもよいだろう。(念のため言っておくが、この記事のエピソードは10年以上前の話であり、モハメドの死因となった病気とは無関係である。) ナディルと私:待合室での「強制的連帯」 去年の夏、私は「カナダ的な場面」に出くわした。それはトロントの病院の待合室でのことだった。待合室は殺
もう何年も,ぼくは福祉国家の「とにかくみんなにお金あげろ」説を大きく掲げてきた.このアイディアを支持する記事もたくさん書いてる.この説を支持する理由は次のとおり: 現金給付の方が他の種類の給付よりもずっと管理・実施しやすい. 無条件の現金給付は労働市場に大して打撃を与えないのを見出している経済研究はたくさんある――つまり,小切手でお金をもらうようになってもたいていの人たちは働くのをやめたりしないんだよ.また,多くの保守派が恐れているのとちがって,薬物やアルコールに浪費しがちなわけではないのも見出されている. 無条件現金給付なら,他の福祉プログラムの穴から落ちてしまう多くの人たちにも届けられる――たとえば,なんの所得も稼げない人たち(なので勤労所得税額控除を得られない人たち)や,子供のいない人たち(なので児童控除を得られない人たち)も,無条件現金給付なら受けとれる. 1990年代後半,アメリ
トップ経済学者たちのなかにも,「アメリカ人の一定層で AI による雇用破壊が起きている」と主張する人たちがいる.彼らは正しいだろうか? 「AI は人々の仕事を奪っているのか」をめぐる論争は,永遠に続くかもしれないし,いずれ終わるかもしれない.現に AI が大勢の人たちの仕事を奪ったなら,そこで論争は終わる.その時点で一方の側が明らかに勝ったことになるからだ.でも,AI が大勢の人たちの仕事を奪ってないときには,論争の決着はつかない.それでもなお「もうすぐみんなの仕事が奪われるぞ」って言い続ける人たちが大勢現れるだろうからね.ときに,今後の雇用の見通しがみんなよりも悪い一部の層を見つけて,「ほら,これこそ AI による一大雇用破壊の始まりだ」とその手の人たちが主張することがある.彼らが間違ってると証明できる人なんて,いる? つまり,〔上の話に合わせていいシナリオとわるいシナリオを分けると〕い
このブログでは通常、何か個別の事件が起こっても、それについてコメントするのを控えている。私が関心を寄せているのは、個々の事件ではなく、もっと広範な社会的トレンドにあるからだ。また、特定の事件についての理解は、新しい情報が入手できるようになるにつれて、変化することも多い。この数日間のチャーリー・カークの暗殺事件についての混乱した報道(そしてその訂正)は、その好例だ。この記事では、暗殺事件を扱うが、内情を打ち明けると、最近になって暗殺事件が増加していることと、その広範な社会的背景について執筆するつもりだったからであり、今回の悲劇の直後に公開されたのは偶然だ。 我々は、「アメリカ政治暴力データベース(USPVDB)」を作成している。このデータベースによると2020~2024年の5年間で7件の暗殺事件が発生している。これは〔暗殺が激しかった〕1860年代後半の半分に過ぎないが、以前のピークである1
サスカチュワン州首相のブラッド・ウォール〔右派で、市場寄りと思われている政治家〕は、市場が好きではないらしい。少なくとも私と同じような仕方で市場を愛しているわけではないようだ。先日、ウォールが気候変動について語っているのを聞いて、私はポリシー・オプション誌に大昔に寄稿した記事のことを思い出した。この記事は、「プロ・マーケット(市場派)」と「プロ・ビジネス(ビジネス派)」の違いについて論じたものだ。ウォールのような保守系政治家の話を聞いていると、この区別を用いて彼ら彼女らの議論を分類するのは依然として有益だと思われる。例えば、ウォールが炭素価格付けに対してとっている立場は、プロ・ビジネスの保守系政治家の完璧な例となっている。つまり、彼はプロ・マーケットではないのだ。 以下は、そのときの記事にある、プロ・マーケットとプロ・ビジネスの区別を説明した部分だ。 プロ・マーケットの人々が資本主義を熱心
社会構築主義は近年、評判が良くない。その大きな理由は、セックスとジェンダー・アイデンティティを巡る議論で社会構築主義が利用(そして誤用)されてきたためだろう。これは残念なことだと私は思っている。なぜなら、構築主義的な分析は、適切になされるならば、世界に関する重要な洞察を与えてくれるものだからだ。どんな人間も、社会環境の「自然らしさ(naturalness)」をひどく高く見積もり、実際には社会的な取り決めでしかないものを実体化(reify)して、客観的に存在するもののように扱ってしまう傾向を基本的に持っている。構築主義の古典的な仕事の多くは、私たちが自然なものとナイーブに受け止めがちな社会的世界のある側面を取り上げて、それがいかに、特定の時期の特定の文化的文脈において形成されたものであるかを示すものだ。思想史や他文化の研究に真剣に関心を持っている人なら誰でも、学びを深めるほどに社会構築主義者
貧しい国々はどうにかして豊かになるしかない.これは,実地で立証済みの方法だ. Photo by Fahad Faisal via Wikimedia Commons 今日はアメリカ政治について書く気でいたんだけど,ネット上の議論でスウェットショップが話題にのぼったので,かわりにこれをとりあげよう.ソーシャルメディアで経済について興味深くて中身のある議論を交わす機会なんて滅多にない.だから,いざそういうネタが出てきたときにはすかさず楽しませてもらうことにしてるんだ. 議論の発端は,アメリカンイーグルのブルージーンズ広告だった.その広告で女優のシドニー・スウィーニーが「いいジーンズ」(good jeans) をもってるというダジャレが使われているのを,ソーシャルメディアで進歩派の一部が見とがめた.これは「白人が遺伝的に優れている」のを意味してるというのが,彼らの解釈だ.それからずいぶんとバカげ
最も裕福な資本家と最も裕福な労働者はますます同じ人々になってきている。 これを、2019年の拙著『資本主義だけ残った』では「新しい資本主義」と呼んだ。何が新しいのだろう? 19世紀のヨーロッパの経済学者が提唱した古典的資本主義では、資本主義社会は2つの階級からなっているとされた。資本(マルクス主義の定義では「生産手段」を所有する)階級と、資本を所有せず生存のために資本家に労働力を売る労働者階級であるこれは粗っぽい分類だが、間違いではなく、19世紀から20世紀初頭の先進国経済の実像の素描となっていた。(後進国経済では、土地所有と、土地所有に結びついた政治権力が大きな役割を果たしていた)。 この古典的資本主義は、20世紀になり、多くの人が新しい「管理・経営(マネジメント)」階級と名付けたものの出現によって変貌を遂げた。管理・経営者(マネージャー:生産手段を所有せず、単純労働者でもなく、フロリダ
どんな人たちがどんな人たちと結婚しているのか――これについては,人気アイディアがいろいろある.ひとつ挙げると,「金持ちの男はもっぱら身体的な魅力のある妻を望み,相手の社会的地位や教育には頓着しない」というアイディアがある.また,「パワーカップルは共稼ぎする傾向がある」というアイディアもある. 実は,このどちらのステレオタイプも間違ってる.ライマン・ストーンが家族研究所 (the Institute for Family Studies) の記事で示しているように,金持ち男は教育水準が高くて高収入の女性と結婚しがちで,その女性は結婚後に主婦になる.グラフを3つほど示そう: 「高所得男性の結婚相手は教育水準の高い女性が圧倒的に多い」(Source: Lyman Stone) 「高所得男性の結婚相手は高所得女性が圧倒的に多い」(Source: Lyman Stone) 「高所得男性の結婚相手は専
次の100年間で、カスカディアとサンアンドレアスの2つの断層のうち1つまたは両方で地震が生じ、アメリカの西海岸に、ヒロシマの原爆の3万から6万倍に等しいエネルギーが放出される確率は、約70%である。 この2つの断層の大規模な破壊が生じた直近の事例は、カスカディア断層では1700年、北部サンアンドレアス断層では1906年、南部サンアンドレアス断層では1857年のことである。その当時、特に大きな影響を被った地域には、合計でおよそ55万人しか住んでいなかった。現在では、同じ地域に約3,500万人が暮らしている(ヘイワード断層も、ベイエリア直下に位置し、いつ破壊が生じてもおかしくない状態であるため、極めて危険である。だが本稿では、カスカディアとサンアンドレアスという2つの巨大断層に議論を絞ることとする)。 こうした断層破壊の中でも最も壊滅的な被害をもたらしたのは、1906年のサンフランシスコ地震で
「AI によって大量の人たちが雇用を奪われて,経済でやるべき有用なことをなくしてしまう」というのは,事実上の通説みたいになっている.みんな,あまりにこれを確信していて,「ほらやっぱりそうなってるじゃないか」と信じる材料になる兆しがデータに現れると,すぐに飛びついている.ちょっと前に,経済学者たちも人気評論家たちもこの件に関して行きすぎた予測をしている理由について記事を書いた. ともあれ,Economic Innovation Group のサラ・エックハートとネイサン・ゴールドシュラグがこの件に関する新しい報告書を発表している.これによると,ぼくらが知りうるかぎり,AI はまだ雇用を奪っていない――少なくとも,測定できる規模ではそうなってない. エックハートとゴールドシュラグは,まず,いろんな仕事での AI 曝露度を予測する数値からはじめている.そうした数値を見ても,どの仕事が AI に取
拙著『エリート過剰生産が国家を滅ぼす』では、テーマの一つとしてウクライナを取り上げた。2022年末に最終稿を出版社に提出してからも、私はウクライナ紛争の経過についてのニュースを追いかけている。なぜなら私の評価――ウクライナ国家(金権政治国家)と、そこで起こっている戦争(NATOとロシアの代理戦争)が、歴史の推移によってどこまで妥当なのか確かめたかったからだ。なので、2023年初頭の時点で、この紛争について見解や将来予測が、執筆者やそのイデオロギー的背景によって正反対になっていたのは興味深かった。(アメリカの公式な立場を反映している)主流派メディアは、極めて〔ウクライナ勝利で〕楽観的だった。もっとも、アメリカ人のアナリストの多くや、元軍人・諜報機関関係者らは、全く異なる見解を持っていた。 当時、こうした予測の違いを、実証的にテストできることに私は気付いた。私のブログ(今はSubstackだが
Photo by Gage Skidmore via Wikimedia Commons どの経済アプローチがうまくいくかは,出発地点しだいで大きくちがってくる この十年にアメリカで党派を超えて見解が一致していそうな分野といえば,「自由市場経済学(あるいは「ネオリベラリズム」)は失敗した」「経済システムには見直しが必要だ」という話だ.もちろん,左翼はずっと前からこう信じ続けている.近年は,ヒューレット財団の人たちなど,主流の進歩派からそっちに合流する人たちも増えている.一方,右翼はというと,トランプのおかげで関税と移民制限がかけられて,優勢な正統教義としての自由貿易は放り捨てられている.それに,共和党全体も,化石燃料産業その他の伝統的な部門に肩入れしたがっている様子だ. 念のためはっきりさせておくと,このぼくも,新しい経済システムを求める主張を続けてきた面々の一人だったりする.長らく,ぼく
今年出たアメリカ政治に関する2つの著書、エズラ・クライン(Ezra Klein)とデレク・トンプソン(Derek Thompson)の『アバンダンス(Abundance)』、そしてマーク・ダンケルマン(Marc Dunkelman)の『なぜ何も進まないのか(Why Nothing Works)』について、猫も杓子も議論している。私もご多分に漏れず、書評を書いたところだ。この書評は“Commonwealth and Comparative Politics”誌に載る予定だが、すぐには公開されそうにないので、Academia.eduの私のページに載せている。書評で言及したように、この2つの著書は、その内容よりもむしろ、読者から寄せられている反応の方が興味深い。だがこうした考察はアカデミックな雑誌の書評で書くことではないので、このブログでもう少し掘り下げたいと思う。私自身はダンケルマンの本の方が
いずれこうなるのは避けられなかった 「あんなところやこんなところで日本は他の先進国に先駆けている」なんて話をみんなよくする.昔だったら,その手の話題はテクノロジーだった.もっと最近だと,たいてい,セックスしない若者とかの社会の動向が語られる.ただ,ぼくが日本に暮らしていたときには,日本がアメリカの後追いをしてるところに気がつくことがよくあった.ファッション・音楽・文化では,なにかの流行がアメリカで最高潮を迎えてから5年から10年くらいあとになって日本で人気になるように見えた [1] … Continue reading . 「アメリカを再び偉大に」(MAGA) やヨーロッパの「ドイツのための選択肢」党 (AfD) の特色である外国人嫌いで陰謀論を好み自国生まれ優先のポピュリズムは,長らく日本の主流政治には基本的に見られなかった.2012年から2020年まで首相をつとめた故・安倍晋三は右翼だ
世論調査を信じるなら,アメリカ人がトランプを選んだ理由は2つある:インフレをしずめることと,南部の国境を越えて入ってくる準合法・違法な移民の波を止めること,この2つだ.世間では,移民はトランプのいちばん強い争点だとみられていた.ありとあらゆる世論調査で,アメリカ人が国境に関するトランプの強硬政策を支持していることが示されていたし,なかには,大量強制送還の支持が広まりはじめているのを示すものすらあった.移民に関する世間の人たちの考えは,バイデン政権の頃よりもずっと否定的になった. でも,去年の8月にぼくはこう警告していた――「もしもトランプが大量強制送還で度を超したことをやったら,反発を招くだろう」 強制送還すべき人たちを見つけ出すには,アメリカ全土でご町内に深く立ち入って調べ回る必要がある.(…)違法にアメリカ国内に滞在している人たちやトランプ陣営が標的にしてる人たちは,大半がもう長年にわ
インフレ目標は,いまや各国中央銀行で標準になっている.ところが,そのはじまりは,ニュージーランドで起きた何気ない発言と政治的なギャンブルだった――経済学者たちが真面目に取り合うのよりもずっと前のことだった. 今日の中央銀行の大半は,インフレ率の目標を設定している:つまり,インフレ率の数値目標を政府が公表して,中央銀行がその達成の任務にのぞむ.そのために用いる方法は,金利の変更,預金準備率の設定,金融証券の売買だ.昔からずっとそうだったわけではない.1990年代以前には,多くの中央銀行がマネーサプライや為替レートを目標に設定していた. インフレ率を目標に設定するように変わったといっても,べつに,専門家たちのあいだで「中央銀行に改革が必要」と共通意見が醸成されたおかげでも,経済学者たちの研究のたまものでもない.1980年代にニュージーランドの財務相を務めていたロジャー・ダグラスが明確なインフレ
もう何年ものあいだ,「アメリカの賃金は何十年も上がってない」というグラフや言辞やミームがあれこれと洪水のように出回っている.たとえば,バーニー・サンダースは定期的にこんなことを言っている――賃金は50年前よりも下がっているのですよ.でも,それってホントだろうか? ちがうよ.この主張の根拠は,ただひとつのデータセットだ:民間部門の平均時間給を消費者物価指数で割った数字が,それだ.この賃金指標を見ると,たしかに1973年を2019年の賃金は下回っている.でも,かわりに PCE 物価指数を使うと――つまり,過去に消費されていたモノではなくみんなが現在消費しているモノの価格変動を見てる数字を使うと――様相は一変する: これだけでも,アメリカ経済全体が賃金成長をもたらしているのを示すのに十分だ(もちろんもっと伸びててくれればそれに越したことはないけど).でも,賃金トレンドに関してぼくらが個人レベルで
出生率をめぐる世間の議論は,ひどく呪われている.高齢化と人口縮小は,長期的に見て経済の大問題だけど,まだ誰も,解決法を考えついていない.それでいて,この問題をめぐる論争がはじまると一瞬で人種差別と性差別へと堕落していって,さらに,人種差別と性差別の非難が続く.そのせいで,この迫り来る脅威と真剣に向き合う用意を,社会全体としてのぼくらはまだ整えられずにいる. なぜこうなっているかというと,ひとつには,女性の教育と出生率に成り立っている相関がある.このグラフを見てもらおう.平均的な女性が高校を卒業する国に,出生率が高いところはひとつもない: Source: Peter Hague 右派がこの相関を見ると,たんに因果関係がうかがえるだけじゃなく,鉄の法則が浮かび上がってくる――「人類を維持したければ,女の子たちが学校に行くのと止めないといけない」ってことになってる.それで,彼らはこう信じているわ
多くのアメリカ人は,こう信じている.「ここ数十年で,家電の耐久性はどんどん落ちてきた.」 これに対して,Wirecutter のレイチェル・ウォートンが秀逸な反論を書いてる.彼女の結論は,ぼくが衣服の品質を調べて見つけたのとそっくり,うり二つだ:たしかに,耐久性はいくぶん下がっているけれど,それをもたらした主な要因は,購買客たちの好み・規制の変化・ボーモル効果だ.べつに,企業のよこしまな行いのせいでも,文化の堕落のせいでもない. 「みんな言うよね,『メイタグの洗濯機は50年使えたのに』って.」 かつて家電メーカーのワールプール・コーポレーションで製品エンジニアをしていたダニエル・コンラッドはそう語る.彼はいま,商用冷凍設備会社で,設計品質・信頼性・製品検証部門の責任者を努めている.「でもね,そこまで長持ちしなかった他の450万台の洗濯機のことは,誰も語らないんだよ.」 利用可能な証拠を見る
私はグローバル気候変動が突きつける哲学的問題に専門家として関心を抱いてきた。このテーマで本を書いたり、講演をしたり、カンファレンスに出たり、パネルとして発言したりもしてきた。だがこうしたイベントに出ると大抵、(少なくない人にとって意外に思われるだろう理由で)ひどく苛立たしい思いをすることになる。こうした場の多くで、本来なら気候変動の突きつける真に厄介な哲学的問題(まずもって将来世代に対する私たちの責務をどう考えるかに関わっている)に集中したいところなのに、かなりの時間をデマ(misinformation)の訂正に費やすことになるのだ。念のため言っておくと、ここで問題にしているのは、一般市民ではなく、大学教授がよく信じてしまう類のデマである。 気候変動に関するデマが深刻な問題であることは誰でも知っている。国連がこのテーマに関して大規模なレポートを出したばかりだ。残念ながら国連のレポートも、右
メディアの未来についてちょっと考えてみたこと この記事はクリス・ベストの見解を反映するものではない.執筆者に名前を入れているのは,動画チャットの方に出てくれているからだ. 先日,Substack の CEO クリス・ベストとおしゃべりをした.動画は上に貼り付けてある.話題は,メディアの未来だ.もっぱら,みんながニュースや分析をどうやって共有しているのかってことが議論にのぼった.かつて,突発的なニュースや議論を見つけようと思ったら X(旧 Twitter)にいけばなんでも間に合った.いまや,X がかつての有用性を大きく失ってしまってる点については,ぼくら2人は同意見だ.そして,Substack がその役割を引き継げそうな方法についても,いくらかアイディアを話し合った. このおしゃべりを収録したすぐ後に,X が部分的につながらなくなる障害が起きた.べつに,すごく珍しいことでもない――障害なんて
このなんてことないイラストは、過去半世紀にわたって平等や社会正義を巡る哲学の議論が達成しようとしてきたことの、ほとんど全てが台無しになってしまったことを示している あなたのお気に入りの哲学者を困らせたいなら、最近だと一番良い方法は、箱の上に乗った子どもたちのイラスト(「平等と公平」ミーム)を見せることだ。これを哲学者の苦しみの種というのは言い過ぎかもしれないが、哲学者の仕事を楽にしてくれないのは確かである。 哲学者のほとんどはこのイラストを見たことがあるが、それ以上に重要なのは、学生はみなこのイラストを見たことがあるということだ。それだけでなく、学生たちはこのイラストを持ち出せば議論を完全に打ち切れると考えている。学生らに言わせると、このイラストは「公平性(equity)」の正確かつ議論の余地ない定義を示しており、「平等(equality)」という道徳的理念を決定的に打ち負かしているのだと
変化率がマイナスの場合、線は右肩下がりとなる。グーグルで「線は下降する」を検索して最初にヒットしたのが上の図だ。 (私は『国際経済』誌の円卓会議コーナに時々寄稿している。今月のお題は、「金融危機後の2007~2009年の超低金利が格差と資産バブルの拡大に一因になったのか」という懸念についてだった。寄稿者は、2007年以降の金融政策をA~Fの5段階で評価するように求められた。) 〔訳注:アダム・ポーゼンのような有名なエコノミストから、各国中銀関係者、さらにメイソンのような非常に左派的な経済学者と様々な学識関係者が評価を行っている。ポーゼンはA評価。中銀関係者は概して低い評価を行っている。〕 私は総合的に、低金利政策という実験にBの評価を下した。低金利政策は、コストがあると騒がれすぎだ。一方で、メリットについても過大評価されている。低金利政策からの主な教訓があるとすれば、伝統的な金融政策は、極
「アメリカのポップカルチャーは衰退しつつある」説をとるとしよう.では,どうして今,日本はアメリカと真逆の経験をしているんだろう? どうして日本はポップカルチャー大盛況の時期を迎えているんだろう? それこそ,日本のポップカルチャーが世界中で成功している秘訣だ スペンサー・コーンハーバが『アトランティック』に寄稿したエッセイ「アメリカ・ポップカルチャー史上最悪の時代が到来か?」が公開されてから,2週間で大きな反響がうまれている.友人のW・デイヴィッド・マークスやノア・スミス〔当サイトでの翻訳はこちら〕をはじめとして,多くの人たちがこれに触発されて議論に参加してきた――「アメリカは本当に『文化の暗黒時代』に入ったのか?」「もしそうだとしたら,理由は?」 そこで展開されている主張は,こう続く.「アメリカのテレビ・映画・音楽は後ろ向きになっている.昔から続いていてもう味がしないシリーズを繰り返したり
近年、アメリカのポップカルチャーは停滞しているとの話題を頻繁に見かける。こうした主張は疑ってかかるべきで、こうした不満は特に目新しいものじゃない。ドワイト・マクドナルドは、20世紀半ば、何十年間も大衆文化を激しく批判していた。マクドナルドは、大衆文化(マスカルチャー)は、ハイカルチャーを汚染し、吸い上げていると考えていた。1980年には、ポーリン・ケイルがニューヨーカー誌に「なぜ映画はこんなに駄目なのか? あるいは数字について」と題した論説を書いて、映画スタジオの資本主義的インセンティブが、派生的な駄作を生み出している原因になっていると主張した。 [1]原注:これらの例を僕はAI(ChatGPT … Continue reading なので、「なぜアメリカのポップカルチャーは停滞しているのか?」という疑問に答えようとすると、そもそも問題になっていない問題について適当な説明をしてしまう危険性
Photo by Maximillian Conacher on Unsplash 保護主義を唱える人たちの物語は,事実より迷信に近い もう何年ものあいだ,「アメリカは製造業を強化すべきだ」とぼくは提唱し続けている.再工業化にアメリカ人が乗り気になったときには,ぼくは「いいぞいいぞ」と応援した.ジョー・バイデンの産業政策をぼくは大いに支持していたし,一期目のドナルド・トランプが自由貿易志向のコンセンサスを打ち壊したのを称賛すらした. トランプ関税を経ても,その点についてぼくの考えはまったく変わっていない.たしかに,この関税は災厄だ.ただ,それはべつに,製造業を強化しているから酷いんじゃなくて,逆に,こうしておしゃべりしてる間にもアメリカの脱工業化を進めているから酷いんだ.トランプ関税によって,いままさにサプライチェーンと輸出市場を活用するアメリカ製造業の能力が破壊されていっている.トランプ
経済記者も、他のどんな書き手と同じように、完璧な存在じゃない。昔の人は、報道記事は全て完全に真実だと思っていたかもしれないし、今もそう思ってる人がいるかもいれない。でも、報道というのは人の営みで、人は間違いを犯す。真実を知りたいなら、複数の情報源を読んで、自分の読んだものに懐疑的になる必要がある。それでも、間違いは紛れ込んでしまう。 なので、この記事の目的は、僕が衒学的で知ったかぶりをすることでも、経済マスコミの書き手を十把一絡げにして侮辱することでも、特定のライターを非難するわけでもない。でも、ほとんどの経済記者があまりに一貫して繰り返してる単純で初歩的な間違いがある。そして、他のほとんどの間違いと違って、多分だけどアメリカの経済政策に深刻な悪影響を及ぼしている。なので、僕としては、声高になって、少しばかり不満を表明せざるをえないと感じている。 経済記者たちが犯している間違いというのは、
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