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ブラジル、リオデジャネイロにあるメンベカ・ラゴス農園のアカエリシトド(Zonotrichia capensis subtorquata)。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 南米に生息するアカエリシトド(Zonotrichia capensis)は、薄茶色または白っぽい体に黒い斑点がある小さな鳥だ。オスはきわめて特徴的な鳴き方をする。その歌は、親世代から子世代へと受け継がれてきた。しかし、生息地が失われたり、個体数が減ったり、教師役の成鳥がいなくなるなどして学びの糸が断ち切られてしまったらどうなるのだろうか。 2020年から2023年にかけて、アルゼンチン、ブエノスアイレス大学精密・自然科学部の研究者たちは、野生から失われたアカエリシトドの歌を、ロボットを使って再導入するという大胆な仕事に取り組み、成功させた。この研
新しい研究によると、渇望はしばしば記憶に根ざしているようだ。科学者たちは、脳が高カロリー食品のことを記憶していて、私たちが空腹でないときにさえ食べてしまうものに密かに影響を及ぼしている可能性があることを発見した。(PHOTOGRAPH BY HEATHER WILLENSKY, THE NEW YORK TIMES/REDUX) 高カロリーの食べ物への食欲を促すこれまで知られていなかった脳内の回路が、マウスを使った実験で見つかった。1月15日付で学術誌「Nature Metabolism」に発表された研究によると、海馬という記憶をつかさどる脳の部位にある特定のニューロン(神経細胞)集団は、糖分や脂肪分にまつわる感覚や感情を記録していることが分かったという。マウスでは、これらのニューロンが食べ物への渇望を誘発して、食べ過ぎにつながっていた。 渇望は、マウスが空腹でないときにも見られた。しかし
認知機能の低下にはさまざまな原因があることが、認知症の診断を困難にしている。写真のような陽電子放出断層撮影(PET検査)はアミロイドベータのプラークを可視化でき、認知症の診断や種類の判別に役立つ。(PHOTOGRAPH BY ISADORA KOSOFSKY, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 米カリフォルニア大学バークレー校の著名な統計学者スティーブ・セルビン氏は、70代になった頃から彼らしくない言動をするようになった。過去の話はできるのに、現在の話は不思議なほどできなかったのだ。娘のリズ・セルビン氏は、「私たちは、退職後の不安やうつ病のせいだろうと思っていました」と語る。 セルビン氏の行動は徐々に変わっていったため他の精神疾患と間違えられやすかったが、これは認知症の症状だった。氏は認知機能の低下を巧妙にとりつくろっていたが、やがて隠せなくなったとリズ氏は言う。知らない
ヒトの神経系。直観を使って意思決定を行う際に重要な役割を果たす。(ILLUSTRATION BY MAGICMINE, ALAMY STOCK PHOTO) 危機的な状況での一瞬の判断であれ、新しい仕事を引き受けるといった大きな決断であれ、人生には、すべての情報がそろわない状態で意思決定を迫られる場面がよくある。このようなとき私たちは、直観に頼ることが多い。無意識の知識が正しい道を選ぶ助けになるかもと期待して。 直観とは、辞書的に言えば、明白な論理的思考や推論を経ることなく、知識を得たり、決断したりする能力だ。学問的には中身をはっきり説明することも研究も難しいとされ、長い間、神秘的なもののように扱われてきた。だが、科学者たちは、直観をより深く理解しようと取り組んでおり、新たな定義さえも生み出している。 「私なりの(直観の)定義は、身についた無意識の情報を、より良い意思決定や行動の助けとなる
禁酒法時代の1930年代、米メリーランド州でウイスキーを分け合う2人の若者。この時代、飲酒は命にかかわることだった。米国政府は、違法な飲酒を抑制するため、産業用アルコールに有毒物質を添加した。それによる死者数は数万人とも言われている。(Photograph By Kirn Vintage Stock/Corbis, Getty Images) 米ミシシッピ州ジャクソンのブルース歌手、イシュマン・ブレイシーが自分の酒をついだとき、米国じゅうの酒のみならず、自分の運も尽きていたことなど知るよしもなかった。数週間後、彼の脚がうずきはじめた。ポリオが流行っているという噂だったので、病院に駆け込んだが、原因はポリオウイルスではなく、毒だった。 なぜそんなことが起きたのか? 政府が酒を違法とするだけなく、致命的な毒に変えていたからだ。 「高貴な実験」と呼ばれる禁酒法の時代には、すべてのアルコールが禁止
南大西洋の水深約600メートルを泳ぐダイオウホウズキイカ(Mesonychoteuthis hamiltoni)。(解説は英語です) 自然界で最も見ることが難しい動物の一つで、最も重いイカであるダイオウホウズキイカは、マッコウクジラの胃から死骸が発見され、初めて同定された。それから100年がたった今、自然の海洋環境を泳ぐダイオウホウズキイカが初めて動画に収められた。 3月9日、米シュミット海洋研究所の調査船ファルコー2号は、国際的な海洋生物調査の一環として、南大西洋のサウスサンドウィッチ諸島からほど近い極寒の海を調査していた。遠隔操作無人潜水艇(ROV)を水深600メートル地点に送り込んでいたとき、カメラの前をイカが横切った。 調査団と外部の専門家が動画を検証し、驚くべき結論に達した。「これはダイオウホウズキイカを深海の生息地で撮影した初めての動画です」とニュージーランド、オークランド工科
スイッチOTC (オーティーシー)という医薬品をご存じだろうか。読者の方々の中にも、お世話になっている人が多数おられるはずだ。 OTCは「Over The Counter」の略で、OTC医薬品とは薬局やドラッグストアで「カウンター越しに」、つまり処方箋なしで購入できる市販薬のことを指す。OTC医薬品の中には、当初から処方箋不要の医薬品として開発された一般用医薬品のほかに、医師の処方が必要な医療用医薬品として使用された後に、安全性に関する審査を経てOTC医薬品に転用(スイッチ)されるスイッチOTC医薬品がある。 厚生労働省は「自分の健康は自分で守る」をスローガンにセルフメディケーションを推進しており、スイッチOTCはその手段の一つとなっている。現在、約100種類の有効成分がスイッチOTC医薬品として認められており、2000品目以上の商品が市販されている。そのような中、昨年末に開催された厚生労
ビタミンEをサプリメントの形で多く摂取すると、健康被害を引き起こす恐れがあるという。(Photograph by Wolfgang Volz, laif/Redux) ビタミン剤やサプリメントの産業が活況を呈している。特定のビタミンが不足している人や健康上の問題を抱えている人にとってサプリメントはありがたい製品だが、一部の合成ビタミンは肝臓障害、脱毛、関節痛や筋肉痛、視力障害などを引き起こす恐れがあることが研究で示されている。 「誰もが皆、素晴らしい健康を与えてくれる魔法の薬を求めますが、残念ながらサプリメントにそれを期待することはできません。リスクを上回るほどの効果がないことの方が多いのです」と話すのは、米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の予防医学部長を務めるジョアン・マンソン氏だ。(参考記事:「DHAほかオメガ3脂肪酸サプリ、健康な人では心臓に害も、研究」) 「私は一般的に、特別な理由
暖かい岩の上で日光浴をするムラリスカベカナヘビ。米国オハイオ州シンシナティの公園バーネット・ウッズで撮影。(Photograph By Jordan West) 米国オハイオ州シンシナティには、ヨーロッパ原産のムラリスカベカナヘビ(Podarcis muralis)が何万匹も暮らしている。記録的な低温と降雪にも負けず、ムラリスカベカナヘビは生き延び、そして増殖した。州の野生生物局から「永住者」とみなされた彼らは、歩道をはい回り、れんがの壁にしがみ付き、原産地とは大違いの環境で繁栄している。(参考記事:「早熟で短命なトカゲ ミヤコカナヘビ」) なぜ地中海地域生まれの爬虫類がシンシナティに根を下ろしたのだろう? すべてはある少年のカナヘビを詰め込んだ靴下から始まった。 1951年、10歳のジョージ・ラウ・ジュニアは家族旅行でイタリアのガルダ湖を訪れ、そこにいた10匹のカナヘビを持ち帰って自宅の
家の中のほこりを掃除するのは健康にとって想像以上に重要だが、はたきは使わない方が良い。専門家によると、溜まっていたほこりを空気中に再び舞い上がらせ、ほこりに含まれる化学物質を吸い込んでしまうことになるという。(PHOTOGRAPH BY STEVEN PUETZER, GETTY IMAGES) 室内に浮遊したり、ソファの下や窓辺に溜まったりしているほこりは、単なる目障りな汚れではなさそうだ。2016年9月に学術誌「Environmental Science & Technology」に発表されたレビュー論文では、家の中のほこりのサンプルから、「永遠の化学物質」と呼ばれる有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)や、フタル酸エステル類、フェノール類、難燃剤など、有害なおそれのある化学物質が45種類も特定されている。 2024年12月に学術誌「Environment International」
フォークの登場によって食事のあり方が変わり、食卓の上に個人の境界がつくられることになった。(Photograph By Rebecca Hale, Nat Geo Image Colleciton) フォークは世界の食卓で広く使われている道具のひとつだ。普段、このありふれた日用品を意識することはほとんどない。しかしこのフォークには、実は何世紀にもわたって退廃、不道徳、傲慢の象徴だったという歴史がある。 歴史の大半においては、指こそが自然の食器だった。肉はナイフで切り、汁はスプーンですくうが、栄養を取るという行為は手を使うことなしに終えることはできなかった。しかし、フォークはそれをすっかり変えてしまった。 「フォークが登場したことで、食文化や食卓の大変革が始まったのです」と述べるのは、ローマの食人類学者ルチア・ガラッソ氏だ。フォークの登場によって、食事が秩序ある洗練された行為になったが、すべ
透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影後、着色した水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)。ヘルペスウイルスの一種で、主に子どもの頃に初めて感染すると水痘(水ぼうそう)、加齢などで免疫力が落ちると帯状疱疹を引き起こす。(MICROGRAPH BY JAMES CAVALLINI, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 帯状疱疹(たいじょうほうしん)のワクチンには、認知症の予防という利点もある可能性が新たな研究によって示されている。4月2日付けで学術誌「Nature」に発表された研究では、帯状疱疹ワクチンを接種した成人は、接種していない成人に比べ、認知症の発症率が20%低かったことがわかった。 帯状疱疹、インフルエンザ、肺炎などの感染症に対するワクチン接種と認知症リスクの低下を関連付ける研究結果が次々と発表されており、今回の研究はその新たな証拠だと、米テキサス大学ヒューストン健康科学センターの神経
2つのグループを比較した結果、1933年9月2日以降に生まれ、帯状疱疹のワクチン接種を受けた人は、認知症の発症率が20%低かった。研究チームはそのほかの要因を排除するため、インフルエンザのワクチン接種率、コレステロールの薬の使用など、医療の利用状況についても調査した。 「彼らの発見が本物であることは疑いようがありません」と、英オックスフォード大学で精神医学を研究するポール・ハリソン氏は述べている。氏は今回の研究に参加していないが、同様の研究を行っている。 研究結果は私たちに何を伝えているのか 研究者たちは、帯状疱疹ワクチンが認知症リスクの低下につながる理由を解き明かそうとしている。 「(1つの)可能性として、ワクチンそのものが免疫反応を引き起こし、体が認知症のメカニズムをかわしたり、さらには逆転させたりする助けになっていることが考えられます」とオックスフォード大学の精神医学臨床講師マキシム
火星の古い火山の上空を、水氷の雲が漂っている。しかし数十億年前には、火星の表面はより温暖な環境だった。岩石のサンプルからは、かつて火星に生命が存在したかどうかが判明するかもしれない。(Photograph by NASA) NASAの火星探査車「パーシビアランス」は2021年から火星の上を動き回り、岩石の収集を続けてきた。いずれはこうして集められた岩石によって、火星の歴史、火星と地球との違い、そして生命の起源についての理解が塗り替えられる日が来るかもしれない。「この探査車に積まれたサンプルの一つひとつが、火星に関する極めて重要な問いへの答えを持っている可能性があります」と、米アリゾナ州立大学の惑星科学者ミーナクシ・ワドワ氏は言う。 「火星サンプルリターン(MSR)」と名付けられたこのミッションにおいて、ワドワ氏は主任科学者として、これらの岩石を1億キロ以上離れた地球に輸送する計画の立案に携
集中力の低下、物忘れ、混乱、認知機能の低下、頭のぼんやり感などはどれもブレインフォグに関連する症状だ。ブレインフォグにはいくつもの異なる潜在的な原因がある可能性が高い。(Photograph by simarik, Getty Images) 新型コロナウイルスへの感染後、まるで頭が霧に包まれたような感覚を覚える患者は少なくない。これはブレインフォグと呼ばれ、新型コロナ後遺症(罹患後症状)の患者の20〜65%に見られる。推定値にこれだけ広い幅があるのは、この症状の理解がいかに進んでいないかを物語っている。 ブレインフォグを抱える人は、注意力が散漫になり、記憶力が低下する。体はだるく、考えがまとまらず、ごく簡単な家事さえも難しく感じる。新型コロナとの関連で広く知られるようになったものの、ブレインフォグという言葉は、もともとは慢性疾患を抱える人々の間で使われ始めた。 ブレインフォグの症状は線維
プラスチック製の積み木を積み重ねる幼児。靴ひもを結ぶ、ハサミを使うといった作業に必要な動きの練習になる。専門家によると、タブレットなどの画面や便利なグッズの登場で、幼児期の体験が変わり、こうした遊びが少なくなっているという。(Photograph by Alvils Strikeris, Shutterstock) エイミー・ホーンベック氏は、今の生徒たちの様子に違和感を覚えている。子どもたちは上着のファスナーを開け閉めしたり、本のページをめくったりができない。スプーンすらちゃんと持てない。こうした変化に気づいているのはホーンベック氏だけではない。米教育関連メディアのエデュケーションウイークによる2024年の調査によると、教師の77%が、低学年の子どもは5年前の同学年の子どもに比べて鉛筆やペンやハサミをうまく扱えないと報告している。また69%が、靴のひもをうまく結べない子どもが増えていると
2025年4月2日、ミャンマーの古都アバで撮影した、損傷したパゴダの写真。パゴダは、ミャンマー全土で仏教寺院および神聖な建造物として機能している。(Photograph by Myo Kyaw Soe Xinhua, Eyevine, Redux) 2025年3月28日、ミャンマー北部で壊滅的な地震が起こり、国内各地の歴史的・宗教的遺跡が崩壊した。現地からの報道によると、マグニチュード7.7のこの地震で3000人以上が死亡し、4500人以上が負傷した。その影響は甚大で、2025年4月2日、ミャンマーは4年前の軍事クーデターから続く内戦を3週間停戦することにした。(参考記事:「ミャンマー大地震の断層、400km以上にわたり最大6m横ずれ」) また、この地震はミャンマーの社会が機能するのに不可欠な100の仏教寺院と50のモスクを破壊した。震源地が歴史的な都市のザガインとマンダレーに近く、専門家
麻疹ウイルスの顕微鏡写真。(PHOTOGRAPH BY BSIP, UNIVERSAL IMAGES GROUP, GETTY) 米国では近年にない規模の麻疹(はしか)の集団感染が起きている。テキサス州西部で始まった今回の流行による感染者数は、2025年4月3日時点で全米で607人、すでに2024年の合計である285人を上回っていて、2月と4月初旬にテキサス州で基礎疾患のない6歳と8歳の子どもが死亡するなど深刻な状況にある(編注:日本の国立感染症研究所によると、3月26日時点での2025年の報告数は合計44人で、すでに2024年の45人に迫っている)。 米保健福祉省(厚生省)のロバート・F・ケネディ・ジュニア長官は、麻疹が健康な人を死なせるのは「難しい」と主張したが、米国小児科学会は、麻疹ワクチンが開発されるまでは、麻疹による死者の大半は健康な子どもだったと指摘していた。 麻疹ウイルスが引
タンザニアのマハレ山塊国立公園にいる若いキンダヒヒ。オスとメスの長期的な絆についての新たな研究結果が発表された。(Photographs By Konrad Wothe/Minden Pictures) ザンビアに暮らすキンダヒヒ(Papio kindae)のオスとメスの長期的な絆についての研究結果が、2025年1月21日付けで学術誌「American Journal of Biological Anthropology」に発表され、オスが一般的にメスに対して「いい奴」であり、メスと長期的な社会的絆を築くことが明らかになった。一方、他種のヒヒのオスは一般的に攻撃的で、交尾の機会を求めて競争し、社会的な優位性を争う特徴がある。このようなヒヒ社会では、友情は主にメス同士の間で最もよく見られる。 キンダヒヒのオスとメスの友情は、交尾につながることもあるが、メスが妊娠している、あるいは交尾ができな
現代の職場において、ビジネス用語は、人とのかかわり方を形成したり、地位を表したり、実際に起こっていることを覆い隠したりすることがある。(Photograph by Rebecca Hale, National Geographic) 意思疎通を円滑にするはずのビジネス用語が、しばしば逆効果となり、多くの社員を混乱させ、疎外感、時には不快感さえ抱かせることがある。 8カ国で8000人以上のビジネスパーソンを対象としたアンケートでは、同僚がビジネス用語を多用しすぎると感じている人が58%に上ることがわかった。また半数近くが、その意味を解明しようとすることがストレスとなって生産性が低下すると感じ、できることならビジネス用語をなくしたいと考えていた。(参考記事:「『ゆっくり仕事』のススメ ベストセラー作家の大学教授が力説」) なぜ私たちはビジネス用語を使い続けるのだろうか。また、進化を続けるビジネ
深さ6メートルの砂の下から発掘された、名前は不明のファラオの墓。(Photograph by Dr. Josef Wegner, Penn Museum) 2024年12月と2025年1月、米国とエジプトの考古学者のチームが、エジプトのアビドス遺跡の近くでおよそ3600年前の墓を発掘した。この墓は、同国南部の都市ルクソールから北西に約32キロ、ナイル川の西に広がる砂漠地帯の端に位置する古代のネクロポリス(墓地群、ギリシャ語で「死者の都」という意味)で見つかった。 しかし、墓の主であるファラオ(王)の名前はわかっていない。また、そのファラオが属していた王朝に関しても、詳しいことはわからない。 「当時、エジプトはいくつもの対立する王国に分かれていました」と語るのは、米ペンシルベニア大学のエジプト学者で、発掘を率いたジョー・ウェグナー氏だ。「多くの争いや混乱があった時代です」 アビドスの発掘 ア
米ニューヨークのノーホー地区にあるテンプルバーで、「キャビアバンプ」の準備をする客。キャビアバンプは、スプーン一杯ほどのキャビアを手の甲に乗せて食べる食べ方だ。一部のレストランや流行りのバー、アートフェスティバルなどで、この型破りな食べ方が人気になっている。(Photograph By Dolly Faibyshev/The New York Times/Redu) ヨーロッパでは、何世紀も前からほぼ同じ方法でキャビアが供されている。シロチョウガイ(白蝶貝)のスプーンを使い、シャンパンとともに、塩味の効いた一粒一粒を味わうための細かい作法が決められている。しかし、TikTokをスクロールしてみれば、米国に新しい風習が生まれていることがわかる。とりわけよく目にするのが、少量のキャビアを手に乗せて直接食べる「キャビアバンプ」と呼ばれる食べ方だ。 高級品に対してあるまじき作法のようにも思えるが、
米国カリフォルニア州サンタバーバラで保護された病気のアシカ。藻類ブルームで増えた神経毒が原因で、何百もの海洋生物が病気になり、その行動が変化している。カリフォルニア州の海では2人がアシカにかまれた。(PHOTOGRAPH BY DAVID SWANSON/AFP/GETTY IMAGES) 写真家のR・J・ラメンドーラ氏(40歳)は2025年3月、米ロサンゼルスの北でサーフィンをしていたとき、ウエットスーツの上からアシカに尻をかまれた。アシカに追われたラメンドーラ氏は、サーフボードで身を守りながら岸に向かって必死にパドリングした。 「あのときの恐怖をどう表現したらいいかわかりません。見たこともないような生きものの顔をしていました。その表情は野性的で、ほとんど悪魔のようで、私がいつもアシカと関連付けていた好奇心や遊び心は感じられませんでした」 それでも、ラメンドーラ氏は幸運だった。かみ傷は深
2024年、米フロリダ・キーズ諸島で数10種類の魚がぐるぐる回るという奇妙な行動を示し、スモールトゥース・ソーフィッシュ(Pristis pectinata)の死骸が海岸に打ち上げられた。今、魚たちが再び同じ行動を見せ始めている。(PHOTOGRAPH BY SUSIE SHIMAMOTO) 魚がぐるぐると回って死ぬ奇病が米フロリダ・キーズ諸島で再び発生した。研究者たちは日夜、その理由と長期的な影響について調べている。 魚が円を描きながら不規則に泳ぐ奇妙な姿が目撃されたのは2023年秋のこと。その中にはノコギリエイ科で絶滅の危機にあるスモールトゥース・ソーフィッシュ(Pristis pectinata)もおり、少なからぬ数がのた打ち回った挙句、死んで海岸に打ち上げられた。(参考記事:「【動画】魚がぐるぐる回り続けて死ぬ奇病が拡大、原因不明」) この奇妙な現象は、フエダイやオオメジロザメ(C
食事を楽しむメインクーン。米国で4匹のネコがH5N1に感染し、命を落とした。いずれも生食と関連付けられており、リスクを冒す価値はないと専門家は口をそろえる。(PHOTOGRAPH BY REDJINA PH, GETTY IMAGES) SNSでは、ネコやイヌに生の肉や内臓、頭、骨を与えている飼い主たちが見られるが、世界で31億ドル(約4600億円)規模のペット向け生食(ローフード)業界は常に物議を醸してきた。なぜなら、生食には病原体を死滅させるほど十分に加熱、調理されていない動物性タンパク質が含まれているからだ。そのうえ最近、鳥インフルエンザとの関連性が指摘され、新たな警戒感が広がっている。 2024年12月、あるペットフード会社がシチメンチョウ(七面鳥)の冷凍生肉をリコールした。致死性の高い鳥インフルエンザウイルスH5N1の陽性反応が出たためだ。この冷凍生肉を食べたペットのネコが鳥イン
メスのガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)は、マラリア原虫を媒介する。画像は蛍光色素を含む餌を摂取した個体。蛍光色素が紫外線下で緑色に光ることにより、蚊の血リンパ系を見て取ることができる。(Photograph by Dr. Lee Haines) マラリアによって亡くなる人は、世界で毎年60万人以上にのぼる。マラリアは蚊によって媒介される数多くの致命的な疾患のひとつだが、もしわれわれの血液を、蚊にとって有害なものに変えられるとしたらどうだろう? まるでSF小説のように聞こえるかもしれないが、実はさほど荒唐無稽なアイデアではない。 2025年3月26日に学術誌「Science Translational Medicine」に掲載された研究により、「ニチシノン」という薬には、人間の血液を蚊にとって極めて有毒なものに変える作用があることがわかった。この薬を比較的少量しか服用
「ニンジンに含まれる栄養素は目の健康に欠かせない」「カルシウムが豊富な牛乳は歯や骨のためにいい」といった話はみな聞いたことがあるだろう。では、脳によい食べ物についてはどうだろう。 「神経科学の観点から言うと、実際、脳の健康のために食べ物は重要です。脳は栄養素を燃料にして機能していますから」と、米ワイル・コーネル医科大学ウィメンズ・ブレイン・イニシアティブを主導するリサ・モスコーニ氏は言う。 脳は年齢によってさまざまな栄養素を必要とする。とりわけ、幼児期は脳の成長や発達、健康にとって特に重要な時期だ。(参考記事:「皮を食べないと大損する野菜や果物、キウイやニンジン、柑橘類も」) 「生まれてからわずか数年の間にも脳は急激にニューロン(神経細胞)を成長させていきます」と、神経科学者でもあるモスコーニ氏は言う。 現在、脳の健康にとって重要な栄養素は約45あると分かっている。タンパク質、亜鉛、鉄、コ
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