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浮き暮らしていた頃|栗林健太郎
おとなになってからもしばらくは、不意に当時の気持ちに共感し、のどの奥からせりだしてきて胸をつかえ... おとなになってからもしばらくは、不意に当時の気持ちに共感し、のどの奥からせりだしてきて胸をつかえさせる悲しみをありありと感じるような記憶がいくつかあったのだが、このごろひさしぶりに思いだすことがあって、感じかたがずいぶん変わったと思った。 小学3年生の頃だったか、夏の夜、親戚宅の広い客間にしかれたふとんでひとり寝ていたところ、歯が痛みはじめた。耐えられないほど痛くて、どうしたらいいかもわからないで大声で泣き続けていたのだが、誰も助けにきてはくれない。ふだんとはちがう場所で心細く、長い時間そうして泣き続けていた。その時の声のトーンや大きさ、どういう状況なのかを説明するべきだろうと思って歯が痛いことを訴えながら泣いていたこともよくおぼえている。 泣かれたってどうしようもないのである。歯が痛いといわれたところでできることはないし、第一、つかれきったおとなたちは明日にそなえて身体をやすめなければな





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