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映し出す光と映し出される風景(1/2) ―発見する場所06 場との対話01 雪原の古民家を使った映像制作イベントin 会津(前編) 先月の3月23日-24日に、南会津郡只見町で、JIA福島の地域会「場との対話01 雪原の古民家を使った映像制作イベントin会津」において、テトラロジックスタジオがはりゅうウッドスタジオと共同してイベントのプロデュースと映像制作を行いました。 このイベントでの試みとイベントを通して感じたことを2回に分けて語ってみようと思います。 前編では、主にこのイベントでの狙いや試み、当日の様子について語ってみます。 3月の只見。暖冬とはいえ1階がすっぽり埋まる程の雪に囲まれた今井邸が今回の対話の場だ。 今井邸は、正確な年代はわからないがここで家具工房を営む今井さんのお話だと、250年以上は前の古民家だということ。柱、梁等の住宅の様々な部分が、その時間を彷彿とさせる。 今回の
映し出す光と映し出される風景(2/2) ―発見する場所07 場との対話01 雪原の古民家を使った映像制作イベントin 会津(後編) 前回に引き続き、今回の只見のイベントを通して、感じた場との対話について少し語ろうと思う。 東北の福島といえども実は雪に囲まれる地域はそう多くない。 この只見は、新潟との県境にあり数少ない豪雪地帯だ。 ここでは、雪は日常であり、生活の前提条件であり、通常仕方なく受け入れざおえない存在だ。 ただ、光が前面に浮かび上がり雪や古民家が後景となった幾つかの瞬間、今井さん自身も普段とは違う場所との対話があったように思う。 デジカメでライトアップの様子を撮る今井さんの姿は、単なる記録としての撮影ではなく日常の場を違った視点で捉え対話していたように思う。 光のインスタレーションの翌日の午後。 この今井邸まで1日がかりで除雪が行われた。 昨日まで重い機材をカンジキを使って上り下
唄う芸能の生命力 ―アルマイトの栞 vol.12 どうも学生と呑みに行くと、最後はカラオケに連れて行かれ、挙げ句の果てに終電を逃し、朝まであの狭い部屋の中に拉致される結果になることが多い。カラオケと云うものは取り立てて好きではないのだけど、とは云え毛嫌いしているわけでもないので、まあ行ったら行ったでそれなりに付き合うわけである。 それにしても、代わる代わるに誰かが唄い、時には合唱しているあの状況は何なのだ。 人が集って歌を披露したり、大勢で歌を唄うと云う行為は古今東西を問わずに見られる現象である。まあ云ってみれば「芸能行為の原初形態」とでも定義できるだろうか。僕は歴史が専門ではないので、あくまで印象的な意見なのだが、どうも人間の社会は文明化するほどに人が声を出さなくなるのではないかと思うことがある。少なくとも、大声を出す機会は減る。例えば読書と云う行為も、本来は音読が一般的であった。そこに
舞踏はオリエンタリズムなのか!? ―アルマイトの栞 vol.13 年に二回か三回だけれど、仏事に出ることがある。先週の金曜と土曜も仏事だった。趣味ではない。世間の諸々のしがらみの結果である。わけがあって、ほとんどが浄土真宗か天台宗だ、たぶん。「たぶん」と云うのは僕の育った家庭が「キリシタン」なもので、つまり僕は「異教徒」だから、こう云うことに酷く疎いわけである。だから僕の目にはこうした仏事が「異国情緒」として映ってしまう。日本人として大丈夫だろうか。 そう云うわけで、不謹慎だけど、仏事に出ていると興味津々で見入ってしまい、読経の声を注意深く聴いたりして、これではまるで外国人旅行者である。まあ、読経の最中に居眠りしてしまうよりはマシだろう。面白いと云ったら語弊があるけど、つまりは仏事が一種の舞台芸術に見えてしまうのだ。特に天台宗のような、いわゆる密教系の儀式は隅から隅に至るまで「演出」である
乱歩と蔵書 ―アルマイトの栞 vol.10 いつまで続くかと思いながら書き始めた『アルマイトの栞』も10回目である。誰か褒めてくれないものだろうか。 いや、そんな話をしようと思ったのではない。本である。人に本を二冊ほど貸すことになった。「貸すよ」と云ったまでは好いのだが、その本が部屋の中で見つからない。モノを探すのに苦労するほど広い家に住んでいるわけではない。本が多すぎるのだ。この本の量は、正直云って自分でもどうかと思う。まるで古書店である。 ある時期までは、たとえ本が多くても自分のアタマの中でそれぞれの本のある場所を把握していたのだが、どうも近頃はそれもだいぶ怪しくなってきた。「あの本を最後に見た場所はあのあたり」と見当を付けて探すのだが、無い。こう云う場合、人の記憶は「記憶」とは名ばかりで、むしろ「思いこみ」である。そして、「もし動かしたとしたら」と仮説を立て、自分の行動パターンを推理
映像の嘘と現実 ―アルマイトの栞 vol.9 べつに、どこかのTV番組の捏造騒ぎのことではない。 時折、映画を撮りたいなと思うのである。 学生の頃は年に一本くらいのペースで仲間とビデオで短編映画を撮っていた。 みんな呆れるくらいに時間があったけれど、金は無い。 それでその都度、試行錯誤の繰り返しで工夫をしていたが、それが愉しかった。 莫大な予算を湯水のように使えたら、あんなに愉しくはなかったんではないかと思う。 低予算でやっているから、撮影行為の大半はゲリラである。 「撮影禁止」の看板がある砧公園で、あたりを伺いながらこっそりカメラを回した。あとは、確か砧の浄水場だったかな、大正時代か昭和初期の旧い素敵な建物があって、どうしてもそこで撮影をしたいと云うことになった。それで、僕の建築学科の学生証を悪用した。浄水場のおじさんに「建築学科の学生なんですが、ぜひ建物を拝見させて頂きたく」とやったわ
翻訳とルビ ―アルマイトの栞 vol.5 そろそろ年度末である。ここ数年、この時期になると赤ボールペンを握って自宅にカンヅメになる日が続く。国際演劇協会(ITI / UNESCO)日本センターが年度末に刊行する「THEATRE YEAR-BOOK」の校正作業である。200ページくらいはある英語の本の原稿を読みつつ、元の日本語原稿と見比べて、翻訳に誤りが無いか等々をチェックするわけだが、ジャンルによってはかなりこちらのアタマを悩ませる内容がある。日本の伝統芸能である。能とか歌舞伎とか文楽とか日本舞踊について英語で読まされることほどヤッカイなことは無い。 内容以前に、そもそも「市川團十郎」なんて名前をアルファベットで綴られると咄嗟には何と読むのか判断できないのである。「Ichikawa Danjuro」。それでも團十郎はまだどうにかアタマの中で漢字に変換するから好い方で、「Hujima Kan
3%と33%のミニシアター ―発見する場所03 昨年の秋のこと。大分に行った際、文化の試みを展開する上で幾つか面白い話に接する事が出来た。 最も興味深かった話は、映画館についてのことだった。 全国的にも名高い湯布院映画祭の運営に長年関わって、20年近く大分市内でミニシアター(シネマ5)を経営している田井さんの話だ。 大分でも他の地方都市と同様に郊外に出来るシネコンの影響で映画館が街中から無くなり、今は、街中の田井さんのシアターだけになっている。 シネコンのスクリーンを各1つ(10ブースが有れば10)カウントすれば、全部で27あるそうだ。 一方田井さんの映画館は1つ。 つまり、大分の3%だ。 一方、大分での一年間公開される映画の本数は、270本。だがそのうち、田井さんの映画館では90本公開されている。 やっている内容は、デンマーク、フィンランド、南米等大手の配給会社に乗らない作品である。 3
身体の舞踊性、舞踊的な身体 ―アルマイトの栞 vol.4 年明け早々にTVを観ていたらジャッキー・チェンの「酔拳」をやっていた。1978年の映画である。確かに当時は随分とジャッキー・チェンが流行っていたものだ。学校の教室でジャッキーの真似ばかりして飛んだり跳ねたりしていたA君を思い出した。僕自身はさほど興味は無かったが、ともかくマニアなジャッキーファンはどのクラスにも居て、休み時間にはあちらこちらに「ジャッキー」が現れたものである。そう云うある種の懐かしさから、ついチャンネルを合わせてしまった。 改めて観ると、ジャッキーの身体性は舞踊的である。ジャッキーの身体性と云うより、中国拳法の身体性と云った方が正しいだろうか。「酔拳」は酔いながら千鳥足風に動いたりするわけだが、それでも体の軸がぶれることは無い。軸の置き所は連続的に変化しつつも、その瞬間瞬間の軸=重心は確実に安定した位置にある。筋肉の
舞台用語の野生の思考 ―アルマイトの栞 vol.3 舞台に関わって仕事をするのなら、様々なコトバを覚えていかなければならない。 特に各種舞台備品の名前を覚えることは重要であり、且つ新人が最も苦労する課題である。 その中でも、とりわけ難易度の高いのが舞台照明器具の名前ではないかと思う。 舞台美術家として舞台に飛び込んだ僕には、ことのほか照明器具の名前を覚えるのが大変だった。 照明に関しては師匠が居ないので、独力で覚えていくより無かったのである。 舞踏のカンパニーで駈けだしの美術家だった頃、照明器具のレンタル会社に遣いに出されたことがある。「このメモを見せればわかるから」と云われ、一枚のメモを渡された。 そこには「エリ:6、パー:5、ベビー:5」などと書いてあった。 舞台照明について幾らかの知識がある人なら当然の様に理解出来るメモだが、当時の僕にはまるで意味不明のメモであった。そもそも、未だ照
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