サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
大谷翔平
www.fsight.jp
台湾では陸軍3個師団と2個旅団に加え、220万人の予備役を動員する計画が進行している[市街戦を想定して行われた台湾陸軍の訓練=2022年1月6日、台湾南部・高雄](C)時事 日米台など守る側の視点から台湾有事にアプローチする優れたシミュレーションは多いものの、中国側の視点――特に「上陸してから制圧するまで」に注目する分析は比較的手薄だ。地理的条件や戦力リソースなどの前提条件を踏まえると、軍事的には中国にとって非常に困難な作戦となることが浮かび上がる。最終的にはいかに困難な任務でも国家主席の決心次第だが、より蓋然性の高い主戦場として「封鎖作戦」「認知戦」のドメインを想定する必要性が示唆されている。 2024年7月18日、読売新聞に「中国軍、海上封鎖から台湾上陸『1週間以内で可能』と日本政府分析…超短期戦への対応焦点に」という記事が掲載された。同記事によると、中国軍は最短1週間で地上部隊を台湾
表には一切名前を出さないまま、600億円近い予算が動く国家プロジェクトの“エグゼクティブ・アドバイザー”として活動する伊藤穰一氏[2018年12月19日撮影](C)時事 伊藤穰一氏は2021年に発足したデジタル庁の事務方トップへの起用が土壇場で撤回された人物だ。性犯罪者から資金提供を受けていた過去を当時の菅首相が問題視したためだが、岸田首相が力を入れる「グローバル・スタートアップ・キャンパス構想」の実質的トップにまたもや伊藤氏が起用され、連携相手である米MITから「NO」を突きつけられた上、ハーバード大からも疑問の声があがったという。 2023年5月、広島G7サミットのために来日したジョー・バイデン大統領との日米首脳会談で、岸田文雄首相は「グローバル・スタートアップ・キャンパス(GSUC)構想」について熱弁を振るい、同構想実現に向けて両国が緊密に連携することを確認した。 GSUCとは、20
加熱式タバコ「IQOS(アイコス)」で知られるタバコ企業フィリップ・モリス・インターナショナル及び日本子会社フィリップ・モリス・ジャパンと、日本の二人の研究者の癒着を告発する報道が欧米で注目を集めている。告発者は、エボラ出血熱流行の際に医師免許を持つ異色の外交官として「国連エボラ緊急対応ミッション(UNMEER)」に派遣されたこともある小沼士郎氏だ。特に京大教授のケースは、フィリップ・モリス・ジャパンから資金提供を受けていることを明示せず加熱タバコの安全性に関する論文を発表しており、医学界での明白なルール違反だと言える。 11月16、17日の2日間、東京都港区の建築会館で「現場からの医療改革推進協議会シンポジウム」を開催する。私と鈴木寛・東京大学公共政策大学院教授が共同で事務局を務め、医療に関わる当事者が参加し、様々な問題について議論する集まりだ。2006年に始まり、今年で19回目を迎える
自然環境の中でプラスチックごみが分解されるには何十年もかかる。これを効率的に進める菌は確かに一部で有効だが、やはりごみを減らす以上の対策はないようだ。そもそも菌類はなぜプラスチック分解能力を獲得したか、そしてなぜ根本解決にはならないのか。 [ドイツ・ノイグロープゾー発/ロイター]ドイツの科学者たちがプラスチックを食べる菌類を特定した。地球では毎年、何百万トンものプラスチックごみが海へと流れている。世界各地の研究者はプラスチックごみ問題の解決に挑んでいる。 ドイツ北東部のシュテヒリン湖で行われた調査では、微小な菌類が、一部のプラスチックだけを糧によく育つ様子が確認された。これにより、一部の菌類が合成ポリマーを分解できることが示された。 ライプニッツ淡水生態学・内水面漁業研究所の研究グループを率いるハンス=ペーター・グローサート氏は、ロイターTVに対し「我々の研究で最も驚くべき発見は、菌類がい
イスラエルのネタニヤフ首相(左)と会談したハリス米副大統領は、イスラエルの自衛への強い支持を表明した上で、ガザでは「あまりにも多くの罪なき市民が死んでいる」と批判した[2024年7月25日、アメリカ・ワシントンDC](C)REUTERS/Nathan Howard ハリス副大統領の政治スタンスは、しばしば「曖昧」と評される。民主党候補として大統領選を戦う上で、それはトランプを批判しつつバイデンとの違いをアピールできる戦略的資産になり得るが、同時に支持者の失望と怒りに結びついてしまうリスクもある。そうしたハリス最大の難所はイスラエル政策なのではないか。ハリスのイスラエル擁護には、これまで「信念」と呼ぶべき熱が込められてきた。一方でガザの犠牲者が4万人に迫る中、ハリスに対してイスラエル支援からの脱却を期待する声も強い。ハリスはこの局面を乗り越えられるか。 1. 勢いづくハリス陣営 米大統領選か
テレビや新聞など伝統的なメディアの信頼性を維持しつつ、時代に適応したジャーナリズムのあり方を模索する必要がある (C)wellphoto/shutterstock.com ジャーナリズムの危機が叫ばれて久しいが、原因はどこにあるのか。米メディア界の精鋭たちが真剣な議論を重ね、いつの時代も変わらないジャーナリズムの「10の原則」を導き出し、今後のジャーナリズムとメディアのあるべき姿を提示したのが『ジャーナリストの条件 時代を超える10の原則』(ビル・コバッチ、トム・ローゼンスティール著/澤康臣訳)だ。ジャーナリズムを学ぶための基本書として世界中で読まれ、何度も改版して内容を磨き上げている。今回翻訳された最新第四版では、インターネットやSNSの普及によるメディア環境の劇的な変化も捉え、日本のメディアにとっても示唆に富む。政策とメディアを専門とし、最近では「エモい記事」批判でも注目を集めた日本大
パリ・オリンピックで金メダルの有力候補とされる日本人選手の一人が、女子やり投げ世界王者北口榛花だ。指導者を求めてチェコの地方都市に移住し、五輪に向けてひたすら練習の日々を送る北口を、地元旭川で競技を始めた高校時代から知るジャーナリストが訪ねた。(北口選手の出場する陸上女子やり投げは、日本時間8月7日予選、11日決勝) *** 5月下旬、女子やり投げで世界の頂点に立つ北口榛花(26歳)の姿は、チェコの片田舎にあった。 「オリンピックでは、『金メダルが獲れたらいいな』くらいにしか思っていないです。獲りたいと思って獲れるものでもない。もちろん試合になったら『獲りたい』という気持ちになるので、そこまでの過程はある程度、余裕を持って『獲りたいな』くらいの気持ちで行きたいです」 北口の名前を世界に知らしめたのは、去年8月にハンガリーのブダペストで行われた世界陸上選手権だった。自身の最終投擲をメダル圏外
総選挙で新人民戦線の勝利が確定的になるや、すかさず記者会見を開いたメランション氏。だが彼は国民議会議員でも「不屈のフランス」の党首でもなく、もちろん新人民戦線の代表でもない[2024年7月7日、フランス・パリ](C)AFP=時事 与党連合との連携が奏功し、議会最大勢力となった左派左翼連合「新人民戦線」も早々に迷走を始めている。総選挙直前の欧州議会選挙で躍進した社会党は主導権を握れず、左派内での主導権奪還を狙う「不屈のフランス」のジャン=リュック・メランション氏のスタンドプレイは、外国メディアの報道にも少なからぬ影響を与えている。新人民戦線で浮上する次期首相候補はすぐさま内部対立で消えて行く。現在の左派の議論は事実上、左派と与党連合が連携し「不屈のフランス」を切り捨てるまでのポーズに過ぎないと見るべきではないか。[現地レポート] フランスで、右翼「国民連合」、左派左翼連合「新人民戦線」、大統
高田馬場の不動産業者は、中国人経営の店舗は今後も増えると予想する(C)moonrise/stock.adobe.com JR山手線の高田馬場駅周辺では、中国人向けに本場の味を提供する「ガチ中華」の店が目立って増えた。近隣の早稲田大学に中国人留学生が増えたほかにも、治安が良く住みやすいという高田馬場の地域性が影響しているという。海外から日本国内に移り住む人々の暮らしが、日本の風景を変えつつある。ノンフィクション作家の中原一歩氏は、近著『寄せ場のグルメ』(潮出版社)で高田馬場における中国料理店の歴史を繙いた。 *** 夕方5時。JR高田馬場の駅前は騒然となる。早稲田大学をはじめ、駅周辺にある日本語学校、専門学校の授業が終わり、そこに通う各国の留学生が、一気に駅の構内になだれ込むのだ。日本語は全く聞こえてこない。飛び交うのは韓国語、ベトナム語、タイ語、台湾語、そして、中国語。朝夕の2回、高田馬場
10月8日、ドイツの大手メディアはイスラエルの国旗を掲げて「全面的な連帯」を表明した(アクセル・シュプリンガーのXより) ドイツの大手メディアはイスラエルに批判的な報道をする際、「反ユダヤ主義」の烙印から逃れるためにフリーランスのジャーナリストを使うと、あるジャーナリストは指摘した。ガザから移住した元ジャーナリストは、多くの中東出身者が信じたドイツの言論の自由は「フェイクだった」と批判する。「ドイツ人はイスラエルが何をしようと決して批判しない」との不文律が「国是」と結びついたドイツで、メディアは深刻なジレンマを抱えている。 2023年10月7日、イスラム組織ハマスのテロ攻撃によって、イスラエルで1200人が死亡すると、ドイツ最大級のメディア企業アクセル・シュプリンガーは次のような声明を出した。 「テロ組織ハマスによる10月7日のイスラエル攻撃により、数百人の市民が死亡し、数千人が負傷したこ
徴兵対象年齢が引き下げられ、人々はウクライナの兵力不足と苦戦を否応なく意識している。しかし一方、街の復興と「正常化」は、ロシア軍侵攻当初に人々を結び付けた国家防衛の一体感を次第に薄れさせて行く。希望の底に重苦しさが蟠る日々、「誇り」は減じ「悲しさ」や「恐れ」が膨らみ始め、そうした状態に慣れるにつれて、かつての汚職や政争が頭をもたげているという。【現地レポート】 前回筆者がウクライナに滞在した2022年12月~23年1月の冬は、ロシア軍による電力施設攻撃が集中して停電が多く、首都キーウは暗闇に包まれていた。ロシア軍の侵攻当初に比べると人が戻っていたものの、一部の商店や飲食店は閉まったままで、市民が生活を謳歌する状況にはなかった。 今回、街の賑わいぶりは明らかに異なるレベルである。店は軒並み開き、中心街ではショッピングを楽しむ市民が目立つ。ミサイルやドローンによる攻撃を知らせる警報は毎日のよう
恒大集団の経営危機は「通説」より早い時期、少なくとも2019年には始まっていた[2024年1月29日、中国・南京](C)AFP=時事 中国経済を根底から揺さぶる住宅・不動産問題、その象徴とも言うべき恒大集団は2020年夏の不動産規制で経営危機に転落したというのが「通説」だ。だが、先ごろ明らかになった恒大の巨額粉飾決算の実態を分析すれば、正味の危機はもっと早く訪れていたと見るべきだろう。2014年に公布された習近平総書記の肝いり政策「新型都市化 」で沸騰した中国不動産バブルだが、その“崩壊”は一般に考えられてきたより早く、2010年代後半には始まっていた。 売上11兆8400億円を過大に計上。史上最悪の粉飾決算が発覚した。 中国不動産大手・恒大集団(エバーグランデ)は2019年に2139億元(約4兆4900億円)、2020年に3501億元(約7兆3500億円)の売り上げを水増ししていた。中国
UNRWAの活動分野は、教育、保健、社会サービス、難民キャンプのインフラ整備・環境改善、保護、小規模金融、緊急支援、と多岐にわたる[ガザ地区南部のラファでラマダン前に慈善団体から寄付された食料を受け取る人々](C)EPA=時事 UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)はパレスチナ問題の生成に関わった国連の贖罪意識が投影された組織と言える。占領者イスラエルに代わり難民の基本的生活を保障する「疑似行政機構」としての性格は、職員の99%以上が現地パレスチナ人という特殊な組織形態を必要にした。ハマスによる10月7日テロ攻撃にUNRWA職員が参加したとのイスラエルの糾弾と続く各国の資金提供停止・再開、UNRWAを介さない援助活動の模索といった動きは、こうしたイスラエル・パレスチナをめぐる大きな「思想戦」の文脈の中に位置付けて捉える必要がある。UNRWAとも良好な関係を持っていた日本は非常に苦しい
一枚の写真が論争を呼んだ。ハマス-イスラエル戦争の当事者、イスラエルを訪ねた日本の外務副大臣一行の前に並ぶのはスライスされたスイカだ。スイカはパレスチナのシンボルであり、それを「スライスして喰う」という暗黙のメッセージではないかと言うのだ。実際、外交では食事や会談場所にメッセージが込められることは珍しくない。そしてビジネスや日常生活の場面でも、同様の難題は意外に頻繁に起きている。 2024年2月28日、外務省は、イスラエルを訪問中の辻清人外務副大臣が、同国のイスラエル・カッツ外務大臣を表敬したと報道発表した。辻副大臣は、イスラエル側に対して、ガザ地区の人道支援活動が可能な環境の確保や、人質解放につながる人道的で持続可能な停戦の実現を求め、日本政府の従来の立場であるイスラエル・パレスチナ問題の二国家解決の必要性を強調した、という。 本会談の意義としては、まず日本政府の立場を明確に伝えたこと、
実際の秘密指定事例が著しく狭いものとなる可能性が高い[経済安全保障推進会議で発言する岸田文雄首相(左から2人目)=2024年1月30日、首相官邸](C)時事 「セキュリティ・クリアランス(機微情報の取扱資格)」制度の導入に必要な「重要経済安保情報の保護・活用法案」(仮称)が、近く国会に提出される。経済安全保障上の機微情報を扱う人の適格性を国が認定する同制度をめぐっては、人権・プライバシーの問題が多くの関心を集めるが、日本企業が国際展開の現場で機微情報に関わるためのルール作りという本来の狙いは十分に達成できるのだろうか。 岸田文雄総理は、本年1月30日の経済安全保障推進会議において、経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度に関する法案の通常国会提出に向けた準備を加速するよう高市早苗経済安全保障担当大臣に指示を行った。これは、それに先立って、本制度に関する有識者会議において議論の
ドイツ・バイエルン州郊外で標識にぶら下げられた長靴。農民の抗議活動の象徴だ(leopictures / Shutterstock) 「予算措置」に違憲判決が下ったショルツ政権は、穴埋めに農家向け補助金の廃止を打ち出した。しかし農民たちはデモで抗議、各地で交通が麻痺状態に陥っている。相次ぐ政策ミスで政権支持率はさらに低下し、デモを利用した右翼政党の躍進も予想される。 * * * 1月8日、ミュンヘン、エアフルト、ハレなどドイツ各地の幹線道路、高速道路は、数千台の大型トラクターが引き起こした渋滞のために、通行できなくなった。ショルツ政権の歳出削減策に抗議するために、ドイツ農民連盟(DBV)が組織したデモである。農民たちが運転するトラクターには、「我々が農作物を作らなければ、市民は空腹になる」、「政府は我々の仕事の価値を認めてくれないのか?」などのプラカードが取り付けられている。 去年12月中旬
岸田文雄政権は所得税・住民税の減税を決めたが、インフレ対策としては消費減税こそが必要だという声も多い。だが、そこには「税の帰着(tax incidence)」という視点での消費税理解が欠けていると、小黒一正・法政大学経済学部教授は語る。(取材・構成:名古屋剛) *** ――「インフレ対策として、国民が求めているのは消費減税だ」といった意見もありますが、小黒先生は「消費減税では財・サービスの価格が下がるとは限らない」と主張しています。なぜでしょうか。 小黒一正(以下、小黒) それは、消費税が本質的に「第2法人税」の性質をもつからです。 ――「第2法人税」とは、どういう意味ですか。 小黒 法人税と消費税は課税ベースが若干異なるだけで、本質的には似た課税方法なのです。法人税の課税ベースは「売上-(原材料費+人件費)」で、消費税の課税ベースは「売上-原材料費」。これに各々の税率をかけて、税額を算出
ロシア軍は昨年12月の大統領令が示した定員132万人規模に既に達している可能性が高い[対ドイツ戦勝記念日のパレードのリハーサルに臨むロシア軍=2023年5月7日、ロシア・モスクワ](C)AFP=時事 ウクライナ侵略前は90万人台前半とみられたロシア軍は、昨年12月の大統領令で示した定員132万人を既に満たしていると考えられる。戦時増産が続く「モノ」についても、ウクライナとの相対戦力差をいずれ逆転しかねない。膨らむ国防費を賄うのは石油・天然ガス関連収入だ。価格高止まりが前提だが、当面、ロシアの戦費は尽きないだろう。だが、それは1979年のアフガン侵攻から91年のソ連崩壊へと続く歴史の再現かもしれない。 ロシアがウクライナへの侵略を開始してから丸2年が経とうとしている。この間、戦況についてはメディアが詳しく報じてきたが、侵略を行っているロシアの軍事力がどのような状態にあるのかについては意外に報
東大卒のノーベル賞受賞者で、東京の高校を卒業した人はいない (C)yu_photo / stock.adobe.com 英『ネイチャー』誌は、2023年10月25日、「日本の研究力はもはや世界レベルではない」という記事を掲載した。文部科学省は東北大学を「国際卓越研究大学」の認定候補に選定し、巨額の予算を措置するつもりだ。おそらく、その効果も限定的だろう。明治以来、巨額の予算を措置されつづけた理3の現状が、そのことを示している。 知人のジャーナリストが、東京大学理科3類(理3)についての本を出すというので取材を受けた。理3は医学部医学科へと進学する東大教養学部の科類で、日本の大学受験の最難関とされている。 知人の関心は「日本でもっとも優秀な頭脳が集う東大理3から、なぜノーベル賞受賞者が出ないか」だった。私は1987年に東大理科3類に合格した。今年は入学から38年目になる。このことについて、自
ハマスによる奇襲攻撃を防げなかった責任は、軍と諜報機関の最高指揮官である首相に帰着する。イスラエル国内は政権の司法制度改革法案で戦前からすでに分断され、予備役兵士の招集拒否など安全保障体制への悪影響も指摘されていた。「パレスチナ自治政府とハマスの分断を維持することでパレスチナ国家の成立を阻止する」と語っていたともされるネタニヤフ首相に、戦闘終結後に責任を問われるべきだとの国内世論が高まっている。 「ミスター・セキュリティ」としてイスラエルを史上最も長く率いてきたベンジャミン・ネタニヤフ首相。愛称は「ビビ」。2度の失権から這い上がり、権力をほしいままにしてきたその巧みな政治術は「キング・ビビ」の愛称に相応しいとも言える。しかし、10月7日のハマスによる攻撃を招いた大失態は、その“キング”を窮地に追い詰めている。イスラエルのハマスとの戦いは、ネタニヤフ首相の政治生命をかけた戦いと言っても過言で
残虐な殺人事件を起こし世間を震撼させた一人の少年が、更生保護委員会による「社会復帰に問題なし」との判断を得て医療少年院を出てから、来年で20年となる。社会復帰後も遺族の意向を無視して手記を出版するなど、彼の「更生」に疑問を抱く人は多いだろう。「元少年A」は本当に更生したのか。そもそも更生とは何なのか。数々の少年事件を取材してきた記者が考察する。 神戸連続児童殺傷事件をおこした酒鬼薔薇聖斗こと少年A。 すでに少年院を出て、私たちと同じ社会に暮らすAは、はたして更生しているのだろうか――。 じつは、法律には「更生」の定義がない。更生の意味合いは、きわめて曖昧で、抽象的でもある。それだけに、何をもって更生したといえるのか、はっきりしない。 それでも国が更生のために、絶対に必要だとする条件がある。 再犯をしないこと、だ。 かつて刑法に触れる行為をした少年に、再犯をさせないこと。それが、国の更生保護
今年8月、栃木県宇都宮市に誕生したLRT(次世代型路面電車)「ライトライン」。国内の路面電車としては75年ぶりの開業で全国各地からの視察が殺到している。慢性的な交通渋滞の解消、高齢者や学生の移動手段確保、周辺地価の上昇、企業誘致とメリットも多く、これからのまちづくりにおける大きなヒントとなっている。 2023年8月、栃木県宇都宮市でLRT(Light Rail Transit、次世代型路面電車)が開業した。「ライトライン」という愛称がついたLRTは、JR宇都宮駅から中心市街地とは反対の東側、芳賀町までの約15キロを結ぶ。隈研吾氏がデザインした東口交流拠点の広場横をゆったりと通り、これまで全くにぎわいのなかった駅東口、そしてその沿線の光景を大きく変えた。鉄軌道のなかった場所に一からLRTを新設する、日本初の試みである。以下、その経緯と概要、そしてその効果や今後の課題を追ってみよう。 ライトラ
「先端研創発戦略研究オープンラボ(ROLES)」による動画配信「ROLES Cast」。10月14日収録の第12回では、ROLES代表の池内恵氏と東京大学先端科学技術研究センター・グローバルセキュリティ・宗教分野の特任研究員に着任した松田拓也氏が、同月7日に発生したハマースによるイスラエルへの越境攻撃の初期状況を踏まえ国際政治に与える影響を展望した。ハマスの越境攻撃からの情勢変化を捉える記録として、ROLESCast#012、#013(上・下)を同時公開。 ※両氏の対談内容をもとに、編集・再構成を加えてあります。 池内 今回は松田拓也特任研究員との議論を通じて、現状分析をしていきたいと思います。テーマは10月7日に発生した、ガザ地区のハマースによるイスラエルへの越境攻撃です。今回の攻撃が中東の国際関係、そして国際社会全体に及ぼす影響について検討します。 松田さんは10月1日付で当センターに
パレスチナ民間人を守らなければ、ガザで「戦術的な勝利」を得られたとしても「戦略的敗北」を喫するだろう――オースティン米国防長官がイスラエルに向けた警告には、自国がイラク、アフガニスタンで犯した過ちの苦い教訓が刻まれている。イスラエル支持と国内外からの批判の板挟みとなったアメリカは再びの過ちを避けられるか。ガザへの対応の誤りは、「法の支配」「人道」といった西側諸国が示してきた規範の危機にも結びつく。 10月7日、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの越境攻撃で、外国人を含むイスラエルの民間人約1200名が犠牲となり、200名超が人質とされた。イスラエルのネタニヤフ政権は即座に、ガザでの大規模な空爆と地上戦に乗り出し、12月はじめの数字で1万5000人を超えるパレスチナ市民が犠牲になっている。12月1日朝までの7日間の休戦を経て、ネタニヤフ政権は改めて、ハマス
2022年12月、ガザでのハマス創設35周年記念集会に登場したヤヒヤ・シンワル氏(中央)。この時すでに、今回のイスラエル奇襲を計画していた (C)Anas-Mohammed / Shutterstock.com ハマスによるイスラエル奇襲を残されたインテリジェンスから読み解くと、1年以上前から周到に計画され、「穏健化」の皮をかぶってイスラエルを欺いたことが見えてくる。そしてイスラエルの過剰な報復による人道危機をも狙っていたのかもしれない。 戦場はインテリジェンスの宝庫だ。奇襲を受けたイスラエルでは、パレスチナ武装勢力「ハマス」の戦闘員が戦死して遺した書類や地図、食糧、武器などを分析し、ハマス側の戦闘計画や戦略目標などが判明したというのだ。 ロシア軍のウクライナ侵攻では、米国と英国は遺された兵器を分解して、部品の生産国を突き止め、輸出管理の強化に努めた。太平洋戦争では、米軍が南太平洋の島々で
ハンガリーの家族政策がジェンダーや性的マイノリティの平等を置き去りにしてきた側面も否めないが――[修道院付属の小学校の生徒のために行われる教育授業=2021年9月1日、ハンガリー・ホドメゾヴァザルヘイ](C)AFP=時事 2010年に世界最低レベルだったハンガリーの出生率は、オルバーン政権下で一定の改善を見せてきた。「子供を4人産むと母親の所得税が免除」など、日本でも注目される施策の効果を検証すれば、必ずしも意図した形で結果が出ているとは言い切れない。また家族のあり方を政府が条件付けることの是非も軽視はできない問題だ。しかし、「政治的意思(予算)」「組み合わせ」「継続性」という観点では、日本に多くの示唆を与えている。 「静かなる有事」――少子化や人口減少は、治安や防衛、企業活動といった各種社会機能、そして国力の維持にも大きな影響を与えることから、このように呼ばれている。日本において、少子化
バイデン政権屈指のロシア通といわれるオースティン国防長官(右)とゼレンスキー大統領(左)の会談は事前の予告なく行われた[11月20日、ウクライナ・キーウ/UKRAINIAN PRESIDENTIAL PRESS SERVICE](C)AFP=時事 「支援疲れ」に中東情勢の緊迫も加わり、ロシア・ウクライナ戦争をめぐる欧米メディアの報道に潮目の変化が起きている。ウクライナ軍の反転攻勢の失敗や兵員不足に多くが言及、バイデン政権の対応にも批判が集まる。現状でロシア側が占領地域を手放すことは考えにくい。このまま停戦交渉に向かった場合、ウクライナが領土割譲という苦渋の選択を強いられるとの見方が台頭している。 ロシア軍の全面侵攻から1年9カ月を経たロシア・ウクライナ戦争は、ここへ来て潮目が変わりつつある。 ウクライナ軍の反転攻勢は成果を得られず、政権内の亀裂が伝えられる一方で、ロシアは長期戦に持ち込み、
難民申請を事実上2回までに制限する改正出入国管理・難民認定法が成立し、川口市ではクルド人を念頭に置いた「一部外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」が採択された。半年後に再度取材を試みると、インタビュー時は日本社会のルールを守る重要性を語っていたクルド人の男性は、「強制送還するならやってみろ」と激高した。 インタビューを続ける中でA氏は、物騒な発言をした。 「入管の人間を3回殴ったことがある。血だらけにしたこともあるし、捕まったことはないが。今はいいんだけれど、僕らを人間として見ていなかった。娘が5歳の時に、『この人本当にあんたのパパなの』と5歳の子に聞いた。外にいる日本人と入管の日本人は同じ日本人かと思う位だ。(入管職員が)お父さんの耳を引っ張ったんだよ。俺、入管職員ぼこぼこにした」 こうした発言に対しては、「入管職員も法律を守らせねばなりませんよ」とややたしなめるように言うと、
埼玉県南部には数多くのクルド人が暮らし、その多くが建設現場での解体工事などに従事している。難民申請を出し続けることで送還を忌避しつつ、結婚して9年になる日系ブラジル人の妻名義で購入した土地で会社を経営しているというクルド人男性へのインタビューでは、日本に住む理由として「子供の教育」「就労の機会」「治安の良さ」を挙げるなど、「難民」の枠では括れない現実が浮かび上がる。 埼玉県南部の川口市および蕨市にはクルド系トルコ人(以下クルド人)数千人が居住すると見られている。これらの人々は、「トルコで迫害にあって逃れてきて、日本の出入国在留管理庁(入管)から冷酷な処遇を受けながらも、帰るに帰れないでいるかわいそうな人々」といったイメージが一般的ではないか。ただ、現地で取材をすると実態はかなり違う。 ここでは、川口市で解体業を事実上営むクルド人A氏のインタビューを紹介したい。在日クルド人の発想がよく理解で
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く