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誰にも言えない話
ある古典芸能の家。 家元とか名家やない、言うたら町のお師匠さん。 明治維新でお抱えから放り出され、... ある古典芸能の家。 家元とか名家やない、言うたら町のお師匠さん。 明治維新でお抱えから放り出され、おじいさん(祖父)の時代には戦争で芸事が一旦わやくちゃになって、おじいさんの一人娘(母)の婿(父)は、芸を継ぐ婿と違て、ふつうの会社員やった。 当時は女がする芸事やなかったから、娘に継がすことはできひんし、ちゃんと定期収入がある婿はありがたかったんやろな。 まあ、たいそうな歴史のある家でもないからね。 おじいさんは孫の自分から見たらツルっ禿げの爺やったけど、家の外に恋人がいはった。 相手は娘(母)が小学生のときの担任。えぐい話。おばあちゃんも、おじいさんの前でよそのお師匠さんを褒めて空気を冷やすような人やったから、おじいさんの気持ちが外に向いたのも仕方ないかもしれん。 お父さんは堅い会社の真面目なサラリーマン。 自分は遅く生まれた子で、そんな父親よりもおじいさんの方を尊敬して、芸の道に入った。