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ch.nicovideo.jp/chimera
10 九十九(つくも)の見ている前で、久鬼が静かになっていった。 騒いでいた顎(あぎと)たちの声がおさまってゆき、猫が喉を鳴らすような、低い唸り声のような、甘えるような、そういう声を発するようになった。 獣毛が抜け落ちてゆく。 久鬼の全身から生えていたものが、ゆっくりと、身体の中に消えてゆく。 消えぬものも、あったが、それはまた別のものになってゆく。 それらが、背から生えた、一本ずつの青黒い腕となってゆく。 幾つかあった顔が、久鬼の顔の周囲に集まってゆく。 どこかで、見たことがある―― 九十九はそう思った。 顔が、幾つかある仏像。 腕が何本もある尊神。 獣のような、牙を生やした神。 不動明王? 大威徳明王、ヤマーンタカ? 久鬼は、そのような姿となった。 巫炎(ふえん)の翼が、ばさりと振られた。 久鬼の翼が、ばさりと動く。 ふたりの身体が、ふわりと草の上に浮きあがった。 ゆっくりと、ふたりの
おのれの内に幻獣・キマイラを秘めた少年、大鳳吼(おおとり こう)と久鬼麗一(くき れいいち)が主人公。大鳳の拳法の師である玄道師の真壁雲斎(まかべ うんさい)は彼らの身を案じ、キマイラ化の真相を探ろうとする。また真壁の下で拳法を学ぶ九十九三蔵(つくも さんぞう)や、大鳳に思いを寄せる織部美雪(おりべ みゆき)も二人の運命を憂え、救いの手を差し伸べる。やがてキマイラ化した麗一を追って、麗一の父・久鬼玄造(くき げんぞう)と三蔵たちは、南アルプス山麓へと向かうが。
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