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事務機器(OA)各社が人手不足や熟練者の減少などの課題解決に向けた自動化や、さらなる高品質化、環境対応のアピールに力を入れている。独デュッセルドルフで7日に閉幕した世界最大規模の印刷機材展示会「ドルッパ」には、キヤノンやリコーなど大手が出展。8年ぶりのリアル開催だったこともあり、各社展示に熱が入った。(新庄悠) 印刷業界では版を使った主流のアナログ印刷から、多品種小ロットなど柔軟に対応でき、版不要で環境負荷が低減できるデジタル印刷への移行が進む。キヤノンが展示したB3サイズ対応のインクジェットデジタル印刷機「varioプリント iX1700」や、リコーのB2サイズ対応の枚葉インクジェットプリンティングシステム「RICOH Pro Z75」はデジタル印刷はもちろん、環境に優しい水性インクを採用しているのも特徴の一つだ。 キヤノンの同印刷機やコニカミノルタのB2サイズ対応インクジェット印刷機「
東京農工大学の山本明保准教授らは、鉄系高温超電導磁石の磁力を2倍以上に高めることに成功した。マイナス235度Cで電流を流すと2テスラ超の磁力を得た。多結晶材料であるため、セラミックス材料の製造プロセスを利用できる。医療用磁気共鳴断層撮影装置(MRI)や核磁気共鳴(NMR)などに提案していく。 人工知能(AI)技術のベイズ最適化と研究者による仮説検証の二つの開発アプローチを並走させた。データは共有してそれぞれ実験を繰り返す。AI主導では純粋に材料の電流特性を高めるように探索し、研究者は作りやすさなどの電流特性以外の数値で表現しにくい要素も勘案しながら探索した。 二つの材料を重ねて評価すると低温で2テスラ超の磁力を得た。世界記録の2倍以上に当たる。研究者製の材料は磁場がない条件で最高の電流が得られ、AI製の材料は磁場条件で最高の電流を得られた。個々の比較評価はしなかった。 AI製の材料は結晶粒
多様な声を運営に反映 学術のガバナンス(統治)が節目を迎えている。国立大学の法人化から20年がたち、各種調査が示す改革の成果は芳しくない。競争原理と政策誘導で大学の経営を導いてきたが、多様なステークホルダー(利害関係者)と重要業績評価指標(KPI)に囲まれて身動きが取れなくなりつつある。学長の強権化に伴う副作用を指摘する声も上がる。法改正で規模の大きな大学では法人運営を監督する運営方針会議が設置される。これに類する仕組みが日本学術会議にも適用されようとしている。大学と国立研究開発法人などの役割分担を再考する時期にきている。(2回連載) 「ほとんど効果がないか、あってもわずか。いくつかの政策は負の効果を及ぼしている」―。鈴鹿医療科学大学の豊田長康学長は指摘する。国立大法人化などの影響を分析した。対象とした政策は四つ。2004年までの国家公務員総定員法と大学院重点化、04年からの国立大法人化、
ファナックは塗装現場で利用できる世界初の防爆協働ロボットを開発し、8月に市場投入する。ロボットが工場の爆発源にならないように、各国・地域の防爆規格に対応する。自動車メーカーのような大手企業では塗装の自動化が進むが、中小企業や多品種を扱う場合は自動化が進みにくい。塗装現場は有毒ガスを防ぐマスクの装着が必要で労働環境も良くないとされる。ロボットへの置き換えニーズを取り込むことで人手不足にも応える。 新たに市場投入するのが国際規格防爆協働ロボット「CRX―10iA/L Paint」だ。可搬質量は10キログラムでリーチ(可動範囲)は1418ミリメートル。アームの長さを生かして、ロボット1台で自動車ドア1枚分程度の大面積の塗装を可能とする。自動車や自動車部品、家具など塗装の必要な製品は全て対象となる。国内や欧米、中国、インドなど世界で拡販する。 製造現場の人手不足が課題となる中、大企業から中堅・中小
NTTは通信ケーブルを通す地下パイプや電柱を介さずに、路面の溝に敷設可能な光ファイバーケーブルを開発した。路面上でも容易にケーブル同士を接続できるコネクターを用いることで、大規模な掘削や建柱工事をせずに光ファイバー網を構築できる。従来比で作業時間を5分の1程度に削減できることから、自動運転用インフラや、より多くの基地局設置が必要な次世代通信網の整備などでの活用を見込む。 NTTは光ファイバーケーブルの外径を従来比3分の2の6ミリメートルに縮小し、道路などのアスファルト舗装に形成した深さ約3センチメートルの溝に通す技術を開発した。溝は、道路工事に使うアスファルトやコンクリート用の型を用いて形成する。この溝の中に光ファイバーケーブルを埋めて光回線網を構築する。これにより、道路脇の街路灯などに設置した第5世代通信(5G)用アンテナへ容易に光ファイバーケーブルを通せる。 敷設できるケーブルは、40
豊田合成は次世代のパワー半導体とされる窒化ガリウム(GaN)パワー半導体について、高品質な製造技術の開発に着手する。2024年度末にGaN結晶の大型育成炉を増設し、生産能力を現在比で最大10倍程度に拡大。高品質で大口径のGaN基板を安定して製造できる体制を確立する。高効率と高速スイッチングを実現できる同半導体は電動車用モーターやデータセンターなどでの利用が期待されており、同社は脱炭素社会の実現に貢献する。 GaN結晶の育成炉は豊田合成の美和技術センター(愛知県あま市)に1台増設し計2台体制にする。新たな育成炉は一度に複数枚の結晶の育成が可能。これにより量産化を見据えた結晶の品質検証やデバイスの性能検証を加速する。 同社と大阪大学は、ナトリウムとガリウムを混合した金属溶液に高圧で窒素を注入しGaNを合成する「Naフラックス法」を活用し、大型GaN結晶の成長技術の確立に取り組んでいる。現在は6
研究支援など新人事制度 新潟大学は大学改革を企画し推進する「ユニバーシティーアドミニストレーター(UA)」職の仕組みを確立する。2023年度新設のUA室を中心に、産学・地域連携の専門人材や研究支援のリサーチアドミニストレーター(URA)などをまとめ、新人事制度を整備する。約10年間でUAを倍増させ戦力とし、32年度の外部資金獲得額を23年度比2・4倍の年77億円に引き上げる計画だ。 新潟大のUAは大学と外部機関との協働で、大学改革と資金獲得を連動させる高度専門人材だ。研究支援以外にも産学共創、地域連携、寄付金集め、教育、デジタル変革(DX)、情報分析、戦略広報、知的財産、施設・設備などあらゆる分野を対象とする。 UAは23年度の25人を32年度で50人にもっていく。連動して動く事務職員は45人を70人に増強。これにより外部資金獲得は年32億円を77億円にする。24年度中に対象者をUA室に配
21年に共用開始した「富岳」。02年の「地球シミュレータ」、12年の「京」と国産スパコンの旗艦機は10年周期での開発が続いてきた 日本のスーパーコンピューター研究にとって2024年は熱い夏になる。理化学研究所のスパコン「富岳」後継機の予算要求が控えるためだ。日本はフラッグシップマシンを10年に1台のペースで作ってきた。これでは半導体技術の進化を取り込みにくい。そこで時期をずらして2台分のマシンを開発することが提案されている。予算が増えなければ分割することになり、評価が悪ければ減額もよぎる。予算を預かる文部科学省にとっては正念場になる。(小寺貴之) 「2システムを整備・運用することは可能。最新設備へアップグレードしやすくなり、エネルギー効率も高まる」―。文科省の検討会で理研計算科学研究センター(R―CCS)の松岡聡センター長が2台分の並行開発を訴えると、他の委員から「予算は大丈夫なのか」と声
文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は、全国の大学・研究機関を調査し、中堅大学で研究者の研究予算充足感が悪化していることを明らかにした。大学を論文数で四つに分けると第2グループ(G)と第3Gで状況認識が厳しくなっている。研究時間は8割の研究者が不足と回答。大学の財源不足が人材不足を招き、業務が増えて研究時間が削られていた。(小寺貴之) 研究者のマインドを計る総合的意識調査の2023年度版を発表した。第1Gは論文数上位4大学、第2Gが続く14大学、第3Gは続く26大学、第4Gは137大学。研究基盤や基盤的経費、競争的資金の状況認識が第2Gと第3Gは第1Gや第4Gに比べて減少した。「自分のやりたい研究を自由にできる感じではない」などの声が上がっている。 研究時間の充足度では約8割の研究者が理想よりも少ないと回答した。理由は組織運営の会議や入試業務、研究費獲得のための書類作成などが
信州大学の金子克美特別特任教授と公立諏訪東京理科大学の内海重宜教授らの研究グループは単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を使ったエネルギー貯蔵法を開発した。SWCNTとポリウレタン系材料の複合ロープをねじってエネルギーをためる。同じ重量のリチウムイオン電池(LiB)の3倍以上のエネルギーを貯蔵できるとしている。 重量当たりのエネルギー密度と出力密度はLiBと比べて約3倍、一般的な輪ゴムをねじった際の約1000倍。またLiBに対して軽量で爆発の危険が無く、マイナス60度―プラス100度Cの広い温度範囲で能力が変わらない。 電気エネルギーへの変換も容易で、人工心臓など体内デバイスのエネルギー源としての活用も期待できる。
規制強化で冷媒争奪戦 不適切処分は社名公表 2024年、空調機器や冷凍・冷蔵庫の冷媒として一般的な「代替フロン」への規制が強化された。現在、使っている冷媒の入手が困難となる事態が想定されており、“空調の2024年問題”と呼ばれる。また、東京都はフロンの不適切な処分への取り締まりを強化した。経営者は正しく理解していないと法令に違反する可能性もあり、フロン管理は経営の課題となった。(編集委員・松木喬) 代替フロンはハイドロフルオロカーボン(HFC)類。温暖化を助長する温室効果ガスの一種で、二酸化炭素(CO2)と比べ2000―1万倍も強い温室効果を持つ。 国際社会は2016年、「特定フロン」の全廃を決めたモントリオール議定書の規制対象にHFCを追加した。これが「キガリ改正」だ。各国に代替フロンの段階的な生産・消費量の削減を義務付けており、日本は24年以降、11―13年の平均比40%削減が求められ
【名古屋】JR東海はMIRAI―LABO(東京都八王子市)と共同で、太陽光路面発電装置と電気自動車(EV)の使用済み電池を組み合わせた自立給電システムの実証実験を開始した。愛知県小牧市の小牧研究施設の路面に設置し、充放電を繰り返して耐久性を評価する。 実証実験の期間は、2025年3月までの計画だ。 同システムは太陽光路面発電装置と、EVの使用済み電池を用いた蓄電装置で構成している。太陽光路面発電装置は道路に設置可能な太陽光パネルと、リサイクルプラスチックを使用したパレットを組み合わせている。強度が高いため、装置の上を人が歩くことができる。 鉄道関連施設での再生可能エネルギーの利用拡大や、災害時の非常用電源としての活用を見込む。実証実験で安定的な自立給電が可能かを判断し、システムの適用可能性について検討していく。 同システムは設置箇所の制約が少なく、パレット状で大規模な設置工事も不要。そのた
鈴鹿医療科学大学の豊田長康学長は、国立大学法人化や新医師臨床研修制度などの科学技術政策による研究力低下を可視化した。経済学などで使われる自然実験という観察研究手法を用いて、政策の対象群と非対象群の大学を比較した。すると国立大学法人化による負の影響が最大となった。研究力を引き下げている可能性がある。 2004年の国家公務員総定員法と大学院重点化に加え、国立大法人化、新医師臨床研修制度の導入、06年の薬学部6年制の導入の4政策の影響を検証した。この前提に04年ごろから日本の研究論文の質と量を掛け合わせた研究力指標が低下しており、その背景には研究者の正味の研究時間と研究者数が減少していることがある。 4政策の対象となっていない早稲田大学などの私立で医学部や薬学部のない総合大学15校と、政策対象となった国立大学を比較した。すると00年から21年で非対象群の私大は1・3倍ほど研究力が伸びているのに対
半導体製造工程の「日陰」のような存在だった後工程の重要性が高まっている。これまで半導体の性能を決めてきた前工程の微細化に限界が見え始めているからだ。そこでチップの性能を高めるため、複数のチップを一つのチップのように積層するなどの「先端パッケージング技術」の開発が進んでいる。ラピダス(東京都千代田区)なども開発に乗り出しており、半導体業界の一大トレンドになっている。(小林健人) 4月、先端半導体の量産を目指すラピダスが経済産業省から最大5900億円の支援を受け、後工程の研究開発に乗り出すと発表した。5900億円のうち535億円を活用。セイコーエプソンの千歳事務所(北海道千歳市)の一部を使う形で後工程の開発を進める計画だ。記者会見でラピダスの小池淳義社長は「前工程だけでなく、後工程、設計支援。この三位一体となったビジネスモデルの実現が重要だ」と後工程の重要性を強調した。前工程と後工程で最先端技
日本発研究プロ加速 IBM機など国内導入 スパコン「富岳」と連携 潮目はどう変わったのか―。量子コンピューティングの本格登板は、「FTQC」と呼ぶ「誤り耐性」を備えた大規模な量子コンピューターが登場する2030年以降と目されていた。だが、この1年間で技術革新が進み、量子コンピューターが既存の古典コンピューターよりも速く特定の問題を解決できる「クアンタムアドバンテージ(量子優位性)」の実現がぐっと近づいた。こうした潮目の変化を追い風に日本発の新たな研究プロジェクトがキックオフした。(編集委員・斉藤実) 既存の量子コンピューターはノイズの影響を受けやすく、計算でエラーが生じる。これを緩和する技術が20年前後から米IBMをはじめ相次ぎ発表された。ハードウエアの改善と相まって、FTQCの登場を待たずとも、既存の量子コンピューターでも大きな問題を解けるめどが付いたことで、世界中の量子研究者が新たな技
NTT法見直しの本丸であるNTTの“特別な資産”や外資規制のあり方に関する議論が佳境を迎えている。有識者や関連企業が参加する情報通信審議会(総務相の諮問機関)の作業部会で、それぞれの議題の方向性が見え始めてきた。NTT法見直しは日本の通信産業の今後の方向性に大きな影響を及ぼす。国際競争力の強化に加え、変化が激しい通信技術の進歩にも対応できる制度が求められる。(編集委員・水嶋真人) 特別な資産 インフラ提供は責務 「NTTが維持し、そこに設置される電気通信設備の発展責務を課すべきだ」―。作業部会の構成員を務める名古屋大学大学院法学研究科の林秀弥教授は、電柱や管路といった特別な資産についてNTTが引き続き運用することは合理的だとの私論を示す。 NTT東日本、NTT西日本は全国の局舎約7000カ所、電柱約1186万本など日本電信電話公社(現NTT)が約25兆円を投じて建設した線路敷設基盤を受け継
人工知能(AI)技術と著作権など、生成AIに対して社会が抱える懸念に対処する方向性が見えてきた。文化庁の小委員会は著作権の考え方を、内閣府の知的財産戦略推進事務局は知財全般の骨子案をそれぞれ示した。流動的な面があるものの大枠は示された。著作物を学習し放題の“機械学習パラダイス”とされた法解釈は、クリエーター寄りに修正される。データの対価や作風などの判断は業界や司法に委ねられ、業界のガバナンス(統治)に国が管理できるかが課題になる。(小寺貴之) 著作権法では著作物を他人が享受しない場合は著作権が制限される規定がある。この制限規定のために著作物は学習し放題とされ、AI開発者にとって“機械学習パラダイス”と言われてきた。海外で画像生成AIにクリエーターらが反発し、日本でもクリエーターや事業者などから懸念が表明されていた。 文化庁の指針では非享受目的は引き続き権利制限が適用されるものの、享受目的が
文部科学省で博士号取得者を3倍に増やす「博士人材活躍プラン」が始動する。約30年前の「ポスドク1万人計画」と異なるのは博士人材の需要を学術界の外に作ろうとしている点だ。大学などのポストはほぼ増えないことを前提に、産業界や教育界に採用拡大と処遇改善を働きかけ、多様な場面で博士人材が活躍する社会を作る。この多くは文科省の手の届かない領域だ。実現には在野の博士人材の協力が欠かせない。(小寺貴之) 「日本では『博士=研究者』というイメージが強過ぎる。国際機関では修士号は当たり前で半分くらいは博士号を持っている」と盛山正仁文科相は指摘する。博士号は専門人材としての出発点に立ったという証で、海外では博士号がないと相手にされない場面が多々ある。盛山文科相は運輸省(現国土交通省)時代に経済協力開発機構(OECD)に派遣され、博士号がベースラインとなる海外での“当たり前”を経験してきた。 その後、政治家に転
戸田工業は鳥取大学と共同で、酸化鉄の一種であるナトリウムフェライトを負極と正極に使ったナトリウムイオン電池を開発した。α型のナトリウムフェライトがナトリウムイオン電池の正極として機能することは分かっていたが、今回、戸田工業が開発したα型のナトリウムフェライトを負極に適用し、充放電性能が得られることを世界で初めて発見したという。 携帯用端末などの電源としてリチウムイオン電池(LiB)が普及している。ただ、リチウムは南米などに資源が偏在するなどの課題がある。一方、ナトリウムは海水中に存在し、安く大量に入手できるため、ナトリウムイオン電池は大型定置用電源として活用が期待されるとしている。
出光興産は徳山事業所(山口県周南市)の商業用ナフサ分解炉で、アンモニアを燃料として使用する実証試験を実施した。ナフサを高温で分解し、石油化学製品の基礎原料となるエチレンやプロピレンなどを製造するナフサ分解炉でのアンモニアの燃焼は国内初。既存の燃料の2割超をアンモニアに切り替えて操業し、アンモニア燃焼が可能であることを確認した。 燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないアンモニアは、エネルギーキャリアや発電・工業ボイラー用の燃料として注目されている。ただ化石燃料と比べて発熱量が低く、着火性も悪いことから燃焼性に劣るといわれる。燃焼時に生じる窒素酸化物を抑える必要があるほか、操業中の大規模プラントでの燃焼はリスクがあるとされてきた。 これに対し、燃焼排ガス中の窒素酸化物を低減させるための脱硝設備を装備していないナフサ分解炉で実証。アンモニア専用バーナーの採用や燃焼制御により、窒素酸化物が環境規
大阪大学の近藤勝義教授は、チタン製品の製造工程で発生するスポンジチタン廃材の再生技術を開発した。廃材でありながら純チタンやチタン合金よりも高い強度を持ち、採用した製品の小型・軽量化を可能にする。再生工程のエネルギー消費も少なく、低コストで製造できる点も強み。圧延加工技術を持つ武生特殊鋼材(福井県越前市)と連携し、実用化を目指す。 スポンジチタンは鉱石を反応させて製造する。内部は純度が高くチタン製品に利用する一方、周囲は不純物となる鉄を多く含むため廃材となる。スポンジチタンの1、2割が廃材となるが、チタンへの再生はできずに製鉄に使われている。 近藤教授は廃材に水素を含ませ、加熱する方法を開発した。チタンは水素を吸収すると延性が低下しもろくなるため、製造工程では水素を遠ざけるのが“常識”だった。近藤教授はこれを逆手にとり、廃材を水素で粉砕しやすくした。粉末は粒径20マイクロメートル(マイクロは
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と名古屋大学、NU―Rei(名古屋市東区、中井義浩社長)は共同で、従来のリチウムイオン電池(LiB)の約5倍の性能を持つ宇宙用の円筒電池を開発した。炭素原子で作成したシート状の物質「ナノグラフェン」を使い、軽量化と低コスト化も実現できた。2026年にもJAXAの観測ロケットで実証実験し、大型基幹ロケット「H3」などに採用する。電気自動車(EV)など民生利用も視野に入れる。 ナノグラフェンはナノメートルサイズの炭素原子物質で、優れた電気的性質を示すのが特徴だ。多くの電子機器に応用されるなど、次世代材料として注目される。 JAXAなどは名古屋大の持つ先端プラズマ技術を使い、負極部分に使うナノグラフェンを開発した。この物質を用いた円筒電池の性能を調べると、重量に対するエネルギー密度が従来のLiBの5倍となることが分かった。 また通常、負極部分の作成は原料を混ぜ合わ
チューリング(東京都品川区、山本一成最高経営責任者〈CEO〉)は、2024年内にも部分的に運転を自動化する「自動運転レベル2」の独自機能を搭載した電気自動車(EV)を日本国内で発売する。当初予定の25年から前倒しする。販売台数は50―100台規模の見通しで、24年夏をめどに性能などの詳細を決める予定。将来は完全自動運転「同レベル5」の実車搭載を目指しており、人工知能(AI)関連のエンジニアの増員など開発体制も強化する。 チューリングは千葉県柏市に車両生産工場を持つ。30年に累計1万台の完全自動運転のEV生産を目指している。目標実現に向け、まず少量のEVを生産・販売し、車両製造のノウハウを蓄積する。 同社はカメラ映像とAIを活用した「カメラ方式」による完全自動運転を目指している。同方式では、人が視覚情報などを基に周囲の状況を判断し運転する一連の動作を、カメラ映像の認識とAIに担わせる。同社は
大日本印刷(DNP)は両面採光型太陽電池モジュールの発電量を向上させる「DNP太陽光発電所用反射シート」を開発し、提供を始めた。発電所の地面に敷設し、モジュールの裏面に入射する光を増加させて発電量を高める。実証実験では発電量が約6%向上した。太陽光発電所の経年劣化に伴い、両面採光型太陽電池モジュールなどの導入で発電量を増やすリパワリングのニーズの高まりに対応する。価格は個別見積もり。2025年度までに累計50億円の売り上げを目指す。 受注生産で、基本は縦1メートル幅のロール状で供給する。太陽電池の発電領域である光の波長400ナノ―1200ナノメートル(ナノは10億分の1)に対して、85%以上の反射率を持つ。光の散乱効果が高く、幅広い太陽の角度に対応する。樹脂製で金属を含んでいない。 シートの表面は平滑で土や泥などの汚れが付きにくく防汚性に優れているため、長期間、シートの反射率を保ちやすい。
NTTやソフトバンクが次世代通信基盤を用いてデータセンター(DC)を全国に分散配置する構想を打ち出した。通信技術や端末の進化でデータ通信量は飛躍的に増加。データ処理用のサーバーやネットワーク機器があるDCの電力消費量も増え続けている。大容量データの超高速通信が可能な次世代通信基盤を用いて土地や再生可能エネルギーの確保が容易な地方にDCを分散配置。都市部でのDC一極集中を回避し、サステナブル(持続可能)化を目指す。(編集委員・水嶋真人) ソフトバンク 北海道に第3の中核拠点―26年度開業用 「現在のインフラは次世代を支えるには大きな課題を抱えている。北海道や九州など再生エネの豊富な地域にDCを分散配置する構想でこの課題を解決する」―。ソフトバンクの宮川潤一社長は、次世代社会インフラを具現化し、自社の企業価値を向上する戦略をこう説明する。 同社によると、日本のデータ処理需要は2030年に196
トヨタ自動車が進めている、新型エンジン開発プロジェクトの一端が分かった。開発しているのは1500cc直列4気筒エンジンで、車両搭載時期は未定だが、早ければ2026―27年にも開発にめどを付ける見通し。補助金の見直しや航続距離などの課題から、世界では電気自動車(EV)シフトが鈍化。利便性の高いハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の需要が増えている。水素や合成燃料などの活用も視野に環境性能の高い高効率エンジンの重要性が高まっており、対応を強化する。 1月に開かれた展示会で、豊田章男会長が新型エンジンの開発に着手したことを明らかにした。同会場では高い環境性能のエンジンとレース向けエンジンの二つの開発を示唆。1500cc直列4気筒のエンジンはこのうち、環境対応型とみられる。上郷工場(愛知県豊田市)で開発し、日本や中国などで走行する車両への搭載を想定する。 脱炭素化の流れを受け
東京工業大学の畠山歓助教と早川晃鏡教授らは、化学の専門知識を学んだ大規模言語モデル(LLM)を開発した。6万5000報の論文データセットを構築した。学習データでは、論文の要約よりもイントロダクションが性能向上に役立った。論文の結論の学習は、性能面でネガティブに働いた。小さなLLMにとっては結論の内容が専門的過ぎた可能性がある。専門知識を備えたLLMを構築するための知見になる。 米メタが公開しているLLM「Llama2」に化学論文を追加学習させた。モデルのパラメーター数は70億―700億。低ランク適応(LoRA)という手法で計算コストを抑えた。研究室で始めやすい構成になる。 モデルの性能は論文を元に作成した問題で評価した。模範解答とLLMの回答の類似度を計る。すると異分野の論文を学習させるほど性能が落ちた。利用したい専門領域に絞ってデータ量を確保する必要がある。 論文は要約とイントロ、結論を
関西学院は神戸市内の用地を取得し、新キャンパスを整備する(左から森康俊関西学院大学学長、久元喜造神戸市長、村上一平関西学院理事長) 関西の有力私立大学が、都市部近郊でキャンパスの新設や拡張を急いでいる。兵庫県西宮市が本拠地で傘下に関西学院大学を擁する学校法人関西学院は、約100億円を投じて神戸市内の用地を神戸市から取得する契約を結んだ。関西大学や立命館大学も、大阪市内から近い立地でキャンパスの新設や拡張を計画する。都市部に拠点がある大学は、学生を誘引する力が強い。成長を維持するため、各大学の投資が積極化している。(大阪・石宮由紀子) 関西学院は再整備計画が進む王子公園(神戸市灘区)の敷地の一部を神戸市から譲り受け、4000人規模の学生が学ぶ「王子キャンパス(仮称)」を2029―31年度に設置する計画だ。国際化や産学官民連携を図りながら、関西学院大のデジタル技術の主要拠点になるようなキャンパ
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