~ 当事者研究とは -当事者研究の理念と構成- ~ 向谷地生良(北海道医療大学、浦河べてるの家) ●当事者研究の可能性 当事者研究がはじまってから、早いもので20年になります。よく知られたエピソードですが、当事者研究は、爆発が止まらず困っていた一人の統合失調症をかかえる若者と、当時、病院のソーシャルワーカーをしていた私がホトホト困り果てて「どうしたらいいかわからないから一緒に研究しよう」と語り合う場面からはじまりました。そのように、当事者研究が、従来の“心理教育プログラム”と異なるのは、その出発点に、「ともに弱くなる」というプロセスを含んでいることです。 例えば認知行動療法の一つであるSST(生活技能訓練)も、研究者の手による科学的な検証を経て、効果的であるというお墨付き(エビデンス)を裏付けに、有効な心理教育プログラムとして普及をしてきました。その点から言うと、「当事者研究の効果」やその