サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
iPhone 16
kihamu.blogspot.com
年の瀬ですので,一昨年・昨年と同様,政治思想書の収穫を振り返ります.今年も内容に踏み込んだ紹介をする余裕がありませんので,備忘として研究の動向をメモしたものだとご了解ください. なお偶然来訪された初学者の方などのために一言しますが,どういう研究が刊行されているかをきちんと知るには,学会誌の書評欄などにあたるのが確実です.刊行されてから学会誌に書評・紹介が載るまでにはタイムラグがあるものの,政治思想分野の主要な研究は,日本政治学会『年報政治学』(「学界展望」では論文も紹介),日本政治思想学会『政治思想研究』,社会思想史学会『社会思想史研究』の書評欄を眺めれば知ることができます.また,法学に関係する研究であれば『法律時報』毎年12月号の学界回顧で採り上げられることがありますし,人文・思想書は月曜社のブログで詳しく紹介されています.東京財団の政治外交検証プロジェクトは,政治外交史・国際関係を中心
[※本記事は,『αシノドス』vol. 142(2014年2月15日配信)掲載の原稿に基づくものであり,刊行版とは一部形式が異なります.PDF版は,こちらからDLできます.] 1. はじめに――利益政治は擁護できるか? 市民の政治参加が唱道されるとき、しばしば槍玉に挙げられるのは、特定の利害集団や限られた「既得権益者」である。その顕著な例は、中高年に牛耳られた日本社会は若者が投票に行かなければ変わらないとか、産官学が一体となった「原子力ムラ」の岩盤を打ち砕くにはデモが有効であるなどといった言説に見られる。また、社会科学に基づく専門的知見から立案された有望な政策が思うように実現しないときにも、農協や労働組合といった利益集団が「抵抗勢力」として名指され、その反対を押さえ込む「リーダーシップ」や「突破力」が渇望される。いずれの場合も、敵視されているのは政策過程に巣食う利害関係者=ステークホルダー(
大仰なタイトルに見えますが,昨年の試みを継続して,政治思想史・政治理論分野での収穫を簡単に振り返ってみるというだけのことです.内容に踏み込んだコメントを付す力量はありませんので,あくまで表層的なまとめに徹します. さて,昨年同様に教科書・概説書から入るなら,まずは宇野重規『西洋政治思想史』有斐閣(有斐閣アルマ Basic)の刊行が目を引きます.西洋政治思想の通史としては川出/山岡『西洋政治思想史』が昨年出たばかりですが,単著の通史はしばらく現れていませんでした.やはり昨年に川崎/杉田 (編) 『現代政治理論』新版が出ていますので,これでテキストはかなり充実を見たはずです(残るは日本/東洋政治思想史でしょうか).なお,同著者による宇野重規『民主主義のつくり方』筑摩書房(筑摩選書 76)は,現代民主主義の可能性をプラグマティズムに見出そうとする卓抜なエッセイです. 刊行中の古賀敬太 (編) 『
選挙が近づくと,みんな投票に行けとうるさくなります.しかし選挙権は権利です.行使することもしないこともできるのが権利です.だから投票には行ってもいかなくてもよいのです. こういうことは昔,「投票自由論」という記事にまとめたことがあります.そこで書いたことは繰り返しません. ここでは駒崎弘樹さんが昨年書かれた,「選挙に行かない男と、付き合ってはいけない5つの理由」という記事を採り上げます.あまりに暴論なので当時は論及を控えたのですが,政治学者のなかにもこのような暴論をもてはやす人がいるのを見るにつけ,批判しておく必要を感じました.主張は5点+まとめにわたっているので,それぞれに触れます(なお,当該記事へ寄せられたコメント等の反響はあまりチェックしていないので,重複があるかもしれません). 1. 選挙に行くのを面倒がる人は子どもをどこにも連れて行かないか 根拠がないです.投票に行くことの効用と
フランツ・カフカの短篇「判決」では,老いた父が息子ゲオルクに裁きの鉄槌を下す.息子はベッドの上に立って判決文を叩きつける父を見上げながら,さまざまなことを思い出し,考えつく.しかし,全てすぐに忘れてしまう.「いつもゲオルクは何でも忘れるのだった」(K27).息子は判決に従い,自ら身を投げる.そうするほかにはなかったのであろう.「忘却は解放の可能性をこそ襲うからだ」(B52). なぜ裁きは下されねばならなかったのか.告発するものがいるからである.「人間が犯した古い不正である原罪は、人間が、自分には不正がおこなわれた、原罪が犯されたのは自分においてなのだ、と非難してやまないところに、在る」(B12).子は親の原罪を咎める.その告発が罪なのである.もっとも,「咎めることは誤りだから罪なのだ、という結論をカフカの定義から引き出すこともできない」(B13).告発は当を得ており,かつ有罪なのである.し
例年,形だけでも「~年の三冊」を書いて新年を迎えているのですが,今年は例年以上に本を読んでいないので(毎年そんなことを言っているような気もしますが),砂原先生を真似て,政治思想史・政治理論分野での収穫を振り返るという仕方にしたいと思います. もっとも,研究動向の中に位置付けたコメントをするような力量はないので,今年刊行された主な政治学文献のリストを眺めながら,目についたトピックだけさらって書きたいと思います.時系列でもありません. 齋藤純一/田村哲樹 (編) 『アクセス デモクラシー論』日本評論社(新アクセス・シリーズ). 篠原一 (編) 『討議デモクラシーの挑戦――ミニ・パブリックスが拓く新しい政治』岩波書店. 自分の専門に近いところから行くと,デモクラシー論についての重要な共著テキスト/論文集が年頭に出ています.前者は思想史から理論,地方政治から国際政治まで幅広い領域での学術的議論を見
小林良彰は,著書『政権交代――民主党政権とは何であったのか』(中央公論新社,2012年)のなかで次のように述べる(156-157頁). ここで日本の政治の仕組みを振り返ってみると、われわれは「選挙の際に候補者が提示した公約のなかで、有権者が自分の考えに近いものを選び、投票を決定する」ことで「自分たちのことを自分たちで決定する」代議制民主主義が機能すると想定している。こうした代議制民主主義が機能しているのであれば、政治家の行動の一端は、彼らを選んだ有権者の責に帰することになり、機能していないのであれば政治家の責を問わなくてはならない。 そこから小林は,この機能を検証するためとして,2009年衆院選を対象に次の3つの分析を行う(157頁以下). (1)民意負託機能の検証(争点態度投票の有無): 「有権者が候補者の提示した公約のなかで最も自分の考えに近いものを選択し、そうした公約を提示する候補者
2016年に刊行された主な政治思想書を,コメントを付さずに羅列します.時系列ではなく,大まかに研究書(単著,論文集),一般書・教科書,翻訳の順に並べています.一昨年以前のものはこちらをご覧ください(2015年はありません).手元にあるメモを頼りにしていますので,抜けが多いと思いますが,ご了承ください. 西洋政治思想 武井敬亮『国家・教会・個人――ジョン・ロックの世俗社会認識論』京都大学学術出版会(プリミエ・コレクション 73). 戸澤健次『イギリス保守主義研究』成文堂(愛媛大学法学会叢書18). 神山伸弘『ヘーゲル国家学』法政大学出版局. 対馬美千子『ハンナ・アーレント――世界との和解のこころみ』法政大学出版局. 宇野重規『政治哲学的考察――リベラリズムとソーシャルの間』岩波書店. 猪木武徳『自由の条件――スミス・トクヴィル・福澤諭吉の思想的系譜』ミネルヴァ書房(叢書・知を究める 8).
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『Politics and Theories』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く