多分、出版が難しかった本。ドイツではナチス、ヒトラーの再評価につながる言論は規制されている。この本は、うかっとすると、そういう本だ、という評価を受けてもおかしくない。実際にはそうではないからこそ、大手をふって売られているのだと思うけど。 Er ist wieder da, Timur Vermes, Eichborn Verlag [2014年1月25日追記:日本語訳が出た。「帰ってきたヒトラー」] ヒトラーが、現代のベルリンに突然、たった一人で出現。本人も戸惑う中、周囲の人たちの幸運な誤解によって、コメディアンとしてテレビに出演し、人気を博す。Bild (日本の写真週刊誌みたいなゴシップ紙)のインタビュアーとの対決や、NPD (現代ドイツの極右政党)本部へのアポなし訪問、ミュンヘンのオクトーバーフェスト視察などの出来事が、一人称で語られる。 「彼」の語り口は、古風なドイツ語や、ナチス独自