井上理 日経ビジネス記者 1999年慶応義塾大学総合政策学部卒業、日経BPに入社。以来、ネット革命などIT業界やゲーム業界の動向を中心に取材。日本経済新聞への出向を経て2014年4月より日経ビジネスの電機・ITグループ この著者の記事を見る
コンビニエンスストア最大手のセブン-イレブン・ジャパンに、消費期限が近い弁当などを値下げする「見切り販売」を制限されて損害を受けたとして、加盟店オーナー4人が損害賠償を求めた裁判の判決で8月30日、東京高等裁判所はセブンイレブンに合計約1140万円の支払いを命じた。同社は判決を不服として、上告する構えだが、今回の判決はコンビニの価格戦略に波紋を投げかけている。 満面の笑みではなかったが、4人のコンビニ店主の表情と言葉には、裁判で勝ち得た判決に対する自信と自負が表れていた。 コンビニエンスストア最大手のセブン-イレブン・ジャパンに、消費期限が近い弁当などを値引きする「見切り販売」を制限されて損害を受けたとして、大阪府、兵庫県、北海道などの加盟店オーナー4人が損害賠償を求めた裁判。8月30日、東京高等裁判所はセブンイレブンに合計約1140万円の支払いを命じた。 「損害賠償として求めた金額(合計
アルバイト店員の悪ふざけが世間を騒がせている。 コンビニのアイスクリームケースに横たわる若者の写真がツイッターに流れてきたと思ったら、数日後にはステーキハウスの業務用冷蔵庫の中から顔を覗かせている店員の画像が拡散した。なんということだ、と嘆く間もなく、今度はピザチェーンの厨房係が、顔面にピザ生地を貼り付けたホラー画像をアップしている。 いずれのケースでも、アルバイトは即座にクビを切られた。 まあ、当然ではある。 が、火の手はおさまらない。 あるチェーン店では愚行の舞台となった店舗に対して、本部がフランチャイズ契約の解除を通告する事態に発展した。別の店舗では、アイスクリームを販売していたケースを新品に入れ替える旨をアナウンスして炎上に対応している。 アルバイトの学生も職場を追われるだけでは済まなかった。ある生徒は、通っていた専門学校から退学の処分を言い渡されたという。 これらの一連のできごと
青写真を確認した堀越二郎が自分の机に戻り、着席後身をかがめて床のカバンから計算尺を取り出し、椅子を前に引いて作業を始める一連の動作の1カット。 飛行シーンよりもモブシーンよりも、その作画と動画に戦慄した。 スタジオジブリ最新作、宮崎駿監督の「風立ちぬ」は、ずばぬけた航空技術者であった堀越二郎を、ずばぬけたアニメ職人が描写するという職人映画だ。 もはや宮崎アニメと村上春樹作品は、新作がリリースされれば、人は皆なにがしかの感想なり批評なりを述べなければいけないような雰囲気になっている。誰からいわれたわけでもないのに、おのれの見解と立場を表明しなければいけないような圧力が、少なくとも私のTLには充ち満ちる。かくして多くの人は、他人の顔色をうかがいながら恐る恐るつぶやく。 求められてもいないのに。 いや、批評家や評論家の人はいいのですよ。それが仕事だから。 こう見えても私は本業でマンガ家をやってい
相変わらず好転する気配のない日中関係。先ごろ中国政府が「問題を棚上げにすること」を条件に、日中首脳会談を提案し、日本側が拒否していたことが明らかになったばかりだ。 こんな状態が、かれこれ一年近く続いている。そんな中、私はずっと不思議に思っていたことがあった。日中の経済交流や人の往来はこれほど活発なのに、なぜ「日本のいいイメージ」は中国になかなか伝播していかないのか? インターネットがここまで発達し、情報量が増えてもなお、誤解が減るどころか不信感が増し、相互理解へと前進していかないのか? という素朴な疑問である。 情報の伝達手段に問題があるのだろうか? あるいは、日中関係に関しては、人から人へと「正しい情報」が伝わりにくい何か特別な理由でもあるのか? というのは、私はこれまで数多くの中国人と接してきたが、彼らの対日イメージがそれほど悪いとは どうしても思えないからだ。私が比較的親日的な人に会
今回は煮え切らないことを書く。 いや、結論が煮え切らないというわけではない。 態度表明は、はっきりしているし、そこに迷いはない。 しかし、そこへいきつくまでの、考えを整理している課程での度重なる逡巡が、我ながらひじょうに面倒くさい。考えるたび、果たしてどっちが正しいのだろうと悩んだり、いまだに判断のつかないことがたくさんある。 そういう自分の気持ちを正直に書くと、規制派どころか規制反対派の人たちの賛同もなかなか得づらいだろう、ということが想像でき、それも暗澹たる気持ちになる。 ましてや世の中の、善意や良識や正義感からこの法案に賛成しよう推進しようと考えている人たちに、理解や納得をしてもらえるかどうかという可能性を考えると、私はほとんどあきらめに近い気持ちを抱かざるをえない。 それはもはや残念とか忸怩とか、徒労感とかいう言葉を通り越して、ひたすらトラルファマドール人の諦念に近い。 ここまで書
韓国では最近、Twitterや新聞の見出しに「進撃の○○」という表現が頻繁に登場する。これは何を意味する流行語なのだろうかと思い調べてみたら、日本のアニメ「進撃の巨人」から影響を受けたものだった。 「進撃の巨人」は、今、韓国の若い世代に大人気だ。「進撃の巨人」のアニメ版が日本のテレビに初めて放映された4月7日、韓国のファンの間で「いよいよアニメの放映が始まった。韓国にも輸入してほしい」との意見が盛り上がった。この話題は韓国最大のポータルサイトNAVERの検索キーワードでも1位になった。検索キーワードで1位になると、「いったいこれは何?」とさらに検索する人が増える。新聞も今週のキーワードとして取り上げるので、テレビ広告並みの波及力を持つ。 韓国ではアニメは子供が観るもの、という意識が強かった。しかし「進撃の巨人」はネットのコミュニティサイトで大絶賛されている――「19歳以上視聴可の大人のため
そしてまもなく2年目のあの日が来るのだった。 最初の揺れが来たのは、いや、最初の地鳴りのようなものを感じたのは、仕事部屋のソファで仮眠していたときだった。月刊連載の校了を前に、かなりギリギリのスケジュールでマンガを描いていたのだが、ちょっと疲れたのでブレイクをとっていた。 初期微動を感じてからS波が到達するまでにかなりの間隔があった。 にもかかわらず、その揺れは尋常ではなかった。しかも長かった。 とにかく、あの日東京で感じた揺れの印象を一言でいうなら 「長い」 だった。かなりの振幅の揺れが、いつまでもいつまでも終わらなかった。 震源は遠い。なのにこの揺れの大きさは……そう考えると、地震規模が尋常でないことはたやすく予測できた。 テレビをつけ、習慣で録画機をスタートさせた。 そしてテレビとツイッターの数週間が始まった。 被災地のまっただ中にいた方々にとっては「なにが呑気にテレビとツイッターだ
中華圏では1年の始まりというと旧正月・春節だ。みな長期の休みをとり、民族大移動よろしく一斉に故郷にもどり、除夕(大みそか)に勢大に爆竹・花火を上げる。大きな音と光で、邪悪を払う伝統行事だが、例年けが人が出て火事が何件か起きるほど激しいものである。2013年の春節除夕は2月9日。今年もユーストリームなどで、東京にいながらして各地の爆竹花火の様子がリアルタイムで見ることができた。 だが現地の人から聞いた話では今年の花火は例年よりはおとなし目だったそうだ。翌日の新聞によると、北京で打ち上げられた花火は昨年より4割減ったそうだ。2012年の春節花火が前年より3割減だと報じられたが、この時は中国経済の減速の証だと言われていた。今年の花火4割減は、経済的要因というよりは、言うまでもなく大気汚染が原因だろう。 今年の中国中東部は異常寒波が襲い、大気の環流が例年と違うために各地でかなりひどいスモッグ現象が
ライフネット生命保険が営業を開始して約1年が過ぎた2009年夏のことです。20代の社員に突然こう言われました。「出口さん、この日、1時間ほど時間を空けておいてください」。いったい何の用だろう。と思いつつ、私は、「いいですよ」と答えました。 前日、私は彼に聞きました。 「明日、時間は取ってあるけど、何をするんだっけ」 その若い社員はこう言いました。 「インターネットでのPR企画のため、二子玉川へ行って、多摩川の河川敷に降りてください」 「でえ、何をするんだい?」 「まずですね。今回の企画を考えてくれたウェブマガジン、デイリーポータルZのウェブマスター林雄司さんが、死亡保険に加入しよう、と河川敷に待ち受けています」 デイリーポータルZ? 何だ、それ? ヒーローロボット? 「それで、ですね。この林さんが、3枚の紙皿にそれぞれ、1,000万円、2,000万円、3,000万円と、死亡時の受取金額を書
連載2回目に登場する賢者はソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の家庭用ゲーム機「プレイステーション」の生みの親で、現在は自ら設立したサイバーアイ・エンタテインメントで次世代技術の開発に取り組む久夛良木健氏。クラウドコンピューティングが加速することで、ネット社会の主役はスマートフォンやタブレット端末ではなくなっていくと予言した。不振を極めている日本の家電メーカーが復活するカギも、そこにある。 プレイステーションの開発において、インターネットはどのように意識されていたのでしょうか。 SCEが初代のプレイステーションを発売したのが1994年。プロジェクトの段階から数えるともう20年以上が経ちますが、私はプレステの開発を始めた当初から、どこかの時点でプレステをインターネットに“溶かしたい”という思いを持っていました。 プレステをネットに“溶かす”というのは、ゲームソフトの情報をクライア
この原稿は昨日買ったばかりのiMacで書いている。 例によって、パソコンが壊れたからだ。 いま、「例によって」と書いたのは、事実として、パソコンの死が、私にとって日常の出来事だからだ。 放置しておいた正月の餅にカビが生えるのとまったく同じように、パソコンは、ごくごく日常的にクラッシュする。私は驚かない。どちらかといえば、去年の暮れに金魚が死んだ時の方が動転したかもしれない。 実体験から申し上げるに、パソコンは、あるタイミングで頓死するものだ。あれは、徐々に壊れるような柔軟な機械ではない。天寿をまっとうすることもない。大往生もしない。デジタルのこしらえものは、ある日突然、箱の中のカブトムシみたいに急死する。それも、多くの場合、働き盛りの一番忙しいときに。 とはいえ、注意深く観察していれば、かすかにではあるが、予兆が無いわけではない。 たとえば、ハードディスクがクラッシュする前段階では、ディス
アルジェリア東部で起きたアルカイダ系イスラム武装組織によるガス関連施設に対する襲撃および人質事件は、アルジェリア軍による突入作戦が実施され、20日現在で人質23人、犯行グループのメンバー30人が死亡したと伝えられた。いまだに現地の情報は錯綜しており、事件に巻き込まれ、行方の分からなくなった日本人の安否確認ができずにいる。 今回のテロ事件は、直接事件に巻き込まれたプラント大手・日揮だけでなく、治安の不安定なアフリカや中東諸国に進出している多くの日本企業にも大きな衝撃を与えている。 この事件の背景、そして今も危険と隣り合わせで事業を展開する日本企業の安全対策について英国の危機管理セキュリティ会社G4S社(旧ArmorGroup)の日本法人G4SJapanの元取締役で、国際政治アナリストの菅原出氏に話を聞いた。 (聞き手は瀬川明秀=日経ビジネス) 今回のアルジェリアのテロ事件は、「イスラム武装組
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の三島和夫部長は、秋田県で育ち、秋田大学医学部に進んだ。 秋田県は冬にどんよりした天気が続く地方で、日本で一番日照時間が短いそうだ。伝統的に過眠や睡眠リズムの異常を生じることの多い冬季うつ病が多く、秋田の大学病院時代にも多くの患者を診察していた。また直属の指導医が、有名な睡眠医学の教授だったということもあり、最初から「睡眠」をテーマにする路線に乗っていたともいえる。 そんな三島さんが、ある時、アメリカのカリフォルニア、スタンフォード大学に籍を移した時期があり、その時にカルチャーショックを受けたという。どんよりした秋田と比べると、カリフォルニアは空が青い! 「飛行機から降りたとたんに、空が青いこと!いまだかつてあんなに青い空は見たことなくてですね、冬にみんなホットパンツでジョギングとかしてますからね。本当にカルチャーショック。1年の5カ月くらいは暗
睡眠というのは、とても日常的な「行動」だ。誰だって特別な事情がない限り、毎日眠る。 あまりに普通のことすぎて、特に気にしていない人は気にしていない。夜、適度な時間に眠たくなってすんなり眠り、朝すっきりと目覚められるなら、まったく気にする必要はないのだ。 ただ、そんな当たり前ともいえる睡眠に、なぜか困難を抱えている人は多いようだ。 慢性的な寝不足とか、充分眠ったのに眠った気がしないとか、寝床に就いてもなかなか眠れないとか、二日酔いとか、様々な睡眠障害とか……睡眠にまつわる悩みは、軽重の差こそあれ、身近なものだ。あなたがかりにいつでも快眠できる幸せな人でも、身の回りは必ず悩みを持っている人がいる。 というのも、厚労省保健福祉動向調査などによると、日本人の5人に1人が睡眠に問題を抱えているという。とするなら、身近な縁者という意味で配偶者・親・子・祖父母くらいの中に必ず1人や2人、そういう人がいる
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