「汚辱に塗れた人々の生」をめぐって 「汚辱に塗れた人々の生」をめぐって 大 貫 恵 佳 59 1.対象と分析 ミシェル・フーコーには「汚辱に塗れた人々の生」 (Foucault1977-2001a-2000)という不 思議な、そして人びとを惹きつけてきた論稿がある。これはそもそも、彼が関わっていた古文書 研究の企画のために寄せられた序文であった。その一連の企画は、 「並行する生」 ("Les vies paralleles")と名づけられ、この叢書のうちでフーコー自身の手によるものとしては、エルキュ リーヌ・パルバンの手記(Foucault 1978-2003)と『家族の混乱』 (Farge et Foucault 1982) が刊行されている。 「汚辱に塗れた人々の生」はこれらのシリーズ全体の序文でありながらも、それ自体ある特定 の古文書をその対象として論じている。すなわち、 「166