名前:名無しさん投稿日:2017年01月31日 文/堀口茉純(お江戸ル/歴史作家) 私は池波正太郎作品のファンだ。特に好きなのは『鬼兵犯科帳』。 この作品は歴史小説ではなく時代小説であることがミソ。前者が史実にほぼ忠実であることを大前提とするのに対し、後者は歴史上に実在する人物や事件を扱いながらも基本的には作者の創作した世界感を重視するという棲み分けがある。 『鬼平犯科帳』の場合、主人公の長谷川平蔵は実在する火付盗賊改め役だが、その人物像や暮らしぶりなどは池波先生の大胆な創作によるところが大きい。鬼平の手足となって働く密偵の存在などがその例だ。 これは池波先生が“歴史”を描くことではなく、鬼平という人物を軸に登場人物達が織りなす“義理”や“人情”といった人間模様を魅せる事を第一の目的にしていた為なのであろう。『鬼平犯科帳』はいい意味で史実にとらわれすぎないエンターテイメントだ。だからこそ時