青々とした天然芝がピッチ一面に広がる。照り付ける日差しの中、軽快なエンジン音を鳴らす芝刈り機が近づくと、Jヴィレッジホテル事業グループ課長補佐の後藤朋久(51)の表情がほころんだ。「やっぱり、芝があってこそのJヴィレッジだな」。目の前の光景に心躍らせる後藤だが、7年前、こんな光景は想像すらできなかった。 2011(平成23)年3月11日以降、東京電力福島第1原発まで約20キロに位置するJヴィレッジは、東日本大震災と原発事故で一変した。施設内は事故の収束作業に当たる東電や関連企業の社員らであふれ、少年たちがボールを追ったピッチは駐車場や資材置き場となり、社員寮まで建設された。Jヴィレッジの象徴だった美しい芝は消えてしまった。「ここにはもう、戻ってこられないんだな」。悲しさと悔しさが入り交じる中、後藤はそう覚悟して施設を後にした。 16年秋、県外の事業所での勤務を経た後藤がJヴィレッジに戻ると