2016.09.09更新 午前中の対局に敗れたという一報が記者室に舞い込んでも、彼が昇段を逸することはないだろうな、という思いは変わらなかった。根拠はない。ただ、世の中にはそのような種類の人がいるのだ。 9月3日、将棋の棋士養成機関「三段リーグ」最終日。29人の三段がわずか2枠の四段(棋士)昇段を目指し、半年間にわたって続けた戦いに決着が着く一日だった。 普段は見知った人しかいない将棋会館が見知らぬ人々で埋め尽くされていた。今期からリーグに参加した藤井聡太三段が即昇段するかどうか、という注目は、もはや将棋界の範疇を超えていた。理由は単純で、彼がまだ14歳になったばかりの少年だからだ。 1954年、加藤一二三・現九段が史上最年少棋士となり「神武以来の天才」と言われたのは14歳7か月だった。藤井が昇段を果たせば、14歳2か月。62年ぶりに最年少記録を更新することになる。年少記録で続くのは谷川浩