久しぶりの講談社である。 大理石のフロア。カッシーナ張りの応接室。 その1Fの応接室に墨汁のインクをぶちまけた過去が懐かしい。 当時僕はアフタヌーンに漫画を投稿していた。四季賞の応募原稿の締め切り当日だったために、夜通しかかって70ページの原稿を仕上げた。 その時僕はもう19歳になっていた。それから数年後、ノリで受けた講談社の入社試験で、最終ラインまで残った僕は『ファウスト』への愛を存分に語ったものである。懐かしい。余裕で落とされました。 だがその直後、その講談社から電話がかかり、小説の新人賞を受賞するのだから、人生何があるのかわからない。 電話の相手は『ファウスト』の編集長の太田さんであった。 『寄生獣』などを担当されていた副部長のTsさんからは、 「本当に大変なのはここからですよ」と言われた。「これからが生き残れるかの勝負です」僕はたぶん人生で初めて嬉しくて泣いた。 それから、数え切れ