みなさん、歴史家・竹内理三(1907~1997)をご存じだろうか。 かつてある古代史のゼミで、先生がこう宣言した。 「みなさん、塙保己一と竹内理三には足を向けて寝てはいけませんよ」 もちろん塙保己一は、江戸時代に『群書類従』を編纂した盲目の大学者だ。現代人なのに、それと肩を並べるとはなにごとか。 写真でみる限り、竹内理三は、小柄なおじいさんだ。愛知県知多半島の田舎で生まれ、終生知多弁が抜けず、生まれつき体が弱かった。そんな小柄なおじいさんが、超人的としか言いようがない仕事を遺しているのである。 『竹内理三著作集』全8巻に及ぶような研究業績、そして数多くの事典、史料集、弟子の育成。とくに大書されるのが、『寧楽遺文』(全3冊、1943-1944)、『平安遺文』(全13冊、1946-1968)、『鎌倉遺文』(全46冊、1971-1995)の遺文シリーズだ。これにより、奈良・平安・鎌倉時代の日本に