思考を処理するスピードは驚くほど遅い 頭のなかで様々なことを考え感じているのに,それをリアルタイムで表現して伝えることができないと感じることがままある。起業家のマスク(Elon Musk)はこれを“ 帯域幅問題”と呼び,自身も大いに悩まされていることから,人間の脳をコンピューターに直接つなぐインターフェースの開発を長期目標のひとつに掲げている。話したり書いたりするスピードの遅さに邪魔されることなく,脳とコンピューターを高速接続するアイデアだ。 だがマスクがこれに成功しても,おそらくがっかりするだろう。Neuron 誌に報告された最近の研究によると,人間が記憶想起や決定,想像などの処理をするスピードは決まっていて,毎秒約10 ビットと耐えがたいほど遅い。対照的に,感覚系は毎秒約10 億ビットのスピードで情報を集めているのだが。 この生物学的パラドックスはおそらく,人間の脳が無数の思考を同時に
