サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
都知事選
maga9.jp
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第603回:第7波、統一教会と自民党の関係、そして死刑執行などで「脳のキャパ超え」してませんか?(雨宮処凛) 猛暑の中、第7波の勢いが止まらない。 とうとう東京の1日あたりの感染者は4万人を超え、自宅療養者は60万人を突破。過去最多を更新し続けている。 そんな中、いろんなことが脳のキャパを超えた気がする。 コロナ感染拡大への不安と恐怖。2月のロシアによるウクライナ侵攻から始まり、終わりが見えない戦争。選挙中に起きた、安倍元首相の銃撃事件。そこからパンドラの箱が開いたように続々と明らかになる、自民党と旧統一教会の関係。そうして7月26日に迎えた、相模原事件から6年という節目。その日に執行された、秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大の死刑。そして、ミャンマーで執行された活動家4人の死刑。 また、7月下旬には、大阪で栄養失調や脱水症状で二人家族がどちらも亡くなる悲劇が二件続い
もう手遅れなのかもしれないが、やはり書かずにはいられない。 参議院選挙の投票日が近づいている。 情勢調査では、自民・公明・維新が伸び、野党は大敗を喫する見込みだという。 立憲民主党が先の衆議院選挙の敗北の原因を見誤り、野党共闘をほとんどやめてしまったのだから、当然の成り行きではある。しかしだからといって、手をこまねいて傍観しているわけにはいかないという思いがある。 その最も大きな理由は、自民・公明・維新・国民が改憲に前のめりになるなか、選挙結果によっては、憲法の改悪がすぐ目の前に迫っているからである。 憲法がどう改悪されるのか。 その青写真は、ご丁寧にも自民党の公式サイトに掲載されている。2012年に発表された「日本国憲法改正草案」である。数多の批判にもかかわらず今でも撤回も修正もされないでいる。 自民党の改憲草案の問題点については、僕も2012年以来、繰り返し、繰り返し、警鐘を鳴らしてき
「我々は反撃を開始する。 若者を低賃金で使い捨て、それによって利益を上げながら若者をバッシングするすべての者に対して。 我々は反撃を開始する。 『自己責任』の名のもとに人々を追い詰める言説に対して。 我々は反撃を開始する。 経済至上主義、市場原理主義の下、自己に投資し、熾烈な生存競争に勝ち抜いて勝ち抜いて勝ち抜いて、やっと『生き残る』程度の自由しか与えられていないことに対して」 この言葉は、今から15年前の2007年に出版した『生きさせろ! 難民化する若者たち』の「はじめに」冒頭だ。 私が生存権を求める運動に出会ったのが06年4月。 「プレカリアート」(不安定なプロレタリアートという意味の造語)のメーデーに行き、そのデモでフリーターの人々が「生きさせろ!」「月収12万じゃ生きてけないぞ!」と叫んでいる姿に頭をブン殴られるような衝撃を受けた。 そんなデモ前の講演で、この国に蔓延する生きづらさ
今年7月15日、創立百年を迎える日本共産党。それを機に作られたドキュメンタリーと聞いて、どんな映画を想像しますか? 弾圧に負けず闘った不屈の100年をたたえる勇ましいプロパガンダかと思いきや、拍子抜けするほど静かで、親近感がもてる作品でした。その映画『百年と希望』に登場するのは、私利私欲なくひたむきに人々の声に耳を傾け、政治の場で代弁し活動する若い議員や党員たち。負けても負けてもあきらめず、こつこつとやるべきことを続けるその姿に希望を見たとおっしゃる監督の西原孝至さんにお話を伺いました。 共産党を外からの目で見る ──監督はこれまでにも市民運動やジェンダー、盲ろう者を追ったドキュメンタリーを作ってこられましたが、今回の作品はずばり日本共産党という政党をテーマにしています。本作に至るまで流れをお聞かせください。 西原 私は20代の頃からドキュメンタリー映画の制作に携わってきましたが、そのころ
マガジン9で「映画から考える3・11」を連載してくださった物書きユニット・ウネリウネラのウネリこと牧内昇平さんによる寄稿です。 《あの日は中学校の卒業式でした。 友だちと「これで最後なんだねー」と何気ない会話をして、部活の後輩や友だちとデジカメで写真をたくさん撮りました。そのとき、少し雪が降っていたような気がします。》 記者は人の話を聞くのが仕事だけれど、こんなに必死になって人の話に耳を傾けたのは、久しぶりかもしれない。プライバシー保護のため、東京地裁103号法廷の中央はパーテーションで仕切られている。その仕切りの奥から、原告の方の声が聞こえてくる。 《3月16日は高校の合格発表でした。 地震の影響で電車が止まっていたので中学校で合格発表を聞きました。歩いて学校に行き、発表を聞いた後、友だちと昇降口の外でずっと立ち話をして、歩いて自宅に戻りましたが、その日、放射線量がとても高かったことを私
この5月に公開された映画『教育と愛国』が話題です。道徳の教科化、教科書検定における圧力、日本学術会議の委員任命拒否問題、「慰安婦」問題を教える中学校教員や研究する大学教授への激しいバッシング……スクリーンに描き出される、教育と教科書をめぐるこの国の現状には、ぞっとするような怖ささえ覚えます。初監督映画となるこの作品を「切羽詰まる思いで作った」と語る毎日放送(MBS)ディレクターの斉加尚代さんにお話をうかがいました。 教科書をめぐる「圧力」が強まっている ──公開中の映画『教育と愛国』は、MBSのドキュメンタリーシリーズの1作として2017年に放映されたテレビ番組がもとになっています。最初にこのテーマで番組を作ろうと思われたのはどうしてだったのでしょうか。 斉加 直接のきっかけになったのは17年3月、小学校の道徳教科書検定の結果が発表され、そこに付けられた検定意見※が話題になっていたことでし
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第591回:戦争が生み出す「未来の自殺者」〜「独裁から人々を解放し、民主主義をもたらす」戦いのため戦地に赴き、「良心の傷」に悩まされる彼。の巻(雨宮処凛) 雨宮処凛がゆく!
数年前、このマガ9でも紹介した通り、東京・高円寺では再開発問題がクローズアップされている(高円寺再開発についてはこちらも参照)。もちろんこれは高円寺の問題なので、他の地域の人からしたら「ふーん、大変だねー」ぐらいにしか思わないかもしれない。それに、地方なんかでは巨大ショッピングモールが建ち始めて駅前商店街が寂れたり、対抗して駅前も大規模開発をしたりして昔ながらの街並みが消えていく問題などはもう20年ほど前から起きている。今ではネット社会に押されてそのショッピングモール自体も下火という新展開に入っているぐらいで、「今さら商店街の危機とか言ってるの? うちの街なんかとっくにもう滅んだよ」ともよく言われる。 しかし、高円寺を含む東京・中央線エリアにまでその開発の波が押し寄せているというのが、結構驚くべきこと。このエリアはゴチャッとした街並みで昔ながらの商店や若者が開いた独特な店が無数にあったりし
4月9日、耳を疑うニュースが飛び込んできた。 2020年11月、渋谷のバス停にいた女性に暴行して死亡させた48歳の男性が、遺体で発見されたというのだ。 男性は自宅近くの路上で発見され、飛び降り自殺とみられているという。 保釈中だったという男性が、なぜ……。しばし言葉を失った。裁判は5月17日から始まる予定だったという。これで真相が解明される機会は永遠に失われてしまったと思うと、ただただ無念さに襲われる。 そんなニュースを知った翌日の4月10日、「反貧困ネットワーク」(私は同団体の世話人)の全国集会が開催された。 今年のテーマは「コロナ禍、3年目 生きさせろ」。 反貧困ネットワークが呼びかけて2020年3月に結成された「新型コロナ災害緊急アクション」には、この2年間、連日「所持金ゼロ円」「何日も食べてない」「アパートを追い出されてホームレスになった」などのSOSが届き続けている。 この日、最
総選挙と同時に行われたベルリン州の住民投票 9月末に行われたドイツの連邦議会選挙には「ポスト・メルケルのドイツはいかに」と、注目が集まった。結果的には16年ぶりにドイツ社会民主党が返り咲いて第一党に。緑の党も躍進、保守(キリスト教民主・社会同盟)は第二党となった。 社会民主党の没落が痛々しいヨーロッパで、社会民主党オーラフ・ショルツ党首が選挙直前にグッと支持を集めた理由は、彼がリベラル左派に蔓延するエリート主義やグローバル競争への称賛と決別して、エッセンシャルワーカー、中小製造業の労働者、不安定雇用の若者に寄り添うメッセージをはっきりと打ち出したからだという分析はとても興味深い。たとえば社会民主党は、これまで言わなかった時給15ユーロの最低賃金を約束した。大国ドイツの政権交代の影響力は大きいし注目に値する。それでも私がより目が離せないのは、ローカルなベルリン政治だ。 この総選挙と同時に、首
ロシアによるウクライナへの侵略行為は、人道的にも、国際法上も、許されぬものである。 したがって国際法的には、主権国家であるウクライナのゼレンスキー大統領には、ロシアに対する「自衛のための戦争」を遂行する権利があるのだろう。だから彼が自衛戦争を行うと決断したことについて、第三者は基本的に、それを尊重するという立場以外を取ることは難しいのかもしれない。 しかし一方で、個別的自衛権を行使し、ロシアに対して徹底抗戦するという彼の選択が、本当にウクライナの人々を守ることになるのかどうかについては、それとはまったく別の問題として、現実を直視しながら検討せねばならない。 なぜならその問題は、軍事力が支配するこの野蛮な世界に暮らしている私たちにとって、まったく他人事ではないからである。 私たちは軍事国家から侵略を受けたときに、それに対して、どう向き合うべきなのか。 やられたから、やり返す。 それは当然の権
今回はいつもと違う話題です。ズバリ、東日本大震災の被災者支援団体である震災支援ネットワーク埼玉で起きた性暴力とその対応について。 この件について語るのは簡単ではない。 それは、震災支援ネットワーク埼玉の代表である猪股正氏やそこで活動している人たちをよく知っているから……では決してない。協力関係にあろうが、知り合いだろうが、そんなことは関係ない。むしろ、知り合いだったり、友人であればなおさら、性暴力を隠蔽したり、被害者に二次被害、三次被害を与えるような対応に「それ、ダメじゃんね」と言える関係でありたい。それこそが本当の「友達思い」や「仲間意識」だと私の辞書には書いてあるからだ。 では、なぜなのか。 私が性暴力やハラスメントについて語るのが辛いのは、それは、できることなら地中奥深く、それこそ外部マントルくらいの深さに埋め込みたいような、思い出したくもない記憶の数々が泥温泉にブクブクと湧くあぶく
昨年から、嫌な事件が続いている。 2021年8月に小田急線で10人が重軽傷を負った事件。逮捕された36歳の男は「幸せそうな女性を見ると殺したくなった」などと供述。10月には、この事件を模倣した事件が京王線で起きた。映画『ジョーカー』を真似た服装の24歳の男が乗客を刺し、ライターオイルをまいて車両に火を放ったのだ。逮捕された男は「仕事や友人関係でトラブルがあった。2人殺せば死刑になると思った」と話している。 翌月には、熊本県内を走行中の新幹線で69歳の男が床にライターオイルをまいて火をつけ、放火未遂で逮捕。「京王線の事件を真似しようと思った」と話している。 そうして昨年12月17日、大阪の雑居ビル内のクリニックで放火事件が起き、25人が死亡。あまりにも痛ましい事件に日本中が衝撃を受けた。年末には61歳の容疑者も死亡し動機の解明は困難となったが、この事件に対して「拡大自殺」と指摘する声は多い。
ホーム マガ9対談 雨宮処凛さん×中島岳志さん:維新は「第三極」か? 野党共闘は失敗だったのか? 2021衆院選から2022参院選へ──日本政治の現在地 今年10月の衆議院議員選挙は、与党・自民党が議席を減らしたものの絶対安定多数を維持。野党第一党の立憲民主党も大きく議席を減らした一方で、維新の会が議席を伸ばし第三党となりました。これを受けて、立憲民主党、共産党などによる野党共闘は「失敗だった」との言説も流れていますが、果たして本当にそうだったのでしょうか? 来年に参院選を控え、ここから日本の政治はどうなっていくのか。衆院選の経験から、私たちが学ぶべきことは何なのか。政治学者の中島岳志さん、作家の雨宮処凛さんのお話から、イメージだけではない日本政治の「現在地」を探ります。 反省すべきは野党共闘ではなく「野党共闘を徹底できなかったこと」 中島 10月の衆院選後、野党共闘、特に立憲民主党(立民
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第578回:生活保護を受けるのは「他人に迷惑をかける」と姉を殺害 フランス人から見て「行政虐待」に映るこの国の福祉。の巻(雨宮処凛) 「生活保護拒み 姉に手かけた」 12月2日、ある事件の判決が下された。 今年3月、都内に住む82歳の女性が、寝たきり状態の姉(84歳)の顔にウェットティッシュを置き、手で押さえて窒息死させて殺害した事件だ。姉妹は長年二人暮らしをしていたものの、姉は5年ほど前に介護が必要な状態となり、妹一人で姉を介護する「老老介護」状態が続いていた。そんな二人の収入はひと月に約10万円の年金のみ。 ケアマネージャーからは生活保護を受けて姉を施設に入れたらどうかと提案されていたものの、妹は拒み続けていたという。理由は、「税金からお金をもらうのは他人のお金で生きることで迷惑をかける」から。 そうして今年、姉の体調が悪化したことで「これ以上介護できない。迷
ある日突然、重度の障がいを負ったら。 誰の人生にも起きうることだし、事故や病気で障害を持たなくても、人間、高齢になれば誰もが若い頃のようには動けなくなる。 身体の自由が利かなくなる――。そのことは、数年くらい前まで、私にとっては恐怖でしかなかった。しかし、今の私はあまり恐怖を感じていない。身体が動かなくても、さまざまなテクノロジーを駆使して社会参加し、活躍している人たちを知っているからだ。 その先頭に立つ一人が、れいわ新選組の参議院議員・舩後靖彦氏だろう。「寝たきり界のトップランナー」と言われる舩後さんは、議員になる前から福祉系の会社の副社長をしていた。もちろん、全身麻痺で呼吸器を装着してからの話だ。舩後さんと同じALSの患者には、そのような人が少なくない。身体は動かないけれど思考はクリアなので、わずかに動く眼球や指先、口などを使ってパソコンを操作し、自らヘルパーを派遣する事業所を運営する
もうすぐ、7月26日がやってくる。 5年前のこの日、相模原の障害者施設に男が押し入り、19人を殺害。26人が重軽傷を負った。逮捕されたのは施設の元職員の植松聖。当時26歳。「今、やまゆり園で起きた事件の犯人は私です」と津久井署に自首した植松は、「どうしてこういうことをしたのか」と問われ、「世界平和のためにやりました」と答えている。 あの事件から、5年。先月、建て替え工事中のやまゆり園を訪れた。事件の時とは様変わりした建物で、7月はじめには完成したようだが、この国の人の多くはすでにあの事件を忘れてしまったような気がするのは私だけではないだろう。 昨年1月に始まった裁判はわずか16回の公判で終了し、昨年3月、植松は確定死刑囚となった。 なぜ、あのような事件が起きたのか。その解明がなされたとは決して言えないのに、あっという間に終わってしまった裁判と、確定した死刑。植松は第一回目の緊急事態宣言が出
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第563回:「困ってる人を追い返す意地悪な役所の人」をロールプレイで演じてみたら、自分の「ヤバさ」に気づいた。の巻(雨宮処凛) 「ヤバい、これ、ちょっと癖になりそう……」 そんな言葉が私の頭をよぎったのは、6月某日のことだ。 この日、私はzoomの「オンライン研修」で、「模擬生活保護申請」をしていた。私が「役所の意地悪な職員」役となり、生活保護を申請したい人を妨害するというロールプレイである。 なぜこのようなことをしたかと言えば、7月10日、11日に第二東京弁護士会と「女性による女性のための相談会」実行委員の共催で、「女性のための生活、仕事、子育て、なんでも相談会」が開催されるからである。 相談会で生活保護申請が必要になった時のために、これまで申請に同行したことがない弁護士さんや支援者の人たちを対象として、「生活保護申請するとこんな感じ」というのを実演して見せたの
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第562回:私が貧困問題に取り組み続けている理由〜「死なないノウハウ」を得ると、意地悪度が下がるという発見〜の巻(雨宮処凛) 「どうして心が折れずに続けていられるんですか」 貧困問題に取り組んで15年。たまにこんな質問を受けることがある。 状況は変わらないどころか悪化しているのに、自分たちの活動が政治を変えられないことに無力感を感じないのか、という質問だ。 そんな時、この15年に思いを馳せる。数えきれないほどデモをし、集会をし、政策提言をし、国会議員や省庁に訴えてきた十数年。それを思うと、「変わらなさ」に心が折れそうになることもある。だけど折れずに続けていられるのは、この活動は「人を支援する」ことがメインだからだと思う。 どれほど政治が変わらなくても、自分たちのノウハウによって、今困っている誰かが、「生きられる」ようになることがある。所持金はほぼゼロ、すでに路上と
※これは日本を舞台にしたフィクションです。 あの日、日常が変わった。 数日降り続いた雨が朝のうちに止み、午後には青空が広がった。 久しぶりに晴れた日曜日、映画館にでも行こうかと僕は外に出た。きらめく水たまりが鏡のように空を映している。風が首筋を撫でる。思わず鼻歌がもれるほどに眩しい初夏の空。 電車に乗ると、もはやそれが人間の習性でもあるかのように、肩から斜めにかけたバッグからスマホを取り出しSNSを覗く。 そういえば、今日、僕が常勤しているホームレス支援団体の同僚Fが国会議事堂前でスピーチをするらしい。この国で主義主張をする物好きは日に日に減っている。枯れ木も山の賑わい、どれ映画の前にひやかしに寄ってやるかと、僕は丸ノ内線に乗り込んだ。 様子がおかしいと気づいたのは、抗議演説が行われている国会議事堂が遠くに見えてきた頃だった。F直筆の「共生社会の実現」と書かれた横断幕が引きちぎられ「現」の
ホーム 三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日記 第103回:軍隊に監視される社会でいいのか?~重要土地規制法成立と宮城秋乃さんの家宅捜索~(三上智恵) 私たちは急速に監視社会に向かっている。①国が国民を監視する、だけでなく②軍隊が国民を監視する、③国民が国民を監視する、この②と③が当たり前になる社会、戦前のような恐ろしい国に私たちをいざなう法律が、ついに参議院本会議で可決、成立してしまった。「重要土地等調査規制法」。大事な国防施設を守るため、という名目で無制限に市民の監視を可能にする、こんな稀代の悪法を止められない私たちの市民力のなさに改めて暗たんたる気持ちになる。 「中国に基地周辺の土地を買われたら怖いですよ。原発や弾薬などがある場所の近くに過激派が出入りしたらどうします? 取り締まらなきゃ! ですよね。そんな動きを未然に察知し、民衆の不安にお応えする法律を作ります。どうぞみなさん安心な
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第553回:やってる場合かオリンピック〜しかもやまゆり園でパラリンピックの聖火を採火? の巻(雨宮処凛) 「やってる場合かオリンピック!」「中止だ中止、オリンピック!」 3月25日、東京五輪の聖火リレーが福島のJヴィレッジを出発した日、東京・新橋のデモ隊からはそんなコールが上がった。 この日開催されたのは、「『聖火』を止めろ! 五輪は中止! デモ」。新橋のSL広場を19時に出発、東電前を通り、夜の銀座を抜けて築地を通過、オリパラ組織委員会がある晴海を最終地点として目指すデモである。数百人が集まったこのデモに私も参加した。 この日、デモ隊から上がったコールを聞いて、なぜ今、このタイミングで東京五輪開催を強行しようとしているのか、ますます疑問が大きくなった。以下、コールだ。 「復興見せかけオリンピック」 「福島切り捨てオリンピック」 「原発事故は終わってない」 東日本
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第550回:人との関係を断ち切る貧困〜生活保護基準引き下げ違憲訴訟、大阪地裁で勝訴! の巻(雨宮処凛) 「大阪地裁、勝ちました!!」 メーリングリストに流れてきたその言葉を見た瞬間、一人の部屋で「おおおおお!!」と叫んでいた。 この日、大阪地裁で下されたのは「生活保護基準引き下げ違憲訴訟(いのちのとりで裁判)」の判決。結果は、原告の勝訴。大阪地裁は原告らの国家賠償請求は棄却したものの、引き下げを違法であるとして取り消すという画期的な判決を言い渡したのである。 やっと、やっと苦しい人たちの声が届いた。踏みにじられてきた人々の声に、裁判所はちゃんと耳を傾けてくれた。 そう思うと、胸が熱くなった。 思えば、長い道のりだった。 2012年末、第二次安倍政権が発足して真っ先に手をつけた「生活保護基準引き下げ」。以降、13年からどんどん減らされていった生活保護費。食事の回数を
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第549回:なぜ、57歳母と24歳の息子は死んだのか〜「八尾市母子餓死事件」の調査のため、八尾市に〜の巻(雨宮処凛) 新型コロナウイルスがこの国でも広がり始めた2020年2月22日、大阪府八尾市のアパートで、親子2人の遺体が発見された。 亡くなっていたのは、57歳の母親と、24歳の長男。 死後1ヶ月以上経過していた母親の死因は急性薬物中毒で、自殺とみられている。死後10日ほどだった長男の死因は低体温症。母親の遺体の近くで1ヶ月近く生きていたようだが、誰にも助けを求めることなく亡くなった。部屋のガスと水道は止まり、冷蔵庫はほぼ空だった。 「八尾市母子餓死事件」。通常であれば大きく報じられただろうが、コロナ禍で、この事件はそれほど注目されなかった。しかし、多くの人が事件のことを忘れていく中、生活保護問題の専門家らによって「八尾市母子餓死事件調査団」が結成され、これまで
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第548回:「扶養照会」が壊す家族の絆〜最後のセーフティネットが「権利」になるために。の巻(雨宮処凛) 「私が鬱で退職療養中に、25年間音信不通だった父の扶養照会を、数年間にわたり毎年受けました。DVや貧困など不幸なかつての家族生活を思い出し、照会があるたびに精神状態が不安定になりました。同時に親の面倒を見れない自分の経済状況に罪悪感と、恐怖と不安で落ち込みました。照会があったことは母にはもちろん話していませんし、誰にも相談できず返事もできませんでした。生活保護を受ける父も照会はつらかったと思いますし、それを知って助けられずに逃げていた私もつらかったです。将来、こんな思いをする子供が出てきてほしくないです」 この言葉は、「つくろい東京ファンド」が募集した「扶養照会に関する体験談」に寄せられたものである。 扶養照会とは、ある人が生活保護を申請した時に、役所からその親
「彼女は私だ」 12月6日、渋谷で開催された「殺害されたホームレス女性を追悼し、暴力と排除に抗議するデモ」には、そんなプラカードを掲げる人がいた。前回の原稿で書いた、ホームレス女性殺害事件を受けてのデモだ。渋谷のバス停にいたところ、近所の男性に撲殺された女性。この日、夜の渋谷の街を170人がキャンドルを手に追悼と抗議を込めたサイレントデモをした。 「社会に出てから一度も正社員で働いたことがありません。ずっと非正規や日雇いで暮らしてきました。今、コロナで仕事もなくなりました。本当にまったく他人事とは思えません」 デモ出発前、参加者の女性の一人はマイクを握ってそう語った。「他人事じゃない」。この日、参加した女性たちから多く聞いた言葉だ。 今年、殺されたホームレス状態の人は彼女だけではない。1月には東京・上野公園で70代の女性が頭部に暴行を受けて殺害されている。3月には、岐阜でホームレスの男性が
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第540回:渋谷・女性ホームレス殺害〜「痛い思いをさせればいなくなる」を地でいくこの社会。の巻(雨宮処凛) 「殺してくれてせいせいした」「彼らは人間の姿はしているが人間ではないですから」 この言葉は、横浜の中学生グループがホームレス襲撃を繰り返していた1980年代、地元の地下街の商店主らが発した言葉だ。82〜83年、襲撃事件は相次ぎ、死者も出ていた。なぜこのような事件が起きたのか話し合う場で、商店主らはそう口にしたのだという(「福祉労働167」ひとりの取材者/当事者として 金平茂紀)。 11月16日、路上生活者と見られる女性が寝泊まりしていた渋谷のバス停ベンチにいたところを殴られ、命を落とした。 事件から5日後、母親に付き添われて逮捕されたのは、46歳の男だった。 男は母親と二人暮らしで、自宅マンション1階で母親とともに酒屋を営んでいたという。3年前に亡くなった父
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第537回:コロナで路上に出たロスジェネへの、あまりにも意地悪な対応。生活保護を巡る、杉並区・謎のローカルルール。の巻(雨宮処凛) 「やっとだね!」 「本当によかった!」 「でも、長かった……」 10月22日午後4時、私たちは杉並区・高円寺の福祉事務所でそう言い合った。この日、ここに揃ったのは立憲民主、共産党、無所属などの超党派の杉並区議が5人。応援のために駆けつけた他の地区の区議、市議、そして生活困窮者支援をする人々、約20人。当事者が2人。「新型コロナ災害緊急アクション」からは瀬戸大作氏、稲葉剛氏、そして私が参加した。メディアの取材も数社入っている。 この日行われたのは、新型コロナ災害緊急アクションによる、杉並区への申し入れ。その内容は、一言で言うと「アパート転宅させてほしい」というものだ。 杉並区との話し合い 新型コロナ災害緊急アクションでは、4月以来、コロ
新型コロナの影響を受けて生活に困窮した人たちからのSOSを受け取り、支援に奔走している一般社団法人「つくろい東京ファンド」の小林美穂子さん。あまりの窮状を知ってほしいと、これまでマガジン9にも2回寄稿していただいています(「緊急事態宣言からの同行支援日記」、「コロナ禍で増加する相談者、ウソで追い返す福祉事務所」。今回は、生活保護を緊急に必要とする人が増えているなか、申請のハードルとなっている「扶養照会」について原稿を寄せてくれました。 ある秋の日、私は知人のそれまで全く知らなかった過去を知った。2013年11月7日の朝日新聞にも大きくとりあげられた「扶養照会」にまつわる出来事である。 知人は幼いころに両親が離婚。小学校低学年の頃、女手一つで彼と弟を育てていた母親が、兄弟の目の前で父親によって刺殺される。その後、兄弟は児童養護施設で育った。才能にも人の縁にも恵まれた知人は、大企業の管理職とな
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『マガジン9 | 憲法と社会の問題のこと。』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く