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夏の料理
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10月19日、現代アートを専門とする国際的メディアArtforumがアーティストやアート関係者らに呼びかけ、民間人への暴力と殺害の停止やパレスチナ解放と即時停戦、ガザへの人道的支援等を求める内容のオープンレターを公開。しかし、このことを受けてArtforum編集長のデイヴィッド・ヴェラスコ(David Velasco)がArforum社を解雇されたことをARTnewsが伝えている。この後、4名の編集者も辞職したこともわかった。 Artforumの公式サイトを見ると、同社はパブリッシャーのダニエル・マコーネル(Danielle McConnell)、アソシエイトパブリッシャーのケイト・コザ(Kate Koza)、そして今回解雇されたヴェラスコがリーダーシップを取って運営してきたことがわかる。 しかし10月26日にArtforum上で発表されたステートメントでは、マコーネルとコザが連名でヴェラ
6人のチームで実現した「女性と抽象」展現在、東京国立近代美術館のコレクションを展示するギャラリー4で小企画展「女性と抽象」(9月20日〜12月3日)が開催されている。戦後すぐから現代まで、抽象的な表現と向き合ってきた女性作家たちによる作品の数々を、同館のコレクションから紹介する意欲的な展示だ。 これまで紹介される機会が少なかった作家から、急速に再評価が進む注目作家、草間彌生、田中敦子らすでに国際的な評価を確立した作家たちまで、その所蔵作品を再調査し、キュレーションした本展。こうした取り組みを立ち上げた経緯や、調査をしていくなかで知った女性作家たちの苦難、国立美術館のジェンダーバランスに対する意識の現況など、同館の企画メンバー6人から小川綾子、横山由季子、小林紗由里の3人に話を聞いた。 コレクションの再発見と再評価 ──昨今、女性のアーティストによる抽象表現への再評価が国際的に進んでいます。
1920年代を迎えたフランスの首都パリでは、第一次世界大戦からの復興によって急速に工業化が進み、「機械時代」(マシン・エイジ)と呼ばれる華やかでダイナミックな時代を迎えました。本展覧会は、1920-1930年代のパリを中心に、ヨーロッパやアメリカ、日本における機械と人間との関係をめぐる様相を紹介します。特にパリ現代産業装飾芸術国際博覧会(アール・デコ博)が開催された1925年は、変容する価値観の分水嶺となり、工業生産品と調和する幾何学的な「アール・デコ」様式の流行が絶頂を迎えました。日本では1923年(大正12)に起きた関東大震災以降、急速に「モダン」な都市へと再構築が進むなど、戦間期という繁栄と閉塞の狭間に、機械や合理性をめぐる人々の価値観は大きく変化していきました。 コンピューターやインターネットが高度に発達し、AI(人工知能)が生活を大きく変えようとする現在において、約100年前の機
石橋財団コレクションと共演東京・京橋のアーティゾン美術館で、展覧会「ジャム・セッション 石橋財団×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」が開催されている。石橋財団コレクションと現代美術家が共演する「ジャム・セッション」の第4弾。会期は9月9日から11月19日まで。 「ジャム・セッション」は、アーティゾン美術館のコンセプト「創造の体感」を体現する展覧会としてアーティストと学芸員が共同するもので、2020年は鴻池朋子、2021年は森村泰昌、昨年は写真家の柴田敏雄と鈴木理策が招かれた。 今回招かれた画家の山口晃は1969年生まれ。鳥の目で描く鳥瞰図といった日本の伝統的絵画の様式を取り入れて油絵の技法で描く絵画をはじめ、立体やマンガ、インスタレーションなど多岐にわたる表現を行っている。最近では東京2020パラリンピック公式アートポスターや、東京メトロ日本橋のパブリックアートなども手掛け
世界初の原子爆弾を開発した「原爆の父」として知られる理論物理学者ロバート・オッペンハイマー(1904~67)を主人公とする伝記映画『オッペンハイマー』が、世界中で大ヒットしている。監督は『ダークナイト』『インセプション』『インターステラー』『ダンケルク』『TENET テネット』などで斬新な視覚描写を開拓してきたクリストファー・ノーラン。日本でも公開を求める声があるものの、現在まで公開未定となっている。 そんな本作を、ニューヨーク在住のアーティストである蔦谷楽(つたや・がく)がレビュー。戦争や核時代において抑圧されてきた現代にまで至る事実や記憶を、寓話的要素を用い国境を越えた問題として再解釈、再構築する作品を制作・発表している作家の視点から、本作がはらむ問題について論じる。【Tokyo Art Beat】 蔦谷楽のインタビューはこちら 核と戦争の歴史的悲劇に取り組む在米作家、蔦谷楽。原爆の図
2023年でもっとも注目を集める展覧会のひとつ、「デイヴィッド・ホックニー展」が東京都現代美術館で11月5日まで開催されている。60年以上にわたり、絵画、ドローイング、版画、写真、舞台芸術といった分野で多彩な作品を発表してきたホックニー。誰もが認める巨匠の作品を目の前に、美術家の梅津庸一は何を考えたか。画家としてのホックニーの手法、そして「美術の魔法」が解けた現代の美術を取り囲む諸種の事情を交 錯的に読み解く。【Tokyo Art Beat】 ※画像の無断複製・転載・流用禁止 *展覧会レポートはこちら 前置きとして、「展覧会レビュー」を取り巻く状況を考えるTokyo Art Beatからデイヴィッド・ホックニー展の展覧会レビュー依頼があり一瞬戸惑った。というのも僕は久しく「展覧会レビュー」を書いていなかったからだ。ちなみに僕がホックニー展の内覧会を見に行った7月14日は宮﨑駿監督の映画『君
トム・ハンクス、スカーレット・ヨハンソン、ジェイソン・シュワルツマンほか豪華スターが大集結する、ウェス・アンダーソン監督最新作『アステロイド・シティ』。人々が豊かな日々を謳歌し、アメリカがもっとも輝いていたと言われる1950年代を舞台にした本作は、モノクロで描かれる同時代のテレビ番組と、カラフルに描かれる番組内の劇《アステロイド・シティ》が交差する、入り組んだ構成を持つ作品だ。劇《アステロイド・シティ》では、人口わずか87人の砂漠の街アステロイド・シティで開かれるジュニア宇宙科学賞の祭典に集まった人々が、群像劇を繰り広げる。 本稿では、舞台、映画、ラジオで上演されるアメリカン・ミュージカルの劇作法について研究する辻󠄀佐保子が、舞台となる1950年代アメリカの状況、とくに演劇界出身者が多く活躍した「テレビ」をめぐるメディア環境や演技の在り方を軸に本作を論じる。【Tokyo Art Beat
「見ること」と「描くこと」の探究──60年以上のキャリアを持ち、表現の方法も多岐にわたるホックニーは、様々な切り口のある作家だと思います。今回個展を開催するにあたり、展覧会のテーマをどのようなかたちで考えていかれたのでしょうか? 出発点はホックニーの創作を見渡したときに感じる素朴な疑問でした。おっしゃるように、その作品はひとりのアーティストによるものとは思えないほど多種多様です。どこからそのような多様さが生まれたのか? 作品に通底するものがあるとすればそれは何か? こうしたところから考え始めていきました。 そこで出てきたアイデアが「パースペクティヴス(perspectives)」で、展覧会の仮タイトルにもしていました。これはホックニーにとって「遠近法」が長年の関心事であるという意味だけではなく、根本的には、デイヴィッド・ホックニーという画家がどのように目の前にある世界を見てきたのか? そう
先駆的なデザインが評価され続ける倉俣史朗。創作の源泉と秘密に迫る「倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙」が、世田谷美術館で11月18日から開催される。1960年代以降のデザイン界において、世界的に高い評価を受け、現在も影響を与え続けているインテリアデザイナー・倉俣史朗。56歳という若さで突然亡くなった“伝説のデザイナー”の、これまであまり公開されてこなかった資料も含め、倉俣の業績を回顧する展覧会となっている。
【新連載】クリティカル・シーイング:新たな社会への洞察のために #1 美術批評はかつてないほど重要である。「つくることの思想」としてのこれからの美術批評に向けて(文:石川卓磨) 絶滅の危機「いま美術批評は、かつてないほどに重要なものになっている。」 この仮説に対する説明が本文の目的だ。しかしほとんどの人は、この仮説と真逆のことを考えているだろう。2002年のハル・フォスターの著作『デザインと犯罪』に収録されている「美術批評家の危機」は、「美術批評家は絶滅危惧種である。」(*1)という指摘から始められている。純然たる「美術批評家」という肩書を誰も掲げなくなってしまい、代表的な美術雑誌でも美術批評家の存在がほとんど見られなくなった。フォスターは、アメリカの美術批評の父親的存在であるクレメント・グリーンバーグ、メイヤー・シャピロ、ハロルド・ローゼンバーグを起点として、アメリカの批評家や美術雑誌(
バービー人形は、1959年にアメリカのマテル社から発売されたファッションドールだ。創始者のひとりであるルース・ハンドラーという女性が、ドイツのセクシーな男性向けの人形「ビルド・リリ」をもとに、ほぼそのままの造形の人形を「ティーンエイジ・ファッションモデル」として女児向けに販売したものが始まりである。 その当時、女児向けの人形は、良妻賢母の疑似学習として教育的観点から推奨されていた乳幼児型の「ミルク飲み人形」が主流だった。ある日ルースは、娘のバーバラが大人の女性が描かれた紙人形に自分の将来の姿を想像し、着せ替え遊びをしていることに気がついた。ルースはこれをヒントに、幼い女の子たちが未来の自分を投影できるファッションドールを作ることにしたのだ。人形の名前はバーバラの愛称であるバービーとした。 一体目のバービーはモダンな水着にサングラスやイヤリングを身につけた姿で売り出された。当初は「セクシーす
日本一の列車・バスのターミナル駅であり、飲食店やアパレル、映画館、家電量販店などが乱立する新宿。初めて新宿駅を訪れたとき、多くの人が駅周辺で迷った経験があるのではないでしょうか? 今回のギャラリーガイドでは、新宿駅周辺のギャラリーやアートスペースを紹介。初台から出発し、西新宿、代々木、新宿三丁目、歌舞伎町、東新宿というルートで巡っていきます。 気になるベニューはウェブ版でのログインやTABアプリでフォローしておくのがおすすめ。アプリではそのベニューで開催される展覧会の開幕と閉幕を、プッシュ通知でお知らせします。 *都内のエリア別アートガイド記事の一覧はこちらをチェック
「深刻な出来事」と再発防止を要望国内や世界を拠点に活動する現代美術家の労働組合「アーティスツ・ユニオン」(村上華子支部長)は、東京藝術大学の日比野克彦学長に「アーツ前橋の契約不履行事案にかかる再発防止を求める意見書」を6月20日に送付したと発表した。意見書は、アーツ前橋が2019年に開催した企画展の記録集の発行を中止し作家に業務委託料を一部支払わなかった問題を、「美術業界に関わる誰しもが尊重される平等で公平な労働環境の実現をはばむものとして、非常に深刻な出来事」と指摘。同大教員のアーツ前橋前館長(編集部注:住友文彦=当時東京藝大大学院准教授、2021年4月より教授)が、問題に関わっていたとして再発防止を求めた。被害を受けたアーティストの名誉回復に努めることも要望した。 また、前館長が教授を務める東京藝大大学院の学生からも大学側に説明を求める声が上がっている。 2013年の開館以来、気鋭の作
1960年代以降の表現をたどる 前回の記事では、世紀転換期におけるレズビアンをはじめとするバイセクシュアルやパンセクシュアルといった女性同性愛の表象を描いた作家たちを紹介してきた。 マリー・ローランサンとロメイン・ブルックスによるセクシュアリティの表現、アンリ・トゥールーズ=ロートレックやジャンヌ・マメンによるレズビアン・カルチャーの表象、ゲルダ・ヴィーグナーのエロティカに見えるレズビアンと視線の問題。 それらの表現と課題は、プライド・マンスの出発点でもあるストーン・ウォール・イン反乱のあとに現れた作家による表現や、レズビアンやバイセクシュアル、パンセクシャルの人々の置かれる状況のなかにも現れている。 プロテストするレズビアンの美術【前編】世紀転換期の女性同性愛表象を読み返す美術史においてほとんど語られてこなかった、女性同性愛を描いた作品やレズビアンのアーティストたち。本稿ではその存在に光
天王洲のMAKI Galleryなどで8月5日まで開催中ユージーン・スタジオは、現代美術家の寒川裕人(1989年アメリカ生まれ)による日本拠点のアーティストスタジオ。絵画作品とインスタレーションをおもに制作し、ロンドンのサーペタイン・ギャラリーへの作品提供や資生堂ギャラリーでの個展(2017)など、国内外で実績を積んできた。平成生まれのアーティストとして初めて東京都現代美術館で開催した個展「ユージーン・スタジオ 新しい海」は、大きな反響を呼んだことも記憶に新しい。 展覧会「ユージーン・スタジオ / 寒川裕人 想像の力 Part1/3」が、8月5日まで東京・天王洲のMAKI Galleryで開催されている。「想像の力」と題した複数年にわたる展覧会の第1章に当たり、今回は複数のコレクターの協力のもと5つの作品シリーズをギャラリーに展示。また、東京近郊にあるユージーン・スタジオのアトリエを予約制
戦後の日本洋画の第一線で活躍し、100歳を超えて制作を続けた画家で文化勲章受章者の野見山暁治(のみやま・ぎょうじ)さんが6月22日、心不全のため亡くなった。享年102。 1920年、福岡県飯塚市の炭鉱を経営する家に生まれた。1938年東京美術学校油画科に入学し、在学中の42年に春陽会展で作品が初入選。翌年卒業、応召し、発病のため入院した福岡の傷痍軍人療養所で終戦を迎えた。1953年渡仏し、パリを拠点に12年間ヨーロッパに滞在。サロン・ドートンヌ会員になるなど作品はパリで評価され、日本でも若手画家の登竜門である安井賞を1958年に受賞した。1964年に帰国後は、東京・練馬と福岡・糸島にアトリエを構えて制作を行い、東京藝術大学で准教授、教授を歴任して後進の指導にも当たった。
美術史においてほとんど語られてこなかった、女性同性愛を描いた作品やレズビアンのアーティストたち。本稿ではその存在に光をあて、全2回にわけて紹介。前編では19〜20世紀転換期の美術を、後編では1960年代以降の現代美術を取り上げる。筆者はレズビアンと美術の関わりを研究し、アーティストとしても活動する近藤銀河。 透明にされてきた女性同性愛の表象美術史のなかで、レズビアンをはじめとする女性同性愛の表象は、文字通り表に示されて来なかった。多くの場合そのように語られるし、私もそう語ることがある。本当のところを言えば、語られること自体が少ないだろう。美術史のなかで、女性であり性的マイノリティであるということの表象は、多重する抑圧のなかにありそれを示すことを困難にしてきた。 だが、そうだろうか。それでいいのか。たんに隠されてきたと語ることは、すでに存在するものを覆い隠してきた力を見過ごしてしまう。むしろ
コミック、実写、ビデオゲームと多彩に広がり続ける「スパイダーマン」の世界。そのなかでも、ひときわ異彩と挑戦に溢れたアニメーション映画として熱狂的に迎えられた『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編、『スパイダーマン:アクロス・ザ・ユニバース』がついに公開! ブルックリンで暮らす悩み多き天才少年マイルス・モラレスを中心に、マルチバース(複数の次元)で活躍するスパイダーマンたちが集結した前作から全方位的にパワーアップした本作では、マイルスが密かに恋心を抱くグウェン・ステイシー(スパイダー・グウェン)やちょっと頼りない師匠のピーター・B・パーカー(スパイダーマン)らに加え、未来的な世界で活躍するスパイダーマン2099、ギターとモヒカンが特徴のスパイダー・パンク、颯爽とバイクを乗りこなすスパイダーウーマン、インド映画のヒーローのようなスパイダーマン・インディアをはじめ、数えきれないほどの未知のス
クィア・パルム賞の受賞前夜クィア・パルム賞とは、性的マイノリティやフェミニストの登場人物、また、それらに関わる事柄を描く長編・短編作品のみならず、家父長的なジェンダー規範への異議申し立てを試みる作品に与えられる賞である。 カンヌ国際映画祭の公式部門とは独立した賞として2010年に始まり、その選出の対象には、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に加えて、その他のセクション(国際批評家週間、監督週間、ある視点部門、ACID部門)に出品された作品すべてが含まれる。クィア・パルム賞の射程は広いものの、これまでの受賞作は、『BPM ビート・パー・ミニット』(ロバン・カンピヨ、2017)、『燃ゆる女の肖像』(セリーヌ・シアマ、2019)、『Joyland』(サイム・サディック、2022)といった、トランスジェンダー、同性愛者、同性へ性的に惹かれる人々などの経験を描く作品に与えられてきた。 そのような
《Portrait of Rastajay92》は、2014年にニューヨークのガゴシアン・ギャラリーで、《Portrait of Kim Gordon》は、2015年に東京のBLUM & POEで展示された。 そして被告となったプリンスは、作品への写真の利用はフェア・ユース(公正な利用)だと主張した。 フェア・ユースの4つの要素とは?米国著作権法では原則として著作権侵害になる行為(写真の複製など)でも、次の4つの要素を総合的に考慮してフェア・ユースに当たれば、他人の著作物でも著作権者からの許可なく、利用することができる(*4)。 ① 使用の目的と性質(使用が商業性を有するかまたは非営利的教育目的かを含む) ② 著作権のある著作物の性質 ③ 著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量と実質性 ④ 著作権のある著作物の潜在的市場や価値に対する使用の影響 この4つの要素のなかでも、
国内外の抽象絵画の佳品264点が集結20世紀の絵画表現をけん引し、同時代の日本にも大きな影響を与えた抽象絵画。その萌芽から発展を展観する「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」が東京・京橋のアーティゾン美術館で6月3日に開幕した。担当学芸員は同館の新畑泰秀、島本英明。会期は8月20日まで。 本展は、前身のブリヂストン美術館が休館した2015年以降に新たに収蔵した95点を含む約150点の石橋財団コレクションに、国内外の美術館や個人コレクションからの作品を合わせた264点が集結。現代美術に重要な位置を占めている抽象絵画の流れを俯瞰できる貴重な機会となる。会場は3フロアにまたがる同館の全展示室が使われ、活躍中の7人の現代作家の作品を紹介する展示も行われる。 見どころ満載の展示のチェックポイントや抽象絵画の奥深い魅力とは? 本展を企画した新畑
西洋美術史家が見たティルマンス表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京7階の展示室に入ったとき不思議な感覚を覚えた。天井高の空間の中央に設置された大きな壁面の両側に、ティルマンスの写真が展示されているのだが、作品と展示の関係性がどうなっているのかすぐには把握できない。個々の写真を見て、肖像、静物、風景などの主題を扱っていると思ったのは、私が西洋絵画史の研究者だからであろうが、しかし、その扱い方は絵画とは異なるアプローチに見えた。とはいえ、いくつかの写真は明らかに西洋美術史を参照していると思われたことも否定できない。加えて、その展示室には何よりも生と死が交錯する濃密な気配が立ちこめていた。ティルマンスとはいったい何者なのか。 こうして、すべてが私にとって曖昧な、非決定の状態に留まるなかで、写真を見始めた。次第に湧き上がってきたのは、ティルマンスは平面と立体、写真と絵画、エロスとタナトス、フレーム
実写と異なり、すべてをゼロから創り上げるアニメーションでは、背景の都市や建築、室内のディテールに至るまで意図的に描かれ、独自の世界観を構築している。本展では、1980年代末から2000年代初頭にかけて制作された『AKIRA』(1988、監督:大友克洋、美術監督:水谷利春)、『機動警察パトレイバー劇場版』(1989、監督:押井守、美術監督:小倉宏昌)、『機動警察パトレイバー2 the Movie』(1993、監督:押井守、美術監督:小倉宏昌)、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995、監督:押井守、美術監督:小倉宏昌)、『メトロポリス』(2001、監督:りんたろう、美術監督:草森秀一)、『鉄コン筋クリート』(2006、監督:マイケル・アリアス、美術監督:木村真二)という、日本を代表するSFアニメーションと、これらの作品に参加した大野広司、小倉宏昌、木村真二、草森秀一、高
絵画とは、意味や精神的な次元を開くための視覚的システム——今回出品している新作で、新たに試みたこと、展開したことを教えてください。 ウィンタース 今回の作品は、近年制作してきた作品の延長と言えると思います。それらは、膨大な量の小さなサイズの白黒のドローイングをベースとして制作されています。 ドローイングは私にとってかたちのボキャブラリーを作り上げることに関わっているのです。そして絵画は、これらのプロトタイプとしてのドローイングに含まれる可能性のある、意味や精神的な次元に到達するための視覚的なシステムとして機能しています。 ——ウィンタースさんの絵画はとても明快な形態と色彩の関係を持っているように思います。たとえば、《Point Array》(2022)は、ドット(点)と色の面から成立していますが、ドットはピンクや赤で描かれ、その下の色面は青い色で描かれています。つまり、それぞれの要素が異な
シリーズ「#MeToo以降の女性映画」は、「#MeToo」のハッシュタグとともに自身の性暴力被害を告発する人々が可視化され、この運動が時代を揺さぶる大きなうねりとなったいま、どのような映画が生み出され、それらをどのように語ることができるのかを考える連載企画。 「#MeToo」運動が一躍世界に広まったきっかけは、2017年10月に「ニューヨーク・タイムズ」紙がハリウッドでもっとも影響力のあるプロデューサーのひとり、ハーヴェイ・ワインスタインによる様々な女性たちへの性暴力とセクシュアル・ハラスメント疑惑を報道したことだった。以降、映画界の長年にわたるジェンダー不平等は様々なかたちで問題視されることとなり、こうした問題を意識的に取り上げる作家・作品も増えている。 連載第6回となる今回は、2000~2001年にかけてイランで16人もの娼婦が殺害された「スパイダー・キラー事件」を題材にした『聖地には
現代料理においてもっとも有名なレストランといえる「ノーマ」。デンマーク・コペンハーゲンに構える店舗が2024年に閉店し、その後は「専門のフードラボ」として新しい道を歩むというニュースが今年1月に世界を賑わせたばかりだ。 そのノーマが現在、2ヶ月間限定で京都にポップアップレストラン「ノーマ京都」(エースホテル京都)をオープンさせている。ノーマが日本でポップアップを開催するのは今回が2度目。日本全国の食材を用いた独創的なコース料理が楽しめることへの期待、また料理と飲み物のパッケージが€ 775という価格も話題を呼びながら、予約は即満席となった。 今回は、文化人類学者として現代料理を研究し、Tokyo Art Beatに「現代料理」と「現代美術」のあいだにある思考の類似を論じたテキストを寄稿したこともある藤田周が、「ノーマ京都」を徹底レビュー。コースの全皿をくまなく解説しながら、各皿の対比や連続
若手メンバーが語る、ダムタイプの最新形。【座談会】古舘健×濱哲史×アオイヤマダ:「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap」(アーティゾン美術館) アーティゾン美術館にて2月25日〜 5月14日に開催中の「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap」を機に、ダムタイプのメンバーにインタビュー。今回は比較的若手のメンバーの視点から、ダムタイプについて、そして作品《2022: remap》について語ってもらった。(ポートレイト撮影:大野隆介)
事故で活動ストップ、一時は「幻」の存在に東京・恵比寿の東京都写真美術館で「深瀬昌久 1961–1991 レトロスペクティブ」展が3月3日に開幕した。「私写真」の先駆者で国際的な評価が高まる写真家・深瀬昌久(1934~2012)の国内初の大回顧展だ。企画は同館学芸員の鈴木佳子と深瀬昌久アーカイブス・ディレクターのトモ・コスガ。会期は6月4日まで。 深瀬は、一時期「幻の」とも形容された写真家だ。 北海道美深町の写真館を営む家に生まれ、東京の日本大学芸術学部写真学科を卒業。日本デザインセンターや出版社勤務などを経て1968年に独立した。60年代初頭よりカメラ雑誌を中心に、身近な人々や私生活を撮影した写真作品を多数発表。1974年、米国ニューヨーク近代美術館で開催された企画展「New Japanese Photography」に出品し、海外でも注目されたが、1992年に転落事故で重度の後遺症を負い
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