能登半島地震で段ボール製の簡易住宅「インスタントハウス」が大活躍している。組み立ては15分、原価は約1万円で、屋根と扉、窓もついた小さな「家」だ。被災地の子供は「体育館におうちができた」と話しているという。インスタントハウスはどうやって生まれたのか。開発した名古屋工業大学の北川啓介教授に、フリーライターの川内イオさんが取材した――。
能登半島地震で段ボール製の簡易住宅「インスタントハウス」が大活躍している。組み立ては15分、原価は約1万円で、屋根と扉、窓もついた小さな「家」だ。被災地の子供は「体育館におうちができた」と話しているという。インスタントハウスはどうやって生まれたのか。開発した名古屋工業大学の北川啓介教授に、フリーライターの川内イオさんが取材した――。
※所属や肩書などは取材当時のものです。 単位が「1フラミンゴ」「1シマウマ」 動物園による動物の移動の実態はどのようなものなのか。 その全体像を明らかにするため、朝日新聞は全国の76自治体(84園)に、動物の搬出・搬入に関する文書の情報開示請求を行った。 余った動物を差し出し、新たな動物を入手する「動物交換」。 朝日新聞が入手した開示文書を集計すると、動物園から搬出された動物の34%にあたる1699頭が交換によるものだった。 こうした取引では、動物が「通貨」の単位のように使われている。 レップジャパンの白輪剛史さんは「動物を手に入れるための通貨単位が『1フラミンゴ』『1シマウマ』のような世界になっている」と明かす。
「1億円プレーヤー」の生産者が現れはじめた 肥料や農業資材、エネルギー……、ありとあらゆるコストは上がるが、大手流通が支配する市場構造の下、小売価格は上がらない。だから農家は儲からない。それどころか生活すらままならない。 そうして誰も跡を継がず、生産者が減る。命を守る食料のはずなのに、外圧に負けて輸入自由化だけを進め、国内生産の苦境に手を差し伸べない。結果、自給率は下がる一方――。 そんな悪循環に陥ってきた日本の農業の現状を変えることはできるのか――。 処方箋を発見した。 和歌山県で「1億円プレーヤー」の生産者が現れはじめたのをご存じだろうか。 農林水産省がまとめている営農類型別経営統計(令和3年)によると農業で生計を立てている主業経営体の農業粗収益は1638.8万円(農業所得は433.5万円)。そんな中、和歌山県ではなぜ1億円に達するような売り上げを誇る農家が増えているのか。 和歌山の名
子供や女性を襲う狼を絶滅させたはずが… 日本ではヒグマやツキノワグマの駆除をめぐって、役所へ「可哀想だからやめて」という抗議の電話が鳴り止まないそうだが、ドイツでもやはり獣による被害が増えている。しかも、こちらは動物愛護を掲げる政権下で駆除が事実上不可能なため、被害は拡大する一方だ。 グーグルに「Wolf(=狼)」と入力して検索してみたら、狼に家畜が襲われたニュースばかりで、しかも、最初の6ページは、数時間から1週間前ぐらいの新着記事がほとんどだった。ドイツで狼の被害が増えていることは承知していたが、この頻度にはかなり驚く。 ヨーロッパでは中世以来、狼が人間にとって、身近で最大の脅威である時代が長く続いた。特にドイツは、ヨーロッパオオカミの主要繁殖地に含まれたため被害が甚大だった。そういえば有名なグリム童話でも、「赤ずきんちゃん」や「狼と7匹の子やぎ」など、子供や動物が狼に食べられてしまう
被害者たちは、外出先でiPhoneを盗まれ、わずか数分後にはアカウントから閉め出される。次いで自宅のMacはログインができなくなり、24時間以内に数百万円という預金が口座から消える――。そんな事例をウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。 被害のきっかけは、iPhoneの4桁または6桁の簡易的なパスコードを盗み見られたことだ。これによって、より強力なパスワードを設定したはずのApple IDのセキュリティが同時に無力化されてしまった。 同紙が今年2月に「脆弱性」として報じ、さまざまなテックメディアで取り上げられ大きな反響を呼んでいる。Appleは現時点で対策措置を発表していない。 被害はiPhoneからほかのApple製品に広がる… これはiPhoneの6桁のパスコードさえわかれば、Apple IDのアカウントを丸ごと乗っ取れる状態であることを意味する。 Apple IDとは、多く
千葉県郊外で「30坪2500万円」といった格安の新築戸建てが増えている。「限界分譲地」を取材するブロガーの吉川祐介さんは「そもそも住んではいけない場所なのに、土地の安さから開発が進んでいる。50年ほど前に開発された近隣地は、ほとんど人が住まない『限界分譲地』となっていて、それを繰り返す恐れがある」という――。 限界分譲地に新築住宅が建ち始めた 不動産の価格を決める要因は、何よりも立地条件と利便性である。その他、需給バランスに左右される面もあるが、その需要を決めるのも結局は立地条件である。 ところが近年は、建築資材の高騰によるものなのか、都市部ではマンション価格も含めた不動産の価格が上昇傾向にある。その影響が郊外まで波及しているのか、公示地価は例年通り下落している地域ですら、住宅価格が上昇する奇妙な現象がみられるようになった。 新築価格が高騰すれば当然中古住宅のニーズも高まるわけで、不動産会
見た目は若いまま、突然寿命が尽きる 老いとは何かと問われたら、みなさんどう答えますか。 「体力が衰える」「顔がシワシワになる」「走れなくなる」「病気になりやすくなる」。全て正解です。一言で定義すると、「死亡率が上がること」と考えるとわかりやすいでしょう。 では、みなさん、「なぜ歳をとると、ヨボヨボになるの?」と聞かれたらどう答えますか。 おそらく多くの人は「生き物は全て歳をとると体が衰える。老化は必然で誰もが避けられない」と答えるのではないでしょうか。 残念ながら、それは間違っています。というのも、ここ30年ほどで「生き物の老化は必然」の常識は大きく塗り替えられてきたからです。 「老いは避けられる」という認識が研究者の間では広まっています。 信じられないかもしれませんが、これは生き物としては決しておかしなことではありません。なぜかというと、老化しない生き物が存在するからです。歳をとってもな
アメリカ宇宙局(NASA)や軍隊で任務中の発作を予防するために膨大な予算をかけ研究が行われている尿管結石。岡山大学医学部の中尾篤典教授が、その画期的な治療法を見つけようと米国の大学が手掛けたビッグサンダーマウンテンの研究結果(2018年にイグノーベル医学賞を受賞)を紹介する――。 ※本稿は、中尾篤典・毛内拡(著)、ナゾロジー(協力)『ウソみたいな人体の話を大学の先生に解説してもらいました。』(秀和システム)の一部を再編集したものです。 おしっこにまつわる謎・尿管結石の新しすぎる治療法 少し汚い話ですが、次はおしっこと膀胱ぼうこうの話です。 尿管結石は、腎臓から膀胱までの尿が通る管の中に石ができる病気です。石が詰まることで腎臓で作られた尿が出なくなり、腎臓が腫れて大変な痛みが出ます。救急外来でよく見られるありふれた疾患で、ライフスタイルや遺伝等も影響するといわれていますが、実は未だにはっきり
子どもだけでの留守番などを禁じる虐待禁止条例改正案を、10月4日に埼玉県議会に提出していた自民党県議団が10日、この改正案を取り下げると発表した。武蔵大学社会学部教授の千田有紀さんは「改正案は、少子化対策に逆行するとしか言いようがなく、取り下げられはしたものの、自民党は痛手を被っただろう。虐待防止は大切であるが、具体的な支援サービスの拡充を図ることなく、海外のシステムをただ輸入して精神論的に乗り切らせようとする態度に問題があったのではないか」という――。 わずか6日で撤回された条例改正案 10月10日、埼玉県議会の自民党県議団は、4日に提出していた、子どもだけでの留守番や通学などを放置による虐待と定める「虐待禁止条例」の改正案を取り下げることを表明した。 当たり前のことであろう。この虐待禁止条例の改正案の中身が知れるや否や、SNS上では「頭おかしい条例」(駒崎弘樹さん命名)とまで呼ばれ、批
登録者数が170万人を超えるYouTubeチャンネルで、絵を超絶技巧で仕上げる様子が人気を集めるのは75歳のおじいちゃん先生・柴崎春通さんだ。柴崎さんいわく「まわりと自分を比べなくていいし、それで心配したり、悩んだりしなくてもいい。世間並じゃなくたっていいんです。例えば親が子を信じてさえいれば、子どもは試行錯誤しながら、いつか自分の中にあるゆるぎない芯棒に気づいていく。そうやって、生きる道を発見していくのだと思います」という――。 「うちの坊は偉い」 「笑顔がステキなおじいちゃん先生」としてYouTubeで大人気の画家・絵画講師の柴崎春通さんは、終戦直後、千葉県の農村地帯で米農家の長男として生まれている。実家は必ずしも裕福とは言えなったが、親から叱られたことも手を上げられたこともなく、愛情をたっぷり注がれて育ったという。
「フードデリバリー大国」の中国で、市場をほぼ独占 中国の街中では、黒地に黄色のロゴのデリバリーバッグを背負った自転車やバイクをよく見かけます。一見、「ウーバーイーツ」のようにも見えますが、これは中国最大手のフードデリバリーサービス「メイトゥアン(美団)」の配達員です。 CNNIC(中国インターネット情報センター)の報道によると、中国国内におけるフードデリバリーの利用者は約4億7000万人(2021年6月末時点)と、全人口の実に3分の1にあたります。長引くコロナ禍と中国当局による「ゼロコロナ政策」の影響もあって、この数年で中国国内のフードデリバリー市場は大きく成長しています。そのような「フードデリバリー大国」の中国で、市場をほぼ独占しているのがこのメイトゥアンです。 メイトゥアンは、市場の67.3%と圧倒的なシェアを誇っています。もともと「グルーポン」のようなオンライン共同購入型クーポンを販
ロシアのウクライナ侵攻の根はチンギス・ハンが作った 2022年2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻して、世界に大きな衝撃を与えました。日本でもこの戦争への関心は高く、報道に心を痛めている人はたくさんいます。ニュースでは街頭インタビューなどで、「早く戦争が終わってほしい」と願う人の姿がたびたび報じられています。 では、同じ街頭インタビューで、「なぜロシアはウクライナに軍事侵攻したのですか?」と聞いたとしたらどうなるでしょうか。70〜80点レベルの回答ができる人は、非常に限られるのではないかと思います。 日本人は知的レベルが高いとされてきたはずなのに、情報があふれすぎているせいなのか、物事を深く知ろうとする意欲が薄れてきているように感じます。大切なのは「どうしてこうなっているのか」に関心を持って調べること。まずは知識を持つことが、深い議論につながります。 私の解釈では、ウクライナ戦争に関わる発端
岸田文雄内閣の支持率が低迷している。だが、野党第1党である立憲民主党の支持率も伸びていない。なぜ立憲は世論の受け皿になっていないのか。2017年に立憲を結党し、21年まで代表を務めた衆院議員の枝野幸男氏(59)に、ジャーナリストの尾中香尚里さんが聞いた――。(前編/全2回) 「枝野幸男」と「菅直人」は体質が違う 今年で政治家生活30周年を迎えました。ついこの間、初当選したばかりのような気がします。「あっという間だったな」という印象です。 30年間の仕事の中で、政治家としての今の私を形作ったのは、新人議員時代に取り組んだ薬害エイズ問題です。あの時は「自社さ」の橋本政権で、私はさきがけ所属の与党議員でした。(危険な非加熱製剤を多くの血友病患者に投与し、HIVに感染させてしまった)製薬会社や厚生省(現厚生労働省)の追及はもちろんでしたが、被害者の皆さんのニーズに応えてどう現実を動かすか、という仕
厳しい著作権法が日本のITをダメにした 前回の記事(20年前なら日本のIT技術は世界一だった…天才プログラマーの7年半を奪った「著作権法」という闇)において、2004年にファイル共有交換ソフト「Winny」を開発した東京大学大学院特任教授(当時)の金子勇氏が著作権法違反幇助罪で逮捕、起訴されたことで、日本が世界のIT革命に乗り遅れた件を取り上げた。 その一方で、動画配信システム「YouTube」が生まれたアメリカでは、1998年に制定されたデジタル・ミレニアム著作権法で、検索エンジンや動画サービスなどのサービス・プロバイダーは、法律に定める要件を満たしていれば著作権侵害の責任を負う必要がなく、そのおかげでYouTubeが世界を席巻するようになったこともお伝えした。
結婚は孤独の解決策になるのか 結婚を支持する人たちは、カップルとして生きること、あるいは家族で生きることは、孤独を防いでくれると主張する(※1)。 しかしながら、結婚生活が本当に孤独を減少させるかどうかという問いとそれへの答えは、検証が可能であり、また、検証するべきものだ。もちろん、幸せな子どもたちのいる、幸せな結婚生活で、家族が愛しあっているなら、当然、恩恵はあるだろう。 問題は、あらゆる年齢層のすべての人々にとって、さまざまなシチュエーションにおいて、たとえば、別離や離婚、配偶者の死亡に終わった場合であっても、結婚が平均的に見てすぐれた解決策かどうか、ということだ。 それを考慮に入れて、結婚は孤独に対するよいソリューションかという質問への回答をシンプルな図にまとめてみた(しかし、もっと複雑な事情があることは、後に紹介する)。図表1を見てほしい。 結婚はシニアの生活を孤独にするという衝撃
モバイル事業の業績不振で楽天グループが苦境に立たされている。日本を代表するIT企業はどこで間違えたのか。企業アナリストの大関暁夫さんは「楽天の株価を引き下げているものは、楽天モバイルの業績不振に尽きる。その背景には、『基地局設置』『プラチナバンド問題』『官製値下げの影響』といった誤算がある」という――。 好調な事業の黒字をモバイルが一気に食いつぶしている 楽天の株価下落が止まりません。2021年3月に上場来最高値の1545円を付けて以降、右肩下がり一辺倒。直近では四半期ごとの大赤字決算発表の都度株価を下げ、今や500円前後を行ったり来たり。最高値の3分の1以下になってしまった、という体たらくぶりなのです。 楽天の株価を引き下げているものは、楽天モバイルの業績不振に尽きます。モバイル事業準備段階の19年決算からグループ決算の赤字化が始まり、サービススタート後の20年決算からは3期連続で100
バイク乗りのイメージを下げた「珍走団」 最近は見かけないけれど、暴走族には先陣して赤信号の交差点を突入する「切り込み隊」がいた。全部隊が通過するまで他のクルマの通行を制止する役割だ。騒音より危険で迷惑な行為だが、彼らの中では尊敬を集める存在だったらしい。 一部の素行の悪い者のおかげで、善良な人々が迷惑する。これはどの分野にもある。「暴走族」と呼ばれた素行不良のおかげで、バイク乗りはさんざんな迷惑を被った。バイクに乗っているだけで暴走族扱いされるし、法的に16歳以上で原付免許を取れるというのに、自治体や高校などで「三ない運動」が起きた。1975年に愛知県教育委員会が始めたそうだ。免許を取らせない、バイクを買わせない、バイクを運転させない、だ。 そんな暴走族もすっかり影を潜めた。「暴走族」を「珍走団」と呼ぼう、というネットスラングが生まれ、バイクの暴走はカッコ悪いというイメージが広まったからで
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