六朝時代、梁の皇侃が著した『論語義疏』は、中国では十二世紀の終わりごろに散逸してしまったが、日本に伝来し大切に保存されてきた。江戸時代に出版され、中国に逆輸入されると、彼の地の学者を驚かせたという数奇な運命をもっている。『論語義疏』は皇侃の時代までに蓄積された『論語』解釈をめぐる様々な説や、興味深い説話の宝庫である。本書では『論語義疏』を手がかりに「古典の中の古典」の豊かな内実を解き明かし、あわせて孔子の生涯を丁寧にたどってゆく。孔子とその弟子たちの生き生きとした言行録を味読するための画期的な入門書。