「24時間眠らない街」「不夜城」と称される新宿・歌舞伎町。華やかさと危うさが交差するこの街で、石原伸司(69)はいつものように少年、少女たちに声をかけていた。指定暴力団の元組長。現役時代は恐喝、銃の不法所持、傷害致死など数々の犯罪を重ね、獄中での生活は20年以上にのぼるが、いまは「罪滅ぼしの意味も込めて」、非行に走る少年たちの更生に力を尽くしている。「周りからは“夜回り組長”なんて呼ばれてます」 昨年9月、暴力団組員が少女2人を奄美大島へ人身売買していた事件が発覚した。彼女たちが島から逃れ、真っ先に連絡をとったのが石原だった。 2人が島へ売り飛ばされる前の5月下旬、歌舞伎町で見かけていた。「お前ら、ここで何をしてるんだ」。問いかけに少女はけげんそうな表情で答えた。「働き口を紹介してもらっているだけ」。一見してやくざと分かる男と話しこむ少女。直感的に違和感を覚えた。「何か変だ」。悪い予感をぬ