林 英樹 日経ビジネス記者 大阪生まれ。神戸大学法学部卒業後、全国紙の社会部記者として京都・大阪で事件を取材。2009年末に日本経済新聞社に入り、経済部で中央省庁担当、企業報道部でメディア・ネット、素材・化学業界などを担当。14年3月から日経BP社(日経ビジネス編集部)に出向し、製造業全般を取材している。 この著者の記事を見る
昨今、「Edutech」(教育のIT化)とともに、「義務教育にプログラミング教育を取り入れるべきか」についての話題が盛り上がりを見せてきている。 佐賀県武雄市、ディー・エヌ・エー(DeNA)、東洋大学は、産官学連携で取り組んだ、小学校の1年生40人を対象としてプログラミング教育の実証研究成果報告会を今年2月に開催した。小学校からのプログラミング教育の義務教育化も少しずつ取り組まれ始めている状況だ。 このコラムでも以前、「各国で始まるプログラミング教育必修化の波」の回でプログラミング教育について取り上げた。日本でも平成24年度(2012年度)の新学習指導要領により、中学校の「技術・家庭」において、従来選択科目であった「プログラムと計測・制御」が必修科目となっている。 世界に目を向けても、イギリスでは2014年から5~16歳でのプログラミング教育が必修化されている。2016年からは、オーストラ
小林 三郎 氏(左) 中央大学大学院戦略経営研究科 客員教授。1971年本田技術研究所に入社。1987年に日本初のエアバッグの開発・量産・市販に成功。2000年にはホンダの経営企画部長に就任。退職後、一橋大学大学院国際企業戦略研究科客員教授を経て、2010年4月から現職。主な著書に『ホンダ イノベーションの神髄』、『ホンダ イノベーション魂!』など。 田子 學 氏(右) エムテド代表取締役 アートディレクター/デザイナー。東芝、「アマダナ」(リアル・フリート)での活動を経て独立起業。現在、慶應義塾大学大学院SDM研究科特任教授、法政大学デザイン工学部非常勤講師、東京造形大学非常勤講師も務める。主な著書に『デザインマネジメント ~アップル、グーグル、アウディ、ダイソンの経営の基本はこれだ』など。 (撮影:栗原 克己) 田子:前回の視野の広さに深く関連するかもしれないエピソードがあります。私は
「知性」と似て非なる、もう一つの言葉 田坂教授は、『知性を磨く 「スーパージェネラリスト」の時代』(光文社新書)の中で、「知性」と「知能」は、似て非なる言葉であり、高学歴とは「高い知能」を持っていることを意味しているが、「深い知性」を持っていることを意味しないと指摘されていますね。 そのことを、この連載の第1回では、「なぜ、高学歴の人物が、深い知性を感じさせないのか?」という逆説として述べられたと思いますが、前回の連載第2回の最後に、「知性」と似て非なる、もう一つの言葉があると言われました。それは何でしょうか? 田坂:そのことを説明するために、ビジネスにおいて、しばしば遭遇する一つの場面を紹介しましょう。ビジネスパーソンならば、誰もが、こうした場面を経験したことがあるのではないでしょうか? 例えば、ある新事業企画の会議。 ある若手社員が見事なプレゼンをする。同僚の若手メンバーは、感心しなが
現代の企業においては、IT(情報技術)、そしてウェブをどう使っていくかが企業の成長のカギを握っている――。このことに異論がある方はいないだろう。 少し前までは、既存の業務を一部IT化し「わが社はITを活用している」などと生ぬるいことを言っていられる時代だったが、今ではIT、ウェブをベースにビジネスモデルを組み立てていないと勝ち目の無い世界になりつつある。 グーグル、フェイスブック、マイクロソフトなどは言うまでもなく、今やITと全く無縁そうな回転寿司屋でさえ、ビッグデータを活用し廃棄量75%削減を達成している時代である(「スシロー、ビッグデータ分析し寿司流す 廃棄量75%減」:日経新聞電子版1月27日)。 しかし、これだけビジネスの中心にIT、ウェブが入り込んできている現在でさえ、IT、ウェブの中心を担うITエンジニアの仕事について「製造業と同じようなもの」と勘違いしている人が非常に多い。
現在、同社の廃プラスチック油化装置は、国内約60カ所、海外約30カ所に設置されており、伊東氏の事業内容を紹介した動画サイト(YouTube)は世界中で視聴されている。再生回数は363万回を突破し、動画がアップされた2011年には、世界中からメールによる問い合わせが殺到。その数は約1万5000件を超えた。 プラスチックごみの多くは焼却処分 ご存知の通り、プラスチックは石油からできている。それを石油に戻すことは技術的には難しくない。プラスチックを約400℃まで加熱して気体にし、冷却装置で冷却してやれば、石油が生成される。 しかし現在、プラスチックごみのほとんどは焼却されたり、そのまま埋め立て処分されたりしている。それはなぜなのだろうか。 実は、1970年代に起こったオイルショックを機に、日本でも70年代後半からプラスチックごみの油化技術の開発が進められ、その技術はほぼ確立していた。そして、90
日経ビジネス2月10日号の特集「働き方革命」では、労働時間にメスを入れることで競争力を高めようとしている企業のケーススタディーを掲載した。 ダラダラと働く文化を変えて労働生産性を高める、多様な働き手を集めるなど、企業の狙いは様々だ。この連載では誌面に取り上げられなかった企業の事例や、「働き方革命」によって自らの働き方や意識を変えたビジネスパーソンを紹介しよう。 「1000円、10分カット」。理美容業界で異端とも言えるビジネスモデルで成長を続けるQBハウス。今、雇用の面でも、業界の常識を覆す動きを見せ始めている。 朝10時の開店とともに、引きも切らずに客が入ってくる。ショッピングモールの中にある「西友小手指店」(埼玉県所沢市)は、ここから昼過ぎまでが書き入れ時だ。家族で西友に買い物に来た夫が、妻や子供が買い物をしている間に髪を切ろうとやってくるケースが多い。 同店で一心不乱にハサミを動かし続
京都の朝鮮学校の周辺で「ヘイトスピーチ」と呼ばれる差別的表現の街頭宣伝を繰り返していた「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などに対して、街宣禁止と約1200万円の賠償を命じる判決があった。 2009年、京都朝鮮第一初級学校に「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の人々がやってきてスピーカーであれこれと主張をしていたことは、以前から一部ではニュースになっていた。 事の経緯は、広い土地を持っていない同校が、自分たちの土地でない近隣の公園を運動場代わりにしていたことについて、在特会の人々が憤慨し街宣活動をしながら立ち退きを求めたというものだ。近隣の公園を自分たちの運動場代わりに使うことは、過去の経緯がどうあれ弁解しにくいものの、問題となったのは、在特会側が街宣時に発した言葉だった。 その時の様子はYoutubeにある通り。例えば、2分54秒あたりでは、「何が子どもじゃ、スパイの子どもやない
4月19日の朝日新聞で「諮問会議,過度な規制緩和にNO」という記事が報道された。これは、行き過ぎた規制緩和を批判しているベンチャーキャピタルのデフタ・パートナーズグループの原丈人会長の意見を聞き、原氏の助言で「日本型資本主義」を考える専門調査会を政府の経済財政諮問会議につくることにしたと伝えている。 第二次世界大戦後の日本は景気の波はあったにしろ、長期にわたって経済成長を遂げてきた。ボーゲル教授の「Japan as Number One」という本が示すように、1970年後半から80年代には、日本の経済運営が世界のお手本として見なされ、一部には日本はもうアメリカから学ぶものはないと豪語するグループもあったといわれる。しかし89年から91年に掛けて、バブルがはじけると、途端に自信を失った日本人は、新しい米国流の考え方を次から次へと取り入れていった。米国流考え方とは、つまり規制緩和や成果主義やリ
7月から一般的な家庭における電気料金は、月平均で約87円増えた。太陽光や風力、バイオマスなど、再生可能エネルギーで生み出された電力を電力会社に買い取らせる「固定価格買い取り制度」が始まったからだ。この買い取りの原資は、電気料金と合わせて家庭や企業が負担する。 制度の目的は、長期間に渡って優遇価格での買い取りを保証することで、再生可能エネルギーを普及させることにある。増税といい節電といい、何かにつけて国民にツケが回ってくることに反発を覚える今日この頃だが、この負担に関しては「まあ仕方ないか」というのが正直な感覚だ。 福島第一原子力発電所の事故で、原発が抱えるあれだけのリスクとコストが顕在化した今、日本がエネルギー戦略の転換を迫られているのは誰しも感じていることだ。もちろん、原発をすぐになくすのは、エネルギー安定供給の観点や日本経済へのダメージを考えれば現実的ではない。それでも、徐々に再生可能
乙武洋匡さんがイタリアンレストランへの入店を拒絶された件について、大筋の話は既に落着している。 当該のレストランに苦情が殺到したことや、乙武さんのツイッターアカウントが炎上した点についても、ご本人が自身のブログ上で行き届いた総括をしたことで、騒動は鎮静化している。 なので、この問題自体を蒸し返しすつもりはない。 私自身は、初期段階から、当件には関与していない。ネット上で、騒ぎが拡大していることに気づいてはいたが、あえて見に行くことはしなかった。 つい先ほど、この原稿を書くための予備取材の意味で、乙武さんのブログと、いくつかのまとめサイトの記述をチェックしに行っただけだ。 だから、何も言わない。 これまで静観していた人間が、ことここに及んで何かを言うことは、態度として好ましくないと思うからだ。 決着のついたレースについて、したり顔で解説を垂れる評論家の言い草を、競馬ファンの多くは、軽蔑してい
こんにちは。「バンドマン社長」河野です。 僕は前回、「どうして『前年比』を超えないといけないんですか?」とみなさんに問いかけました。「業績が右肩上がりであり続けること」を、中長期的な商品の価値やサービスよりも重視した結果、あなたのいる組織は硬直化し、未来へ向けた冒険の可能性を失ってはいませんか、と。 その記事に対して、予想以上にたくさんのリアクションがありました。多くの方から共感を寄せていただきましたが、同時に反対意見もかなりありました。いろいろなご意見がありましたが、「面白いな」と思ったのは、ざっくりこんな感じの声です。 「社員の給与も据え置きなんじゃないのか?」 「社員の給料はどうなんだ? 前年の実績をクリアできなくて構わないなら、月給も据え置きが大前提だろう。音楽の仕事は給料が安くても頑張る人が多いからできる話で、河野は経営者として従業員に甘えているんじゃないのか?」――。要は、「右
トヨタのブースの目玉は、高級車「レクサス」をベースにした“自動走行車”のコンセプトカー。天井とフロントグリルに、むき出しに設置された計器類が目を引く。天井のレーザー機器が周囲360度の障害物を検知し、フロントグリルのレーダーは前方のクルマとの車間距離など走行状況を常時把握。GPS(全地球測位システム)で位置確認しながら自動でハンドルを切る。ドライバーがいなくても完全に自動走行ができるシステムで、既に米ミシガン州で公道実験も始めたという。 国道を行き交う「グーグルカー」 米国では、自動走行車はもはや夢物語ではない。米インターネット検索大手グーグルも昨年9月、開発中の自動走行車を公道で走らせる許可をカリフォルニア州から受けた。今月、カリフォルニアに出張した同僚記者は、サンフランシスコ中心部とグーグル本社のあるマウンテンビューを結ぶ国道101号線で、この「グーグルカー」に2度も遭遇したという。米
2012年の薄型テレビの出荷台数は前年比で67.5%減(電子情報技術産業協会調べ)と、すさまじい勢いで市場がしぼむ日本。電機各社にとって、もはやテレビは業績低迷の悪玉にすぎず、デジタル製品の主役はスマートフォンやタブレット端末に取って代わられた。世界市場における韓国メーカーの存在感も、元・テレビ王国の自信喪失を誘う。しかし、本当に日本のテレビは魅力を失ったのか。デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏に、先頃米国で行われた世界最大の家電の見本市、「2013 International CES」での様子を振り返ってもらいながら、今後のテレビの行方を探った。 (聞き手は酒井康治) 米国で「2013 International CES(以下、CES)」が終了しましたが、これからテレビがどうなっていくのかを中心に、話をお聞かせください。 麻倉:まず、近年のCESにおけるテレビの流れを説明しましょう。例年
おっしゃる通り、CEO(最高経営責任者)というのは本当にタフで孤独な役職です。CEOの悩みを理解してくれる人は多くないですし、気軽に話せる内容でもないですからね。 おかげさまで、エバーノートの業績は堅調です。もしかして、皆さんはそんな会社のCEOの悩みなんて、贅沢なものばかりじゃないの?と想像していたりしませんか? 例えば…。 「あ~、自家用ガルフストリーム・ジェット機のエアコンの調子が悪くて、嫌になっちゃうよ」 「毎週取り寄せているフェラガモのリップクリームを塗っているのに唇が乾きすぎる。来週はダボス会議に出席して記者に囲まれるというのに、こんなに唇が荒れていたらみっともないな」 「うぅ、アンチエイジングのために毎朝愛用している高圧酸素カプセルから出るのがつらいよ~」 「ボディーガード犬の訓練がなってない。今日こそ厳しく叱っておかなくちゃ!」 ………。はい、冗談はこのくらいにしておきまし
どうも、「バンドマン社長」河野です。 実は今回、僕は日経ビジネスの編集者と“けんか”をしました。 「河野さん、残響の売り上げの数字を出してください」と頼まれ、はいはいと提出したところ、グラフを見た編集者さんが「…うーん、基本的に右肩上がりだけど、ずいぶん波がありますよね。規模も小さいし、これって大企業に勤めている読者さんに、参考になるのかな、読んでもらえるのかなあ」と言われたんですね。これがそのグラフです。 思わずカチンときた僕は、食ってかかりました。 「右肩上がりを暗黙の前提にしてしまう経営は完全に古いと思っています。僕は、縦に伸びる経営より、横に広げる経営を目指したい。失礼ですが、『売上高』に対する考え方が、いまの世の中とずれているんじゃないですか?」 一瞬きょとんとした顔をした後、「…むしろそのお話聞きたいですね」と、食いついてきたのは、さすが編集者さんです(笑)。 とはいえ、彼の反
加藤和彦(かとう・かずひこ) 独立行政法人産業技術総合研究所太陽光発電工学研究センターシステムチームチーム長(工学博士)。1990年筑波大学大学院理工学研究科(修士課程)修了、通商産業省工業技術院電子技術総合研究所(現産業技術総合研究所)入所。1996年5月~1997年4月通商産業省工業技術院ニューサンシャイン計画推進本部研究開発官付(再生可能エネルギー担当)に併任、1997年6月~2000年3月東京大学工学部地球環境工学寄付講座特別教員併任、2001年4月~2003年3月新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)太陽・風力技術開発室主任研究員に出向、2011年4月から現職。2006年からPVRessQ!活動を開始。著書に『太陽光発電システムの不具合事例ファイル-PVRessQ!からの現地報告』(日刊工業新聞社) 加藤:産総研では現在、5645枚、住宅だと211軒分に相当するパネルを設
家電製品に関するインターネット通販「アマゾン」の価格設定が波紋を広げている。仕入れ値を下回ると見られる価格に、家電量販店から「ルール違反」との声が上がる。「キンドル」を日本に上陸させる「黒船」の影響力はどこまで広がるのか。 「申し訳ありませんが、ウチではこれ以上の価格は出せません」 テレビ売り場の店員は、そう言って申し訳なさそうに頭を下げた。11月上旬、東京都心のある大型家電量販店で、シャープの薄型テレビ「LC-24K7」の値下げ交渉をした時のことだ。 交渉材料に使ったのはインターネット通販サイトの「アマゾン」。サイト上で販売元が「Amazon.co.jp」となっていた同型商品の価格は2万6543円だった。一方、量販店の値札に掲げられた価格は3万3100円で、10%のポイント付き。ポイント分を差し引いても3000円以上の開きがあった。 「ここまで下がりませんか」。アマゾンの価格を見せると、
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