ライブラリアンとナレッジ・マネジメント 1990年代後半から始まったナレッジ・マネジメントは,競争力の源泉としての知識の重要性に着目した最新の経営理論・実践であり,既存の知識を共有・活用する「知識管理」をベースに新しい知識を創り続けることを目指す「知識経営」を意味する。組織的な知識創造によって価値を生みだすナレッジ・マネジメントは,その名を冠した学会,学術雑誌,大学院プログラム・コース・科目が世界中で叢生していることでもわかるように,一過性の流行りのビジネス・コンセプトなどではなく,品質管理がそうであったように,社会の様々の分野に応用できる一種の社会技術であり,社会運動である。 このナレッジ・マネジメント運動のきっかけを作ったのは,実は日本人である。一橋大学の野中郁次郎教授は,1985年に 『企業進化論 情報創造のマネジメント』(1)で当時の組織論の情報処理パラダイムを否定し,1990年に