藤原新也さん(左)と武田砂鉄さん=種子貴之撮影 群れないとアンテナが磨かれる 武田: 10年前になりますが、『紋切型社会』をBunkamuraドゥマゴ文学賞に選んでいただきました。その贈呈式後の二次会に藤原さんがいらっしゃったときに、「ここにはエライ人がいないのがいい」と言ってくれたのが印象的で、今でも覚えています。藤原さんの活動を考えたとき、「群れない」を徹底されてきたと感じています。SNSをはじめとした現代の承認欲求のように、自分の周囲・背景にどれだけの人がいるかを示すことで自分の力を証明する行動様式の対極です。 藤原:ひとり旅が長かったから自ずと群れないと言う行動様式が身についたのだと思います。それにひとりでいるとものがよく見えるし、感性やアンテナが磨かれる。気づきの世界が写真の仕事ですが助手がいたりすると感性が鈍ってしまうんですね。そう意味でも僕の仕事自体が「個」で成り立っていると