なぜ、配偶者や恋人がいても性的サービス産業に行く男性は多いのか。社会学者の山田昌弘さんは「愛情関係を1人に絞ることなく、分散させて満足させようとするのが日本社会の特徴なのかもしれない」という――。 「好きで好きでたまらない」感情の行き先 言葉は社会を映します。 「推し」。この言葉が急速に社会に広まったのも、時代の一つの反映だといえます。日常におけるリアルな恋愛というものが衰退する中で、「推し」という言葉が、「好き」という感情の受け皿になったのです。 今の日本社会において、「好きで好きでたまらない」といったロマンティックで非合理な感情は、現実の身近な人間よりも、スターやアイドル、キャラクター、またはキャバクラやホスト、あるいはペットなどに向かっているように見えます。 ダイレクトに相手に好意を伝える「好き」とは違い、「推し」にはどこか「応えてもらわなくてもいい」とでもいうような、一方通行の感覚