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国外からの選挙介入があったのではないかと問題にあった7月の参院選。その意図の存在を証明することは難しいが、欧州の情報空間で起きているロシアの情報工作とみられる動きは、日本でも拡大していると筆者は指摘する。 2025年7月20日に投開票が行われた参議院議員選挙に対して、国外アクターの選挙介入があったのではないかと問題になった。選挙期間中の7月15日に情報法制研究所の山本一郎氏が掲載した、「ロシア製偽情報に操られる日本の選挙と参政党」というnoteに端を発する動きであった。ロシア製の「ボット」と呼ばれる自動プログラムが日本の政権を狙った偽情報の拡散や印象操作を行っていると山本氏が指摘し、そこで指摘されたX上のアカウント5件が翌日には凍結された。 選挙後にこの問題が複数のメディアによって取り上げられると、ロシアの政府系メディアであるSputnik日本のコンテンツを拡散していると山本氏に指摘された
在日中国人はすでに87万人を超え、日本社会で存在感を増している。中国における経済不安や政治リスクなどを背景に移住者がますます増える中、ビジネスを主目的にコロナ禍ごろから急増した「ニューカマー」の一部が在日同胞社会にあつれきを生んでいる。 「金持ち風」を吹かすのが常套手段 「『自分は客だ』、『俺はお前より上だ』という偉そうな態度がありありだった。本当に腹立たしい」 都内でコンサルティング会社を経営する30代の在日中国人男性、王さん(仮名)は、こう怒りをぶちまけた。怒りを向けた先は、日本への移住を希望して中国からやってきた男性、陳さん(同)だ。知人からの紹介で、日本のビジネスについて陳さんの相談に乗ることになった王さんだったが、来日前からその横柄さに憤りを募らせたという。 陳さんはまず、成田空港へ迎えに来るように要求し、商談場所として都内の高級ホテルのラウンジをわざわざ指定してきた。王さんが多
日本の右派勢力は保守的で国家主義的な思想を持つと考えられているが、彼らの多くが戦後「親米」を掲げる。戦前は「反米」だったはずの右派勢力が、なぜ戦後に雪崩を打って親米に転じたのか。米国のトランプ大統領が日米安保体制に不満をにじませる今、これからの日米関係はどうあるべきか。「対米自立」を訴える「一水会」の木村三浩代表が、自身の活動を踏まえて、客観的に歴史的経緯を語った。 木村 三浩 KIMURA Mitsuhiro 1956年、東京都生まれ。一水会代表。社会活動家。30歳から慶應義塾大学法学部、同大学法学研究科で学ぶ。81年「反米愛国・抗ソ」を掲げた「統一戦線義勇軍」の結成に参画、議長に。98年NASYO(非同盟主義学生青年会議)の常任理事となる。2000年に一水会代表に就任。著書に『男気とは何か』『憂国論・新パトリオティズムの展開』『反米自立論 日本のための選択と共同』(大西広氏と共著)など
2024年、「東京都同情塔」で芥川賞を受賞した九段理江さん。生成AIの文章を一部に使用したとの発言が大きな注目を集めた。海外で翻訳刊行ラッシュが続く本作の執筆の背景と、九段さんの「言葉」への強い思いを聞いた。 九段 理江 QUDAN Rie 1990年、埼玉県生まれ。2021年、「悪い音楽」で文學界新人賞を受賞しデビュー。その後「Schoolgirl」(芸術選奨新人賞)、「しをかくうま」(野間文芸新人賞)を発表。2024年1月、「東京都同情塔」で芥川賞作家に。 海外でも続々翻訳刊行 「全体の5パーセントくらいはAIで書いた」──昨年、九段理江さんが「東京都同情塔」(以下「同情塔」)で芥川賞を受賞した際、記者会見でのひと言が大きな波紋を呼んだ。 本作は、現実世界では白紙撤回となったザハ・ハディド案の「新国立競技場」が建設され、2020年に東京五輪が開催された後のもう一つの日本が舞台。建築家の
参院選で争点の一つになっている外国人政策に絡み、SNSで「生活保護世帯の3分の1は外国人」といった内容の投稿が拡散されている。しかし、2023年度に生活保護を受給した世帯のうち、外国籍世帯の割合は全体の2.9%であり、「3分の1」というのは事実に基づかない虚偽情報にあたる。 厚生労働省によると、23年度に全国で生活保護を受けた世帯数は165万478世帯(保護停止中を含む)で、前年度に比べ7015世帯増えた。 このうち、世帯主が外国籍なのは4万7317世帯(同)。前年度から23世帯増えたものの、総受給世帯数に占める外国籍世帯の割合は近年、2%台後半で推移している。 生活保護法は日本国民を対象としているが、旧厚生省は1954年に「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」とする通知を出し、一定の外国人に対して人道上の観点から生活保護法に基づく保護に準じた保護を行うとし、外国人にも生活
「自国通貨建てならば国債はいくらでも発行することができる。日本銀行が円を発行しながら国債を購入すればよいからだ。それを続ければデフォルト(債務不履行)は起きないので、財源がなくても財政支出はいくらでも拡大できる」という声が日本のSNS上ではなぜか非常に多い。 筆者は仕事柄、機関投資家や銀行、証券会社で国債を実際に売買しているプロたちと日常議論しているのだが、そういった現象に強い危機感を表す人が最近増加している。根本的に間違っているからである。 この原稿は出張先のニューヨークで書いている。当地の金融市場参加者に冒頭の話をすると、「いや、それはあり得ないでしょ」といった反応が返ってくる。一言でいえば、「フリーランチ(タダ飯)は存在しない」ということになる。 自国の債務に悲鳴を上げた英国人女性 2010年~11年にかけて筆者がロンドンに滞在していたとき、財政に対するイギリス人と日本人の感覚の大き
神社を身近に感じる日本人でも、上部団体の神社本庁についてはほとんどが知らない。一神教ではなく、八百万(やおよろず)の神を信仰対象にする神社に全国組織があるのはなぜか。疑問を解くカギは明治期以降の近代史にある。 ヒンドゥー教と同種のアニミズム 日本には神道(しんとう)という、伝統的な民族宗教が存在する。 その原始は、天体や山、巨石などを信仰していた、日本古来のアニミズム(自然崇拝)的多神教である。よって、確たる教祖や最高経典といったものは存在しない。 そしてそういう宗教は、インドのヒンドゥー教や東南アジア地域のピー信仰(精霊信仰)、またネイティブ・アメリカンのシャーマニズムなど、世界のあちこちに同じようなものがあって、特に「日本だけに見られる珍しい信仰の形」などではない。 しかしあえて1点、「神道という宗教の珍しいところ」を挙げるとするならば、前述したような、教義体系的にはかなりゆるい自然宗
それでも量的に見れば、日本の大学教育は国際比較の視点で見ても、ある程度の量的拡大を遂げてきた。最新の統計によれば、18歳人口のおよそ60%が4年制大学に進学している。これは統計の取り方が異なるとはいえ、英国や米国と比べても遜色はない。ただし、他の先進国との違いもある。そのひとつは、進学者のほとんどが高校を卒業したばかりの18歳に限定される点だ。中等教育修了後にさまざまなキャリアを経た上で、大学で学ぼうとする人々の割合は少ない。その結果、大学進学のチャンスは高校修了後の一時点に集中する。学び直しの機会として大学教育が用いられる機会が少ないということだ。こうしたセカンドチャンスの制約は、大学院への進学機会が限られていること——別の見方をすれば、他の先進国とは異なり、大学院での学位が社会に出てから価値=プレミア=を持たないこと——によってさらに強まる。 授業料の無償化と「地位財」を巡るゼロサムゲ
日本ワインの可能性《中編》 世界が気づき始めた実力──日本人が“逆輸入”された魅力を再認識する時代へ 食 旅 旅と暮らし 国際交流 2025.05.06 世界が日本ワインの存在に気づき、その実力に舌を巻く場面が増えている。2025年2月9日、フランス・ブルゴーニュの会場に日本から139銘柄600本を集めて開催された試飲会は、まさにそのようなシーンが展開される“ホットスポット”だった。日本ワインのブレークという「現象」は海外で起こり、日本で暮らすわれわれが知らぬ間に加熱している。そして、その「現象」は日本ワインの在り方に確かな影響を与えている。 ブルゴーニュで高まる日本ワインの注目度 日本ワインの試飲会「サロン・デ・ヴァン・ジャポネ」(以下「SVJ」)が行われたのは、フランス有数の銘醸地ブルゴーニュの中心都市ボーヌの古い教会でのこと。2023年の初回に続き今回が2回目の開催だった。実行委員長
ツイッター(現X)で連載される漫画から始まり、爆発的な人気となっているキャラクター「ちいかわ」。かわいい生き物たちが展開するダークな世界観が大人にも受け、世界各国で人々を魅了している。人気の秘密を考察する。 ツイッター投稿から始まった 「ちいかわ」は「なんか小さくてかわいいやつ」の略で、クリエーターのナガノ氏が2017年からツイッターで投稿を始めた漫画に登場する二頭身の動物キャラクターだ。「こういう風になって暮らしたい」という作者の願望が映しだされており、20年1月からは専用の独立アカウントで公開されるようになった。 日本では11年ごろから、イラストレーターらがSNSにキャラクターや漫画を盛んに投稿し始めた。LINEやツイッター、ピクシブのようなコミュニケーション・投稿サービスが急激に普及していく中で、「ゆるキャラ」と呼ばれるキャラクターが数多く生み出された。14年5月に始まった「LINE
日本のレジェンド 細野晴臣:日本語ロック、YMO、アンビエント―多様なスタイルの追求から継承へ、終わりなき音楽探求の旅 People 文化 社会 2025.04.25 半世紀以上にわたり、ジャンルを超えて新境地を切り開いてきた細野晴臣。はっぴいえんど、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)に代表されるバンド活動、ソロ、歌謡曲の楽曲提供、アンビエント(環境音楽)への傾倒など、多彩な音楽活動の本質を探る。 2024年、細野晴臣は音楽活動55周年を迎えた。そのキャリアは一見、捉えどころがない。はっぴいえんどやYMOといったバンドでの活動に、ティン・パン・アレーとして関わったセッション・ワークス、そしてソロ。手掛けたジャンルも多岐にわたり、ロック、カントリー、エキゾチック、テクノ、歌謡曲、民族音楽、アンビエント、エレクトロニカ、ブギウギ、映画音楽…挙げればきりがない。 「ぼくの音楽歴はなんと節
「帰化人」とは、国籍を外国から日本に移した人を指す。正式な法律用語として国籍法には「帰化」の項目があり、行政手続きなどの場合は「帰化者」という。数年前に私も帰化人の一人になった。 そもそも古い日本語で帰化という言葉には、国家の秩序に従い「君主」のもとに服す意味合いがあった。このため、帰化申請を通して日本国籍を取得する行為、あるいは取得した人について、マイナスのニュアンスで語られる場合がある。そこで多くの新聞社が「日本国籍取得者」もしくは「日本国籍所有者」などと言い換えている。 近年、日本の国籍を取得することに関心を示す外国人が増えているようで、法務省が公開している 2024 年までの累計データでは、「帰化許可者」の合計は61万208 人に達している(帰化が認められた人の約 8割が韓国・朝鮮、中国の人たちである)。 以前は、帰化後に日本的な氏名を名乗ることや、個人ではなく、世帯主が帰化申請を
ここ数年、初任給を大きく引き上げ30万円を超える企業が増えている。初任給はかつて、競合する同業や同じ企業内でほぼ同水準の「横並び」傾向が強かったが、近年はその構造が人手不足から崩れ始めている。長期雇用や年功的賃金といった日本型雇用慣行にも影響が出てきそうだ。 日本型雇用慣行と結びついた初任給の「横並び」 最初に、初任給は従来ほぼ横並びだった事実を簡単に確認するため、同じ規模・業種の法人で雇われている新卒大卒男性の所定内給与額(所定労働時間を勤務した時にもらえる月々の賃金額)のばらつきを計算した。この値は、全員の初任給が同額であればゼロとなる。また、新卒者との比較の対象として、同じ法人で働く、年齢が30、40、50歳で新卒入社以降継続勤務しているとみなされる大卒男性の所定内給与額のばらつきも計算したのが次の図である。 図上の数値が小さいほどばらつきが小さいことを意味するが、新卒時点のばらつき
最近の国会中継を見ていると、所得税の「103万円の壁」に代表されるような、国債増発を暗黙の前提とする積極財政の議論が多くを占めている。 現下の物価高騰で生活が困窮している人々への支援は短期的には確かに必要だ。しかしながら、前回のコラムでも触れたように、この30年ほどの間に日本の国際的な競争力は著しく凋落(ちょうらく)した。深刻な人口減少が今後も続く中、競争力を再構築しながら生産性を向上させる民間の供給サイドの改革が非常に大事である。物価上昇を持続的に上回る賃上げを実現するにはそれが必須と考えられる。 それを欠くと、言ってみれば、氷山に衝突して既にかなり沈んできたタイタニック号の中で、「売店の割引クーポン券をもっと配るべし。その方が売店の売り上げが増えるはず」と人々が夢中になって議論しているような事態になる恐れがある。 財政による支援策だけでは日本国民は長期的には豊かになれない。下のグラフは
蔦屋重三郎が生きた時代、江戸の出版社にはふたつに大別できた。字引き(辞書)や学術・研究書、地誌(地理の本)・武鑑などの発行元である「書物問屋」と、娯楽書などの一般書籍や浮世絵を制作・販売する「地本問屋」だ。さらに本の流通を担った「貸本屋」があり、それぞれが欠くことのできない存在だった。 学術関係の「書物問屋」は幕府公認の株仲間 現代でも辞書や専門的な学術・研究書などの出版社と、一般向けの書籍・小説・雑誌を発売する版元では、本の内容も役割も大きく異なる。このふたつのジャンルは江戸時代の出版においても双璧だった。 辞書や学術書の版元は「書物問屋」といわれ、幕府が株仲間(詳細は後述)を結成することを公認していた。一方の娯楽書は「地本問屋」が担い、こちらに株仲間はない。 事の起こりを知るには、民間の出版業者が注目されはじめた寛永年間(1624〜44)頃の京都の事情を説明しなければならない。なお、江
日本の平均年収は先進国の中で今やかなり低い位置にいる。下のグラフはOECD集計の主要国の2023年平均年収を最近の為替レートで円換算したものだ。 アメリカ(1241万円)は日本(491万円)の2.5倍、スイス(1616万円)は3.3倍だ。約20年前の04年はどうだっただろうか? 日本は466万円、アメリカは450万円だ。日本の方が若干上だったのである。スイスは698万円で日本の1.5倍だが、今より差が大幅に小さい。 ちなみに、スイスは最低賃金(時給)も驚くほど高い。ジュネーブ州、チューリッヒ州は4100円前後だ。日本の全国平均は1055円だからなんと4倍近い。日本にやって来る外国人観光客の多くが「安い!安い!」と大喜びしている背景が理解できる。 筆者の友人に、東京に住む60代のニュージーランド人がいる。同国から見た1990年頃の日本経済は光り輝いていたという。実際、当時の日本の年収はニュー
日本人の特性といわれる「高い規律・協調性」の源はどこにあるのか。それを探るために東京の公立小学校を1年間密着取材したドキュメンタリー映画が、世界で注目されている。この作品制作は監督の山崎エマさんにとって、「自分探し」の確認の旅でもあった。 山崎 エマ YAMAZAKI RYAN Ema ドキュメンタリー映画監督。1989年、神戸市生まれ。米ニューヨーク大学映画製作学部を卒業。サム・ポラード監督の編集助手としてキャリアをスタートした。2017年、人気絵本シリーズ「おさるのジョージ」の著作者夫妻の半生を追った『モンキービジネス:おさるのジョージ著者の大冒険』を制作。代表作に『遥かなる甲子園 フィールド・オブ・ドリームス』(2020年)がある。 「新幹線や電車の運行が秒単位で管理され、皆それが当たり前と思っている」「東京のような巨大都市の隅々まで、清掃が行き届いている」「落とし物や忘れ物は多くの
「時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた」―和田靜香さんは、コロナ禍に刊行した「やたら長いタイトル」の本で注目された。50代で「一足遅れて」フェミニズムに目覚めた和田さんに、中高年シングル女性の生きづらさの背景を聞いた。 和田 靜香 WADA Shizuka 1965年生まれ。音楽評論家・作詞家の湯川れい子氏のアシスタントを経て、フリーの音楽ライターに。2021年、『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた。』『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』が、政治ジャンルとしては異例のヒット。23年、『50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと』刊行。現在、月刊誌「世界」で「ひとりで暮らす私たち」連載中。 人生のどん底 長年、音楽ライターの仕事をしてきた和田さんが、今の
異常気象が続き、猛暑や豪雨が毎年繰り返されている。2024年の日本は前年の史上最高気温の記録をあっさり破り、春、夏、秋と3季連続で統計開始以来の最高記録を更新した。地球温暖化で日本周辺は世界でも有数の気温上昇エリアだ。このまま二酸化炭素(CO2)を排出し続けて温暖化が進めば、猛暑はニューノーマルとなり、日本の四季は「二季」となる可能性さえある。 猛暑による災害は、CO2増加による「人災」 清少納言が生きていたら、枕草子に「春はあけぼの」と書くことはできないかもしれない。日本の気候は近年、レジームシフト(根本的な構造変化)が起こり、長い夏と冬だけの「二季」になる可能性が出ているからだ。レジームシフト後ではCO2を減らしても簡単には元の気候に戻らない。CO2削減は待った無しなのだ。 日本では熱中症で毎年千人規模の命が失われている。風水害による年平均死亡者の約10倍だ。しかも「猛暑災害」は「人災
時代錯誤の戒厳令布告と直後の撤回で混乱を極める韓国政治。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権で劇的に修復された日韓関係には再び「歴史」が頭をもたげ、安全保障面での日米韓の結束にも影を落とすと、筆者はみている。 韓国外交は当面、機能停止状態に 12月3日22時30分頃、韓国の尹錫悦大統領は突如記者会見を開き、戒厳令を宣布した。直後には、国会や中央選挙管理委員会等に軍が派遣され、あらゆる政治活動の禁止や報道の統制が宣言された。この戒厳令を巡る事態そのものは、軍の派遣現場での実質的なサボタージュにより、封鎖を免れた国会が戒厳令解除を求める決議を行ったことで、わずか6時間で失敗に終わった。 とはいえ、韓国における混乱はこれだけでは終わらなかった。国会にて多数を占める野党は直後から大統領弾劾の手続きに入り、警察や検察、さらには高位官職者の捜査を専門にする高位犯罪捜査庁といった捜査機関は、大統領の行為が内乱
「石丸現象」「玉木現象」そして「斎藤現象」。2024年の日本では従来の選挙常識では説明のつかない投票行動が相次いだ。これは何を意味するのか。報道ベンチャー企業であるJX通信の米重克洋社長が解析する。 「メディアシフト」下の地殻変動 2024年は後に、真の「ネット選挙元年」になったと振り返られるだろう。今年は間違いなく選挙史に残る、重要なターニングポイントだった。 日本でネットを活用した選挙運動が解禁されたのは2013年のことだ。この年以降、選挙期間中にWebサイトを更新することや、SNSを使った投票の呼びかけなどが認められるようになったため、2013年をネット選挙の「元年」と呼んでもおかしくはない。 だが、ネットが実態を伴って選挙情勢に大きな影響を及ぼすまでになるのには時間がかかった。2019年の参院選ではネット選挙の「成功事例」として、自民党の山田太郎参議院議員(全国比例)が53万票を獲
まさに「赤い津波」だった。赤は共和党を示す色だ。戦後2番目という高い投票率の大統領選挙で共和党候補トランプが圧勝した。史上まれに見る僅差の大接戦、特に勝敗を決する激戦7州はどちらにも転ぶか分からないといわれた。だが、ふたを開けてみれば、全米集計で約400万票の差を付け、激戦州もすべてトランプが制し、メディアの選挙情勢地図は赤く染まっていった。(敬称略) 女性にも逃げられたハリス 上院、そしておそらく、下院も共和党が制しそうだ。民主党候補ハリスが負けただけでない。僅差の大接戦を予告した世論調査機関と主流派メディア、専門家たちも完敗でもある。2016年、20年に続いて、また予測を外した。 それだけでない。出口調査によると、前回20年大統領選で勝利したバイデンとの比較でハリスは、伝統的な民主党の基盤であったヒスパニック(中南米系)票や黒人票、若者票まで減らしている。初の女性大統領を生みだすどころ
35年ぶりにアニメとしてよみがえった格闘ラブコメの傑作『らんま1/2』。作者の高橋留美子は、「LGBTQ(性的少数者の総称のひとつ)」という言葉が存在しない1980年代からジェンダーが曖昧なキャラクターを描き続けてきた。代表作に登場するキャラクターを振り返り、時代とともに変化してきた性の“境界の揺らぎ”を考察する。 男と女を行き来する斬新な設定の主人公 「おれは男だーっ!」 声優・林原めぐみの“雄たけび”に、胸を熱くしたファンも多いだろう。 10月5日、『らんま1/2』の「完全新作的アニメ」が放送開始となった。漫画家・高橋留美子による格闘ラブコメの傑作が、35年ぶりにアニメとしてよみがえったのだ。山口勝平・林原めぐみ・日髙のり子をはじめ、声優のメインキャストがほぼ続投ということもあり、大きな話題を呼んでいる。 主要キャラクターが勢ぞろいする完全新作的アニメ『らんま1/2』のイメージ画像。日
沖縄基地のもう一つの現実 : 米兵が置き去りにした母子に養育費獲得の道ひらく―元米軍勤務の女性弁護士の30年の戦い 社会 家族・家庭 政治・外交 2023.05.12 在日米軍基地が集中する沖縄で30年近く、米軍人や軍属の父親から置き去りにされ、2つの国の狭間で苦しむ子どもたちを「養育費徴収」という手段で救ってきた米国人女性がいる。弁護士のアネット・キャラゲインさん(70)だ。新型コロナのパンデミックを機に“引退”を決意、2022年6月に帰国したが、今も相談依頼は後を絶たない。「後継者が見つかるまでやめるわけにはいかない」というアネットさんに話を聞いた。 きっかけは嘉手納基地で見た母親の姿 「子どもは生まれてくる場所を選べない。彼らの奪われた権利を取り戻すのは、その手段を知っている私の役目だと思った」とアネットさんは言う。 養育費問題との出会いは30年前にさかのぼる。米空軍の弁護士として沖
日本国内の外国人労働者は4人に1人がベトナム人で最多だが、円安、インフレなどで「稼げなくなった日本」を避け始めた。日本は彼らに新たな魅力を提示できるのか? 日本の外国人労働者は200万人(2023年10月末時点)を超えた。このうちベトナム人は約52万人、国・地域別で最多だが、新規入国に陰りが見え始めた。その理由を探るため2024年6月、首都ハノイを訪れた。 外国人労働者を在留資格別に見ると、開発途上国に技能と知識を移転する国際協力を目的とする「技能実習生」(以下、「実習生」)が最も多い。新型コロナ禍前後で新規入国者数を比較すると、ベトナムが9万9170人(19年)から8万3403人(22年)に減少した一方で、インドネシアは1万5746人(19年)から3万348人(22年)に増加した。 実習生を日本に派遣するハノイ市内の「送り出し機関」6社を回ると、幹部はこう口を揃えた。「日本からの求人が3
パレスチナ・ハマスの越境攻撃から10月7日で1年。イスラエルの過剰な報復攻撃は、おびただしい数の人命を奪い続けている。中東に深く関わってきた筆者は、現地ジャーナリストとの交信をもとに、民衆の怒りは大量虐殺の引き金を引いたハマスにも向いていると告発する。 現地ジャーナリストMとの奇跡的な交信 この1年、イスラエル軍がガザで行ってきたのは、ジェノサイド(大量殺人)そのものである。十数万人のパレスチナ人が死傷し、百数十万人が住居を失った。 同時に、私にはどうしても知りたいことがあった。この大惨事のきっかけを作ったイスラム組織ハマスに対して、ガザの住民がどんな感情を抱いているのか、である。日本のメディアだけでなく、BBCなど海外のメディアも、不思議なほどこの点に触れない。避けているようにさえ思えるからだ。 幸い、私はイスラエル軍の攻撃開始直後の昨年10月下旬から、ガザ地区中部で暮らすジャーナリスト
埼玉県川口市・蕨市に住むクルド人を標的にしたヘイトデモ、SNSに飛び交うデマ情報が激化している。在日クルド人コミュニティーへの取材を踏まえ、ヘイトの実態と背景を解説する。 なぜ日本を目指したのか 「平和のにおいがした」 初めて日本の土を踏んだ時の印象を、イシ・ケマルさん(38歳)はこのように表現した。祖国での差別から逃れて、2004年に来日したトルコ出身のクルド人だ。 クルド人は「国を持たない最大の民族」と呼ばれる。独自の言語や文化を持ち、主にトルコ、シリア、イラン、イラクにまたがる山岳地帯に居住するが、各国で弾圧、差別の対象となり、生まれ育った地を離れる人も少なくない。 トルコ政府は、同化政策の下でクルド人の存在そのものを否定し、長年クルド語も禁止してきた。1980年代から90年代にかけては、クルド人の政治的権利などを求めて武装闘争を展開していたクルディスタン労働者党(PKK)を軍事弾圧
実態が正確に把握されないまま、国内では「やりすぎだ」、逆に「もっとできるはずだ」という印象論が語られることの多い日本のウクライナ支援。その全体像と課題について解説する。 ロシアによるウクライナ全面侵略の開始から2年半以上が経過した。日本はウクライナに対して人道支援や復旧・復興支援を継続的に行ってきた。本稿ではその国際的な位置づけについて概説し(※1)、日本の支援の特徴について紹介する。また、今後のウクライナ支援を考える上での課題についても踏み込んでみたい。 日本の支援総額は世界5位 2024年6月13日に日本とウクライナとのあいだで締結された「日・ウクライナ支援・協力アコード」によると、これまでの日本の支援額は総額120億米ドルを超える(※2)。一方、キール世界経済研究所(ドイツ)の「ウクライナ支援トラッカー(UST)」最新版によれば、24年6月末までの日本の支援総額は91.1億ユーロ(1
いつにも増した大接戦となっている米大統領選挙。勝者次第で対外政策は大きく変わる。日本はどう備えるべきなのか? 2024年の米大統領選挙は近年まれに見る展開を見せている。予備選の段階では現職のバイデン大統領とトランプ前大統領が民主、共和両党それぞれの候補者となったが、6月末に行われた両者のテレビ討論会でバイデン氏が精彩に欠け、高齢に関する不安が高まった。7月の暗殺未遂事件では、強い指導者として振る舞ったトランプ氏に一気に有利な流れができたかにみえた。しかし、民主党内でバイデン氏の撤退を求める声が強まり、ハリス副大統領が民主党の大統領候補になると再び流れが変わった。 各種世論調査では、激戦州で接戦が続いていることがうかがえる。米中西部のラストベルト(さびた工業地帯)を中心とする激戦州では両党への支持は拮抗(きっこう)しており、投票行動を決めかねている無党派の動向が最終結果を左右することになる。
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