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久米宏氏が死去というニュースが先日ありました。久米氏といえばニュースステーション、ニュースステーションといえば97年に出演して麻雀におけるイカサマ技の実演をしてみせた雀鬼・桜井章一。というわけで今回は末期『近代麻雀ゴールド』掲載作の紹介です。知らない人は「というわけで」と言われても困りましょうが、まあとりあえずこの雑誌表紙を見ていただきたい。 無限のエネルギー これが、麻雀漫画マニアの間では有名な『近代麻雀ゴールド』2005年7月号、通称「無限のエネルギー」号です。『近代麻雀ゴールド』は竹書房がかつて出していた麻雀漫画雑誌(現在は『近代麻雀』1誌しかないですが、かつては姉妹誌として『近代麻雀オリジナル』と『近代麻雀ゴールド』が別にありました)。で、この表紙で木を抱きしめているのが桜井章一氏です。桜井氏というのは、彼に惹かれた弟子的な集団である「雀鬼会」とともに、80年代後半〜90年代の麻雀
『ぶれいボーイ』小池一夫 / 芳谷圭児 お久しぶりの方はお久しぶり、はじめましての方ははじめまして。V林田です。一昨年半ばに終わっておりました無軌道ノンジャンル漫画紹介連載、この度再開することになりました。「記事が読めないほど広告が出まくり」とかも全然なくて誰の目にも金の匂いがしなさすぎるために連載コラムを終わらせざるを得なかったマンバ、コラムを読める月額会員制を導入することで原稿料を捻出し連載コラムを再開する(しばらく前から既存の記事にカンパボタンを導入したものの、過去記事に人が来ることがあってもカンパは全然されなかったそうです)という野心に燃えておりまして、その実験体第一号として筆者に白羽の矢が立ったというわけです。責任重大ですね。マンバの小國社長からのリクエストとしては「実験の第一弾として、前の『極悪美女軍団卍』みたいな新年らしいやつをお願いします」とのことで……、正気か? 「割礼ー
突然ですが、本連載今回が最終回だそうです。私としてはまことに残念ですが。 初回が、2022年1月「浦沢直樹の漫勉」と諸星大二郎の「謎」なので、何だかんだで3年余続いたことになる。「与太話」と名付け、そのつど気の向くままに気軽に書こうと、はじめは思っていた。が、ここ数年気になっているマンガ研究の主題にひきづられ、あまり一般には興味を引きにくい連載内容になってしまったかもしれない。13年の大学教師生活で、必然的に研究よりのテーマに引き寄せられていったのだろう。 現在の連載マンガへの言及は少なく、戦前を含めたマンガ史の再考や、ジャンル論、個人的批評史などがむしろ中心にくる連載となった。大学退官後、これからどんな問題を考えて行こうかと思案しながら書いてきた結果で、それはそれで私にとっては重要な連載であった。しかし、マンガ研究という領域自体が一時期の盛り上がりを終えて落ち着いてきたこともあり、一般読
世の中には漫画家の自伝的漫画というものが結構あります。以前にこの連載で紹介した矢口高雄『9で割れ!!』などもその一つですね。本年、その系譜の中に新たな一作が生まれました。それが今回紹介する伊賀和洋『劇画の神様~さいとう・たかをと小池一夫の時代~』です。 『劇画の神様~さいとう・たかをと小池一夫の時代~』 伊賀和洋(旧ペンネームは一洋)……といっても、知らないという方も少なからずいるのではないかと思います。デビューしてから72歳の現在まで約50年ずっと現役であるにもかかわらず、Wikipediaにも項目立ってないですし、あまり語られない方です。 なんで語られないかといいますと、代表作は『男弐』『涙弾』(ともに原作:小池一夫)など……というので分かる人には分かると思いますが、小池一夫の会社であるスタジオ・シップに所属していた漫画家で、基本的に原作ありの作画専門の人なんですね。漫画家の作家性みた
前回、唐突に話を打ち切ってしまって申し訳ない。さて、鳥山明さんについての続きである。何をいいたかったかといえば、紙出版の日本マンガが未曾有の巨大市場を獲得した最盛期(80年代後半~90年代前半期)を牽引したのは、間違いなく「週刊少年ジャンプ」の躍進であり、その中心にあったコンテンツが 『Dr.スランプ』(1980~84年)と『ドラゴンボール』(84~95年)だったということだ。 『Dr.スランプ』には、下品なギャグのわりにうんこを可愛く感じさせてしまう品の良さがあった(キャラクターの汎用性?)。アニメ化前提で連載開始した*1 『ドラゴンボール』では、バトル化でキャラクターを大量生産し、同時にそれは、アニメ、キャラクター商品、ゲームなどの「メディア・ミックス」=多メディア展開商品へと拡張する。それ以前からあった、この構造の完成が、マンガ出版市場の急速な拡大を支えたのだろう。いわば日本のマンガ
前編はこちら なお、あまりに長期連載である『天牌』については展開のネタバレが幾つかありますので、その点のみご注意ください。 狩撫麻礼氏と『オールド・ボーイ』 ——『麻雀時代』とかは雑誌が潰れて、『てっぺん』『幻に賭けろ』と90年代前半まではずっと麻雀が多かったですよね。同時に、日本文芸社の方でも『はぐれT.C.』とか『さわがせ屋』とか色々やられてますね。 嶺岸 『さわがせ屋』とか久々に名前聞きましたね。やってましたね。 ——ちょっと今のイメージとは違うコメディっぽい感じだったりして。 嶺岸 あれは『別冊ゴラク』ですね。そもそも青柳先生のところにいた時に編集者の方がよく来てたんです。日本文芸社でも小学館の『ビッグゴールド』みたいなやつ……。 ——『カスタムコミック』(注23:79〜82年。『ビッグゴールド』(78〜85、92〜99年)とともに、大御所作家を揃えた豪華執筆陣の雑誌)ですかね。
『DRAGON BALL』 2024年3月8日、NHKBSからの取材依頼メールで、初めて鳥山明さんの訃報を知った。3月1日、68歳での逝去。ショックでしばらく頭が真っ白になった。昨年来戦後漫画の巨星が立て続けに鬼籍に入ったが、彼らについては私も割と冷静だった(みなもと太郎さんを除けば、だが)。私の中で鳥山さんは、いわば巨星たちが築き上げた戦後マンガ出版(紙)の最盛期を象徴する作家であり、しかしそれに相応しい評価がいまだなされていない人だった。お会いしたことはないが、大好きな作家でもあった。言葉もない、というのが正直なところだ。が、そうもいっておれないのが「マンガ批評家」の哀しいところで、何とか自分を奮い立たせて書かせていただく。鳥山明が巨大な存在なのは、日本人なら何となく感じ取っていると思うが、誰も具体的にどう巨大なのかを語ってくれないので、聞かれても好きか嫌いかとか、子供の頃読んだとか答
『木曜日のリカ』 以前に『スーパーくいしん坊』の記事でも書きましたが、ウェブ上には1コマだけ、1ページだけがミーム的に広まっている漫画というものがあります。今回紹介する小池一夫+松森正『木曜日のリカ』もそンな漫画の一つ。連載は71〜72年の『週刊少年キング』で、単行本は全5巻です。本作のタイトル聞いてピンとこないという方でも、次の1コマはTwitterあたり(あと、90年代の漫画関連本読んでた人だと、宝島社の『コミックVOW』で知ってるかも)で見たことがあるのではないでしょうか。というか、筆者はつい最近流れてきたのを見ました。 『木曜日のリカ』2巻222ページより インパクトありますね、「ノーベル殺人賞」。しかし本作をちゃンと通して読んだ人はそンなに多くなく、この賞やセリフについて意味を誤解している人が多いのではないかと当方は思っているのです。というわけで紹介。 本作の主人公・美木本リカは
【図版1】『仙人の桃』 表紙、「二本の箒」P.108、「柳の人」P.141 南伸坊『仙人の桃』(中央公論社)が出た。マンガ史に残すべき名作なのに、あまり評価されていないのが私としては大変に不服だ。今回、過去に何冊か出ていた本を一冊にまとめてくれて凄く嬉しい。私自身も大好きな中国志怪伝奇物の、落ちも何もない、読者を放り出してしまうようなふわっとした話ばかりが、上品で余白の使い方の絶妙な漫画で楽しめる。またそれを解説する南さんの文章の軽やかな距離感が素敵だ。最初は「月刊コミックトム」(潮出版)で80年代に掲載されていた作品群で、じつは私も「読書学」(1986~91年)という連載を同誌でやっており、そこで最初の単行本化『チャイナ・ファンタジー』(90年)を取り上げた。南さんは、ご本人も素晴らしい人格者なのだが、私にとっては80年代面白主義の先人として尊敬し憧れた人だった。とくに彼の知的好奇心と俗
『天牌』(原作:来賀友志、作画:嶺岸信明)という麻雀漫画があります。 『週刊漫画ゴラク』に99年から連載され、22年に原作者の来賀が急逝するまで四半世紀近く連載が続き、話数にして1141話、単行本は116巻を数えるという麻雀漫画史上空前の大河作品です。今回紹介するのは、その来賀・嶺岸コンビの初期作である『あぶれもん』です。連載は『別冊近代麻雀』(現『近代麻雀』。当時は『近代麻雀』という活字雑誌が別に存在しておりました。この活字近麻は87年に休刊しています)の85年12月号〜89年2月号。来賀・嶺岸の両者ともにデビューしたてという時期です。 『あぶれもん 麻雀流浪記』 本作の舞台となるのは、横浜市の弘明寺という街。京浜急行と横浜市営地下鉄の駅があるので鉄道マニアなら知っていましょうが、横浜市の中でもそこまで有名な街というわけではありません。しかし本作では、第1話の冒頭で「一度でも牌の魔力に魅
僕がマンガによるマンガのパロディを描き始めたのは、少年画報社「ヤングコミック」1977年6月22日号の『その後の…YESTERDAY’S HERO』6頁が最初だったと思う。今も溶けかけたまま太陽の周りを回るアトムや選挙に出馬する『忍者武芸帖』の影丸、燃え尽きて一つまみの灰になった矢吹丈などを描いている。26歳の頃だ。 『ザッツ パロディ』(サン出版 81年刊) ちなみに図の右側は単行本『ザッツ パロディ』(サン出版 81年刊)収録の際たまたま右頁に来てしまった『スーパーヒーロー大集合篇 あの人の秘密』(「ヤングコミック」79年12月12日号)の最終頁である。どうせこれ以後参照されることもなかろうと思い、ついでに掲載させてもらった。著作権者、俺だし。 『ザッツ パロディ』(サン出版 81年刊) 同じ77年、「週刊少年ジャンプ」に江口寿史『すすめ!!パイレーツ』、「週刊少年チャンピオン」に鴨
今回紹介するのは、前回の『新やる気まんまん 警視庁SEX捜査官』の記事でも名前を少し出した、倉科遼+みね武『艶恋師(いろこいし)』です。連載は00年代後半の『漫画サンデー』。原作の倉科は『夜王』などの作品で知られる「ネオン漫画の帝王」、作画のみねは70年代から青年漫画で活躍しており、金と女が大好きで「糞蝿」と自認する(世の中の糞野郎どもにタカって生きているので)私立探偵を主人公としたバイオレンス・アクション『野獣警察』などで知られます(基本的に作画専門の人なのであまり作家性とかが語られませんが)。 【極!合本シリーズ】艶恋師シリーズ 本作の主人公・神楽坂菊之介は、ポニーテールに着流し姿で花街・神楽坂を闊歩する男。芸者の私生児として産み落とされた後に母親が死亡し、この街の芸者たちの手で育てられたという生い立ちを持っています。 『艶恋師』シリーズ合本版1巻16ページより で、この菊之介の表の顔
マンバ通信では、ユーザーの皆様からカンパ・寄付を募っています。少しのご支援が次の記事制作に向けて大きな励みになります! 令和5年版高齢社会白書によれば、我が国の総人口に占める65歳以上人口は29.0%に達しているという。ただし、昭和の65歳は本当に「おじいちゃん」「おばあちゃん」という感じだったが、今の65歳は見た目も中身も結構若い。70代、80代でも元気な人は元気である。そうした社会状況を反映して、マンガでも高齢者を主人公とした作品が増えてきた。 今回は、そんな高齢主人公たちが楽しく日々を過ごしたり、新たな一歩を踏み出したりする作品をセレクト。筆者はもう主人公たちのほうに近い立場だが、若い人でもこれらの作品を読めば、年を取るのも案外悪くないかも?と思えるはずだ。 ■65歳から始める映画作り まずは、たらちねジョン『海が走るエンドロール』(2020年~連載中)。『このマンガがすごい!202
マンガの編集部に赴き、編集者が今おすすめしたいマンガやマンガ制作・業界の裏側などを取材する連載企画「となりのマンガ編集部」。第13回は、マトグロッソを運営しているイースト・プレスを訪ねました。イースト・プレスといえば『COMIC CUE』を始めとして『失踪日記』や『人間仮免中』など昔からコアなファンに訴求力の強い作品を発信してきている会社で、マトグロッソも個性豊かな作品が多く掲載されているサイトというイメージが強いのではないでしょうか。ただ、最近では『プリンタニア・ニッポン』の人気などもあり少しずつ変化し始めているイースト・プレスの内情や作品作りについて、書籍3部の編集者である石井さん・棒田さんに取材しました。 取材:マンガソムリエ・兎来栄寿 すべての辛さはこの1冊のために ――最初に、担当されている作品も含めましてお二方の自己紹介をお願いします。 石井 石井と申します。イースト・プレスに
かつて『やる気まんまん』(牛次郎+横山まさみち。途中から横山単独クレジットで『それいけ!!大将』にタイトル変更)という漫画がありました。77年から横山が死去する03年まで『日刊ゲンダイ』に長期連載されていた艶笑作品です。 ストーリーは、精力増強剤の老舗・四つ目屋本舗の当主である主人公・泊蛮兵が、次々とセックスファイトで強敵を破り四つ目屋本舗の信用を高めていくというもの。「セックスファイトって何だよ!」とみなさま思うかもしれませんが、本作以外にも、みなさまご存知『男!日本海』でも日本海がアメリカのペニスキラー(ペニスキラー?)、ペニー・シャブリとセックスで戦う回がありますし、 『男!日本海』9巻41ページより その他にも『艶恋師』(倉科遼+みね武)とか先日亡くなった三条友美の『真夜中のアリスたち』、実は漫画界には連綿と「セックスバトルもの」という系譜があるのです。漫画評とかで取り上げられるこ
麻雀漫画というジャンルの中には、SF要素を含んだものが少なからずあります(それこそ『咲-Saki-』とかだって「麻雀人口が1億人を突破した世界」という並行世界ものと言えんことはない)。その中でも、筆者が勝手に「三大SF麻雀漫画」と呼んでいる作品があります。一つは以前に記事を書いた『ナイトストーン 危険な扇動者』、一つは『トーキョーゲーム』(青山広美特集の記事とインタビューを参照)、そしてもう一つが、今回紹介する志村裕次+みやぞえ郁雄『真・麻雀伝説 風の雀吾』です。連載は徳間書店の『漫画タウン』(徳間書店)82〜83年。単行本はグリーンアローコミックスから全2巻が出ており、今は電書もあります(紙の本だと巻数表記がなくて「雷鳴編」「灼熱編」というどっちが1巻か分からない謎の仕様だったのが、電書版は巻数表記があって親切)。原作の志村は70〜80年代に麻雀漫画原作を書きまくった(読切数だとたぶん日
以前に『翔丸』の記事で、能條純一という漫画家は漫画界でも比類ない超一流のハッタリ力を持っている人だと書きました。そのハッタリ力は、『翔丸』のようなスケールの大きい作品だけでなく、料理漫画でも存分に発揮されています。というわけで今回の紹介は能條純一『ばりごく麺』。連載は08〜09年の『ビジネスジャンプ』。単行本は全4巻です。 『ばりごく麺』 本作の主人公は、うだつの上がらない新人サラリーマン・潮崎朗馬。彼がある雨の日、雨宿りのために今まで入ったことのないラーメン屋に入ったところから物語は始まります。あまり流行っていないその店にいた先客は、ラーメンを食べ終わると「まずかった———っ」と一言。そして「まずいが…最後の一滴まで変わらぬまずさが痛快だ 名付けて痛快ラーメン」と勝手な名付けをして去っていきます。 『ばりごく麺』1巻12〜13ページより これですよ、これこそが能條作品のカリスマキャラです
『1日外出録ハンチョウ』、面白いですよね! 私はスピンオフ元の『賭博破戒録カイジ』もリアルタイムで読んでいた世代なのですが、あんなにも敵として憎たらしく、そしてカイジの美しいまでに計算され尽くした策略で完全敗北した大槻班長達のことを、まさかスピンオフで最新話が待ち遠しいほどの存在になろうとは思いませんでしたね。『中間管理録トネガワ』が始まって、かつめちゃくちゃ面白かった時も驚いたものですが、まさかさらなるスピンオフ第2弾がまた別路線の面白さを発揮して長期連載になろうとは……。私なんてハンチョウが面白過ぎるあまりに、第10話[蛤門]の京都聖地巡礼回や、第19話[混沌]の名古屋、第46-47話の長野旅行で訪れていた善光寺の山門、第92話[主役]の新宿タカノパフェリオ本店など、各所の舞台探訪をしたこともあるくらいです。 【関連記事】 『1日外出録ハンチョウ』京都聖地巡礼回の聖地巡礼 『1日外出録
去る10月14日、11月4日で「東京チカラめし」東日本唯一の店舗だった新鎌ヶ谷店が閉店し、残るは大阪日本橋店のみとなるというニュースがありました。チカラめしといえば、11年に登場するや翌年には100店舗を達成するなど牛丼界の風雲児となるも、「あそこマズくない?」「いや、最初はちゃんとしてたが急拡大にオペレーションが追っつかなくなったのだ」などといった議論を起こしつつあっという間に衰退、数年で店舗数は一桁にまで落ちると、22年には「東京」の名に反し都内から店舗がなくなってしまい、そしてついに東京どころか関東からもなくなってしまうという、入れ替わりの激しい外食業界の中でもひときわ栄枯盛衰が目立ったチェーンでした。というわけで今回の紹介は、そんなチカラめし(が明らかにモデルの店)が連載第1話で取り上げられている時代の証人的漫画、土山しげる『怒りのグルメ』(連載時タイトル「噴飯男」)です。 『怒り
マンバ通信では、ユーザーの皆様からカンパ・寄付を募っています。少しのご支援が次の記事制作に向けて大きな励みになります! 前編はこちら 【『バード』創作秘話と『格闘太陽伝ガチ』】 ——『ダイヤモンド』が終わってから、麻雀漫画史に残る大傑作『バード-砂漠の勝負師-』ですが、企画が始まったのはどのようなきっかけだったのでしょうか。 『バード-砂漠の勝負師-』 青山 『ダイヤモンド』の終わりぐらいに「こういうの描きたい」と思って、簡単な企画書みたいなの書いたら、割とすぐに「やりましょう」と。 ——本作最大のネタである「全自動卓天和」をやろうとなったきっかけなどはあるんでしょうか。 青山 これは流れですね。『バード』始まった時は、別に全自動卓天和ってのは考えてなかったんです。 ——ええーーーーっ!! そうなんですか!? 青山 考えてなかったです。描いてるうちに途中のセリフでポロっと「全自動卓で天和ど
マンバ通信では、ユーザーの皆様からカンパ・寄付を募っています。少しのご支援が次の記事制作に向けて大きな励みになります! 青山広美。麻雀漫画をある程度以上読んでいる人であれば、ほとんどがこの名前を知っていることでしょう……という青山氏についての説明は、インタビューに併せて書いた特集記事をお読みください。デビューしてから40年、数多の傑作もものしてきたというのに、インタビューは『ダイヤモンド』連載当初に小学館のウェブサイト上で小さいものがあったのみというわけで行ってきた次第。 現在お住まいである仙台の喫茶店にて、現在連載中の『ストラグリング・ガールズ~一発逆転の頭脳決戦~』担当である秋田書店の小林氏を交え、デビューから最新作までじっくりお話を伺いました。 【デビューと「青山パセリ」時代】 ——まずは漫画家になられたきっかけというところからお聞きしたいんですけれども。お好きな漫画家さんとかいらっ
今回は『天国 ゴトウユキコ短編集』【図1】を取り上げてみたい。すでに活躍している作家で、ちょっと怖い作品や人の闇を扱うような作品も描いているようだ。が、申し訳ないが、私はこの本で初めて読ませていただく。版元から送ってもらったのだ。 『天国 ゴトウユキコ短編集』 表紙を飾る少女の絵が、この作家の資質を示している。ピュアな少女の表情をサラッと描いているように見える。しかし、どこを見ているのかわからない二つの瞳の微妙な位置関係、小さな鼻に慎重に描かれた鼻の穴、唇の位置や繊細に引かれた線、淡い彩色の気遣いなど、とても注意深く表情を描き込んでいる。この本を手に取る人は、そんなことまで考えないだろうが、無意識にそうした繊細さを受け取っているはずだ。漫画読者であれば、初見でもそうした無意識の印象で、ある種の「期待」をもって手にとるかもしれない。 『天国までひとっとび』『2月14日の思い出』『家庭教師』
『人間兇器』の紹介、後編です(前編はこちら)。 アメリカに続きメキシコにもいられなくなった美影、腐敗した独裁国家ならなんとかなるやろ……と思って今度はバティスタ政権下のキューバに密入国するも、折悪しくカストロ&ゲバラによる革命闘争が始まり、さくっと革命軍に捕まります。共産思想とかにはこれっぽっちも興味がないが我が身は可愛い美影、同じ檻に入れられていた奴らが看守を買収して脱走を図っていることを密告し、速攻で革命軍のイヌに。 『人間兇器』合本版3巻27ページより 密告が原因で処刑された人々を見ながら「これで間接的にもおれは大量の人間を殺した! おれって人間兇器に青春革命が起こるって予感がますますしてくるぜ!」などと謎の寝言(青春革命?)をのたまいつつ、革命軍のカラテ教師の座に収まりますが、女相手にいつもの残虐行為やってたのがゲバラの逆鱗に触れ50ページもしないうちにワアーッ。 『人間兇器』合本
漫画に限らずフィクションというものには、悪玉を主人公にした作品というものが少なからず存在します。そういった作品では、主人公に悲しき過去があったり、悪ならではの美学が存在したりして、悪とはいえ読者が応援したくなったり憧れたりするような何かが存在するのがセオリーでありましょう。ですが、今回紹介する梶原一騎+中野喜雄『人間兇器』の主人公・美影義人は一味違います。この男、本当にいいところが何一つないんです。彼を象徴するコマを一つ引用しましょう。 『人間兇器』合本版1巻767ページより 「おれは勝てそうな相手にゃすぐトサカにくるんだ!」ですよ。こんな情けないことを堂々と言える主人公はそうそういません。そして言葉だけではなく実際に、自分より弱い相手には暴虐の限りを尽くします。では自分より強い相手に対してはどう出るか。 『人間兇器』合本版1巻682ページより ご覧の通り、すぐ土下座し、泣きわめき、命乞い
Jリーグとコラボだのブライダル補助金だの、政府のとんちんかんな少子化対策(?)に失笑している方も多いだろう。旧態依然の家庭観に凝り固まり、しかも利権ありきの発想では有効な対策など打てるはずもなく、ますます少子化に拍車がかかるばかり。その一方、マンガの世界において出産&育児ものは隆盛ジャンルだ。 有名どころでは、東村アキコ『ママはテンパリスト』、吉田戦車『まんが親』&伊藤理佐『おかあさんの扉』、たかぎなおこ『おかあさんライフ。』などがある。漫画家が実体験ベースの出産&育児マンガを描きがちなのは、題材として身近で面白いというのもあるだろうが、これだけ大変な思いをしたんだからネタにでもしなきゃやってられん、そもそもそれ以外のものを描く余裕がない、というのもあると思う。 そんな数ある出産&育児マンガの中から、斬新かつユニークないまどきの作品をご紹介しよう。 ■強烈すぎる本音の妊娠・出産リポート!
夏コミの季節ですね。というわけで、紙面を私物化しての筆者のサークルによるほんまりう同人復刊作品紹介シリーズの3発目です。前2回は、『息をつめて走りぬけよう』、『原色の街から』の記事を読んで下さい。いや本当、筆者はこのほんまりうという天才漫画家は再評価されなければいけないと思っているんですよ! 『与太』 今回の夏コミ合わせで復刊するのは、『与太』。『増刊ヤングコミック』および『ヤングコミック』に掲載されたデビュー直後の短編群を集めたもので、青林堂から74年に「現代漫画家自選シリーズ」の一冊として刊行された初単行本を復刊したものとなります。 表題作でもある「与太」は、戦前の新潟(ほんまりうは新潟(旧巻町)出身なので新潟が舞台の話が多いのです)を舞台に、少年・逸郎とそれを見守る姉の叙情的な物語。後の作品に比べるとさすがに絵はまだ荒削りですが、「姉さんは知らないんだ こんななんにも出来ないヤツのつ
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