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【名古屋】JR東海はMIRAI―LABO(東京都八王子市)と共同で、太陽光路面発電装置と電気自動車(EV)の使用済み電池を組み合わせた自立給電システムの実証実験を開始した。愛知県小牧市の小牧研究施設の路面に設置し、充放電を繰り返して耐久性を評価する。 実証実験の期間は、2025年3月までの計画だ。 同システムは太陽光路面発電装置と、EVの使用済み電池を用いた蓄電装置で構成している。太陽光路面発電装置は道路に設置可能な太陽光パネルと、リサイクルプラスチックを使用したパレットを組み合わせている。強度が高いため、装置の上を人が歩くことができる。 鉄道関連施設での再生可能エネルギーの利用拡大や、災害時の非常用電源としての活用を見込む。実証実験で安定的な自立給電が可能かを判断し、システムの適用可能性について検討していく。 同システムは設置箇所の制約が少なく、パレット状で大規模な設置工事も不要。そのた
鈴鹿医療科学大学の豊田長康学長は、国立大学法人化や新医師臨床研修制度などの科学技術政策による研究力低下を可視化した。経済学などで使われる自然実験という観察研究手法を用いて、政策の対象群と非対象群の大学を比較した。すると国立大学法人化による負の影響が最大となった。研究力を引き下げている可能性がある。 2004年の国家公務員総定員法と大学院重点化に加え、国立大法人化、新医師臨床研修制度の導入、06年の薬学部6年制の導入の4政策の影響を検証した。この前提に04年ごろから日本の研究論文の質と量を掛け合わせた研究力指標が低下しており、その背景には研究者の正味の研究時間と研究者数が減少していることがある。 4政策の対象となっていない早稲田大学などの私立で医学部や薬学部のない総合大学15校と、政策対象となった国立大学を比較した。すると00年から21年で非対象群の私大は1・3倍ほど研究力が伸びているのに対
半導体製造工程の「日陰」のような存在だった後工程の重要性が高まっている。これまで半導体の性能を決めてきた前工程の微細化に限界が見え始めているからだ。そこでチップの性能を高めるため、複数のチップを一つのチップのように積層するなどの「先端パッケージング技術」の開発が進んでいる。ラピダス(東京都千代田区)なども開発に乗り出しており、半導体業界の一大トレンドになっている。(小林健人) 4月、先端半導体の量産を目指すラピダスが経済産業省から最大5900億円の支援を受け、後工程の研究開発に乗り出すと発表した。5900億円のうち535億円を活用。セイコーエプソンの千歳事務所(北海道千歳市)の一部を使う形で後工程の開発を進める計画だ。記者会見でラピダスの小池淳義社長は「前工程だけでなく、後工程、設計支援。この三位一体となったビジネスモデルの実現が重要だ」と後工程の重要性を強調した。前工程と後工程で最先端技
日本発研究プロ加速 IBM機など国内導入 スパコン「富岳」と連携 潮目はどう変わったのか―。量子コンピューティングの本格登板は、「FTQC」と呼ぶ「誤り耐性」を備えた大規模な量子コンピューターが登場する2030年以降と目されていた。だが、この1年間で技術革新が進み、量子コンピューターが既存の古典コンピューターよりも速く特定の問題を解決できる「クアンタムアドバンテージ(量子優位性)」の実現がぐっと近づいた。こうした潮目の変化を追い風に日本発の新たな研究プロジェクトがキックオフした。(編集委員・斉藤実) 既存の量子コンピューターはノイズの影響を受けやすく、計算でエラーが生じる。これを緩和する技術が20年前後から米IBMをはじめ相次ぎ発表された。ハードウエアの改善と相まって、FTQCの登場を待たずとも、既存の量子コンピューターでも大きな問題を解けるめどが付いたことで、世界中の量子研究者が新たな技
NTT法見直しの本丸であるNTTの“特別な資産”や外資規制のあり方に関する議論が佳境を迎えている。有識者や関連企業が参加する情報通信審議会(総務相の諮問機関)の作業部会で、それぞれの議題の方向性が見え始めてきた。NTT法見直しは日本の通信産業の今後の方向性に大きな影響を及ぼす。国際競争力の強化に加え、変化が激しい通信技術の進歩にも対応できる制度が求められる。(編集委員・水嶋真人) 特別な資産 インフラ提供は責務 「NTTが維持し、そこに設置される電気通信設備の発展責務を課すべきだ」―。作業部会の構成員を務める名古屋大学大学院法学研究科の林秀弥教授は、電柱や管路といった特別な資産についてNTTが引き続き運用することは合理的だとの私論を示す。 NTT東日本、NTT西日本は全国の局舎約7000カ所、電柱約1186万本など日本電信電話公社(現NTT)が約25兆円を投じて建設した線路敷設基盤を受け継
人工知能(AI)技術と著作権など、生成AIに対して社会が抱える懸念に対処する方向性が見えてきた。文化庁の小委員会は著作権の考え方を、内閣府の知的財産戦略推進事務局は知財全般の骨子案をそれぞれ示した。流動的な面があるものの大枠は示された。著作物を学習し放題の“機械学習パラダイス”とされた法解釈は、クリエーター寄りに修正される。データの対価や作風などの判断は業界や司法に委ねられ、業界のガバナンス(統治)に国が管理できるかが課題になる。(小寺貴之) 著作権法では著作物を他人が享受しない場合は著作権が制限される規定がある。この制限規定のために著作物は学習し放題とされ、AI開発者にとって“機械学習パラダイス”と言われてきた。海外で画像生成AIにクリエーターらが反発し、日本でもクリエーターや事業者などから懸念が表明されていた。 文化庁の指針では非享受目的は引き続き権利制限が適用されるものの、享受目的が
文部科学省で博士号取得者を3倍に増やす「博士人材活躍プラン」が始動する。約30年前の「ポスドク1万人計画」と異なるのは博士人材の需要を学術界の外に作ろうとしている点だ。大学などのポストはほぼ増えないことを前提に、産業界や教育界に採用拡大と処遇改善を働きかけ、多様な場面で博士人材が活躍する社会を作る。この多くは文科省の手の届かない領域だ。実現には在野の博士人材の協力が欠かせない。(小寺貴之) 「日本では『博士=研究者』というイメージが強過ぎる。国際機関では修士号は当たり前で半分くらいは博士号を持っている」と盛山正仁文科相は指摘する。博士号は専門人材としての出発点に立ったという証で、海外では博士号がないと相手にされない場面が多々ある。盛山文科相は運輸省(現国土交通省)時代に経済協力開発機構(OECD)に派遣され、博士号がベースラインとなる海外での“当たり前”を経験してきた。 その後、政治家に転
戸田工業は鳥取大学と共同で、酸化鉄の一種であるナトリウムフェライトを負極と正極に使ったナトリウムイオン電池を開発した。α型のナトリウムフェライトがナトリウムイオン電池の正極として機能することは分かっていたが、今回、戸田工業が開発したα型のナトリウムフェライトを負極に適用し、充放電性能が得られることを世界で初めて発見したという。 携帯用端末などの電源としてリチウムイオン電池(LiB)が普及している。ただ、リチウムは南米などに資源が偏在するなどの課題がある。一方、ナトリウムは海水中に存在し、安く大量に入手できるため、ナトリウムイオン電池は大型定置用電源として活用が期待されるとしている。
出光興産は徳山事業所(山口県周南市)の商業用ナフサ分解炉で、アンモニアを燃料として使用する実証試験を実施した。ナフサを高温で分解し、石油化学製品の基礎原料となるエチレンやプロピレンなどを製造するナフサ分解炉でのアンモニアの燃焼は国内初。既存の燃料の2割超をアンモニアに切り替えて操業し、アンモニア燃焼が可能であることを確認した。 燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないアンモニアは、エネルギーキャリアや発電・工業ボイラー用の燃料として注目されている。ただ化石燃料と比べて発熱量が低く、着火性も悪いことから燃焼性に劣るといわれる。燃焼時に生じる窒素酸化物を抑える必要があるほか、操業中の大規模プラントでの燃焼はリスクがあるとされてきた。 これに対し、燃焼排ガス中の窒素酸化物を低減させるための脱硝設備を装備していないナフサ分解炉で実証。アンモニア専用バーナーの採用や燃焼制御により、窒素酸化物が環境規
大阪大学の近藤勝義教授は、チタン製品の製造工程で発生するスポンジチタン廃材の再生技術を開発した。廃材でありながら純チタンやチタン合金よりも高い強度を持ち、採用した製品の小型・軽量化を可能にする。再生工程のエネルギー消費も少なく、低コストで製造できる点も強み。圧延加工技術を持つ武生特殊鋼材(福井県越前市)と連携し、実用化を目指す。 スポンジチタンは鉱石を反応させて製造する。内部は純度が高くチタン製品に利用する一方、周囲は不純物となる鉄を多く含むため廃材となる。スポンジチタンの1、2割が廃材となるが、チタンへの再生はできずに製鉄に使われている。 近藤教授は廃材に水素を含ませ、加熱する方法を開発した。チタンは水素を吸収すると延性が低下しもろくなるため、製造工程では水素を遠ざけるのが“常識”だった。近藤教授はこれを逆手にとり、廃材を水素で粉砕しやすくした。粉末は粒径20マイクロメートル(マイクロは
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と名古屋大学、NU―Rei(名古屋市東区、中井義浩社長)は共同で、従来のリチウムイオン電池(LiB)の約5倍の性能を持つ宇宙用の円筒電池を開発した。炭素原子で作成したシート状の物質「ナノグラフェン」を使い、軽量化と低コスト化も実現できた。2026年にもJAXAの観測ロケットで実証実験し、大型基幹ロケット「H3」などに採用する。電気自動車(EV)など民生利用も視野に入れる。 ナノグラフェンはナノメートルサイズの炭素原子物質で、優れた電気的性質を示すのが特徴だ。多くの電子機器に応用されるなど、次世代材料として注目される。 JAXAなどは名古屋大の持つ先端プラズマ技術を使い、負極部分に使うナノグラフェンを開発した。この物質を用いた円筒電池の性能を調べると、重量に対するエネルギー密度が従来のLiBの5倍となることが分かった。 また通常、負極部分の作成は原料を混ぜ合わ
チューリング(東京都品川区、山本一成最高経営責任者〈CEO〉)は、2024年内にも部分的に運転を自動化する「自動運転レベル2」の独自機能を搭載した電気自動車(EV)を日本国内で発売する。当初予定の25年から前倒しする。販売台数は50―100台規模の見通しで、24年夏をめどに性能などの詳細を決める予定。将来は完全自動運転「同レベル5」の実車搭載を目指しており、人工知能(AI)関連のエンジニアの増員など開発体制も強化する。 チューリングは千葉県柏市に車両生産工場を持つ。30年に累計1万台の完全自動運転のEV生産を目指している。目標実現に向け、まず少量のEVを生産・販売し、車両製造のノウハウを蓄積する。 同社はカメラ映像とAIを活用した「カメラ方式」による完全自動運転を目指している。同方式では、人が視覚情報などを基に周囲の状況を判断し運転する一連の動作を、カメラ映像の認識とAIに担わせる。同社は
大日本印刷(DNP)は両面採光型太陽電池モジュールの発電量を向上させる「DNP太陽光発電所用反射シート」を開発し、提供を始めた。発電所の地面に敷設し、モジュールの裏面に入射する光を増加させて発電量を高める。実証実験では発電量が約6%向上した。太陽光発電所の経年劣化に伴い、両面採光型太陽電池モジュールなどの導入で発電量を増やすリパワリングのニーズの高まりに対応する。価格は個別見積もり。2025年度までに累計50億円の売り上げを目指す。 受注生産で、基本は縦1メートル幅のロール状で供給する。太陽電池の発電領域である光の波長400ナノ―1200ナノメートル(ナノは10億分の1)に対して、85%以上の反射率を持つ。光の散乱効果が高く、幅広い太陽の角度に対応する。樹脂製で金属を含んでいない。 シートの表面は平滑で土や泥などの汚れが付きにくく防汚性に優れているため、長期間、シートの反射率を保ちやすい。
NTTやソフトバンクが次世代通信基盤を用いてデータセンター(DC)を全国に分散配置する構想を打ち出した。通信技術や端末の進化でデータ通信量は飛躍的に増加。データ処理用のサーバーやネットワーク機器があるDCの電力消費量も増え続けている。大容量データの超高速通信が可能な次世代通信基盤を用いて土地や再生可能エネルギーの確保が容易な地方にDCを分散配置。都市部でのDC一極集中を回避し、サステナブル(持続可能)化を目指す。(編集委員・水嶋真人) ソフトバンク 北海道に第3の中核拠点―26年度開業用 「現在のインフラは次世代を支えるには大きな課題を抱えている。北海道や九州など再生エネの豊富な地域にDCを分散配置する構想でこの課題を解決する」―。ソフトバンクの宮川潤一社長は、次世代社会インフラを具現化し、自社の企業価値を向上する戦略をこう説明する。 同社によると、日本のデータ処理需要は2030年に196
トヨタ自動車が進めている、新型エンジン開発プロジェクトの一端が分かった。開発しているのは1500cc直列4気筒エンジンで、車両搭載時期は未定だが、早ければ2026―27年にも開発にめどを付ける見通し。補助金の見直しや航続距離などの課題から、世界では電気自動車(EV)シフトが鈍化。利便性の高いハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の需要が増えている。水素や合成燃料などの活用も視野に環境性能の高い高効率エンジンの重要性が高まっており、対応を強化する。 1月に開かれた展示会で、豊田章男会長が新型エンジンの開発に着手したことを明らかにした。同会場では高い環境性能のエンジンとレース向けエンジンの二つの開発を示唆。1500cc直列4気筒のエンジンはこのうち、環境対応型とみられる。上郷工場(愛知県豊田市)で開発し、日本や中国などで走行する車両への搭載を想定する。 脱炭素化の流れを受け
東京工業大学の畠山歓助教と早川晃鏡教授らは、化学の専門知識を学んだ大規模言語モデル(LLM)を開発した。6万5000報の論文データセットを構築した。学習データでは、論文の要約よりもイントロダクションが性能向上に役立った。論文の結論の学習は、性能面でネガティブに働いた。小さなLLMにとっては結論の内容が専門的過ぎた可能性がある。専門知識を備えたLLMを構築するための知見になる。 米メタが公開しているLLM「Llama2」に化学論文を追加学習させた。モデルのパラメーター数は70億―700億。低ランク適応(LoRA)という手法で計算コストを抑えた。研究室で始めやすい構成になる。 モデルの性能は論文を元に作成した問題で評価した。模範解答とLLMの回答の類似度を計る。すると異分野の論文を学習させるほど性能が落ちた。利用したい専門領域に絞ってデータ量を確保する必要がある。 論文は要約とイントロ、結論を
関西学院は神戸市内の用地を取得し、新キャンパスを整備する(左から森康俊関西学院大学学長、久元喜造神戸市長、村上一平関西学院理事長) 関西の有力私立大学が、都市部近郊でキャンパスの新設や拡張を急いでいる。兵庫県西宮市が本拠地で傘下に関西学院大学を擁する学校法人関西学院は、約100億円を投じて神戸市内の用地を神戸市から取得する契約を結んだ。関西大学や立命館大学も、大阪市内から近い立地でキャンパスの新設や拡張を計画する。都市部に拠点がある大学は、学生を誘引する力が強い。成長を維持するため、各大学の投資が積極化している。(大阪・石宮由紀子) 関西学院は再整備計画が進む王子公園(神戸市灘区)の敷地の一部を神戸市から譲り受け、4000人規模の学生が学ぶ「王子キャンパス(仮称)」を2029―31年度に設置する計画だ。国際化や産学官民連携を図りながら、関西学院大のデジタル技術の主要拠点になるようなキャンパ
年俸制で流出防ぐ 地方の理工系単科大学は地域の産業界から頼りにされる半面、学術研究で存在感を出しにくい傾向がある。しかし室蘭工業大学はコンピューター科学分野で業績を急伸させ近年、旧7帝大の平均を上回る論文引用率をキープしている。歴史の浅い分野で若手・中堅研究者のやる気を引き出し、トップクラスの実績につなげた方策について空閑良寿学長に解説してもらった。(編集委員・山本佳世子) 室蘭工大が注目するのは、学術論文出版社のエルゼビアによる研究業績分析ツール「SciVal」(サイバル)のデータだ。コンピューター科学分野で、被引用数の多い「トップ10%論文」の総論文数に対する割合をみると、旧7帝大平均は9%ほどで変化がない。対して同大は2014年を機に躍進し、ここ数年は約15%を維持する。同大のコンピュータ科学センターなどで活動する若手・中堅研究者らがけん引している。 施策で最も効果があったとみるのは
KDDIはローソンへの出資比率を引き上げる。(右から)高橋誠社長、竹増貞信ローソン社長、中西勝也三菱商事社長 携帯通信3社の2023年4―12月期連結決算は、2社が増収営業増益だった。ソフトバンクも前年同期の特殊要因の影響を除けば約7%の営業増益となった。21年ごろから携帯通信料金値下げの影響が続いていたが、通信ARPU(利用者1人当たりの平均収入)が4000円程度で下げ止まりつつある。小売り、金融など非通信領域への積極的な投資で自社の“経済圏”を強化し、通信・非通信を含めた総合ARPUを増やす成長戦略が実を結び始めた。 「通信料値下げの影響で減収トレンドが3年間続くと覚悟していたが、2年半で抜け出すことができた」―。ソフトバンクの宮川潤一社長は、携帯通信事業の減収傾向が底打ちしたとの認識を示す。 携帯通信大手は21年以降、通信料金引き下げを推進する政府の政策を踏まえ、従来より安価な新料金
NECは8日、米国立標準技術研究所(NIST)が実施した直近の顔認証技術のベンチマークテスト(性能評価試験)で世界1位を獲得したと発表した。1200万人分の静止画を用いた「1:N認証」において、認証エラー率0・12%という第1位の性能評価を獲得した。撮影後10年以上経過した画像を用いて評価を行う経年変化のテストを含む三つのテストでも1位となるなど、NISTがウェブサイトに掲載した主要8項目の全てでトップ3に入る高い評価を獲得した。 NECは2009年の初参加以来、NISTが主催する顔認証技術のベンチマークテストの中でも高い精度が求められる1:N認証のテストで世界1位の評価を複数回獲得した実績を持つ。中核となるアルゴリズム(計算手順)の性能向上を図りながら、顔認証の社会実装を推進し、これまでに世界50以上の国と地域で顔認証事業を展開してきた。 今後、多人数を同時かつ高精度に認証するゲートレス
ENEOSは大気中の二酸化炭素(CO2)を回収する技術の実証試験を始めた。再生可能エネルギー由来の水素とCO2を使って製造する「合成燃料」の実用化に向けて、安価で大量の原料CO2を調達するのが目的。今後1年程度をかけて、合成燃料の原料として使える品質・コストかどうかを検証する。(根本英幸) 合成燃料は水素とCO2、それに触媒を用いた合成反応により粗油を精製し、そこから石油化学製品の原料となるナフサやガソリン、ジェット燃料、軽油などに変換する。既存の自動車や航空機、さらにはインフラ設備をそのまま活用でき、低コストに脱炭素化できる点が強みだ。液体燃料であるため、長期備蓄や輸送が簡単というメリットもある。 今回の実証は、CO2調達の有効性を検証するのが目的。脱炭素社会に向けたCO2の削減は最重要課題で、当面は工場など産業排ガスからの回収で賄える。ただ、将来的にCO2を原料とする合成燃料や合成メタ
岡山大学のエルボイ・ハイサム外国人客員研究員、鈴木弘朗助教らの研究チームは、ペロブスカイト太陽電池の性能と安定性を高める添加剤「ベンゾフェノン」(BP)を発見した。BPを添加したペロブスカイト太陽電池において、室温かつ湿度が30%の環境で、700時間を経過した後も、太陽電池の性能を90%保つ高い安定性が得られることを確認した。 BPを添加しなかった場合は、太陽電池の電力変換効率(PCE)が急速に劣化し、同じ条件下で300時間以内に初期値の30%の性能しか維持できなかった。ペロブスカイト太陽電池は従来のシリコン太陽電池に比べ、作製工程が容易。フィルム状の柔軟な太陽電池が作れる上、発電効率はシリコン製と同程度であることから、安価でさまざまな場所に活用できる太陽電池として注目されている。だが、ペロブスカイト材料の環境安定性が低いことが課題だった。 BPの添加でこの欠点を補完できれば、高性能かつ高
エスペックは2025年2月に愛知県常滑市で、年間約500件の受託試験が可能な電気自動車(EV)向け車載用バッテリーの試験所を新設する。EV用バッテリーの受託試験所としては国内最大級の規模となる。自動車メーカー各社のEVシフト加速に伴うバッテリー試験の需要拡大に備える。次世代電池の全固体電池試験にも対応する。投資額は約20億円。 新試験所「次世代モビリティテストラボ(仮称)」は敷地面積が約7500平方メートル、延べ床面積は約1300平方メートル。トヨタ自動車をはじめ国内でEVを生産するメーカーや、バッテリーメーカーの利用を想定する。第三者認証機関のテュフズードジャパン(東京都新宿区)と連携し、予備試験から国連規則に対応した認証試験までワンストップで提供する。 車載用バッテリーは大型化、高容量化が進み、試験設備も大型化が求められる。新試験所はコンクリート構造で耐火性に優れた安全性試験室3室のほ
文部科学省は核融合発電の発電能力を実証する原型炉について、量子科学技術研究開発機構(QST)を開発主体とする方針を固めた。QSTを中心に大学や企業などが原型炉開発に関わる“オールジャパン”体制を構築し、原型炉の早期実現を目指す。将来は日本の多様なサプライチェーン(供給網)を生かして商用炉を開発できる企業を育成し、核融合発電の産業化を急ぐ。 原型炉開発は4月にも着手する。QSTを中心にしながら、原型炉設計や超電導コイルなど、開発項目ごとに大学や企業を対象に公募して参画を促す。原型炉による発電実証から産業化へ素早くつなげるため、日本の産業界の総力を結集して取り組む体制の構築を目指す。将来は企業を中心とした原型炉開発に移行し、商用炉を開発できる企業を育成することも視野に入れる。 また大学間の連携を促し、核融合発電の開発人材を育成する。QSTの日欧共同の実験炉「JT―60SA」なども活用する方針だ
KDDIは29日、鋼製と比べて約4割軽い61キログラムに軽量化したガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製の携帯電話基地局アンテナ支持柱をコスモシステム(宮城県名取市)と共同開発し、本格導入したと発表した。鋼製支持柱の設置に必要だったクレーンを使わず、人力のみで搬入・建柱が可能。基地局の建設期間を短縮でき、第5世代通信(5G)エリアの早期拡大につなげられる。年内に100本程度の導入を見込む。 GFRP製支持柱の管は、ガラス繊維を特殊な角度で巻き付けるフィラメントワインディング法で製作することで強度を向上。暴風や東日本大震災級の大地震にも耐えられる耐久性を実現した。 GFRPは耐食性に優れているため、錆による劣化の懸念がなく長期間の使用が可能。メンテナンス性を向上できる。同法で製作した管を用い、ボルトを除くすべてのパーツにGFRPを使用した支持柱は国内初だとしている。
ニデックは中国市場の成長鈍化などを受け、インドとアフリカに積極投資する方針を示した。アフリカ大陸に同社初となる家電用モーターの工場をエジプトに建設予定で、2025年にも生産を開始する。インドでも同モーターの5番目の工場建設を検討しており、永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は「中国の成長が止まっている。我々の目はインドやアフリカに向いている」と両地域の成長性に大きな期待を寄せた。 「これからの10―15年を見た時、かつて中国に進出した時と同じような雰囲気になってきている。そういうマーケットに入っていくことが我々の成長につながる」と永守会長は強調。成長する市場へ積極投資する。 一方、事業分野での「原点回帰」(永守会長)も進める。もともとハードディスク駆動装置(HDD)用などの精密小型モーターで成長してきたことから、「モーターが一番得意で一番儲かっている。そこに経営資源を集中して関連分野が広
東京大学のアサバナント・ワリット助教と古沢明教授らは、光子を用いた論理量子ビットを実現した。論理量子ビットはエラー情報を元に正しい情報を復元できる。光を利用すると大量の量子ビットを生成できる。計算間違いをしない誤り耐性量子コンピューターの構築につながる。 情報通信研究機構や理化学研究所などとの共同研究で論理量子ビットの一種であるGKP論理量子ビットを生成した。パルスレーザーで位相が反転した光の重ね合わせ状態を作り、線形光学素子でGKP論理量子ビットに変換する。 実験では一つのパルス光の中に一つの論理量子ビットを生成できた。光のGKP論理量子ビットの生成は世界初。超電導方式などでは一つの論理量子ビットを構成するために多数の量子ビットを用意する必要があった。新方式はパルス光をレーザーとして連続的に生成すれば大量の論理量子ビットを生成できる。 光の測定には情通機構と開発した光子検出器を利用した。
日本原子力研究開発機構は核分裂せず、原子力発電に使われない劣化ウランを利用した蓄電池の開発に乗り出す。ウランを使った蓄電池は充電ロスが低く、原料が準国産であるため、低価格での販売が見込める。詳細な原理実証ができれば世界初の成果となる。2035年には再生可能エネルギーや原発と連携し、余剰電力を蓄電できる仕組みを構築する考え。廃棄物の劣化ウランを有効活用し、資源として平和的に利用することを目指す。 ウランの酸化還元反応に着目し、それを利用して充電・放電する蓄電池「レドックスフロー(RF)電池」を開発する。これまでに原子力機構は、ウランを利用したRF電池に使う電解溶液の選定などを進めてきた。24年からウランRF電池の詳細設計を始め、26―28年に原子力科学研究所(茨城県東海村)内で実証やスケールアップを実施する予定。 現在実用化されているRF電池には金属元素のバナジウムが使われているが、海外から
積水化学工業は開発中の次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」について、2025年までに20年相当の耐久性を実現する方針を固めた。一般的に耐久性は5―10年程度とされ、長寿命化が実用化の障壁だった。20年の耐久性は一般的なシリコン系太陽電池にも匹敵し、社会実装に向けて大きく前進する。東芝など電機各社や中国勢も商用化を急いでおり、積水化学は屋外設置の実証などを通じて耐久性を検証し、25年の事業化を目指す。 ペロブスカイト太陽電池は柔軟で軽く、既存の太陽電池が設置できない外壁や耐荷重の小さい屋根などに設置できる点が特徴だ。次世代の太陽電池として普及が期待され、政府は社会実装に向けて支援策を拡充している。 積水化学は液晶向け封止材やガラス用中間膜などで培った独自技術を応用し、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を開発している。すでに幅30センチメートルのロール・ツー・ロール(R2R)方式の製造プロセ
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