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学べば学ぶほど、奥が深い薬の世界。もと製薬企業研究員のサイエンスライター・佐藤健太郎氏が、そんな「薬」についてのあらゆる雑学を綴るコラムです。 人間誰しも、40歳を超えると様々な形で加齢を意識するようになります。疲労回復が遅くなったり、白髪が生えてきたりというのもありますが、老眼もその一つでしょう。特に最近は、スマートフォンなどで細かい文字を読む機会が増えていますから、かなりの不便が生じます。 老眼はなぜ起こる? 老眼は、目のピント調整機能の低下によって起こります。目の中には水晶体と呼ばれる器官があり、レンズのような役割を果たしています。見ようとするものの距離によって、レンズのピント位置は変わってきます。そこで、水晶体周辺の毛様体小帯と呼ばれる線維がゆるんだり縮んだりすることで水晶体の厚さが変化し、ピントを調節しています。 しかし年をとるとこの水晶体が固くなり、毛様体小帯がゆるんでも厚さが
学べば学ぶほど、奥が深い薬の世界。もと製薬企業研究員のサイエンスライター・佐藤健太郎氏が、そんな「薬」についてのあらゆる雑学を綴るコラムです。 医薬品の一般名は、一定の規則に従って命名され、世界で共通の名称が使われることになっています。ジャンルによって共通した語尾が用いられるよう規定されており、たとえば抗ウイルス剤には「ビル」(-vir)が、DPP-4阻害剤には「グリプチン」(-gliptin)がつくといった具合です。長い名前の薬も多いので、薬剤師のみなさんは覚えるのも一苦労と思います。 ところが最近、ちょっと気になる知らせが飛び込んできました。2021年10月に行なわれた世界保健機関(WHO)の専門家会議で、抗体医薬の命名ルールが変更されることが決まったのです。かなり大きな影響がありそうですので、ご紹介しておきたいと思います。 これまでの命名規則 これまで、抗体医薬にはステム(語幹)とし
学べば学ぶほど、奥が深い薬の世界。もと製薬企業研究員のサイエンスライター・佐藤健太郎氏が、そんな「薬」についてのあらゆる雑学を綴るコラムです。薬のトリビアなどを伝えられると、患者さんとの距離も近くなるかもしれませんね。 医薬品の名称については以前にも触れました。今回はその続きを書いてみます。 医薬品という商品の特殊な点のひとつは、基本的に同じ中身の薬に対して、発売元の各社がそれぞれの商標をつけて売り出していることです。たとえば同じ抗不安薬に対して、武田薬品は「セルシン」、旭化成は「セレナミン」、住友製薬は「セレンジン」、中外製薬は「ソナコン」、丸石製薬は「ホリゾン」と名づけて販売しています。一方、米国では「ヴァリウム」という名称が一般に浸透しています。こうしたことは、他業界ではなかなかない事態でしょう。 これだけでは当然ながら混乱の元ですので、統一的な名称として「ジアゼパム」という名が“一
学べば学ぶほど、奥が深い薬の世界。もと製薬企業研究員のサイエンスライター・佐藤健太郎氏が、そんな「薬」についてのあらゆる雑学を綴るコラムです。 2020年2月25日に公開した本連載第65回「新型コロナウイルスの新薬開発、驚異的な速度で各国が参入」では、各国が驚異的なスピードで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新薬開発に取り組んでいる現状を紹介しました。あれから約1カ月経ったいま、臨床現場への登場に向けてさらに一歩進展した新薬の最新動向をお届けします。 イブプロフェンは危険か? まず既存の医薬品の話題から。3月14日、フランスのヴェラン保健相が「COVID-19の患者に対して、イブプロフェンやコルチゾンなどの抗炎症薬を使うと、症状を悪化させる恐れがある。解熱にはアセトアミノフェンを服用して下さい」とツイッターで発言し、これが4万回以上もリツイートされるなど注目を集めました(ヴェラ
学べば学ぶほど、奥が深い薬の世界。もと製薬企業研究員のサイエンスライター・佐藤健太郎氏が、そんな「薬」についてのあらゆる雑学を綴るコラムです。 中国をはじめ世界各地で感染拡大が続く新型コロナウイルス。有効な治療法やワクチンが存在しないことから、各国で通常では考えられないほど驚異的なスピードで新薬開発が進められています。本稿では2020年2月21日時点での開発最新状況を紹介します。 新型コロナウイルス感染症の特徴 昨年末に中国・武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題は、連日トップニュースで報じられています。薬局ではマスクや消毒用アルコールがほとんど売り切れているなど、薬剤師のみなさんの職場にも大きな影響が出ていることと思います。 流行開始から2ヶ月ほどが過ぎ、ウイルス及び疾患の実態についてもかなり詳しいことがわかってきました。対策としては、医師の高山義浩氏が
”漢方”に強くなる! まるわかり中医学 更新日:2023.12.25公開日:2017.07.27 ”漢方”に強くなる! まるわかり中医学 西洋医学とは異なる理論で処方される漢方薬。患者さんから漢方薬について聞かれて、困った経験のある薬剤師さんもいるのでは? このコラムでは、薬剤師・国際中医師である中垣亜希子先生に中医学を基本から解説していただきます。基礎を学んで、漢方に強くなりましょう! 第23回では、木火土金水の5つの基本要素(五行)の特性についてお話ししました。今回は五行の間の関係性についてお話ししましょう。 五行の間には、正常な状態(五行のバランスがとれた状態)での関係性をあらわす“相手を生じる関係=相生(そうせい)”と“抑制する関係=相剋(そうこく)”という状態と、バランスの崩れた関係性をあらわす「相乗(そうじょう)」「相侮(そうぶ)」という状態があります。 今回はまず「相生(そう
学べば学ぶほど、奥が深い薬の世界。もと製薬企業研究員のサイエンスライター・佐藤健太郎氏が、そんな「薬」についてのあらゆる雑学を綴るコラムです。薬のトリビアなどを伝えられると、患者さんとの距離も近くなるかもしれませんね。 この4月に、米国食品医薬局(FDA)は、テバ社が開発したデューテトラベナジン(商標名Austedo)を、新薬として認可すると発表しました。ハンチントン病の舞踏運動症状を改善する目的の医薬です。 この薬が注目を集めたのは、史上初めて構造式に重水素を含んだ医薬であったからです。実のところこのデューテトラベナジンは、すでに知られていた医薬テトラベナジンに含まれる水素原子のうち6つを、重水素に置き換えただけのものです。そしてこの薬が認可されたことは、今後の医薬品産業にかなりの影響を及ぼす可能性があるのです。 詳しい話に入る前に、そもそも重水素とは何かというところからおさらいをしてお
学べば学ぶほど、奥が深い薬の世界。もと製薬企業研究員のサイエンスライター・佐藤健太郎氏が、そんな「薬」についてのあらゆる雑学を綴るコラムです。 佐藤と申します。かつて某製薬企業で研究員をしていましたが、現在はサイエンスライターとして活動しております。このたび、こちらで薬に関するコラムを書かせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。 さて第1回目の今回は、薬の名前について書いてみましょう。研究者としては、手塩にかけた新薬に名を与えるのは、最高の喜びのときです。しかしひとつの薬には、たいていいくつもの名前があります。使われる現場により、医薬の名称も変わっていくのです。 薬に最初につく名前は、製薬企業で用いられるコードナンバーで、たいていアルファベットと数字だけの味気ないものです。たとえば最近、エボラ出血熱に効果があるのではと話題を集めた「アビガン」は、当初「T-705」と呼ばれ
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