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ある日のこと、鹿児島の海沿いを運転していたら「海ぶどうと魚の自販機」の看板が目に飛び込んできた。縁遠く聞こえる「魚」と「自販機」の言葉の組み合わせが妙に気になり、車を停めて寄ってみた。その自動販売機は桜島を後ろに望む、とても景色のいい場所にあった。 人口50人に満たない小さな集落に「魚の自動販売機」 冷蔵と冷凍の2種類の自動販売機が設置してあり、購入できる商品は海ぶどう(800円)やヒラメ刺し身(400円)、ヒラメエンガワ(450円)、漬け丼の素(1000円)、ハマチの熟成ロイン(半身)1000円、ヒラメの骨チップス(250円)など、ラインナップはかなり豊富である。 しかも、海ぶどうもヒラメエンガワも、鹿児島のスーパーではほぼ売っていないレア食材だ。 自動販売機の横に氷が置かれているので、自宅まで時間がかかる人も持ち帰りに困らない。しかも、なんと24時間営業している。
慶應義塾大学の伊藤公平塾長が、3月に文部科学省・中央教育審議会の特別部会で「国公私立大学の設置状態にかかわらず、大学教育の質を上げていくためには、公平な競争環境を整えることが必要。国立・公立大学の家計負担は、年間150万円程度に上げるべき」と提言しました。今回は、日本の大学と学費のあり方について考えてみましょう。 文科省は火消しに回る 4月中旬に伊藤氏の提言がメディアで明らかになると、大きな波紋を呼びました。ほぼ反対一色で、SNSやネット掲示板には次のようなコメントがあふれていました。 「学費の値上げと大学教育の質の向上がどうつながるのか。私立大学と国公立大学が公平な競争をする必要があるのか。ちょっと意味がわからない」 「値上げすると、いよいよ裕福な家庭しか大学に進学できなくなる。努力すれば国公立大学で安く学べるという今の仕組みを変えるのは反対」 文科省の担当者は、早々に「あくまで提案が議
OpenAIの共同設立者でありチーフ・サイエンティストであるイリヤ・サツキバーは、11月に他の3人の取締役とともに、同社の知名度の高いCEOであったサム・アルトマンを追い出し、その後その動きを後悔していると語っていたが、結局サンフランシスコのAI企業を去ることになった。 最後まで「復職」することはなかった 同社が5月15日にブログ投稿で発表したサツキバーの退社は、シリコンバレーを驚かせ、アルトマンと彼の会社がAI時代へとテック業界を導く準備ができているかどうか疑問を投げかけたストーリーの新たな章を閉じるものだ。 更迭からわずか5日後にOpenAIに復帰したアルトマンは、再び主導権を握り、ますます強力なテクノロジーへの取り組みを続ける中で批判的な意見もあった。サツキバーもOpenAIの従業員として残ったが、復職することはなかった。 「今日は私たち全員にとって感慨深い日だ」とアルトマンはインタ
大阪府の堺市は80万人超の人口を抱え、大阪市に次ぐ府内第2の政令指定都市だ。大阪市内からは南海電気鉄道の南海本線と高野線、JR阪和線、阪堺電車と大阪メトロ御堂筋線が延びている。 南海本線には堺駅、JR阪和線には堺市駅というそれぞれ街の玄関口らしい名称の駅があるが、実際に堺市の代表駅と位置づけられるのが、南海高野線の堺東駅だ。 堺市の玄関口「ガシ」 堺は歴史の町でもある。大山古墳(仁徳天皇陵古墳)をはじめとする百舌鳥古墳群は2019年に世界遺産に登録された。中世には環濠に囲まれた商人による自治都市として繁栄。本能寺の変で織田信長が明智光秀に討たれた際、堺見物をしていた徳川家康が伊賀越えを経て命からがら領国へ逃げ帰ったエピソードも有名だ。現在も千利休屋敷跡などが残っている。 堺東は堺市役所の最寄り駅。高島屋が入る駅舎と一体の「南海堺東ビル」は1964年10月の竣工で、2024年に60周年の還暦
「私にとって魔法のようだ」ーー。サム・アルトマンCEOがそう予告していた新たなサービスがベールを脱いだ。 アメリカのOpenAIは5月13日、ChatGPTから使える新たな生成AIモデル「GPT-4o(フォー・オー)」を発表した。このAIの「知能」はこれまでのGPT-4と基本的に同じだが、応答時間を大幅に短縮するなど「使い易さ」で進化したという。 有料のGPT-4とは対照的にGPT-4oは無料ユーザーでも利用できるが、時間当たりの利用回数などが有料ユーザーに比べて制限される。無料化によってなるべく多数の利用者に使ってもらうことでChatGPTのユーザーベースを拡大し、飛躍的な進化が期待される次世代モデル「GPT-5」(まず間違いなく有料化される)のリリースに向けて足場を固めようとしている意図がうかがえる。 本稿では3つの「進化のポイント」に解説したい。 従来より「自然な会話」ができるように
都会に暮らしている人は、なんだって鉄道のことを「電車」と呼ぶクセがついてしまっている。別にそれは何ら間違いではなくて、実際に走っているのは電車ばかりなのだからムリもない。 一度、電車も気動車もあるような地域の人に、「つい何でも電車って言っちゃうんですよ」などと話したことがある。返ってきたのは、「この地域の人もみんな電車ですよ。気動車も関係なく」。鉄道のことをどう呼ぶか。地域ごとに結構個性がありそうな気がして、興味深いところである。 電車はないが「汽車」がある そして、今回やってきたのは日本で唯一“電車”の存在しない県、徳島県だ。沖縄県で唯一の鉄軌道であるゆいレールを“電車”に数えるとするならば、徳島県だけが電車の走らない県ということになる。だから、徳島の人たちは、もちろん鉄道のことを電車などとは呼ばない。 聞くところによると、汽車と呼ぶことが多いのだとか。汽車といったら蒸気機関車のことをイ
学校の教員たちは日々の授業やその準備だけではなく、さまざまな業務や対応に時間と労力を費やしています。徐々に業務や待遇の改善は進んでいるものの、複雑化する社会の中で子どもや保護者の対応に神経をすり減らすことが増え、精神的に追い詰められていく教員も後を絶ちません。本稿では、朝日新聞の連載「いま先生は」をまとめた書籍『何が教師を壊すのか 追いつめられる先生たちのリアル』より一部を抜粋し、教員を取り巻く現状について考えます。 子育てとの両立に苦しむ女性教員 近畿地方の公立小学校の40代の女性教員は、会社員の夫とともに、高校生と小学生の子どもを育てながら働いている。 自宅から勤務先までは、車で10分ほど。子どもたちを送り出して、あわただしく出勤し、すぐにクラスの子どもたちを迎える。 午前8時半〜午後5時が「定時」だが、午後3時25分に6時間目の授業が終わると、すぐに会議が入る日が多い。5時をまわり、
東海道新幹線京都駅の中央乗換口を出て、すぐ隣のエスカレーターを降りると、JR西日本の奈良線ホームである。主力のクロスシート車221系とともに、関東では姿を消しつつある国鉄型205系も出発を待っている。 JR奈良線は木津―京都間の通勤路線で、「みやこ路快速」が京都駅と奈良駅を44分で結ぶ。近年、利用が特に伸びた路線である。2019年度の輸送密度は2万9752人で、1987年度比で2.8倍となった。 沿線には東福寺、伏見稲荷、宇治、奈良と有名観光地が点在しており、観光シーズンになると、国内外の観光客で電車はすし詰めになる。 2023年3月に複線化第2期事業が竣工して1年。関西でも影の薄い存在だったJR奈良線は、どのように変貌しているのだろうか。
グローバルプラットフォームによる、オリジナルドラマや映画が続々と配信されるなか、“誰も観たことのない作品”の製作を掲げ、話題作を多く生み出しているNetflix。 最近では、俳優の賀来賢人がNetflixに企画を持ち込み、原案&主演を務めた『忍びの家 House of Ninjas』の世界的ヒットが注目され、佐藤健が主演&共同エグゼクティブ・プロデューサーを務める『グラスハート』(2025年配信)も製作が進んでいる。 日本でも演者による企画、プロデュースの流れが一般的になり、世界につながるNetflixが受け皿になっていくのか。 一方、ネットニュースやSNSを大きく盛り上げるのは、テレビの地上波連続ドラマの話題がほとんどだ。そんな状況をNetflixはどう見ているのだろうか。映画会社・日活からNetflixに移籍したコンテンツ部門ディレクターの髙橋信一氏に聞いた。 SNSで話題沸騰の「シテ
セブン&アイ・ホールディングス傘下のスーパーで、グループ祖業のイトーヨーカ堂。2026年2月期を最終年度とする経営再建計画の中で、多店舗閉店と首都圏への集中を掲げている。 2024年2月末時点で123店舗残っている「イトーヨーカドー」は、今2025年2月期中に30店を閉鎖し、最終的に93店舗体制となる計画だ。 撤退が告知されている24店舗 すでに撤退が実施または告知されている店舗のリストは次のとおり。ほとんどが北海道や東北、信越など、「首都圏集中」戦略に伴うエリア撤退によるものだ。 しかし中には首都圏の乗降客数が多い駅前好立地でさえ、撤退を強いられている店舗がある。今回はそんな戦略地域にもかかわらず閉店となってしまった2店舗に焦点を当ててみたい。 最初に取り上げるのが千葉県柏市にある柏店だ。JR柏駅は常磐線の快速停車駅。1日の乗降客数は県内3位の10万人(2022年度)を超え、東武野田線も
売上高は1兆円規模ながら、時価総額は17兆円。営業利益率50%超という希有な高収益企業のキーエンスが、超意外な新規事業を立ち上げた。本業ではセンサーなどの制御機器を扱うが、新たに乗り出すのは製造業向けの流通事業。彼らが描く、EC(ネット通販)の戦略とは。 「ものづくり現場の ”付加価値” 最大化に貢献する」 2月14日付で設立された、株式会社メイカーズ。ひっそりと公開された簡素なホームページには、冒頭のメッセージを筆頭に“付加価値”という言葉が4回も出てくる。事業内容は「自動化・省力化機器等の企画・開発およびECプラットフォームの運営」と明記されている。 同社はキーエンスの100%子会社。資本金は1億円で、発足当初の従業員数は約10人とみられる。各種リクルートサイトでは「キーエンス100%出資によるスタートアップ企業」と紹介され、営業や機械エンジニア、経理などの幅広い職種を積極的に採用して
日立製作所の鉄道事業の成長が著しい。4月26日に発表された2023年度の鉄道事業売上高は8561億円。前年度の7360億円から1201億円増えた。2010年度は1502億円だったので13年で約6倍に増えたことになる。 フランスの防衛・航空宇宙メーカー、タレスの交通システム事業買収も近々完了する見通しで、これを加えると2024年度の鉄道事業売上高は1兆円を超える見通し。東原敏昭会長は8年前に「2020年代の早い時期に売上高1兆円を目指す」と話していたが、実現の日が近づいた。 国内同業との比較では川崎重工業の鉄道車両事業が売上高1959億円で2位、3位以下は1000億円を下回り、日立は頭1つ抜き出る。成長の原動力は海外。2010年度の鉄道事業売上高に占める海外の比率は400億円に満たなかったが、今や売上高の8割超を稼ぐ。 副社長が語る鉄道事業発展の足跡 分野別の売り上げは車両製造が6割、信号シ
外食値上げの波は止まらないのか――。 4月29日、一時1ドル=160円台と歴史的な水準に達したドル円相場。その後は円高方向に振れたものの、足元では155円付近まで戻っている。為替の動向を警戒するのは外食業界の関係者たち。業界は多くの食材を輸入に頼っており、円安は直接コスト増につながる重要な要素だ。 外食業界はこれまで、居酒屋や専門店チェーンなど、業態を問わず値上げを実施してきた。牛丼チェーンの吉野家は3年連続で値上げを実施し、2023年は並盛が税別408円から426円になった。中華食堂「日高屋」を運営するハイデイ日高も、中華そば(税込み390円)以外のメニューを全面的に値上げしている。 しかし、現在の価格設定では一段のコスト増を吸収できなくなる業態もありそうだ。ある業界幹部は「これ以上の円安が定着すれば、さらなる値上げをせざるを得ない」と明かす。 ココイチの食材もコスト増に 大手カレーチェ
4月8日から東京都などで「日本型ライドシェア」が解禁され、約1カ月が過ぎた。 東京に神奈川や名古屋、京都市域を含む先行エリアではすでに90社(4月26日時点)の運行が行われており、解禁前に議論の対象となった安全性の面では、今のところ大きな事故が起きたという声は聞こえてこない。 その理由はシンプルで、まだそれほど多くの人が乗車を経験していないということがあるように感じる。本稿では正確に把握することが困難な日本型ライドシェアの実情を、数字や事業者、ドライバーの視点から追っていく。 ライドシェア利用を試みたが… 現在のライドシェアは、配車アプリである「GO」や「Uber」「S・RIDE」「DiDi」の4つのアプリ内から、国交省から定められた時間帯にのみ乗車できるというものだ。 この内「Uber」を除くアプリでは、ライドシェア車両を指定することはできず、その「Uber」も稼働台数は限定的とされてい
プロ野球の観客動員が好調である。コロナ禍の3年もの間、観客動員は制限され応援も禁止されて、不自由な思いをしてきたファンの反動という部分があったと思われる。またコロナ禍の間にネットなどでプロ野球を知った新たなファンの動員もあったようだ。 ゴールデンウィーク明けの5月7日の時点で、プロ野球全体の1試合当たりの平均観客動員数は3万610人。昨年が2万9219人だから4.8%の増加。セ・リーグは3万3954人、昨年が3万2913人だから3.2%増、パ・リーグは2万7266人、昨年2万5525人だから6.8%増。特にパ・リーグの増加が著しい。 過去最多はコロナ直前の2019年で、プロ野球全体で3万928人、セは3万4655人、パは2万7202人だった。パはすでに2019年を上回っているが、プロ野球は梅雨の時期を過ぎて夏休みに入ると例年増加するから、このままいけばNPB全体でも過去最多の動員になる可能
日々驚くべき進歩を遂げるテック業界。スティーブ・ロー氏はニューヨーク・タイムズの記者として、ChatGPTの開発者であるサム・アルトマン氏や、ツイッター買収などでも話題をさらうイーロン・マスク氏など、テック業界の中心人物への取材を行ってきた。氏が考える「AI最大のリスク」とは? この記事では『人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来』(朝日新書)に収録されたロー氏の分析を公開する。 AIが抱える最大のリスクはいったい何か? ――AI技術が社会や人間にどう影響するか見極めるには時間がかかると言いますが、では、現時点での最大のリスクはいったい何でしょうか。 それは「テクノロジーが社会の先を行ってしまうこと」です。今、私たちが行っているのは、人類に対する制御不能な実験です。だから、われわれ人間が、いろいろな場面で機械の指示に従おうとしている。 欧州では、リスクに基づく規制管理レベルを定める
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