今年3月に刊行された島田雅彦『パンとサーカス』(講談社)が、7月の安倍晋三元首相の銃撃事件後、大きな注目を集めた。日本社会の現実をフィクションの力で鋭く描き出した本書には、「要人暗殺」という出来事が描かれているからだ。著者の島田氏は、事件後の日本社会をどうみているのか。 暗殺事件の余波 虐げられた者の怒りを解き放てば、そこから「世直し」の連鎖が起き、支配層の人間を怯えさせることくらいはできる。 以下、太字は『パンとサーカス』からの引用 2年前の7月末から東京新聞で一年間連載していた『パンとサーカス』では悪政に対し「世直し」を希求する声を掬い上げ、政治テロが実行される様態を具体的に描いた。もし政府関係者がこれを連載中に読んでいれば、有効な治安対策も講じることができたかもしれないが、人文科学を抑圧してきた政府が小説家の妄想にまともに取り合うはずもなかった。 暗殺が「奇跡的に」成功したことにより
厚生労働省が公表している10月2日時点での「マイナ保険証」が使える医療と薬局は、全国で約7万件。 いっぽう、日本にある医療機関と薬局は、現在約24万件ですから、使える場所は約3割ということで、まだ約7割のところでは使えません。 しかも、マイナンバーカードを持っていない自体が、まだ国民の約半数。 仮に、9割の人がマイナンバーカードを持っていて、9割の病院や薬局が「マイナ保険証」が使えるようになれば紙の保険証を廃止してもそれほど困らないかもしれませんが、まだそうはなっていません。 今まで、政府は「ポイントをばらまいてマイナンバーカードをつくらせる」というアメ戦法を取ってきましたが、効果が思うように上がらないので、今度は紙の保険証をなくすというムチ政策に舵を切りました。 しかも、このムチは自治体にも向けられていて、カード普及率が低い自治体は、地方交付税を減らすという、なんとも無理無体な方針も出し
マイナンバーカードの義務化に向けて、政府の動きが活発になってきた。河野太郎デジタル相が健康保険証や運転免許証をマイナンバーカードと統合し、健康保険証については廃止を打ち出している。しかし反発も大きく、実現にはなお紆余曲折がありそうだ。このマイナンバーだが「本丸」はカードではなく、個人の金融口座との紐(ひも)付けという。なぜか? 蘇る「財産税」 マイナンバーと銀行口座との紐付けは、2018年1月から始まっている。2015年9月に衆議院本会議で可決・成立した改正マイナンバー法に基づき、2022年3月に「公金受取口座登録制度」がスタート。10月11日からデジタル庁が「公金受取口座」の情報を他省庁や都道府県などの行政機関に提供し、自治体でも利用できるようになった。 これは給付金などの受取口座を事前に登録しておく制度。公的給付を迅速かつ確実に支給するため、預貯金口座の情報をマイナンバーとともにマイナ
旧統一教会に宗教法人の資格があるのか吟味を 安倍元首相殺害を、犯罪学と、日本の古の掟から読み解く 河合幹雄 桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学) 安倍晋三元首相の殺害について、早急にひとつの正しい解釈を求めるより、様々な受け止め方を見聞きし、幅と深みのある理解にたどり着くことができればと考えている。既に、有識者のコメントが幾つも発信されているのはありがたいことである。ただ、政治的、社会的影響の大きさゆえ、案外、殺人事件としての地に足の着いた検討や意見が不足しているように思う。 私は、殺人事件を犯罪学から研究する者として、結論を急ぐことなく、この事件を殺人事件と政治テロ・暗殺として見た場合、どのように特徴づけられるか、考察し、議論の素材として提供してみたい。 殺人事件としての特徴 最初にすべき検討は、殺人事件として何が特徴か明らかにすることである。結論を先取りしておけば、実は、この事件は、殺人
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る議論や指摘で抜け落ちている点がある。それは、旧統一教会の伝道・教化活動そのものが、国民の思想信条の自由を侵害する違法行為であるとする判決が確定していること、すなわち憲法違反という認識だ。 その判決を1987(昭和62)年から14年間かけて勝ち取り、以降も違法伝道を白日の下に晒してきた第一人者が札幌にいる。 現在も3件の訴訟を闘い続ける旧統一教会の不俱戴天の敵ともいうべき郷路征記弁護士(全国霊感商法対策弁護士連絡会代表世話人)に聞く。 (ジャーナリスト・本田信一郎、文中敬称略) ●信仰の自由侵害を提起した弁護士はただ一人 ――(旧統一教会の伝道・教化活動は)社会的にみて相当性が認められる範囲を逸脱した方法及び手段を駆使した、原告らの信仰の自由や財産権等を侵害するおそれのある行為であって、違法性があると判断すべきものである――。 これは郷路征記が1987
朝鮮半島で終戦を迎えた五木寛之さん。壮絶な引き揚げ体験は、70歳になるまで人に語ることができなかったと言います。終戦から77年の月日が過ぎ、ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する今、思うことは──。(構成=篠藤ゆり 撮影=大河内禎) 物言えぬ空気が蔓延する世の中に また8月15日が近づいてきました。今年はウクライナの問題があるため、なおさら鬱々とした気分になります。国を追われる難民の姿に、昔の自分が重なるのです。その話をする前に、まずは今回の戦争から僕が感じたことを少しお話ししようと思います。 話は日露戦争の時代に飛びますが、当時、日本人はロシア人に対して「露助(ろすけ)」などという蔑称を使っていました。一方、ロシア文学がさかんに翻訳され、文学青年の心を捉えていた時代でもあります。 僕と同じ筑後生まれの詩人・北原白秋には、青年時代、無二の文学仲間がいました。本名は中島鎮夫(しずお)、ペンネ
日本基督教団統一原理問題連絡会主催の統一協会問題日韓教会フォーラムで、日本側は、韓国で統一協会の合同結婚式に参加した後、行方不明になった日本人女性6500人の捜索を韓国教会に要請した。韓国教会側は教団と団体が協力し、問題解決に積極的に対処していくことに合意した。 韓国教会百周年記念館で18、19日開催された統一協会問題日韓教会フォーラムで、日本の統一協会被害者家族の会関係者は「合同結婚式のために韓国に出国した日本人女性らと連絡が途絶えた状況」と述べ、韓国教会の積極的な協力を要請した。 19日参加した日本キリスト教会側と韓国キリスト教会側は、6500人のための相談窓口を開設し、被害者発見時には、日本の教会へ導くこと、さらに今後も徹底した情報交換によって統一協会の対処法を両国キリスト教界が合同で模索することに意見を合わせた。 また、参加者らは、統一協会の韓国ヨス市浸透問題に関しても、積極的な対
安倍氏の国葬は9月27日に行われる。費用は明らかになっていないが、各国から首脳級の参列も予想され、多額を要するのは必至。政府が半額を負担した中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬(2020年)は、首相経験者の葬儀としては過去最高の約1億9000万円だった。 税金などの詳細な使い道は、国民の代表者で構成される国会の議決に基づいて決めなければならないというのが「財政民主主義」の原則だ。一方、政府が国葬の財源に充てる方向の予備費は、憲法87条が「予見し難い予算の不足に充てる」目的で、あらかじめ使途を定めず計上することを認める予算。内閣の判断で支出し、使った場合は国会の事後承諾を得る仕組みになっている。 ただ、制度の主眼は自然災害など急を要する事態に備えることだ。野党からは「災害対策などに予備費執行はあり得るが、国葬はわけが違う。国会が関与すべきだ」(立憲民主党の泉健太代表)などと疑問の声が上がる。
安倍元首相が銃撃された事件で、逮捕された山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で送検=は「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)への恨みから凶行に及んだとみられる。不安をあおり、壺や印鑑を高額な値段で売りつける「霊感商法」が社会問題化したのは1980年代だったが、被害は今も続いていたのだ。保守系政治家との持ちつ持たれつの関係も垣間見えてきた。(矢野宏) 山上容疑者が事件の前日、旧統一教会を批判するブログを運営する男性に送った手紙がネット上で公開されている。「私と統一教会の因縁は約30年前にさかのぼります。母の入信から億を超える金銭の浪費、家庭崩壊、破産……。この経過と共に私の10代は過ぎ去りました。その間の経験は私の一生を歪ませ続けたと言っても過言ではありません」と強い恨みが記されている。 一方で安倍元首相については「本来の敵ではないのです。あくまでも現実世界で最も影響力のある統一教会シンパの一人
安倍晋三元首相の銃撃事件で逮捕された山上徹也容疑者が、母親が宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」にのめり込み、多額の献金で破産し、家庭が崩壊したことで恨みを持ち、そのトップを殺害しようとしたが、それが困難だったことから、同団体とつながりがあると思えた安倍氏を襲撃したと供述していると報じられたことを契機に、自民党を中心とする保守系政治家と旧統一教会との関係が、マスコミで、連日大きく取り上げられている。 それに対して、立憲民主党、日本維新の会などは、党所属議員と旧統一教会との関わりを調査し、その結果を公表するなどしているが、自民党は、茂木敏充幹事長が、 「党とは組織的な関係はないことが確認できた」 と繰り返し、関係が明らかになった議員個人が弁明するだけで、所属議員と旧統一教会との関係を積極的に調査しようとはしない。 マスコミの側も、TBS、日本テレビ等が、ワイドショー等で連日、長時間
日本経済が長期低迷から抜け出せなくなってきた――。前編記事『日本、じつは「先進国で断トツ最下位」に…! 日本人は知らない「ヤバすぎる日本経済」の真実』では、じつは日本の潜在成長率が過去30年にわたって低下し続けているという衝撃の事実を紹介。潜在成長率はバブル末期の1990年に4%程度と高かったのが、このままでは2020年代にマイナスになるのではないかと危惧されていることをレポートした。 しかも、1990年から2020年までの30年間で日本の名目GDPの伸び率は、主要7ヵ国のなかで“最下位”に……。いったいなぜ、日本はここまで転落してしまったのか。そのカギを解くヒントは「政治」にあった――。 アベノミクスの「真実」 日本が潜在成長率を引き上げるためにもっとも力を入れるべきは、成長戦略です。 しかし、非常に強い権力基盤を誇った安倍政権ですら、成長戦略は掛け声倒れに終わってしまいました。日銀によ
前編(「文尊師は誠実な男」 岸信介が統一教会トップを賞賛した“異様”な機密文書)では、安倍晋三元総理の祖父・岸信介元総理が1984年、当時の米大統領に宛てた文書で、統一教会の開祖・文鮮明を称賛するとともに、当時アメリカで逮捕されていた文鮮明の釈放を求めていたことを報じた。しかし、統一教会の影響力は安倍家のみならず、自民党議員の多くに及んでいる。その中には、現役の大物議員の名も――。 【画像9枚】自殺した父と兄、宗教に貢ぐ母 山上容疑者の複雑な家庭環境 *** 歴史をたどれば、かつて政治と統一教会の関係は自民党を中心として、右派勢力の広範囲に及んでいた。 「統一教会が最も深く政治に関与していたのは、1970年代から80年代を経て、90年代の初頭まででしょうか」 と言うのは、さる古参の永田町事情通である。 「国際勝共連合や関連団体を通して、国会議員のところにスタッフを送り込んでいました。派閥や
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