今回お話を伺った鬼瓦を作る職人・鬼師の美濃邉恵一さんの仕事は、何百年も前に作られた鬼瓦を再現し、次の世代へ引き継いでいくことだ。複雑な形状の瓦にそれを作った昔の職人がどんな思いを込めたのか。美濃邉さんは、表面を指でなぞることによって、作者と対話し通じあうという。 これは「感覚系の学習」と「運動系の学習」の違いだ。他人の心を理解するというのは、案外「運動系の学習」に近いということだ。見るというのは明らかに感覚系の学習であり、指でなぞるというのは、実際にそれを作ったときの現場に立ち戻るという運動系の学習である。 最近の脳科学の「ミラーニューロン」という、相手の心と自分の心を鏡に映したように生成するニューロンは、運動前野というところにあり、運動系の回路である。美濃邉さんの話を伺って、このことを真っ先に思い浮かべた。 この「運動系」でみるというのはさまざまな分野で非常に重要なことだと思う。例えば音
今回お話を伺った鬼瓦を作る職人・鬼師の美濃邉恵一さんの仕事は、何百年も前に作られた鬼瓦を再現し、次の世代へ引き継いでいくことだ。複雑な形状の瓦にそれを作った昔の職人がどんな思いを込めたのか。美濃邉さんは、表面を指でなぞることによって、作者と対話し通じあうという。 これは「感覚系の学習」と「運動系の学習」の違いだ。他人の心を理解するというのは、案外「運動系の学習」に近いということだ。見るというのは明らかに感覚系の学習であり、指でなぞるというのは、実際にそれを作ったときの現場に立ち戻るという運動系の学習である。 最近の脳科学の「ミラーニューロン」という、相手の心と自分の心を鏡に映したように生成するニューロンは、運動前野というところにあり、運動系の回路である。美濃邉さんの話を伺って、このことを真っ先に思い浮かべた。 この「運動系」でみるというのはさまざまな分野で非常に重要なことだと思う。例えば音
「リスクを取る」というのは、無鉄砲に向こう見ずに事に臨むのではなく、むしろリスクを減らせるだけ減らしたうえで前へ進むということだ。 今回、外科医で肝臓ガン手術の第一人者である幕内雅敏さんにお話を伺って、さまざまなことに感銘を受けた。 幕内さんの仕事は、簡単な医療ではなく、高度先端医療である。当然、日進月歩でどんどん先へ進んでいく。しかし、それはリスク要因を徹底的に減らすことによって前へ進むことができる。そのバランスはどんな職業においても重要な要素だと感じた。どうも、日本人は「リスクを取る」というと、「向こう見ずにやる」と思いがちだ。実は、そうではないというのが、我々がまだ実感としてつかんでいないところではないだろうか。 特に、医療の分野のように、失敗してしまうと人の命が失われるというところでは、リスクを取るというのはリスクを最小化するということと表裏一体なのだ。幕内さんがおっしゃっていた、
「リスクを取る」というのは、無鉄砲に向こう見ずに事に臨むのではなく、むしろリスクを減らせるだけ減らしたうえで前へ進むということだ。 今回、外科医で肝臓ガン手術の第一人者である幕内雅敏さんにお話を伺って、さまざまなことに感銘を受けた。 幕内さんの仕事は、簡単な医療ではなく、高度先端医療である。当然、日進月歩でどんどん先へ進んでいく。しかし、それはリスク要因を徹底的に減らすことによって前へ進むことができる。そのバランスはどんな職業においても重要な要素だと感じた。どうも、日本人は「リスクを取る」というと、「向こう見ずにやる」と思いがちだ。実は、そうではないというのが、我々がまだ実感としてつかんでいないところではないだろうか。 特に、医療の分野のように、失敗してしまうと人の命が失われるというところでは、リスクを取るというのはリスクを最小化するということと表裏一体なのだ。幕内さんがおっしゃっていた、
記憶力が異常に強い人がいます。こういう人は、一般的に体験を整理して、意味を見いだすという能力は低いということが、経験的に分かっています。創造するということは、過去の体験や記憶を、組み合わせを変え、結びつきを変えて、アウトプットすることです。 もちろん記憶力が良くて創造力が豊かな人もいますが、人間の脳の働きとしては、記憶が正確に保てるということと、新しい発想を生み出すということは、脳の記憶の動作の仕方として、別の回路なのです。これは脳の分野でも最近分かってきたことです。 創造的な人でも鍛えれば正確に記憶を再現することは可能です。記憶力は鍛えられるもので、記憶術を身につけた人などは、それで鍛えています。ただ、発想豊かな人はそういうことに関心がない場合が多いのです。 正確な言い方をすれば、より多くの発想を出すように脳を使うということは、記憶を正確に再現することと直結しない、独立したこととなります
記憶力が異常に強い人がいます。こういう人は、一般的に体験を整理して、意味を見いだすという能力は低いということが、経験的に分かっています。創造するということは、過去の体験や記憶を、組み合わせを変え、結びつきを変えて、アウトプットすることです。 もちろん記憶力が良くて創造力が豊かな人もいますが、人間の脳の働きとしては、記憶が正確に保てるということと、新しい発想を生み出すということは、脳の記憶の動作の仕方として、別の回路なのです。これは脳の分野でも最近分かってきたことです。 創造的な人でも鍛えれば正確に記憶を再現することは可能です。記憶力は鍛えられるもので、記憶術を身につけた人などは、それで鍛えています。ただ、発想豊かな人はそういうことに関心がない場合が多いのです。 正確な言い方をすれば、より多くの発想を出すように脳を使うということは、記憶を正確に再現することと直結しない、独立したこととなります
ウイスキー作りでは、全く同じ条件で仕込んでも最終的に出来上がる原酒は違う。これは生体反応の特徴で、熟成の過程で起こるプロセスはカオスに基づいており、人間は制御できない。それを認めたうえで成り立っているのが、ウイスキー作りだ。 人間についても同じことが言える。規格品を作ろうとしてもコントロールできない。多様なものができることを認めることは重要だが、今回、サントリーのチーフブレンダー・輿水精一さんの話を聞いて、面白かったのは、その先があるということだ。 多様なものが数多くできた時に、そのままにしておくのではなく、それをこういうウイスキーが欲しいというイメージを持って、統合する作業にかかる。多様なものをいったん作って、そのあとで、それをまとめる方向に持っていく。組織論で言えば組織としてあるべき形に持っていく。広げてまとめる2段階をやっているのが面白い。 欠点は組み合わせによって長所になる。ウイス
ウイスキー作りでは、全く同じ条件で仕込んでも最終的に出来上がる原酒は違う。これは生体反応の特徴で、熟成の過程で起こるプロセスはカオスに基づいており、人間は制御できない。それを認めたうえで成り立っているのが、ウイスキー作りだ。 人間についても同じことが言える。規格品を作ろうとしてもコントロールできない。多様なものができることを認めることは重要だが、今回、サントリーのチーフブレンダー・輿水精一さんの話を聞いて、面白かったのは、その先があるということだ。 多様なものが数多くできた時に、そのままにしておくのではなく、それをこういうウイスキーが欲しいというイメージを持って、統合する作業にかかる。多様なものをいったん作って、そのあとで、それをまとめる方向に持っていく。組織論で言えば組織としてあるべき形に持っていく。広げてまとめる2段階をやっているのが面白い。 欠点は組み合わせによって長所になる。ウイス
「総合的な人間力がないと、一芸に秀でない」。僕がこのところ非常に気になっているテーマです。先日、京都大学でシンポジウムがあり、そこで「理論物理学者の湯川秀樹がそうだった」と気づいたのが、一つの発見でした。湯川秀樹は子供の頃から論語を読むといった教育を徹底して受けていました。 今回、お話を伺った陸上競技のコーチ・高野進さんは「ただ足が速いだけじゃダメだ。陸上は総合的な人間力の勝負だ」と、現役の選手を指導していると言います。 陸上競技や、湯川秀樹の理論物理学にしても、どちらかと言えば若い頃にその分野で突出した能力さえ持っていれば一流になれる。そのうえ、突出しないとトップにはなれないと思われている分野です。 しかし、こうした才能こそが大事だと思われている分野においてさえ、実は背後にある総合的な人間力がなければ、本当にオリジナルなことや、一流になることができないというのが、大事な視点だと感じました
「総合的な人間力がないと、一芸に秀でない」。僕がこのところ非常に気になっているテーマです。先日、京都大学でシンポジウムがあり、そこで「理論物理学者の湯川秀樹がそうだった」と気づいたのが、一つの発見でした。湯川秀樹は子供の頃から論語を読むといった教育を徹底して受けていました。 今回、お話を伺った陸上競技のコーチ・高野進さんは「ただ足が速いだけじゃダメだ。陸上は総合的な人間力の勝負だ」と、現役の選手を指導していると言います。 陸上競技や、湯川秀樹の理論物理学にしても、どちらかと言えば若い頃にその分野で突出した能力さえ持っていれば一流になれる。そのうえ、突出しないとトップにはなれないと思われている分野です。 しかし、こうした才能こそが大事だと思われている分野においてさえ、実は背後にある総合的な人間力がなければ、本当にオリジナルなことや、一流になることができないというのが、大事な視点だと感じました
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く