沖縄県うるま市のゴルフ場跡地に陸上自衛隊の訓練場を整備する計画が持ち上がり、地元が一致して白紙撤回を求めている。近くには米軍機墜落事故の記憶が残る住宅地もある。保革を超えて反対の声が広がり、自民党沖縄県連も、防衛省に土地取得の断念を求める異例の要請を行った。台湾有事への備えとして進む基地強化は本当に「沖縄のため」なのか。本土に住む私たちにも直結する問題だ。(西田直晃、木原育子)
石川県能登地方で稼働している73基の風力発電施設全てが、能登半島地震で運転を停止した。本紙の調べで分かった。風車のブレード(羽根)が折れて落下したほか、施設を動かす電源が使えなくなるなどした。半数超で運転再開の見通しが立っておらず、能登で進む風力発電の大規模な新設計画への影響は避けられない。(大野沙羅)
ロシアのプーチン政権による侵略開始から3年目に入ったウクライナ。民族と国家の存亡をかけて、果敢に抵抗を続けるウクライナの社会に最も精通した日本人といえば、首都キーウでウクライナの国営通信「ウクルインフォルム」日本版編集者の平野高志氏(42)を置いて他にいないだろう。平野氏は3日、ウクライナの市民社会をテーマにした論文で「ウクライナ研究会」(岡部芳彦会長)の研究奨励賞を受賞したばかり。ウクライナのメディアや社会、対ロ関係、日本の支援への反応などについて縦横無尽に語ってもらった。(編集委員・常盤伸) 平野高志 1981年生まれ。東京外国語大学ロシア・東欧課程卒。リビウ国立大学修士課程(国際関係学)修了。在ウクライナ日本大使館専門調査員を経て、2018年以降、ウクルインフォルム通信日本語版編集者を務める。キーウ在住。著書は「ウクライナ・ファンブック」。写真家としても活動中。
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続く中、パレスチナ自治区ガザの支援を担う「国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)」の清田(せいた)明宏保健局長(63)が来日中の16日、「こちら特報部」の取材に応じた。UNRWAの一部職員がハマスのイスラエル攻撃に関与した疑いが浮上し、日本などが資金の拠出を停止したが、清田氏は人道的観点から拠出再開を切望した。(北川成史) 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA) 1949年の国連総会決議に基づき設立された。パレスチナ自治区のガザやヨルダン川西岸のほか、ヨルダン、レバノン、シリアで、パレスチナ難民支援のため、学校や病院、避難所の運営などを担う。ガザでは約1万3000人のスタッフを雇っている。支援国・機関の拠出金で支えられ、2022年の拠出金総額約11億7000万ドル(約1755億円)のうち、国別1位は米国の約3億4000万ドル(約510億円)
トランスジェンダーへの嫌悪をあおる言説やデマが広がっている状況に、専門家らが昨年末「Q&A 多様な性・トランスジェンダー・包括的性教育」(大月書店)を緊急出版した。「『心は女性』と言われたら女湯の利用を拒否できないのか」など、漠然とした疑問や不安に明快に回答し、誤解や偏見を解きほぐす。編者の1人、埼玉大の田代美江子教授は「デマを流す側の意図を知って、惑わされないで」と呼びかける。(柏崎智子) 性的少数者を巡っては昨年6月、「LGBT理解増進法」が制定され人権擁護へ一歩前進した一方で、バッシングが激しくなった。特に標的となったのが、生まれの性と異なる性で生きるトランスジェンダー女性。「法が制定されると、男性器の付いた人が『自分は女だ』と言って女湯に入ってくる」「性別の区分がなくなり、女子トイレが廃止され、性犯罪が増える」など、女性の不安に付け込み、恐怖心をあおって対立させるような言説がばらま
政策評価は与党について「デフレからの脱却、力強い経済の再生に加え、G7広島サミット(先進7カ国首脳会議)の議長国としての取りまとめや日韓関係の改善、積極的な外交・安全保障政策を展開し、高く評価できる」と指摘した。 一方、自民党の課題として経済成長と財政健全化の両立をはじめ「こども・子育て政策において、広く国民全体が負担する財源のあり方の検討」を明記。岸田文雄首相が増税を否定する中で、あくまでも消費税増税を強く求めた格好だ。
世界で最も身体拘束が行われている日本の精神科病院。厚生労働省では現在、拘束要件の見直しが不透明なまま進むが、精神科病院を束ねるドン・日本精神科病院協会(日精協)の山崎学会長(82)はどうとらえているのか。「こちら特報部」の単独インタビューに応じた山崎氏の言葉を詳報する。(木原育子) やまざき・まなぶ 2010年から日本精神科病院協会会長。22年5月の厚労省の私的検討会に突如、参考人として出席し、議論の風向きを変えるなど影響力が大きい。18年には協会の機関誌に「(患者への対応のため)精神科医にも拳銃を持たせてくれ」という部下の医師の発言を引用し、物議を醸した。安倍晋三元首相と親しかったことでも知られる。日本大医学部卒。
原発の60年超運転を可能にする束ね法「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」が31日、参院本会議で与党と日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決、成立した。老朽原発の長期運転や原発産業への支援強化などが盛り込まれ、東京電力福島第一原発事故後に抑制的だった原子力政策の大転換となる。 福島事故後に導入された「原則40年、最長60年」とする運転期間の規定は、原子力規制委員会が所管する原子炉等規制法から削除。経済産業省が所管する電気事業法に改めて規定された。最長60年の枠組みは維持しつつ、再稼働に向けた審査などによる停止期間を運転年数の算定から除外。その分だけ60年を超えた運転が可能になる。 これまでは規制委が運転延長の可否を審査し認可していたが、今後は経産省が電力の安定供給に貢献するかなどの観点から審査し、認可する。具体的な審査基準は今後策定する。規制委は延長の可否の判断には
大規模な金融緩和を中心とした安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」の指南役として、当時内閣官房参与を務めた浜田宏一米エール大学名誉教授(87)は本紙のインタビューで、10年に及ぶ政策の効果について「賃金が上がらなかったのは予想外。私は上がると漠然と思っていたし、安倍首相(当時)も同じだと思う」と証言した。大企業の収益改善を賃上げへとつなげる「トリクルダウン」を起こせなかったことを認めた。 (渥美龍太、原田晋也、畑間香織)
日本学術会議の組織形態見直しを巡る政府方針に、会員の実質的な任命権限が首相にあることを強調する文言が、首相官邸の意向で最終的に盛り込まれたことが19日、関係者への取材で分かった。首相による任命拒否が可能なことを明確にする意図があるとみられ、方針への対応を決める21日の学術会議総会で反発も出そうだ。 該当部分は「内閣総理大臣による任命が適正かつ円滑に行われるよう必要な措置を講じる」との文言で、6日公表の政府方針に記載。方針は他に、会員の選考や任命に関して第三者の関与で透明性を高めるなどとし、政府はこれを踏まえた関連法の改正案を来年の通常国会に提出する構え。
物価高による家計負担は2023年度も重くなる見通しだ。民間の調査会社の試算によると、物価高の影響で22年度の家計の支出は前年度に比べ9万6000円増えており、23年度はさらに4万円増える。一方で、政府は当面は見送る方針としながらも、防衛費増額の財源などと称し増税の議論を活発化。実施のタイミングや中身によっては値上げで疲弊した家計を窮地に追い込むことになりかねない。 (寺本康弘) みずほリサーチ&テクノロジーズのリポートによると、政府の物価対策を考慮しても、22年度の1年分の家計負担(2人以上世帯)の全体平均は 、食料品で約4万6000円、エネルギーで約2万2000円増えるなどし、計約9万6000円の増加になると見込む。
鈴木俊一財務相は9日の防衛力強化に関する政府の有識者会議で、防衛費を増額する場合は国債に頼らず恒久的な財源を確保すべきだと主張し「税制上の措置を含め多角的に検討する」と強調。財務省は同会議への提出資料で「幅広い税目による国民負担が必要」との方針を鮮明にした。自民、公明両党の幹部からも、所得税や法人税を数年後から引き上げ、増税で財源を確保すべきだとの意見が続出している。 財源を巡っては当初、安倍晋三元首相が「防衛費は祖国を次の世代に引き渡していくための予算だ」と位置づけ、借金である国債を提案したが、死去後は下火になり、増税論が台頭している。2023年度の予算案や税制改正大綱が決定される年末までに、政府・与党が一定の方向性を打ち出す見通しだ。
第2次世界大戦中、10万人を超す死者を出しながら、海外ではあまり目を向けられない東京大空襲を取り上げたノンフィクションが、米国でベストセラーになった。「ボマーマフィアと東京大空襲」(光文社、桜井祐子訳)。著者で人気作家のマルコム・グラッドウェルさん(58)はなぜ、大空襲を主題にしたのか。何を学ぶべきだと考えているのか。オンラインでインタビューした。(北川成史) Malcolm Gladwell ノンフィクション作家・ジャーナリスト。英国生まれで、カナダで育ち、米ニューヨーク在住。ワシントン・ポスト紙の記者を経て『第1感』『天才!』などの国際的ベストセラーを著した。米誌タイムの「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれている。
島津製作所(京都市)が製造した医療用エックス線装置を巡り、保守と販売を担う子会社の島津メディカルシステムズ(大阪市)熊本営業所の幹部社員が、熊本県内の公立病院に納入した装置に回路を遮断するタイマーを仕掛け、故障を装って部品を交換していたことが本紙の取材で分かった。病院は交換修理費として200万円超を支払った。島津製作所は社内調査していることを認め、自社のホームページに「事実関係が明らかになり次第、しかるべき対応を行う」とのコメントを出した。 両社の関係者は25日、この病院を訪れて謝罪し、概要を説明した。営業所を所管する熊本県は、メディカル社などから聞き取りをする考えを示した。病院を運営する自治体は、代金の返還を求めることも視野に検討するとした。 部品を交換していた装置は、エックス線で体内を撮影しながら映像を見られる「エックス線テレビシステム」で、この病院には2009年に設置された。関係者に
閑散とした敷地に、案内係の職員が手持ちぶさたの様子でたたずんでいた。6月半ば、自衛隊が設置する東京都千代田区の新型コロナワクチン大規模接種会場。かつては希望者が多かった金曜日だが、訪れる人はまばらだった。 「会場の中もひっそりしてましたね」。3回目接種を済ませた千葉県松戸市の20代の女性会社員は話した。国内でのワクチン接種率は1、2回目が80%を超える一方、3回目は60%超で早くも頭打ちの兆しが見えてきた。医療の逼迫(ひっぱく)が緩和されて接種の必要性を感じにくくなる中、副反応への懸念から接種を避ける人も少なくない。 接種の鈍化で目立ってきたのが、有効期限を過ぎたワクチンの廃棄だ。特に米モデルナ社製は副反応の強さが心配され、期限までに使い切れない自治体が各地で続出。品川区では約6万回分、大阪市では約8万5000回分、広島市では約7万回分が廃棄に回った。 「無駄が出ないよう工夫したが、3回目
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