■複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線 マーク・ブキャナン (著), 阪本 芳久 (翻訳) アメリカの心理学者のミルグラムが行った、手紙を仲介してもらう実験は、どこかで聞いたことがあると思う。 …ミルグラムは、カンザス州とネブラスカ州の住民から何人かをランダムに選び出して手紙を送りつけ、その手紙をボストンにいる彼の友人の株仲買人に転送してほしいと依頼した。ただし、友人の住所は知らせなかった。手紙を転送するにあたっては、それぞれの個人的な知り合いで、その株仲買人と社会的に「近い」と思われる人にだけ送るように頼んだ。最終的には、なんと手紙の大半がボストンの友人のもとに届いたのである。けれどもさらに驚かされるのは、手紙が着いた速さだった。手紙の多くは何百回も投函されてではなく、六回前後で着いたのだ。アメリカには何億もの人がおり、そのうえ、ネブラスカもカンザスも社会的にはボストンからか